28 運命
一輝「え、お前どうして…。」
道彰「一輝…助けてくれよぅ〜!」
泣きながらガバっと抱きつかれた。とても弱々しい力だった。スポーツ少年だった道彰の力はこんなんじゃなかったはずなのに。
一輝「…普通に外出れたのか?」
道彰「2階の窓から抜け出した。」
一輝「えっ。いいのかよそれ。バレたらヤバいんじゃ。」
道彰「でもこのままじゃ俺死んじゃう。頼れるやつがいないんだよ…。」
一輝「分かった。俺も一緒に考えるから。とりあえず泣きやめって。な?」
道彰「…ああ。」
とは言ったものの、俺もまだ解決策は浮かんでいない。なんだっけ、児童相談所とか?そういう話になってくんじゃないのか。
一輝「…なんか、家以外に安全な場所があればな…。」
道彰「一輝ん家は…ダメだよな…。」
言葉に詰まった。父さんがいるから…それは正直難しい。それに俺までノンケがバレる可能性もある。出来るなら匿ってやりたいけど…。
道彰「…だよな。ごめん。とりあえず今まで通り耐えるしかないよな。」
一輝「ごめん。でも施設に引き取ってもらったりとかは出来るんじゃないかな。ここまでなってるんなら虐待で対応出来そうだけど。」
道彰「…でも、父さんにバレるのは…。」
一輝「…家の人もヤバいんだよな。なんでバレたんだ?」
道彰「クラスのやつが家のポストにそういうこと書いた紙入れてて…。」
驚愕だった。そんなことまでするやつがいるのか。わざわざ紙書いて家まで来て。どれだけの悪意なんだ。
道彰「俺の、元々母さんだった方の父さんがおかしくなってて。元々の父さんが俺がノンケなのを許せないらしくて暴れ出して。もう俺ん家終わりだよ…。」
聞けば聞くほど、胸が痛い。ノンケってだけでここまでなるのか。何がダメなんだ。こんなまでなるほどか。
一輝「家帰れるか?大丈夫か?」
道彰「…帰るしかねえじゃん。いないのバレたら何されるか…。」
一輝「そうだよな。じゃあとりあえずまた会おう!抜け出せるときに来てくれたらいいから!一旦帰らないとバレたらヤバいだろ。」
そうして道彰を帰らせた。不安だけど、俺にはどうすることも出来ない。
それから数日、バレてないか不安な日々を過ごした。だけどなんとかバレなかったようで、ある日また家の前に立っていた。それが2、3回続き、あるとき他のやつらにも会わせようと思って持ちかけた。
一輝「日時指定してそのときに出て来れそうか。」
道彰「この時間帯なら大丈夫。ずっとバレないで来てるから。」
一輝「じゃあ今度健太郎とか誘っていいか。あいつ、お前に謝りたいってずっと言ってんだ。」
道彰「…うん。いいよ。」
一輝「分かった。待ってるからな!絶対来いよ!負けんなよ!」
道彰「分かった!ありがとう!」