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vol.2 インタビュー : 成岡 弘騎

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<Profile>
成岡 弘騎 | Naruoka Hiroki
2003年 静岡県出身
2023年 京都芸術大学 芸術学部 美術工芸学科 油画コース 3年次 在籍

Q
どのような作品を制作していますか?

A
灰かぶりで、古い雰囲気の絵の作品を、卒展という目標に向かって固めていこうということを、最近決めて進んでいっています。これまでは色々なことを試してみようというかたちで、具象的なこともやっていたし抽象的なこともやっていたんです。けど、あまり目の前のモチーフを描くっていうよりかは、空間や空気感やその場の雰囲気みたいなところに魅力を感じていて、「もの」そのものより、その周りを取り囲む「空気感」に着眼して制作をしています。高校の時くらいから「空気感」に良いなとは思いつつ、いろいろ試して、今また戻ってきて描いています。抽象的なものでも、何かしらの原型はあるんですよ。そのものの一部分を抽出して、その雰囲気を描くっていう描き方をしています。


Q
作品の方向性を固めたきっかけはなんですか?

A
作品で墨を使ってみようっていう時があって、なぜ墨を使っていたかっていうと、小さい頃書道をしていたので、馴染みがある素材だっていうのと、強い色を使っている時に色に振り回されてしまう感じがして、一回色を切ってしまう、抑えてみようと思って、白黒の世界でやってみようと思いました。白黒の世界を作るにはどういうのが良いかなって思った時に、墨で描いてみようかなっていうので、山水とか水墨っぽい雰囲気を書いていたんですけど、水墨の雰囲気を良いなとは思いつつも、長い間油絵に触れていたこともあり、自分の手に馴染まないなと思って、白黒とは言わずとも、色味をおさめた、範囲を狭めた中で出てくる色や雰囲気をうまく表現できないかなと思い、油絵で、今の雰囲気の絵を描いています。


Q
アートに関わる魅力を教えてください。

A
個人制作では公表する機会を持ってきてないので、鑑賞者と関わるというタイミングがあまりなかったんです。けど、プロジェクトでは自分たちが作ったものを見る人たちの感動や感情を直で感じることができる。そうすると「アートの力は偉大、、」っていうとすごい薄っぺらいんですけど、アートを通して今生きている世の中に何ができるのかとか、人の心を動かすことや言葉で言い表せない言語としてのアートという視点を、プロジェクトを通して学んで、そして自分の作品に立ち戻った時に、自分が作っている作品でも数人でも良いから、心を動かしてくれる人がいるとするなら、魅力的だし、直に感じられる経験があれば良いなと思うんですけど。鑑賞者の対話が魅力的なところなのかなって。


Q
描き続けることの背景にあるアートの魅力はなんですか。

A
絵画教室には小2から通っていて、小5から油絵を始めました。
単純に作るとか描くとかの行動そのものが好きっていうのもあるし。

Q
どういう時に描きたいと思いますか。

A
夕焼けとか見た時に良いなと思うんですけど、描きたいっていうよりかはその場面で良かったりするじゃないですか。というよりかは、日常のふとした瞬間にあるような一場面や一感情に出会った時に、ちょっといいなって思った魅力をひきだしたい興味を惹かれた時に描きたいと思ったりします。その場の湿度、風、日光、感情をメモ書きをとって、思い出しながら描いたりします。

Q
ー絵を描くことのルーツはどのようなところにあるのでしょうか。

A
絵自体は幼稚園の頃から描いていて、描くのが好きだった。ゲームマスターズっていうカードゲームを兄が持っていて、そこに描かれている絵の細かさがかっこいいなと思って、それを買ってもらって絵にかいてっていうところがいちばんはじめですね。描くっていうアクション自体が好きなのかな。夢中になって描くことが増えて、ずっと描いてたら小二の頃に友達に誘われて絵画教室に行きはじめた。

Q
絵のモチーフとして「空間」を見ることのルーツはどこにあるのでしょうか?

A
地元が静岡なんですけど、父親によく富士山の見えるいい景色の場所に昔から連れて行ってもらって、富士山や花が綺麗な場所に行ったりとかした時に、引きの視点でみた全体の景色が心に残っていて、そういう影響が積み重なっていて、全体を見るっていうことにつながって行っているのかなと。何事においても、細かいところよりかは全体を見るということを大事にしているふしは自分の中にあるかな。一歩引く視点で捉えることが多いかなって自分では思っています。


Q
これまでの展示経験について教えてください。

A直近だと3回生展。高校の頃は学校単位の展示や、全国高校文化祭の静岡県の県展ぐらいまでは受賞して展示していたり、小中学校のころ通っていた絵画教室のグループ展を毎年していたりとか。大学に入ってからはプロジェクトをたくさんしていたので、個人で作品を出すというのはしてこなかったです。


Q
展示をするときに期待していることや心構えはありますか?

A
見てくれているだけで割とよかったり。作品と鑑賞者は対話しているわけで、そういうアクションをしてくれているだけでハッと思う時もあるし、自分がいないで展示をする状況の時は、作品が独立、1人ででも成り立っている作品がいて、自分が知らないところだけど鑑賞者との対話が生まれるっていうのは、作ってよかったなという感覚があります。



Q
先ほど、描く行動そのものが好きだとおっしゃられていましたが、「描いたものを展示をすること」は成岡さんにとってどのようなことなのでしょうか。

A
描いて終わりだと、自分の中だけで終わってしまうっていうのがあって、勿体ないと思う。他者との関わりを混ぜていって、今後の制作にもつながるし鑑賞者と作品との対話が生まれ、影響しあえるということがあるので、発信することは大切なことだとは思います。


Q
exprole kyoto vol2で野外展示をするにあたっておもうことはありますか?

A
展示によって、作品の見え方が全然変わっちゃうなっていうことを思っていて、今回の展示は外展示ということもあり、どう見せたらいいのか、難しさを感じています。ホワイトボックスの時は、光源を固定してライティングを調整できるけど、今回は自然光なので、朝から夕方前に見ると考えると、太陽の動きで見え方が変わってくるから。時間帯によって変わる見え方の違いも一つの楽しみとして見せれるかなと思いますし、外の空気に触れながら見る作品の魅力、環境によって変わる見え方を楽しめるような展示にしたいです。周囲の環境を巻き込んで展示できるのは面白いなとは思います。木漏れ日など、光源に対しての影や、環境音や、触覚で言ったら風とか、五感にうったえかけられる展示ができたらいいなと思っています。


Q
今後他の表現方法で制作をする予定やしてみたいことはありますか?

A
インスタレーションは面白そうだなと思います。だけど描くのが好きなので、描いたものを使ったインスタレーションも考えつつも、平面かっこいいなと思う自分もいるので。やっぱり描きたいっていう欲求があるので。機会があればインスタレーションもやってみたいです。


Q
アーティストとして目指していることはありますか?

A
何をアーティストと捉えるのかというのはあると思うんですけど、何かを作るっていうことはずっとやっていきたいなということは思っていて。それが今は油彩平面だけど、就職をして別のものになっていくかもしれないし、またそこから変わっていくこともあると思うし。アーティストっていう括りが、今は広がってきていると思うんです。アーティストっていう肩書がなくても作り方を作っている人もいるし、キュレーションをしている人たちだってアーティストって言ってもいいのかなとも思うし、大枠で捉えたら広がってきていると思う。作るっていうことは続けていきつつ、なんのために作るんだろうってなった時に、自己満足の気持ちはありつつも、鑑賞者がいて、周りを巻き込んでいって影響し合うことによって生まれてくる変化や関わり合いが大事だとも思うので。相手を見据える、というと少し違うんですが。自己満足は大事で、自己満足の延長線上に他者の感動は直結してるのかなと思うので、その自己満足と他者の距離感のバランスをとりながら、いろんな「作る」ということは、やっていきたいなと思っています。

インタビュアー : 中村 心音

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