4 話せない想い
大輔「はじめまして、一輝くん。竜一さんとお付き合いさせてもらってる大輔です。よろしくね。」
一輝「あ…はい…。」
まともな会話も出来ないまま、俺はたまらず自分の部屋に逃げ込んでしまった。
なんでだよ、なんでだよ!母さんと結婚してたじゃん!俺を産んでくれたじゃん!なんで当たり前のように男を好きになってんだよ!
こんな態度、大輔さんに失礼なのは分かってる。でも、無理だ。こんなの、受け入れられるはずがない。父さんまで…。
大輔「あれ、なんか嫌われてるのかな…。」
一輝の父「おかしいな…今まで大輔の話 したことあったけど、そんな嫌そうじゃなかったのにな…。」
大輔「まあ、まだ初めてだもんね。ちょっとずつ関係作っていかないと。」
俺はベッドに寝転んだ。頭の中がごちゃごちゃして苦しい。どうしたらいいんだ。考えようとしても何も考えられない。すると、父さんが部屋の前に来た。
一輝の父「おーい、一輝、どうした?」
上手く返事が出来なかった。
一輝の父「入るぞー。なんだ、大丈夫か?」
一輝「…ああ、いや別に大丈夫。」
一輝の父「初めて会うから、まあいろいろ思うこともあるんだろ。でも大輔はホントにいい奴だから、ゆっくり距離を縮めていってほしい。」
…そういうことじゃないんだ。
大輔さんがいい人なのは分かってる。ただ、男なのが…男同士っていうのが…。
でも、そんなこと言えない。大丈夫と言うしかなかった。俺がおかしいんだ。合わせるしかない。
大輔さんとは帰り際に少しだけ喋って、その日は終わった。
その日の寝る前、俺は少し考えた。父さんは昨日よりもっと前から大輔さん"に当たる"人と会っていた。今までは女性だったはずだ。それが、昨日突然大輔さんにすり替わったのか。それまでに築いた関係も引き継いだままで。
翌朝。目が覚めたとき、また違和感を感じれば元の世界に戻っているかもしれないと期待していたが、昨日のような違和感は感じなかった。祈りながら見たテレビは昨日と同様、男性俳優同士の結婚のニュースを報じていた。
一輝の父「おはよう。今日からもう授業だろ?初めが肝心だからな。頑張れよ。」
一輝「おはよう。分かってるよ。」
そう、今日から本格的に高校が始まる。異性愛と同性愛が入れ替わっただけなのに、楽しみだったのがすごく不安になった。誠慈がバラしてないことをとにかく祈る。せめてそれだけは…。