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vol.2 インタビュー : 白井 桜子
Explore Kyoto vol.2
白井桜子 | Shirai Sakurako
2002年 兵庫県出身
2022年 バンタン専門学校ファッションデザインコース 卒業
2024年 京都芸術大学 芸術学部 美術工芸学科油絵コース 卒業
Q
これまでの作品について教えてください。
A
絵を描きたいと思うことがあまりなくて、自分のやりたいことをずっとやっていました。
共通しているのは素材で遊ぶことで、一つのあるものに対してアプローチをかけて新しいものに変化させるということをしたい思いがずっとあります。2年生のときから素材に興味があり、ずっと実験を行っていました。3〜4年生のときに大阪でファッションの専門学校とダブルスクールをして、元々通う前からものに熱を当てて変化させることはやっていましたが「布でもできるかも」というきっかけから素材が変化していきました。今回の卒制も布で制作しています。コンセプトから始まる作品を私は作れなくて、自分が今まで無意識に興味というか惹かれていたものを引っ張り出す感じでコンセプトはつくりあげています。毎回ちょっとずつは変わっていますが素は一緒というか、そこだけ抽出して作品を作るというのはあるかもしれないです。
Q
どんなことがいまの作品のベースとなっていますか?
A
ずっと自分は自分の痕跡を追体験するような作品を作っていて、痕跡は「身体的痕跡」と「精神的痕跡」に二分されるのですが、「精神的痕跡」が自分は母と祖母の3人で暮らしていて、母は仕事で出ているため祖母と一緒にいる時間が一番長く、祖母は潔癖症や完璧主義を持ち合わせていて強く影響を受けました。「身体的痕跡」ですが、私は「ケロイド体質」を昔から持っていて、 例えば傷受けたときに瘡蓋になったり、色が残ることはあると思いますが、私の場合は傷がジェルっぽくなります。自分の身体でありながら異素材の組み合わせというかパッチワークのような感覚を昔から感じていて、そこから自己と他者との境界線や連鎖性みたいなのを探るような制作をしたいと思い、それが一番軸にあるコンセプトだと思っています。シワを当てたりアクリルが沸騰してボコボコとなったり、布が熱を当てるとシュワシュワになったりと熱を加えることで一個入った線からシワが連鎖していく、自分がコントロールできないもので連鎖的なものを表せたらと思っています。
Q
「作る」ことと「精神的痕跡」の部分はどのように繋がっていますか?
A
例えばお母さんと息子の関係性は難しいけど、友達の話で面白いなと思ったのが、列に並ぶお母さんと息子の話でそのお母さんはすごい喧嘩口調で電話をしていて、息子が注文を聞いても「うっさい黙ってて」みたいな反応で。でも電話を切ると今度は腕を組んで親しげに「なんとかくーん」と呼んでいて、息子に対して、彼氏的な感覚を持つ人がいるみたいな。そこが繋がるかはわからないけど、例えば三兄弟の真ん中はわがままになりやすいとか、家族のこうなりやすい形ってあると思います。私は大学に入って、それまで当たり前だったことが覆ってすごい衝撃を受けました。「こうあるべき」姿が自分も白井家の軸で二十何年間もかけて刷り込まれてきたのだろうなって。ただひたすら絞り袋に絵の具を入れて熱を与える、そうすると丸く置いた絵の具が膨張して中から絵の具が弾けて連なり出る、単純作業で素材を連続させることでそういう連鎖性を表せていたらいいなと思います。
Q
作品を制作していくなかでのアートの魅力はなんですか?
A
作る側としては自分や他の人を分析できることかな。アートをしなければ自分について理解することもないままだったので。見る側としてはパワーのある作品を見るとエネルギーが湧くのを感じます。
Q
どんなところで自分を分析できていると思いますか?
A
作品の実験をするなかで、なぜ私はこれが良いと思うのか、良くないと思うのかはずっと考えていて、例えばそのときベストを尽くせたとしてもそれを言葉にするときが自分の一番深いところを探らないといけないし、やっぱ感覚的な部分もあるからしんどいと思います。作品を作っているときも作ったものを言葉にするときも、そこが一番自分のことを考えているんじゃないかな。
Q
そのしんどさは言葉で表せないのに言葉にしなきゃいけないしんどさか、それとも自分をみなきゃいけない、はっきりさせなきゃいけないしんどさかどちらのことでしょうか?
どちらも知らないといけないから考えるけど、すごく感覚的なのもあるから言葉にできないどちらのジレンマもあります。
Q
言葉にとらわれることや、自分が良いと思うものを選べなくなることはありますか?
A
言葉に縛りつけられるというよりかは自分の「こうでなくてはいけない」の気持ちに縛り付けられていることが多いかな。立体は自由にできるけど平面は四角の規格のなかにおさめるルールから抜け出すのがすごく難しいです。
Q
メディウムの選び方とかにも自分が縛られていると感じたりとかはありますか?
A
3〜4年はアクリルに縛られすぎていたとは思います。2年生のときにとある先生の授業を受けてからアクリルを使い始めましたが、その先生にも縛られている気がして、メディウムの幅はもう少し広げたいと思っています。一度樹脂のお店に行ったら卒展にそのお店の社長が見にきてくれてやりたいことを話すと、「じゃあこういうのがあるよ」と提案をしてくれました。あと2年はそうやって広げていきたいと思います。
Q
作ることや絵を描くことは子供の頃からずっとしてこられてきたのですか?
A
おままごと的な感じですが、ノートを開いて女の子を描いたり『つくってあそぼ』をみて新聞紙を切ったりしていました。小学生のときは油絵の具を習っていて、その理由で大学も決めました。
Q
油画だと物質にアプローチするだけではなく、四角におさめなければいけないという面が大きいですが、どんなふうにバランスを取っていますか。こんなふうにしたら四角におさめてもよくなった、もしくは捨てて今度は立体とかを実はやってみたかったというのはありますか?
A
元々アクリルで平面をやっていましたが、先生にも「おさめようとしてる」と抽象的なことを言われて布を始めて立体に逃げて、今回また平面に戻ってきたときに、アクリルは熱を加えると膨らんで強制的にキャンバスの四角の形じゃなくなる、規格の形からどう足掻いたら抜け出せるかというのはずっと考えています。
Q
作品を作るなかでのしんどさについて言葉にするのが必要だとおっしゃっていましたが、これまで作品を展示する経験はされてきましたか?
A
2、3回とかかな。学内なら3年生展と今回の卒展。大阪で大阪芸術大学の子と2人展をしてそれぐらい。ずっと実験で作品を完成させることをやってこなかったから、なかなかその機会がななくて。これを完成と言っていいのか。人が顔とか鼻とか認識できるもの以外は言葉が必要で、どう人に伝えるのかというのが重要だと思うからこそ完成ですと言えない。
Q
展示をするときはどんな気持ちを抱いたりしますか?
A
楽しみではあります。作品を見た人がどんな表情で第一声に何をいうか。もちろん不安はあるけど、一度見てわあって言ってくれたら嬉しい。作品が持つエネルギーは絶対重要で、パッとみてエネルギーを感じる作品にはしたいと思っている。全員が自分の作品を好きなんてありえないから誰か好きと言ってくれる人がいたらいいなぐらいの気持ち。
Q
作るプロセスと展示することは分かれているというか
A
ちゃんと一緒に考えないけど割と作ったら満足しちゃう、グループ展となると他の人のスペースのことも色々考えないといけないから分けられないとは思いますが。
Q
今回、外での野外展示をするにあたってどんなふうな展示にしたいとかはありますか。
A
一部屋外の展示はあっても全員屋外ってことはこれから先ないと思うから、あまり想像ができてないけど屋外でしかできないことをできたらいいなと思います。自分の場合は光が重要な作品だから、今回の卒展でも本当は自然光のもとでやりたかったけど周りとの兼ね合いでできなかったから上手に使えたらいいなとは思う。
Q
今後もアーティスト活動は続けられていきますか?
A
飽きたらやめる。やりたくないとかじゃなくて、私は飽き性だから途中でいいやとなってしまうのは自分でわかるし、そこで中途半端にやっても仕方ないから飽きたらやめると決めています。何に対しても色々ハマりやすくて、でも好きなのは変わらないから戻ってくる、戻るまでは何をしているかわかりません。
Q
研究テーマとかって決まっていたりしますか。
A
立体は結構満足したけどやっていきたい気持ちがあります。平面はこのまま不完全燃焼のまま飽きたらどうしよって思っているしやり切ったって思えるまでやりたい。今やっていることの深掘りを2年間していこうと思っています。
Q
アーティストとしてExplore Kyoto vol.2では扱われますが、自覚はありますか?
A
誘っていただいたからにはちゃんと自分を持ってやらないといけないとは思っています。自分の作品を応援して買ってくださる人がいるからその都度自覚を持とうとは思う。
Q
今後どんなアーティストになっていきたいとかってありますか?
A
すごく大きなことを言うとアートだけじゃなく何かファッションと繋げられたりするようなアーティストにはなれたらいいなと思うし憧れます。インスタからコラボしましょとかいわれたらいいな。
Q
では、アーティストは関係なく白井さんとして今後どんなふうに生きていきたいかはありますか?
A
「清々しく生きる」アートをしながら清々しく生きるなんて多分無理だけど作品だけでもせめて、清々しく晴れやかに、かわいいみたいなことを言ってくれたらいいな。見てくれた人がこれ好きみたいな、テーマは「清々しく生きる」です。
インタビュアー : 中村 心音