32 終わりの始まり
次の日、いつも通り登校して教室のドアを開けたとき、みんなの視線が一気に俺に集まった。
場の空気が一瞬止まった。
同級生G「うわ、ヤバい来た…。」
同級生H「逃げろ逃げろ。」
!?
クラスのやつらの挙動がおかしい。明らかに俺に対してだ。何があった。
すると、雅也が俺の所に歩いてきた。
雅也「なあ、一輝。」
一輝「な、なに。」
雅也「お前、ノンケだったんだな。」
一輝「は?なんの話。」
雅也「とぼけんなよ。今クラス中の話題になってんだ。証拠だってある。」
証拠…?
雅也「なんかおかしいとずっと思ってたけど、そういうことだったんだな。俺もうお前と関わんねえから。」
おいおい待てよ。どうなってんだよ。何で1日でこんな急にバレてんだよ。
まさか、俊が…?
昨日カミングアウトした後、みんなにバラしたのか…?
それからは、露骨に周りの態度が変わった。授業で俺と一緒に作業するのもみんな嫌がるし、休み時間は周りから悪口が聞こえてくる。
ああ、俺の平穏な高校生活、もう終わったんだな…。4ヶ月頑張ってきたのに。全部水の泡かよ。最悪だ。
ショックだった。でも、ここで精神的にやられたら本当に終わりだ。道彰のことを思い出してそう感じた。あいつの死は無駄にしちゃいけない。俺は生き残る。
俊に話を聞きたかったけど、その日は俊は学校に来なかった。周りの目はずっとキツく、聞こえるように悪口を言ってくる。
雅也は当然喋ってくれないし、康太も気まずそうに俺から離れていく。俺は一日中1人で行動した。
帰り際、下駄箱で靴を履き替えようとしたとき、後ろから蹴られて下駄箱に激突した。お尻とおでこを同時に強打した。
同級生I「あーあ、これから3年間ノンケと同じ学校に通わなきゃいけないとか最悪だわー。」
同級生J「別の学校のやつみたいに死んでくれたらなー。」
こいつら…。道彰まで悪くいいやがって。
同級生I「てか、この地域ノンケ多すぎね?」
同級生J「マジそうだよな。こんな近くに2人もいるとか。」
ふん、最低でも後3人はいるからな。2人いたぐらいで多すぎとか、こいつらバカだろ。
頭の中で言い返してみるが、それは全て元の世界の頃の俺に跳ね返ってくる。だからこそ、実際に口に出して言い返せない。結局当事者で無ければほとんどのやつはその程度の知識なんだ。俺が人に言える立場じゃない。
しかしどうする。俊が今日休んだ理由は分からないけど、もしこのままずっと来なかったら。何も聞けないまま、ただいじめられて日々が過ぎる。
とりあえず健太郎たちに相談するか…。