４３ ボコボコ
一輝「あのとき教えてくれた、ビーノンってなんだったんだよ！あれは…。」
夢花「…あんなの嘘よ。時間を稼ぐための嘘。適当に私が作った言葉よ。」
一輝「え…そんな…。」
亮佑「夢花、ビーノンってなんだ？」
夢花「ノンケ同士でお互いがノンケだって分かる能力としてビーノンって言っただけよ。別にあんたは気にすることないから。」
一輝「な…なんでそんな嘘を…。」
夢花「そんな能力でもなきゃ、あんたがノンケだって分かった理由がつかないじゃない。だから疑われないためにでっちあげたのよ。」
…そんな…裏切りと嘘ばっかりじゃないか…。もうやめてくれ…。
夢花「…そうだ、そういえばあんた、さっき捕まえたときなんか動きがおかしかったわね。」
雫「な…何がですか。」
夢花「なんか挙動不審というか、企んでるような動きしてたわ。もしかして一輝が捕まるとこ見てて、助けに行こうとでもしてたの？」
雫「そんなこと知りませんでした…。ただ帰ろうとしてただけです…。」
夢花「ふ〜ん…。」
亮佑「なんか怪しいな…。おい、1発殴れ！」
輩A「へい！」
ドガッ
雫「うっ！」
一輝「雫！」
亮佑「隠してることがあるなら吐け…。」
雫「な…何もないです…。」
亮佑「もう1発。」
一輝「やめろっ！」
俺は輩に飛びかかった。でも輩の力は強く、払い除けられて雫はまた殴られた。邪魔をした罰として俺も別の輩に殴られた。
有希「いや…やめて…！」
くそっ、俺はすぐ横で殴られてる仲間がいても、何もしてやれないのか。ただ殴られてるのを見てるだけじゃないか。雫は俺を元気付けてくれたのに、俺は何もしてやれない…。
亮佑「…何も言わないな。じゃあ先に、有希。お前もノンケか？ノンケで一輝のことが好きでもなけりゃ、こんな状況で自分を危険に晒してまでこいつの味方なんてしねえよなぁ？」
一輝「それは違う！有希さんはノンケじゃない！」
亮佑「お前はうるさいんだよ。おい、もう1発。」
一輝「ぐはっ。」
亮佑「どうせお前がノンケでも女が好きでも俺らにやられるのは一緒なんだから、正直に吐いちまえよ。」
有希「…私は…ノンケじゃないです。」
亮佑「ホントか〜？多数派が少数派を庇うなんてあり得ないと思うけどな〜。まあ、もしそうならお前はよっぽどイカれたやつなんだろうな。」
一輝「お前…有希さんにそんなこと…許さないぞ。有希さんの想いも知らないで！」
亮佑「おうおう、かっこつけてんなあ。何にも出来ねえくせによお！」
バンッ！
亮佑のバットが左頬に当たった。素手で輩に殴られたのより10倍は痛い。一瞬視界が黒く光った。
有希「一輝くん！」
地面に倒れ込む俺。
亮佑「ついでに言っといてやろうか。お前の中学のときの同級生。生き残ってる3人組。あいつらはなあ。」