16 ギリギリセーフ
走りながら会話する。
俊「なあ、なんでロッカールームになんか行ったんだよ。何があったんだ?」
一輝「ちょっと揉めただけだから大丈夫だって。」
俊「ホントか?裸で叩かれてたじゃんか!」
一輝「俊…頼む、このことは誰にも言わないでくれ。」
俊「え?な、なんでだよ。」
一輝「騒ぎを起こしたくないんだ。頼む。」
俊「…分かったけど…。」
待てよ、あの男は俺にノンケがどうとか言ってたよな。もし俊がそれをちょうど聞いてたらヤバい。
一輝「…なあ、さっきの男が言ってたこと、聞こえた?」
俊「ん、言ってたこと?いや、男の大声がしてるのは聞こえたけど、何て言ってるかまでは分かんなかったよ。」
…そうか、それならギリギリセーフか。嘘ついてる感じでもないしな。
一輝「そういえば何であそこが分かったんだ?」
俊「一輝が遅いからトイレに様子を見に行ったんだよ。でもいなくて、探してるうちにあそこの近くまで来たらなんか騒いでる声が聞こえて。」
一輝「…ごめん。心配かけて。」
俊「いや、俺はいいけどさ…。」
ショーの会場に着いた。申し訳ないと思いながら、他の客の前を通って元の席につく。小声で会話する。
雅也「おい、何してたんだよ!とっくにショー始まってんぞ!」
一輝「ごめん、ちょっと。」
康太「もう、席空いてるのに友達来るからごめんなさいって言うの肩身狭かったよ〜。」
聞きたいことはあっただろうけど、とりあえずこのショーを見ようってことで、自然と会話をやめた。
〜ショー終了後〜
雅也「何であんな遅かったんだよ。」
一輝「いや、ちょっと他の客に絡まれて。」
康太「絡まれた〜?何したの〜。」
一輝「ちょっとぶつかって…。」
雅也「そんなことでか?なんだよそいつ、気短けえな。」
一輝「ああ…。あ、席のことはごめんな。」
康太「まあ、特に問題ないなら良かったよ〜…。」
とりあえずは大丈夫そうだ。女のこともノンケのこともバレてないし、男と揉めたことしか伝わってない。この3人以外にはそれすら知られてないはずだ。
このまま他の生徒も先生も含めて学校にバレないことを祈るだけだな。誰も園側に通報とかしてないことを祈ろう。ちょっとまだ心がザワついてるけど、旅行はまだまだ続くんだ。切り替えないと。