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29 最悪の結末

あの後、ついに家を抜け出していたのがバレたみたいだ。それで、元母さんの父さんの怒りが爆発して道彰を殺し、その後自分も死んだそうだ。それを帰って来たもう1人の父さんが見つけて通報して…。

この一連の流れは大きく報道された。初めてそのニュースを見たとき、何かの見間違いかと思った。でもそれは間違いなく道彰のことだった。

道彰のこともノンケのことも、父さんは知らない。自分と関わりがあるとバレないよう、食事をとる手を止めることは出来なかった。部屋に戻ってから声を殺して泣いた。

道彰がもうこの世にいない…。昨日まで普通に喋ってたのに。元気も取り戻してきてたのに。また会うって言ったのに。しかも、ホントは一番悲しんでくれるはずの親に殺されて。

俺は何も出来なかった。いや、むしろ俺があのとき家に行ったから道彰は俺と会おうとして…。家を抜け出すきっかけを作ったのは俺だ。俺が殺したようなものじゃないか。

後悔の念が押し寄せてくる。あのとき無理にでも家以外の居場所を用意出来てれば。でも今更こんなこと思うのはズルいのかな…。ごめん、道彰…。

道彰の高校では大きな騒ぎになり、かなり大変だったようだ。俺の高校でも話題になり、全校集会のときに注意喚起のようなことがなされた。ただ、教師も対応の仕方を分かってない感じで、あまり説得力はなかった。

テレビでは異性愛者の抱える問題や世間の関心についての特集がなされた。
少数派は日々"生きづらさ"を感じていると言われていた。そうか、この感覚は生きづらさって言うのか。

大輔さんがまた家に来て、3人でごはんを食べてるときにもそのニュースが流れた。

大輔「…すごいよね、このニュース。親が子供殺しちゃうなんてさ。しかもこんな近くで起こった事件だし。」

一輝の父「そうだな。でもまあ、死んでいいとは思わないけど子供がノンケじゃ頭おかしくなってもしょうがねえのかもな。」

大輔「でもそれは大事な子供のことなんだし、親もちゃんと向き合うべきだと思う。」

一輝の父「向き合うっつってもなぁ。何も分かんないわけじゃん。だから例えば一輝がノンケでしたって急に言われるようなもんだろ?自分が生んで育ててきた子供なのに、突然未知の生き物になったみたいで怖いよな。」

大輔「だからそれは話し合ったり調べたりして知っていかないといけないんじゃない?知らないから怖いんだよ。」

一輝の父「う〜ん…。」

例えば俺がノンケだとして、のところで心臓がギュンッとなった。どんな顔していいか分からない。まさかバレてないよな。俺今表情大丈夫か。

にしても、大輔さんは結構優しいな…。俺がノンケだって知らなくてもこういうこと言ってくれるのはすごくありがたい。2人とも嫌ってたらしんどかったからまだ助かる。

ただ、俊にカミングアウトしようか迷ってたけど、道彰の件で怖くなってしまった。もし父さんにバラされたらと思うと、今はまだしない方が賢明かな…。

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