2-25 再会
迅「村長の気まぐれでさ。急にノンケを憎んでない人をこの村に入れるって言い出して。」
千紘「ホント。最初にそれ聞いたときはびっくりしたわ。村が終わるかもとまで思った。」
颯人「マジかよ…悠介…。」
悠介「いや…でも…。」
迅「まあ今まではそれでどうこうなる場面が無かったから良かったけど。悠介自体はいい子だしな。でも、いざこの時が来ると…やっぱり悠介はそっちの立場に立つよなぁ。」
千紘「同じゲイなのに何で対立しちゃうのかしらね。ここに来たらこういうのも味わわずに済むと思ってたのに。てか、原因作った村長はどこに行ってるのよ。」
話している間にも敦志は村人に攻撃され続け、苦しそうにしている。悠介は迅たちと話し合いもしたかったが、まずは敦志を助けたかった。必死に腕を掴む千紘の手を振り解こうとした。
悠介「と、とにかく放してください!殺すなんてやりすぎです!」
千紘「どこがやりすぎなのよ。ノンケの差別で何人ものゲイが死んでるのよ!?」
悠介「でも、僕らは死んでないじゃないですか!」
迅「いや、それも違うんだよな。」
迅「もう俺たちは元の世界からはいなくなってるんだ。本当なら自殺してたところを代わりにこの村に来ただけ。それは実質死んだのと同じだろ?」
悠介「で、でも…もっとしっかり話し合ってみたら分かり合えるかもしれないじゃないですか!」
颯人「悠介!いい加減にしろよ。きれいごとばっかり言いやがって。そう言うお前だって結局元の世界を諦めてここに来た身だろ!俺らと同じじゃねぇか!」
悠介「そ、そんな…違う…僕がこの村に来たホントの理由は…。」
村長「遅くなったな。」
迅「村長!と…?」
悠介「え…何で…?」
そのとき悠介の目に映ったものは、とても信じられないものだった。元の世界で永遠の別れを告げた、この村に来れるはずの無い人物の姿。
悠介「修司…?」
修司「悠介…ホントにここにいたんだね…。」
悠介「修司!何で!」
村長「あの山で倒れておったから連れて来たんじゃ。悠介のことをひたすら探し回っておったぞ。」
修司「…。」
悠介「修司…何で今さら…。」
修司「悠介…ごめん…。」
悠介「え?」
修司「俺、何も分かってなかった。単に悠介を怒らせただけだと思ってた。でも…。」
悠介「…別に何もないよ。単に元の世界が嫌になっただけ。」
修司「…。」
悠介(…って、今さっき本当のことを言おうとしたくせに…。)
迅「村長、この子は一体…?」
村長「その前に、ついにこの時が来たようじゃな。偶然にもいろいろなタイミングが重なったようじゃ。」
悠介「タイミング…。」
村長「悠介、今の状況をどう思う。」
悠介「…こんなことは良くないと思います。」
村長「ではどうする。どうやって止めるんじゃ。」
悠介「それは…僕に出来るのは、みんなを説得するぐらいしか…。」
村長「無駄じゃな。誰も聞かんじゃろう。そんな話も既に迅らとしておるんじゃないか?」
悠介「…そうです…。」
千紘「ええ、言いました。誰も耳を貸さないって。」
村長「そもそも悠介は何故これが良くないことだと思うのじゃ。」
悠介「え、それは…だって人を傷つけるのは…良くないことじゃ…。」
村長「こいつは元の世界でゲイを傷つけておる。先にやったのはコイツじゃぞ?報いを受けるのは当然じゃないかの?」
悠介「でも…僕らが勝手に仕返しみたいにするのは…良くないと思います…。」
村長「それは、裁きはちゃんと法に基づいてすべきということか?ならばここは元の世界とは全く違う世界じゃ。ここの決まりでワシらが裁いて何が悪い。」
悠介「でも…こ、殺しちゃったら終わりじゃないですか。その…僕たちゲイの辛さとかを分かってもらって反省させられた方が嬉しくないですか?それで元の世界に帰ってもらった方が…。」
村長「元から差別するような人間じゃからな。反省する素振りを見せておいて、元の世界に帰ったら悪評広めながら更に仕返しのように強い差別をするだけじゃな。」
何度も反論され、悠介は何をどう言えばいいのか分からなくなり、村長に何も言い返せなくなってしまった。
颯人「ちょっと思ったんですけど。」
村長「どうした?颯人。」
颯人「バレた後すぐ殺すの、つまらなくないですか?元の世界でいういじめのフェーズを体験させた方が復讐になってると思うんですけど。」
千紘「それもそうね。だけど、そんな状況になっても大人しく耐えて学校や会社に来続けるゲイと違って、ここに来たノンケはすぐに逃げ出すのよね。だからそれをしたくてもあんまり出来ないの。」
颯人「そうかぁ。難しいな。」
修司「あの…すみません、これってどういう状況なんですか…?」
迅「そうですよ村長、この子は何者なんですか?新入り来るとか言ってましたっけ。」
村長「…この子は、悠介の元の世界の友達で、ノンケじゃ。」
迅&千紘&颯人「は!?ノンケ!?」