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2-27 ボーナストラック
典明「いつの間にこんなことに…。」
迅「典明、今まで何してたんだ?」
典明「小説を書いてて耳栓してたから、全然外の騒ぎに気付かなかったんだ…。これは…。」
迅「ノンケが見つかったよ。」
典明「!…そうか…。それと、この状況についても教えてほしい。何故悠介くんは号泣し、知らない子がいるんだ?」
その回答は村長がした。簡単にここまでの経緯を説明すると、典明は声を出さずに小さく何度もうなづいた。
典明「…君は何か違う感じがしたんだ。子供だからっていうのもあったけど、それだけじゃない何か違うものを…。」
典明はそう言うと、うずくまる悠介に聞いた。
典明「悠介くん…今話せたらでいいから答えてほしいんだけど…あの本は最後まで読んでくれた?」
悠介「よ…読みました…。」
典明「真相編まで?」
悠介「初めの方少しですけど…。あれって…。」
典明「うん。あの話がゲイを宇宙人に置き換えて話されてることは分かったと思う。そして、この村がどんなところなのかももう分かってるよね。」
典明「そんな村で、地球人と宇宙人、つまりノンケとゲイがただ仲良くなって終わりです、なんて話だったら、ここまでウケないでしょ?」
典明「仲良くなったところを見計らって、大復讐劇が始まったんだ。」
迅「そうだ。それまでゲイが味わってきた怒りを忘れるわけがない。なのにノンケ側が何も罰を受けずに仲良くなって終わりなんて、虫が良すぎるだろ?お前らが勝手に気持ち良くなってるだけじゃないか。」
迅「元の世界でだって、犯罪を犯して本当に反省してるなら、懲役受けるなり慰謝料払うなりしっかりやるだろ。それと同じだよ。しっかり罪を償ってからだろ、平和な世界にするのは。」
迅「復讐は何も生まないなんて言うけど、あんなのは先に仕掛けた特権階級側に都合のいいだけのセリフだよ。それに、復讐は生むんだよ。先にやられた側の尊厳をな。」
典明「…ああ、それで、地球人たちは見たこともない宇宙人たちのパワーに逃げ惑うことしか出来ず、命乞いの果てに惨めに殺されていったんだ。」
典明「最初はこの追加版を作らず、その手前までで話を終わらせてたんだけど、こういう内容を入れた方がウケるよって他の人に言われて入れたんだ。そしたら大ヒットして。」
悠介「だから本が別れてるんですね…。」
典明「そうなんだ。」
悠介(だからか…。)
典明「ちょっといいかい?悠介くん。」
典明は悠介に肩を貸して立ち上がらせ、他の人から少し離れた所に移動した。そして周りに聞こえないようにささやいた。
典明「実は、俺は真相編じゃない方のエンディングを望んでるんだ。」
悠介「え…?」
典明「もちろん初めて村に来たときはノンケを憎んでた。俺も嫌な目に遭わされてきたから。だけど、ゲイしかいないこの村でずっと過ごして、考え方が変わってきたんだ。」
典明「村の人たちと喋ってるとちょくちょくノンケを悪く言う発言が出てくる。でも段々そういうのに疲れてきて、そういうのは無い方がいいと思うようになったんだ。」
典明「だけど、そんなことを言ったら周りからひんしゅくを買うのは確実でしょ?実際どうなるかは分からないけど、それで何かされたりしたら嫌だと思って言わなかった。」
典明「でもやっぱり小説でぐらいは本当に自分がいいと思うものを書いていたかったんだ。だから最初はハッピーエンドで終わらせたんだよ。」
典明「他にもそういう、この村の人はあんまりよく思わなそうなハッピーエンドの物語をこっそり書いてるんだ。それが見つかるリスクを抑えるためもあって、家の前に執筆中の看板をかけてるんだよね。」
悠介「そうだったんですか…。」
典明「僕は君ほどじゃないけど、この村の慣習をあまり良くは思ってないんだ。だからきっと話が合うと…。」
迅「何を二人で話してるんだ?」
典明「おっ…ごめんごめん。」
迅「悠介ももう分かっただろ。この村は完全にノンケに復讐するために存在してる。それは受け入れてくれないとこの先この村でやっていけないぞ。」
迅「まあ記憶を消してもらえばいいんだけど、ノンケ殺しの日が来るたびに反発されても困るしな。まあその日が来ても前に消された記憶は戻らないんだけど。」
迅「そして村長、このノンケの子はどうするおつもりですか。」
村長「…修司は元の世界に返す。」
そう言うと村長は悠介の方を向いて、また言った。