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ロンドン橋は落ちていない

ロンドン橋落ちたという童謡の起源はなんでしょう?

「ロンドン橋落ちた(London Bridge Is Falling Down)」は、イギリスに古くから伝わる童謡(ナーサリーライム)の一つですが、その正確な起源については諸説があり、はっきりとわかっていません。一般的には以下のような説が有名です。

  1. 古い橋の再建や修繕にまつわる歌
    ロンドン橋は歴史上、たびたび修復・再建が繰り返されてきました。そうした橋の老朽化や工事、あるいは橋が落ちることへの不安などが歌のモチーフになったと考えられています。

  2. ヴァイキングの襲来説
    伝承によれば、11世紀のはじめ(1014年頃)にノルウェー王となるオーラヴ2世(オラフ王)が、テムズ川を遡上してロンドン橋を破壊したという史実(または伝説)があります。この攻撃が歌の由来になった可能性がある、という説です。

  3. 人柱説(生贄説)
    中世ヨーロッパでは、橋などを建築する際に「人柱」を捧げると建物が長持ちするという迷信がありました。この説では、橋の強度を保つために“生贄”を橋の土台に埋めたという物語が歌詞の背景にある、といわれることがあります。ただし史実として確認されたわけではなく、あくまで伝承の一つです。

  4. 子どものわらべ歌としての発展
    18世紀中頃から文献に登場し始め、1744年に出版された「Tommy Thumb’s Pretty Song Book」にすでに類似の歌詞が確認されています。以来、イギリスのみならず欧米の子どもたちのあいだで遊び歌として広まりました。

これらの説はどれも確実な証拠があるわけではなく、民間伝承や口承文化の中で長い時間をかけて形成された童謡であるため、どの説が本当の“起源”であるかははっきり断定できません。しかし、さまざまな歴史的・文化的要素が複合的に絡み合って、今日の「ロンドン橋落ちた」という歌が生まれたと考えられています。

Tommy Thumb’s Pretty Song Bookの歌詞は、どのようなものでしたか?

「Tommy Thumb’s Pretty Song Book」は、イギリスの童謡(ナーサリーライム)を集めた、現存する最古級の出版物のひとつで、1744年に刊行されたとされています。この本に収録されているバージョンの「ロンドン橋落ちた(London Bridge Is Falling Down)」は、現在の歌詞とは多少異なり、当時の英語表記がそのまま残っています。

以下はその代表的な歌詞の一例です。なお、資料によっては微妙に異なる表記が伝わっている場合もありますが、ここでは一般に広く紹介されているバージョンを掲載します。


英語原文(1744年頃の表記例)

London Bridge is Broken down,
Dance o’er my Lady lee;
London Bridge is Broken down
With a Gay Lady.

How shall we build it up again?
Dance o’er my Lady lee;
How shall we build it up again?
With a Gay Lady.Build it up with stone so strong,
Dance o’er my Lady lee;
Huzza! ’twill last for ages long,
With a Gay Lady.

(※オリジナルの文献では表記ゆれや綴りなどが異なる可能性があります)


日本語仮訳

ロンドン橋は壊れたよ
私のご婦人の周りを踊ろう
ロンドン橋は壊れたよ
愛らしの淑女と共に

どうやってまた建て直そう?
私のご婦人の周りを踊ろう
どうやってまた建て直そう?
愛らしの淑女と共に丈夫な石を積み上げて作ろう
私のご婦人の周りを踊ろう
そうすれば永遠に持ちこたえるよ
愛らしの淑女と共に

このように、現在よく知られている「London Bridge Is Falling Down」の歌詞とは若干異なり、「Broken down」「With a Gay Lady」など、当時の言い回しや文体が使われているのがわかります。出版当時の幼児向け歌集としては非常に貴重であり、「Tommy Thumb’s Pretty Song Book」はイギリス童謡史をたどる上で重要な資料となっています。

Lady Leeとは?

「Dance o’er my Lady Lee(わたしのレディ・リーのまわりを踊ろう)」のように歌詞に登場する “Lady Lee” というフレーズは、現代の視点から見ると明確な人物や意味を特定しづらい「ナンセンス・フレーズ(nonsense phrase)」であると考えられています。ナーサリーライム(童謡)の古い歌詞には、意味よりも韻や音の響きを重視した言い回しがしばしば登場し、歌遊びの一部として取り入れられてきました。

考えられる解釈の例

  1. 単なる語呂合わせ・繰り返し表現
    当時の童謡によくある「遊び言葉」や「意味を持たせない音の反復」の一種という説です。歌のリズムや子どもたちの遊びやすさを重視した結果、生まれたフレーズと考えられます。

  2. 地名・人名や俗称の転化
    “Lee” はもともと「草地(lea)」や「風下(lee)」を意味する言葉でもあるため、そこから派生した表現の可能性も指摘されます。ただし、当時の文献を見ても、“Lady Lee” が特定の人物や地名を指すというはっきりした証拠はありません。

  3. 古い表現が残ったもの
    「~リー」や「~リー・ロー(lee-lou)」など、童謡には古英語・中英語由来の慣用句が名残として入っていることもあります。このように昔の言い回しや音がそのまま残り、後世まで歌い継がれた可能性があります。


まとめ

「Lady Lee」は、はっきりとした由来がわかっていない言葉ですが、古い童謡特有のナンセンス・フレーズ、あるいは民間伝承や俗語の名残と考えられています。実在する特定の人物に結びつけるはっきりした史料や証拠はなく、主に童謡のリズム・音遊びの一環として捉えられることが多いのが現状です。

日本語の童謡の歌詞は、なんでしょうか?

「London Bridge Is Falling Down」の日本語版として広く知られる童謡の歌詞はいくつかのバリエーションがありますが、代表的なものの一例をご紹介します。子どもたちが手をつないでアーチを作り、その下をくぐる遊びとして歌われることが多いです。


ロンドン橋落ちた(日本語歌詞・一例)

ロンドン橋 落ちた 落ちた 落ちた
ロンドン橋 落ちた さあ大変
どうする? こうする! こうしよう
どうする? こうする! こうしよう


遊び方の例

  1. 二人が向かい合わせに手をつないでアーチを作ります。

  2. 他の子どもたちは列になって、そのアーチの下を歌に合わせてくぐります。

  3. 歌の最後でアーチを下ろし、ちょうどアーチの下にいた子どもを「捕まえ」ます。

  4. 捕まった子どもは次のアーチ役になる、あるいは列の最後に回るなど、地域やグループによって遊び方が多少異なります。


日本語詞の内容自体は、英語版の歌詞の内容を厳密に訳したものというよりも、「橋が落ちる」というイメージと遊びの動作に合うようにアレンジ・意訳されたものです。そのため、英語のオリジナル歌詞とはだいぶ印象が異なりますが、日本では「ロンドン橋落ちた」というフレーズだけが親しまれて独自に定着したと考えられます。

最初の1行しか記憶がないですね。

「ロンドン橋落ちた」の日本語版はいくつかバリエーションがありますが、遊び歌として親しまれている、比較的長いものの例を挙げてみます。おそらく多くの方は「ロンドン橋 落ちた 落ちた 落ちた」という最初のフレーズだけを覚えていることが多いかと思いますが、こんな歌詞が続く場合もあります。


ロンドン橋 落ちた(日本語詞の一例)

ロンドン橋 落ちた 落ちた 落ちた
ロンドン橋 落ちた どうしよう?

銀の釘(くぎ) 打ちましょ 打ちましょ 打ちましょ
銀の釘 打ちましょ さあ どうだ?

金の釘 打ちましょ 打ちましょ 打ちましょ
金の釘 打ちましょ さあ どうだ?

ロンドン橋 もう一度 もう一度 もう一度
ロンドン橋 もう一度 立った


解説

  • 銀の釘・金の釘
    壊れた橋を直すにはどうしたらいいか、という英語歌詞の流れを日本語版で遊びやすくしたもの。「銀」「金」のほうが子どもたちの興味を引きやすいということもあり、わかりやすいモチーフに置き換えられています。

  • もう一度立った
    最後はめでたく橋が直った、という締めくくりです。

もちろんこれ以外にも、「こうする? どうする?」といった呼びかけだけが入る短いバージョンや、歌詞が途中で省略されるケースもあり、実際には地域や園・学校によって少しずつ異なる歌詞が歌われています。


手遊び・輪遊びとして

  • 二人が向かい合って両手を繋ぎ、高く上げて「橋」を作ります。

  • 他の子どもたちが列になり、その下をくぐりながら歌います。

  • 歌の区切りで橋(両手)を一気に下ろして「捕まえられた」子が次の橋役になる、などの遊びが定番です。


「ロンドン橋落ちた 落ちた 落ちた」の部分だけを強く覚えている人が多いのは、このフレーズ自体がとても印象的で、また遊び歌としてそこだけ繰り返して歌うことも多いためです。もしフルバージョンがピンとこない場合は、上記歌詞は「こんなバージョンもあるんだ」という参考程度にしていただければと思います。

自分の子供の頃、特に橋と言えば、ロンドン橋より金門橋でしたね。

確かに、アメリカ・サンフランシスコの金門橋(ゴールデンゲートブリッジ)は近代的で大スケールな橋なので、子どもたちには「ロンドン橋」よりも魅力的で印象深いかもしれませんね。オレンジ色の雄大な姿も特徴的ですし、絵本や映像作品でも登場する機会が多いですから、子どもにとっては「橋=金門橋」というイメージが強くなりやすいかもしれません。

ロンドン橋は歴史ある橋ですが、実物の見た目はわりとシンプルですし、日本では「ロンドン橋落ちた」の童謡としてイメージだけが先行している面もあります。金門橋のように目に焼きつくような派手さとは、また違った魅力がありますよね。

現在のロンドン橋は、いつ再建されたものでしょうか?

現在(2020年代時点)ロンドンにかかっている「ロンドン橋(London Bridge)」は、
1973年に開通した 比較的新しい橋です。


簡単な経緯

  1. 中世のロンドン橋

    • テムズ川に架かっていた中世のロンドン橋は、12世紀末から13世紀初頭にかけて完成し、19世紀はじめまで存在しました。家や店舗が橋の上にびっしり立ち並んでいたことで有名です。

  2. 19世紀に再建された橋

    • 1831年に完成し、およそ130年ほど使用されました。

    • 1967年にアメリカ・アリゾナ州のレイク・ハヴァス・シティに売却され、石材が運ばれて再組み立てされ、観光名所となっています。

  3. 現在のロンドン橋(1973年開通)

    • 1967年ごろから新たな橋の建設が始まり、1973年に完成・開通

    • コンクリートや鋼鉄を用いたシンプルな構造で、交通量の増加にも対応する設計となっています。


「ロンドン橋」というと中世のイメージや童謡が有名ですが、実際には何度も架け替えられており、“現在のロンドン橋” は1973年に再建されたものだという点が大きな特徴です。なお、よく写真や観光ポスターに登場する塔が二つそびえる橋は「タワー・ブリッジ(Tower Bridge)」であり、ロンドン橋とは別の橋なので混同しやすい点にも注意が必要です。

崩壊した歴史はあったのですか? 例えばロンドン火災とか空襲とか。

ロンドン橋(London Bridge)は、実は「完全に崩壊してしまった」というような劇的な倒壊は記録に残っていません。ただし、何度も架け替えられてきた長い歴史の中で、火災や戦争による部分的な損傷を受けたり、老朽化によって改修や再建を繰り返してきました。以下、代表的な出来事をご紹介します。


中世~近世のロンドン橋

中世の木造・石造ブレンドの橋

  • 12世紀末~13世紀初頭に最初の石造橋が完成(その前は木造橋があったとされる)。

  • 橋の上に家や店舗が密集して建ち並び、何度も火災に見舞われました。

1212年の大火

  • ロンドン史上「最初の大火」として伝わっており、橋の上の建物も大きく焼失。

  • 橋自体は炎上と消火活動が繰り返され、一部が損壊したものの、完全崩落には至りませんでした。

1666年の「ロンドン大火」

  • シティ中心部の大半を焼いた大火災。

  • ロンドン橋の北詰付近の建物が被害を受け、多くの家屋が焼失。

  • ただし橋の構造そのものが全壊したわけではなく、部分的な被害で止まりました。

  • 大火後、橋の上にあった家屋などは取り壊されていき、徐々に橋上の市街は解体されていきます。


19世紀の「新ロンドン橋」(1831年完成)

  • 中世以来の老朽化が深刻となり、1831年に完成した石造の橋に架け替えられました。

  • 現代的な交通量増加に伴い、20世紀半ばにはさらに新たな橋が必要となり、解体が決定。

  • 1960年代後半、この19世紀橋はアメリカ・アリゾナ州のレイク・ハヴァス・シティに売却され、そこで再組立されて観光名所になっています。

第二次世界大戦(The Blitz, 1940-41)

  • ドイツ軍によるロンドン大空襲(Blitz)では、シティ全域が爆撃を受け、大きな被害が出ました。

  • しかし当時のロンドン橋(1831年版)が大破・崩壊したという記録はありません

  • 周辺の建物やタワーブリッジなどは何度も近くに爆弾が落ち、損傷を受けましたが、橋の大規模な崩落は免れています。


現在のロンドン橋(1973年完成)

  • 1967年から建設が進められ、1973年に開通したコンクリート&鋼鉄橋。

  • シンプルな外観で、大量の交通をさばけるよう設計されています。

  • しばしば「タワーブリッジ」と混同されがちですが、塔がある“あの観光名所の橋”は別物です。


まとめ

  • 「橋そのものが空襲や火災で崩壊した」記録はない
    火災(特に1212年、1666年)や戦争(特に第二次大戦)で部分的に被害を受けたことはありましたが、完全に落ちてしまうほどの崩壊には至っていません。

  • 度重なる老朽化や交通需要への対応が主な「架け替え」理由
    中世以来の橋は何世紀にもわたり使われましたが、最終的には安全性や都市計画の都合で再建・改築を繰り返してきました。

「ロンドン橋落ちた(London Bridge Is Falling Down)」という童謡のイメージとは裏腹に、大規模な崩壊よりも「火災による部分損壊」や「古さゆえの架け替え」が実際の歴史上の大きなトピックとなっています。

テムズ川にかかる橋とトンネルはいくつあるのでしょう?

テムズ川は全長約346kmほどあり、源流から河口までを含めると大小さまざまな橋やトンネル、さらには渡し船(フェリー)なども含めて「川を横断する手段」は200を超えます。
ただし「どこからどこまでを数えるか」「人道橋(歩行者専用)や私有橋・産業用の小規模橋などを含むか」などの定義によって数え方が異なり、文献や資料によって数字に若干の差があります。

以下は、代表的なデータとして知られているものです。


1. テムズ川全体として

  • 橋(Bridges)
    おおむね100本以上(「138橋」などとする資料もある)

  • トンネル(Tunnels)
    歩行者用や自動車用、鉄道用をあわせて十数本(「18トンネル」などとする資料もある)

  • フェリー(Ferries)
    いくつかの定期航路が運航されており、数は十数か所(「12航路」などとする資料も)

たとえば英語版Wikipediaの “List of crossings of the River Thames” では、以下のように紹介されています(ただし常に更新されるため目安値):

  • 総クロッシング数:約200~214

  • 内訳:橋100本以上、トンネル十数本、フェリー航路10数か所、飛び石(stepping stones)2か所など


2. ロンドン都心部(グレーター・ロンドン内)に限る場合

ロンドン中心部~下流域では、テムズ川にかかる橋・トンネルが集中しています。地図上で数えると、橋だけでも30~40ほど存在し、有名なところでは以下が挙げられます。

  • 橋の例
    - ウエストミンスター橋、ウォータールー橋、ブラックフライアーズ橋、サザーク橋、ロンドン橋、タワーブリッジ など

  • トンネルの例
    - ロザーヒス・トンネル(Rotherhithe Tunnel)、ブラックウォール・トンネル(Blackwall Tunnel, 南北2本)、グリニッジ・フット・トンネル(歩行者用)、ウーリッジ・フット・トンネル(歩行者用) など

また、テムズ川自体を使ったボート輸送も公共交通網(Uber Boat by Thames Clippers)として機能しており、橋やトンネル以外の横断手段も盛んです。


まとめ

  • テムズ川全域
    橋・トンネル・フェリーなどを含めると200以上の「横断手段」が存在すると言われます。

  • ロンドン都心部~下流域
    橋は約30~40、トンネルは歩行者用・車両用・鉄道用あわせて十数本ほど。

数字はあくまで目安で、資料や数え方の基準によって異なりますが、「テムズ川には思いのほか多くの橋やトンネルが存在する」ことは共通しています。

シャーロック・ホームズでは、死体くらいしか出てこないのでは?

シャーロック・ホームズの物語というと、どうしても殺人事件のイメージが強く、「死体しか出てこないのでは?」と思われがちですが、実際には“死体が出てこない”事件や、“そもそも殺人未遂にも至らない”事件なども数多く扱われています。


1. シャーロック・ホームズの作品概要

  • アーサー・コナン・ドイルによる正式な作品は、

    • 長編小説(A Study in Scarlet ほか)4作品

    • 短編56作品
      合計60の正典(正史)が存在します。

  • そのうち“殺人事件”に絡むものはもちろん多いですが、たとえば下記のように、死体そのものが登場しないエピソードや、殺人未遂に留まる事件、詐欺・窃盗・誘拐などを扱った作品も少なくありません。


2. 死体が登場しない・殺人でない事件の例

「まだらの紐」(The Adventure of the Speckled Band)

  • 殺人未遂も含めかなり物騒なストーリーですが、物語のほとんどは過去に起きた不審死の真相究明と、依頼人に対する新たな危険を防ぐことが中心です。実際に死体を目の当たりにする場面よりも、トリック暴きに焦点が当たっています。

「ボール箱」(The Adventure of the Cardboard Box)

  • ある日届いた不審な小包が発端ですが、中心は“なぜこんなものが送られてきたのか”という謎解きです。死体が現場に転がっているわけではなく、もっと入り組んだ事情が絡んできます。

「青いガーネット」(The Adventure of the Blue Carbuncle)

  • クリスマスの七面鳥の腹から宝石が出てくるという事件。これは盗難事件であり、殺人事件ではありません。

  • ホームズとワトスンは宝石をめぐる行方を追うものの、“死体”はまったく登場しません。

「唇のねじれた男」(The Man with the Twisted Lip)

  • 失踪した男性の行方が焦点。殺人ではなく、“行方不明事件”の捜査です。死体を探すわけではなく、真相はちょっと意外な方向に進みます。


3. なぜ“死体”のイメージが強いのか?

  • ホームズシリーズの中には『四つの署名』『バスカヴィル家の犬』など、本格的な殺人事件を扱う長編や、短編でも猟奇的な殺人や劇的な場面が描かれるものもあり、それらの印象が読者に強く残りやすいです。

  • ミステリというジャンル自体、殺人事件がもっとも緊張感のある題材として使われることが多く、特に映像化(ドラマ・映画)される際に殺人や殺人未遂エピソードがピックアップされやすい傾向があります。


4. まとめ

  • シャーロック・ホームズは「死体が転がっている殺人事件ばかり」というイメージが根強いものの、実は窃盗・詐欺・誘拐・失踪・身分詐称・秘密工作など、死体の出ない事件や殺人に至らない事件も多く扱っています。

  • 殺人事件も当然多いのですが、それ以上に「なぜ? どうやって?」という謎解きのスリルが魅力のシリーズといえるでしょう。


ですから、シャーロック・ホームズは必ずしも「死体だらけの話」一辺倒ではありません。むしろ、謎を紐解く過程での推理や、ロンドンの下町から上流階級まで幅広く描かれる社会背景、ホームズとワトスンの会話劇などが大きな見どころとなっています。

テムズ川が絡んだ事件はありますか?

シャーロック・ホームズ作品の中でも、テムズ川が物語のキー・シーンとして大きく絡むのは、やはり長編小説の第二作目である**『四つの署名(The Sign of the Four, 1890年)』**が代表的です。以下、簡単にご紹介します。


『四つの署名』とテムズ川

  1. 物語の概要
    - 若い女性メアリー・モースタンが持ち込む奇妙な依頼から、ホームズとワトスンは“秘宝”と“過去の因縁”にまつわる事件を捜査することになります。
    - 物語後半では、“犯人グループ”がテムズ川を使って逃走を図る展開になり、そこにホームズたちがボートで追跡するスリリングなアクションが描かれます。

  2. テムズ川ボート・チェイス
    - ホームズたちは蒸気船(スチームランチ)を借り、夜のテムズ川を舞台に犯人を追いかけます。
    - ヴィクトリア朝時代のロンドンの川沿いの情景や、倉庫・埠頭が並ぶ雑多な様子などが活写されており、この時代の川辺の雰囲気を知るうえでも興味深いエピソードです。
    - 犯人側も小型の蒸気船を操縦し、川面での激しいチェイスが繰り広げられます。

  3. ホームズの推理と行動力
    - 犯人が川を逃走ルートに使っていると推測したホームズの洞察力が見どころです。
    - ワトスンは船酔い気味(?)になりながらも、ホームズをサポートし、壮大な川の追跡劇に参加する姿が描かれます。


そのほか、テムズ川が舞台となる場面

  • 短編を含めて、細かい場面でテムズ川周辺(ロンドン港やドックランズ地区)が言及されることはありますが、『四つの署名』ほど“川が事件のクライマックス”に関わる作品は少ないのが実情です。

  • たとえば「ボール箱(The Adventure of the Cardboard Box)」「唇のねじれた男(The Man with the Twisted Lip)」などでも川沿いの場面に触れられたり、人物が下町の港湾地域に住んでいるなど、テムズ川を生活の一部として描く設定が登場することがあります。


まとめ

  • テムズ川が印象的に登場する事件としては、やはり長編『四つの署名』のクライマックスでのボート・チェイスが最も有名。

  • 他の作品でも川沿いの描写は出てきますが、決定的な舞台装置としてテムズ川が活躍する例はそう多くはありません。

ヴィクトリア朝のロンドンを舞台にしたホームズの冒険の中でも、この『四つの署名』のテムズ川シーンはかなりの迫力と臨場感を味わえるので、テムズ川が絡むホームズ事件をお探しなら、ぜひ本作を読んでみてください。

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