9 周りの声
翌日。俺は、朝の教室で周りのやつらの聞きたくない声を浴びてしまった。
同級生A「なあ、昨日のおしゃべり見たか?」
同級生B「ああ見た見た、嬉しんじだろ。ホントにノンケなんだな。」
同級生A「やべぇよな、あのエピソード。」
同級生B「嬉しんじは別にいいけど近くにはいてほしくないかな。」
同級生A「いや俺は存在自体無理だけどな。」
同級生B「そんなにか?」
聞こえてるよ。ここに存在してんだよ、ノンケは。あいつらは目の前にいるやつが実はノンケだなんて夢にも思ってないんだろうな。
同級生C「ねえ、ノンケの男の人ってさ、女の子が好きなんだよね。私たち襲われたりすんのかな、怖〜い!」
同級生D「力の強い男性が力の弱い女性と関係を結ぶ…。本来なら成立しない禁断の関係だからこそ萌えるものがある…。」
同級生C「Dちゃん?」
あいつらにとってノンケはよく分からない怖いものか、自分の妄想の材料になるものかでしかない。一人の、普通の人間として見ることはないんだ。
学校にいると、誰とも喋ってなくても周りに人がいっぱいいるから聞きたくないこともどんどん聞こえてくる。耳を塞ぐことも出来ないし、席を立っても結局同じだ。どこにだって誰かしらがいる。
もちろんこういう状態が一時のものなのは分かってる。だからみんなが飽きるまでじっと耐えるんだ。
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移動教室があり、いつもの4人で移動していた。すると雅也が突然切り出した。
雅也「今の3人の中なら誰?」
康太「真ん中のデブ〜。」
俊「右のメガネかけてた人。」
雅也「え、俺 左のモヒカンなんだけど。みんな違うじゃん!じゃあ一輝は?」
康太「一輝で決まるね〜。」
え、何の話?何のこと?焦ってうろたえる。
雅也「え?見てなかったのかよお前。」
俊「さっき3人組とすれ違ったじゃん。その中で誰が一番タイプかって。」
は〜!?見てねーよ男なんか!…でもそうか、そういうとこも意識してないとこうなるのか…。そういえば俺も中学のとき女で同じことしてたしな…。
とりあえず今回は見てなかったってことで許してもらうか…。
一輝「あ〜、ちょっと見てなかったな…。」
雅也「何だよおい〜。」
良かった、詰められなくて。でもみんな見てんだな。次からは気をつけよう。
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有希の友達「…有希、どうしたの?」
有希「いや、何でもないよっ。」
有希の友達「有希ってたまにそうやってフリーズすることあるよね。(笑)」
有希「え〜そう…?」