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副学長がキャンパスに開く『ノンアルバー』での出会い

ものごとの起こりや始まり、起源を表す『濫觴(らんしょう)』。
この馴染みが薄い言葉を店名に冠し、ノンアルコールドリンクを振る舞うイベントが、5月下旬に東京学芸大学で催されました。
ノンアルバーが開かれるのは4月に続き今回で2回目。
当日は前日の暑さから一転し、3月下旬並みの気温で小雨も降りしきるなか、その様子を見に正門を入って右側にある建物へとお邪魔しました。

▶仕掛け人はなんと副学長

ノンアルバー『濫觴』が開店したのは、大学運営に関わる部署や学長室などが集まっている「本部棟」。学生からは非常に馴染みが薄い建物で、その存在を知らずに卒業していく人もいるとのこと。
しかし店内にはすでに学生の姿もありました。そしてカウンターの奥では、シェーカーを持ったバーテンダーが微笑んでいます。
バーに訪れた学生からは、「誰?誰?」と思われていたこの方が、仕掛け人であるマッチャン。
東京学芸大学の副学長、松田恵示先生です。

▶ノンアルバーの意義

マッチャンの「やりたい」から始まったノンアルバー。
しかし、初回の開催直前に決まった店名『濫觴』や、新聞にも書かれていた社会環境の変化なども考え、マッチャンにはもっともっと深い考えがあってやりたかったのでは?と思い、お話を伺ってみました。

学校も職場にも仲間が戻ってきましたが、学び方も働き方もコロナ前とは違っています。デジタル技術を活用してリモートとリアルを融合したハイブリッド型の学びや、職場では対面ならではの濃いコミュニケーションを重視した空間を作ろうとしています。学校も職場も新しい雰囲気、環境を整備して、生まれ変わりつつあります。

(2023/05/08 日本経済新聞から一部引用)

ー 今回で2回目と伺いました。バーを開いた感想はいかがですか?

『場』という言葉をよく使いますが、まさに『バー』は『場』ですね(笑)。

SpaceではなくPlace。『Place』として人間と人間の交わりや文化の立ち上がる空気感をとても強く感じます。『クロスロード』とでも言うんでしょうか。
学生とか、教員とか職員、外部の方とか、今日も色々な出会いや語りが生まれてましたね。
仮にあの場で、ジュースのサービスや簡易的なカフェをやっても、ノンアルコールバーに比べて、出会いの異質性が低いと思います。

カクテルという語れる飲み物と、実際に飲んで美味しいと言える体験、大学という場所や役職、人間(社会)関係から意外性が強く沸き起こってくる非日常感覚など、考えることが多くありました。

ー ノンアルバー『濫觴』の意義を教えてください。

「日々の生活の中でのちょっとイカした遊びの時間」かと。ノンアルコールカクテルって、昼間でも夜でも、美味しい、語れる、おしゃれと3拍子揃っていて、非日常を象徴する「遊び道具」にバッチリだと思うんです。
イギリス発の「モクテル」という言葉もありますが、これには「似せたもの」という語源があるようなので、私はあまり使いたくないですね(笑)。

またノンアルバーは「どう作ると美味しい?」という遊びにもすぐなるし、Explaygroundを一緒にやっている孫さんいわく「どう作ると最もまずい?」っていう遊びもできたりする(笑)。
知らないもの同士が、日頃の肩書きなんか関係なくて、ノンアルコールを巡って夢中に話ができる場。そうすると、話がいろいろに広がったりする時もあって、思わず「へえっー」「それならば!」とか、ゼロイチで物事が生まれる感じがガンガンなんです。
物事の起こり、始まりのことを孔子の言葉で「濫觴(らんしょう)」と言うそうです。
『Explayground Bar / RANSYOU』。これから色々と仕掛けていきます!

ー ありがとうございました。次回以降の予定があれば教えてください。

これまではプロトタイピングという意味合いが強かったので、ほぼ事前告知をせずに開催しました。直前にTwitterへ投稿したのと会場の前を通る方に声掛けしたくらいです。
それでも人が人を呼び、多くの方に集まって頂けたのは素直に感動しました。
次回はもう少し事前告知しようと思うのですが、一方で人が集まりすぎると密なコミュニケーションを取りにくくもなり、、、悩ましいです。
また初回のブログをみた企業の方から「うちでも是非開催してほしい!」と依頼を頂きました。
このノンアルバーを通じて、「遊びから生まれる学び」や「新しい学びのプロトタイピング」に興味を持って頂けたり、賛同して頂ける仲間が増えるのはめちゃくちゃうれしいですね。

▶実際、店内では

ふらっと訪れた学長から「私は誰だかわかる?」と聞かれ、「二度ほどお会いしたことがあります。入学式と先日の記者会見の配信です!」と答える学生。「それって『会った』に入らないだろー」と学長。

キャリア支援課の職員に、自身が教員の道を選択しなかった理由を忖度なしに話す大学院生。
ノンアルカクテルをキッカケに始まる会話は、お互いに殻を被らないフランクな雰囲気のなか、深まっていきました。

今回、振る舞われたノンアルカクテルは、「ヴァージンモヒート」「サマーデイライト」「シャーリーテンプル」そして「マスターの気分」の4種類。
マスター(副学長)いわく、ヴァージンモヒートが一番人気とのこと。ちなみにヴァージンモヒートに使われているミントは、キャンパス内で協生農法を実践しているエディブルヤードというラボ(クラブ)から提供を受けたものだそう。

店内には自前で作れるコーナーも設置されていましたが、日常会話をする機会が滅多にないマスター(副学長)との会話を楽しめる意外性もあり、自作される方はほとんど見受けられませんでした。
そして大学という空間のなかにできた非日常のこの場が、店名に冠した『濫觴』が示すよう、人と人とのコミュニケーションが物事の起こりや始まりになる予感をヒシヒシと感じました。
また、それにはマスター(副学長)言葉通り、ノンアルコールカクテルが醸し出している雰囲気が不可欠であることはほぼ間違えがないでしょう。

次回の開催も楽しみにしています!

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