メリーポピンズ
メリーポピンズが大好きだった。毎日とおり過ぎているビルの隙間のなんの変哲もない小さな路地が実は魔法の国への入り口だったような、いつも目にしている普通の光景の裏には本当は違う世界が存在してるような、ハリポタのワクワク感を最初にくれたのはメリーポピンズだったと思う。
公園にいつもいる煙突掃除のおじさんはそのまま絵の中に連れて行ってくれるし、いつも街角で鳩の餌をうってるおばさんはメリーポピンズと知り合いで、いつも見かけて挨拶する近所の人がさりげなく不思議、、、みたいなメリーポピンズの世界。いま考えるとハリポタのWizardとMuggleみたいくっきりとわかれないのもいいなあ。全巻読んだはずなのに今はあまり覚えていないけれどメリーポピンズの世界が本当に好きだった。
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リスボンの朝6時半。トフを抱いてトラム沿いの狭い急な坂を降りて、そして大通りに沿った歩道に出たところでトフを地面におろして散歩が始まる。歩道の上にはシャッターを下ろしたキオスクやシャッターが開いていてもまだ真っ暗なキオスクがポツポツと並んでいる。そのキヲスクの一つの前に足の不自由な小太りのおばあさんが杖を横に立てかけてまるでキオスクを守るように座っている。
毎日座っている。店番のおばあさんなのかなあ。私とトフがボンディアといって通り過ぎようとすると、ちっちっと舌を鳴らして(舌打ちではない)トフを呼びトフが近づいていくとなにか言いながら(たぶんいい子とか可愛いだろうと思うが聞き取れない、、、)一生懸命トフを撫でてくれる。
そのあと私とトフはチャオといってテージョ川の方にむかって歩く。ほんの1分ぐらいのことだけど日課になった。
もしかするとこのおばあさんはメリーポピンズの知り合いではないかと思ってみたりする。
私は今でもメリーポピンズが大好きだな。