色の流行は誰が決める?
毎年、流行の「色」は誰が決めていますか?
毎年流行する「色」は、色彩に関する専門機関や業界団体によって提案されることが多いです。その中でも特に影響力が大きいのが、アメリカに本社を置く色彩研究所「パントン」(Pantone Inc.)です。パントンは毎年、「カラー・オブ・ザ・イヤー」(Color of the Year)を発表し、ファッション、インテリア、グラフィックデザインなど多岐にわたる分野に大きな影響を与えます。
パントンは色彩のトレンドを分析し、その年の社会的ムードや文化的傾向を反映した色を選出します。選出プロセスには、世界各地の色彩トレンドに影響を与える映画、アート、ファッション、デザイン産業の展示会、新しい技術、素材、テクスチャーなど、さまざまな要素が考慮されます。
また、パントン以外にも、各国のファッション協会やデザイン協会、色彩を研究する他の機関が独自の流行色を発表することもありますが、パントンのカラー・オブ・ザ・イヤーは特に広く認知され、業界に大きな影響を与える傾向にあります。
Color of the yearの色は、世情を反映してえいるのでしょうか? それとも世情を作り出しているのでしょうか?
パントンの「カラー・オブ・ザ・イヤー」は、世情を反映している側面と、世情を作り出す側面の両方を持っています。
世情を反映している側面
パントンはカラー・オブ・ザ・イヤーを選出する際、その年の社会的、経済的、文化的トレンドを広範囲にわたって分析します。このプロセスでは、世界的な出来事、人々の感情や態度の変化、新しいライフスタイルの傾向など、その時代の空気感を反映した色を選ぶことを目指しています。したがって、選ばれる色はその年の世界的なムードや社会の動向を表す鏡のような役割を果たすことがあります。
世情を作り出す側面
一方で、カラー・オブ・ザ・イヤーの発表は、ファッション、インテリア、デザインなどの業界に大きな影響を及ぼします。この色が発表されると、多くのブランドやデザイナーがそれを取り入れた商品やコレクションを発表し、消費者もその色を求めるようになります。このように、パントンが選出する色はトレンドを形成し、それによって消費者の色に対する好みや選択を形成することがあります。つまり、カラー・オブ・ザ・イヤーは、ある種の自己成就的な予言として機能し、その年のデザインや流行に方向性を与えることになります。
これらの側面から、パントンのカラー・オブ・ザ・イヤーは、既存の世情を捉えつつも、新たなトレンドを創造し、広める役割を担っていると言えます。この双方向性が、パントンのカラー・オブ・ザ・イヤーが業界に与える影響の大きさと持続性の理由の一つです。
ここ5年の色の傾向はありますか?
過去5年間の「カラー・オブ・ザ・イヤー」の傾向を見ると、社会情勢、技術の進化、環境への関心など、その時々の世界的な動向や人々の心情が反映されていることがわかります。例えば、自然環境への配慮や精神的な癒やしを求める動きが色選びに影響を与えている年もあります。しかし、具体的な色とその年ごとの意味を確認するためには、各年のパントンが発表した「カラー・オブ・ザ・イヤー」を確認する必要があります。
パントンはその年ごとに色の選定理由を公表しており、その背景には世界的な文化的傾向や社会的変化が考慮されています。たとえば、パンデミックの影響を受けた年には、人々が安心感や希望を求める傾向が反映された色が選ばれることがあります。
ここで具体的な過去5年間の「カラー・オブ・ザ・イヤー」を挙げるには、私の最新のデータアップデートが2023年12月までであるため、2024年の情報を含めることはできませんが、2019年から2023年までの色を例にとると以下のようになります(2023年の色については最新の情報を基にしています):
2019年: リビングコーラル (Living Coral) - 活気に満ち、柔軟性があり、暖かいウェルカムを象徴する色。
2020年: クラシックブルー (Classic Blue) - 落ち着きがあり、信頼感を与える色で、不確実な時代に安定感を求める心情を反映。
2021年: アルティメットグレイ (Ultimate Gray) と イルミネーティング (Illuminating) - 両方とも年の色として選ばれ、実用的で堅牢なグレーと明るく希望に満ちた黄色が、力強さとポジティブな考えを象徴。
2022年: ベリー ペリ (Very Peri) - 創造性と想像力を刺激する新しい青紫色。
2023年: ヴァイヴラントマゼンタ (Viva Magenta) - 勇気と実験精神を表現し、自然界とデジタル世界の境界を曖昧にする色。
これらの色からは、自然への回帰、安定と希望の求め、創造性とデジタル技術の融合など、時代のニーズや心理が反映されていることが伺えます。パントンが選ぶ「カラー・オブ・ザ・イヤー」は、ある意味でその年の世界の気分を反映していると言えますが、同時にこれらの色がデザインやファッション、アートなどの分野に採用されることで、その年のトレンドや世情を形作る側面もあります。
パントンの詳細な歴史等について教えて下さい。
パントン(Pantone Inc.)は、色彩の標準化と色彩コミュニケーションに関する権威ある企業で、グラフィックデザイン、ファッション、インテリアデザインなど、多岐にわたる産業でその色彩システムが利用されています。パントンの歴史やその影響力についての詳細は以下の通りです。
創設
パントンは1963年にアメリカ合衆国で創設されました。創設者はローレンス・ハーバートで、彼は印刷会社を買収し、色彩の識別、マッチング、通信を容易にするシステムを開発しました。
パントン・マッチング・システム (PMS)
ハーバートが開発したパントン・マッチング・システム(PMS)は、色彩を標準化し、世界中どこでも同じ色を再現できるようにするものでした。このシステムは、特に印刷業界で革命を起こし、デザイナーや印刷業者間の色彩に関するコミュニケーションを大幅に改善しました。
拡張と影響
パントンはその後、色彩関連の製品やサービスを拡充し、グラフィックデザインだけでなく、テキスタイル、プラスチック、建築、インテリアデザインなど、他の多くの分野にもその影響力を広げました。
カラー・オブ・ザ・イヤー
2000年から、パントンは毎年「カラー・オブ・ザ・イヤー」を選出し発表しています。この選出は、世界中の文化的傾向や社会的ムードを反映し、同時にその年のデザイントレンドに大きな影響を与えることが意図されています。
デジタル時代への対応
デジタル技術の進化に伴い、パントンはデジタルソリューションやオンラインツールも提供しています。これにより、デザイナーやクリエイターはより簡単に色彩を選択し、共有することができるようになりました。
現在
現在、パントンは色彩のトレンドセッティングとしての地位を確立しており、その発表する色やトレンドはファッションショー、製品開発、ブランドマーケティングなど、広範囲にわたる産業に影響を与えています。
パントンの色彩システムとトレンド予測は、色彩を重要視するあらゆる分野で広く受け入れられており、その方法論や選出される色彩は、世界中のデザインと文化に大きな影響を与え続けています。
Color of the yearに選ばれる色は「単色」でしょうか?
「カラー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれる色は、通常は単一の色(単色)であることが多いです。パントンが毎年選出するこの特別な色は、その年の文化的、社会的、経済的トレンドを反映し、デザイン業界全体に影響を与える色として発表されます。選ばれる色は、ファッション、インテリア、グラフィックデザインなど、幅広い分野においてトレンドセッティングの役割を果たします。
ただし、例外もあります。例えば、2021年には「アルティメット グレイ」(Ultimate Gray) と「イルミネイティング」(Illuminating) の2色が「カラー・オブ・ザ・イヤー」として選ばれました。このように、2色が選ばれることは珍しいですが、それぞれの色が持つ意味やメッセージが相互に補完し合い、その年の特定のテーマやムードをより強く表現するために選出されることがあります。
通常は1色が選出されるのが一般的ですが、パントンはその年の特定のメッセージやテーマを表現するのに最適な方法として、複数の色を選出することもあります。それにより、より豊かなストーリーを伝えることができる場合があります。
「透明」が選ばれる可能性はありますか?
「カラー・オブ・ザ・イヤー」として「透明」が選ばれる可能性については、パントンがこれまでに選出した色を考えると、あまり高くないと言えるでしょう。パントンの「カラー・オブ・ザ・イヤー」は通常、具体的な色彩を持つ色であり、それらの色はデザイン、ファッション、アートなど様々なクリエイティブな分野で使用されることを意図しています。
「透明」という概念は色彩というよりは、素材や質感に関連する属性であり、色彩を表現する際の具体的な色ではありません。そのため、パントンが色彩を選定する際の基準には当てはまりにくいです。
しかし、パントンは時に予想外の選択をすることもあり、デザインやアートの世界での「透明感」や「透明性」を象徴する色を選出する可能性はゼロではありません。たとえば、透明感を表す色や、透明を連想させるパステルカラーなどが選ばれることで、透明性の概念を色彩を通して表現することも考えられます。
それにもかかわらず、パントンが「カラー・オブ・ザ・イヤー」として「透明」そのものを選出することは、現在のところ非常に珍しいと考えられます。パントンの選出基準や過去の選定を見る限り、より具体的で表現力豊かな色彩が選ばれる傾向にあります。
では、過去、「蛍光色」が選ばれたことはありますか?
パントンが「カラー・オブ・ザ・イヤー」で明確な「蛍光色」を選出したことはありません。選ばれる色は通常、広く使われる色相や色調に基づいており、ファッション、インテリアデザイン、グラフィックデザインなど様々な分野で応用可能な色が選ばれます。蛍光色は非常に特徴的で強烈な色合いを持ち、特定の用途やデザインには適していますが、その使用範囲は限定されがちです。
パントンの「カラー・オブ・ザ・イヤー」は、その年の社会的、文化的、経済的トレンドを反映し、広い範囲の産業や市場で利用されうる色を選ぶことを目的としています。蛍光色は特定の文脈やトレンドにおいては注目を集めることがありますが、その鮮やかさと強烈な特性のため、年間を通じて様々な分野で広く受け入れられる「カラー・オブ・ザ・イヤー」としては選ばれにくいのが現状です。
それでも、パントンは毎年様々な色彩トレンドを発表しており、蛍光色が特定のコレクションやトレンドに含まれることはあります。しかし、これまでのところ「カラー・オブ・ザ・イヤー」に蛍光色が直接選ばれた例はありません。パントンの選定は常に変化し続けているため、将来的に蛍光色が選出される可能性が全くないわけではありませんが、過去の選定傾向からはあまり一般的ではないと言えるでしょう。
日本には、色を表す言葉が非常に多いですが、西洋において色を選ぶ場合は、定義された英語の色が選ばれるのでしょうか?
西洋における色の選択や表現にも、日本同様に多様な色彩表現が存在しますが、そのアプローチは異なる場合があります。西洋の色彩に関するアプローチは、しばしば色彩理論や定義された色彩システムに基づいています。これには、パントンのような色彩標準化システムや、ウェブデザインやデジタルメディアで一般的に使用されるRGB (Red, Green, Blue) やHEXコードなどが含まれます。
色彩システム
西洋では、色彩を一貫して表現しコミュニケーションするために、パントン・マッチング・システム(PMS)のような標準化された色彩システムが広く採用されています。これにより、異なるメディアや素材で一貫した色の使用が可能になります。
色の名称
西洋で使用される色の名称には基本的な色名(赤、青、緑など)から、より具体的な色名(スカイブルー、ミントグリーンなど)まで、様々なレベルの詳細さがあります。特定の色名は、しばしばその色が連想させる物や自然界に見られる特定の要素に由来します(例:サファイアブルー、レモンイエロー)。
色の表現の豊かさ
日本のように、西洋にも伝統的な色の名称や、特定の文化的、歴史的背景を持つ色の表現があります。例えば、ワインレッドやオリーブグリーンのような色名は、それぞれワインやオリーブの果実を連想させる色を表します。また、色の微妙な違いを表現するために、多くの修飾語が使われることもあります(例:ダスティピンク、ティールブルー)。
文化的な違い
日本の色彩表現は、四季の変化や自然現象への敏感さなど、日本特有の文化的要素が強く反映されています。一方で、西洋の色彩表現には、西洋の美術、歴史、文化的背景が反映されており、それぞれの文化圏で色を見る視点や価値観が異なります。
結論として、西洋においても色を選ぶ際には多様な色彩表現が存在しますが、その選択や表現方法は、色彩理論や標準化された色彩システムに大きく依存していることが多いです。ただし、文化的背景や伝統、自然環境への言及を通じて、豊かな色彩表現がなされています。
アップルのiPhoneなど、新機種発表の際に「色」が重視されますが、これらもcolor of the year等に影響されるのでしょうか?
製品の色選び、特にアップルのiPhoneのような高いブランド認知を持つ製品の場合、その色の選定には多くの要素が影響します。これには市場調査、ブランドイメージ、ターゲットオーディエンスの好み、そして現在のデザイントレンドなどが含まれます。
パントンの「カラー・オブ・ザ・イヤー」などのトレンド予測は、色の選定プロセスにおいて一つの要素として影響を与える可能性があります。これらのトレンド予測は、色の選択に関して広く認識され、尊重される情報源であり、ファッション、インテリアデザイン、製品デザインなど様々な分野で影響を与えます。そのため、アップルのような企業も新しいiPhoneなどの製品の色を選ぶ際に、現在のトレンドや消費者の好みを考慮する可能性があります。
しかし、大手企業では独自のブランドアイデンティティや製品のポジショニングも色選びの重要な要素です。また、製品開発サイクルや色の製造プロセスには時間がかかるため、それらの企業がトレンドに完全に依存するわけではなく、独自の市場調査や顧客分析に基づいた決定を行っていることが一般的です。
結局のところ、アップルのiPhoneのような製品の色選びは、現在のデザイントレンド、ブランドの戦略、製品の特性、市場の需要など、複数の要因のバランスを考慮して決定されます。パントンのようなトレンド予測は影響を与えるかもしれませんが、最終的な色の選定においてはただ一つの要素に過ぎません。
まあ、素材によって使える色も異なるでしょうし。
その通りです。素材によって利用可能な色や色の表現方法には大きな違いがあります。特に、製品デザインにおいては、使用される素材の種類が色の選択に重要な役割を果たします。以下に、素材によって色がどのように影響されるかの例をいくつか挙げます:
プラスチック
プラスチックは染色が比較的容易で、幅広い色が利用可能です。しかし、透明感を出したり、メタリックな光沢を加えるなど、特定の効果を出す場合は、特別な加工や素材の選択が必要になることがあります。
金属
金属製の製品は、アルマイト処理や塗装によって多様な色にすることができますが、金属本来の質感や光沢を生かした色選びが求められることが多いです。また、金属の種類によっても色の見え方が異なり、例えばアルミニウムは明るい色に仕上がりやすいですが、ステンレススチールはより深みのある色合いになります。
ガラス
ガラスは透明感を活かしたデザインが多く、色を加える場合も透明度を保ちつつ色付けをする必要があります。ガラスに色を付けるには、素材に着色剤を混ぜるか、表面に特殊なコーティングを施す方法があります。
テキスタイル
布やテキスタイルは、織りや編みの方法、使用される糸の種類、染色の技術によって、非常に多様な色や模様が表現できます。しかし、素材によっては色落ちしやすいものもあり、耐久性も考慮する必要があります。
セラミック
セラミックは釉薬(うわぐすり)を使って色を付けますが、焼成温度や時間によって色の出方が変わるため、予測が難しいことがあります。また、自然な風合いを生かした色使いが好まれることもあります。
このように、素材ごとに色を選ぶ際の考慮事項や制限が異なるため、製品デザインでは素材の特性を理解し、それに適した色選びを行うことが重要です。また、製品の機能性やブランドイメージ、ターゲット市場の好みなども色選びの重要な要素となります。