38 真相に近づく
有希さんか。初めて話すな。
有希「あの、突然ごめんね。良かったらちょっと話出来ない?」
一輝「あ、うん。いいけど…。」
有希さんは隣に来て腰を下ろした。
有希「最近、大丈夫?」
一輝「いや、まあ…ちょっとしんどいな。…有希さんは俺を避けたりしないんだな。」
有希「うん…私はね。」
一輝「あ、俺なんか監視されてるかもしれなくて、だからこうしてると有希さんまで危ないからあんまり一緒にいると…。」
有希「監視…そんなことまでされてるんだ。でも…ここは開けてるし、監視してるみたいな人はいなさそうだよ。常に見られてるわけじゃないんじゃない?」
それはそうだと思う。雫もあの後いじめられたりしてはなかった。監視っていっても大人数で四六時中見張るなんて無理だもんな。
有希「ずっと気になってたことがあるんだけど…。」
一輝「え、なに?」
有希「懇親旅行のエルジーランドで女の人と2人でいなかった?あの人誰だったの?」
一輝「え、見られてたんだ。」
俺はそのときの状況を説明した。お土産屋で男の人3人組に話しかけられたことも含めて全て。
有希「それって…亮佑くんのグループの人なんじゃ…。」
一輝「亮佑?」
有希「ここら辺で悪さしてるグループがいて、その輩と繋がってる人が今年ウチの高校に入ったって聞いたことあるの。ちょくちょく噂は回ってきてたけど…。」
一輝「でも、それがなんで亮佑だって…。」
有希「一輝くんがノンケだってクラス中にバラしたのは亮佑くんなの。」
一輝「え…!」
有希「一輝くんが登校してくる前に、教室で一輝くんが女の人とキスしてる写真と、俊くんにカミングアウトしてるところを盗聴した音声をみんなに聞かせてて…。」
盗聴…!?あのときどっかに隠れて録音してたってことか?
そこまでするのかよ…。俺に何の恨みがあんだ。俺がノンケだから?それだけでここまでするか?
有希「だから、その悪いグループと繋がりがあるのは亮佑くんで決まりだとは思う…。その写真もその輩の人が盗撮したんだと思うし…。」
やっぱり亮佑か…。じゃあ誠慈が亮佑にバラしたってのも合ってるだろうな。
にしても、まさか亮佑とあの輩が繋がってるとは…。考えもしなかった。
一輝「…ありがとう、教えてくれて。」
有希「ううん、いいよ。むしろこれぐらいしか力になってあげられないけど…。」
一輝「有希さんは…女の人が好きなの?」
有希「うん…そうだよ。」
健太郎たちは俺と同じノンケだから、雫は俺のことが好きだから、大輔さんは父親だから、俺の味方をしてくれてるけど、有希さんは…。
一輝「なんで俺の味方してくれるの?」
有希さんは、少し考え、それから言った。
有希「私は一輝くんみたいな少数派の気持ちが分かるの。」
一輝「え?でも有希さんは多数派じゃ…。」
有希「あのね…笑われるかもしれないけど…。」
そう前置きした上で、有希さんは予想外の言葉を発した。