緑色の風が吹き抜ける森で...己の生き様
仕事柄、特に事業承継後(顧問税理士が監査役や役員になることは法的に問題があるため)は事業会社の役員や社団・財団法人の理事や幹事などを依頼されることが増え現在十数社から拝命しています。
単に名前をお貸ししているものもありますが毎月の役員会に参加させていただいているもの...さらに事業活動に積極的に参加させていただいているもの...そのかかわり方は様々です。
このお盆休みの一週間を充てて幹事を拝命させていただいている「一般社団法人北杜山守隊」の活動に参加させていただきました。
北杜山守隊は「地元の有志や山小屋に頼ってきた登山道整備を、受益者である地元、事業者(山小屋、ガイド、登山関係店等々)、登山者の共同の負担に変えていく受け皿となる」ことをミッションにしています。
そんな活動の中で感じたことをまとめてみます。
〇 理念とお金の関係性?
社団法人の事業計画会議でまず最初に全員で確認するのがこの法人の「設立の目的(ミッション)」と「長期目標(ビジョン)」です。
その上で現状分析と具体的に実現したいことや手法や戦術、行動計画について確認し意見交換が行われます。
その時にハッと思いました...
一般の事業会社でミッション、ビジョンの再共有から会議をスタートさせる会社がどれくらいあるのか?と。
さらにはミッションやビジョンが明確に社内外に共有されている会社がどれくらいあるのか?と。
会議後の雑談の中で理事の一人トレイル研究家のKさんにその感想を話すと「私たち社団は売上や利益の最大化を目的にしていません。また皆が目的のためにほぼボランティアで参加しています。つまり儲けや給料というお金が介在しないので、共有して皆を繋ぐものは理念以外にないんです」と。
一般の事業会社に求められながらなかなか実現できない「理念経営」が社団法人では当たり前なのです。
組織にはすべて「理念(目的)」が必要ですが理念の力はその関係性の中に介在する「お金」によって曖昧に後回しになっていくものだということが分かりました...
当たり前のことかもしれませんがある意味で経営の一方の原点がここにありました。
〇 経営は生き様なり
北杜山守隊では登山道整備の方法として自然にやさしくサステナブルな「近自然工法」を採用しその分野では先駆者の大雪山山守隊のОさんに指導を受けています。
そのОさんからこんなお話をお聞きしました。
「たくさんの方に指導しましたがほとんどの方が近自然工法を『手法・技術』として学びます。丸太の固定方法や水切りの作り方、階段の角度や丸太の並べ方等々を近自然工法として学んで帰るんです」
「でもそれが違うんです、近自然工法は考え方なんです。その山や森の特性、自然の力、利用する人たちの行動...それを注意深く受け止めてその中から最適なやり方を見つけるのが近自然工法なんです」
「自分はこう思うではなくて...疲れたお年寄りの登山者ならどう歩きたいだろう?元気なトレランの若者なら?ハイキングに来た子供なら?...そして、雨水はどう流れたい?草はどう育ってどう花を咲かせたい?樹はどう根を張りたいんだろう?...そういう自然の声や他人の気持ちを受け止めてベストな方法を探っていくのが近自然工法なんです」と。
爽やかな緑色の風が吹き抜ける森の中でОさんのお話を聞きながら思わず胸が熱くなりました。
Оさんにとって近自然工法とは北海道大雪山という大自然の中で見つけた自分自身の「生き方」なんだろうな~と思いました。
改めて「経営とは社長の生き様である」という言葉が心に突き刺さる森の一日でした。感謝。