2 晴れない入学式
一輝「え?だから彼女ほしいなって…。」
誠慈の顔が引きつる。
誠慈「…あっ、一輝ってそういう感じだったんだ?すげー普通に言うんだな…。」
誠慈の足が早くなる。
誠慈「俺そういうのちょっと無理だから…。じゃあな…。」
誠慈の姿が遠くなる。
一輝「え…、おい、ちょっと待てよ!」
急な事態にわけも分からず、そのまま一人、モヤモヤした気持ちで登校し、クラス表を見て教室に行った。誠慈とは1-Aで同じクラスだった。本当なら嬉しいはずなのに、なんだか喜べない。
一輝「あっ…なあ、誠慈、あのさ…。」
誠慈「知り合いってバレるからあんま話しかけて来ないでほしい。」
誠慈は席を立ち、教室を出て行った。
全く意味が分からなくて腹が立った。追いかけようと思ったけど、もう声をかけても無駄な気がしてやめた。よく分からないけど嫌われたんだろう。こっちが下手に出て仲直りを求めるなんてまっぴらごめんだ。
そのまま入学式が始まったが、話が全く頭に入ってこない。晴れやかな気持ちなんてどこにもない。そんな調子でその日は進み、楽しみだった今日はなんとも言えない気持ちで終わった。
グラウンドに出ると人混みの中から父さんの声が聞こえた。
一輝の父「お疲れ!いやー制服似合ってんな!」
一輝「ああ、そう?」
一輝の父「ああ、高校生になったなって感じだ。あ、写真撮ろうぜ。あの門の所で。」
行列に並んで、正門の銘板とともに父さんと2人で記念の写真を撮ってもらった。桜がいい感じに舞って写り込んでいる。
一輝の父「お〜いい写真だなあ。あ、この後もう帰るよな?昼飯は用意してるから。」
一輝「分かった。」
一輝の父「じゃあ俺またあの人と会ってくるな。」
一輝「いってらっしゃい。」
一輝の父「ああ。入学おめでとう!」
父さんと別れ、俺は一人帰路に就いた。父さんは俺の入学を自分のことのように喜んでくれたし、今からいつもの人に会いに行くのも楽しそうだった。
対して俺は自分のことなのに喜べない。誠慈の件でずっとモヤモヤしている。
帰宅し、用意されていた昼食を温めて食べる。テレビをつけるとお昼のニュース番組がやっている。なんとなくボーっと見ていると、衝撃的なニュースが目に飛び込んできた。