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ガムラン

ガムランとは、何のことでしょうか?

ガムラン(Gamelan)とは、インドネシアの伝統的な音楽アンサンブルを指します。特にジャワ島やバリ島で発展したもので、ガムランの音楽は、金属製の打楽器や木製の打楽器、弦楽器、さらには笛やボーカルなどの多様な楽器が一緒に演奏されるのが特徴です。

ガムランは通常、式典や儀式、伝統舞踊、影絵芝居(ワヤン・クリ)の伴奏として使用されます。その音楽はしばしば繊細で複雑なリズムを持ち、非常に独特の音響美を持っています。ガムランは、インドネシアの文化遺産として非常に重要な位置を占めており、世界中でも注目されています。

バリ島の文化は西洋由来のような気もしますが。

バリ島の文化には、確かに西洋の影響が見られる部分もありますが、根本的には非常に独自で、古代からの伝統や宗教、習慣が強く根付いています。

バリ島の文化的背景

  1. ヒンドゥー教の影響: バリ島の宗教は主にヒンドゥー教であり、インドから伝わった影響が大きいです。これはインドネシア全土に広がったヒンドゥー王国の名残で、特にバリ島では独自の「バリ・ヒンドゥー」と呼ばれる宗教文化が発展しました。この宗教的伝統は、寺院建築、舞踊、音楽、そして祭りなどに深く影響を与えています。

  2. ガムラン音楽と伝統舞踊: 先ほど述べたガムラン音楽や、バリ舞踊もバリ島の文化の中心を成しています。これらは西洋文化とは異なる独自の美学と哲学を持ち、バリ島独自の文化の象徴とされています。

  3. 西洋の影響: バリ島は20世紀初頭から観光地として西洋人に人気があり、特に芸術や建築、食文化において、西洋の影響が見られるようになりました。観光の発展に伴い、バリ島には多くの西洋人が訪れ、住むようになり、これが現地の文化やライフスタイルに影響を与えています。しかし、バリ島の人々は伝統的な文化を大切にし、西洋文化と共存しつつも独自のアイデンティティを保っています。

  4. コロニアル時代の影響: バリ島を含むインドネシアはオランダの植民地であったため、オランダ文化や制度の影響も少なからず存在します。しかし、バリ島は他の地域と比べて植民地支配の影響が少なく、伝統文化が比較的保たれています。

まとめると、バリ島の文化はインド由来のヒンドゥー教文化が根幹にあり、西洋の影響は一部に限られています。観光産業や歴史的な背景から西洋文化が流入しているものの、バリ島の独自性はしっかりと維持されているといえます。

イスラムの影響ではないのですね?

バリ島の文化は、インドネシア全体とは異なり、イスラム教の影響をほとんど受けていません。これはインドネシア全体がイスラム教を国教とする中で、バリ島が独自の文化を保持している特異な例です。

インドネシアの他の地域、特にジャワ島やスマトラ島では、15世紀以降にイスラム教が広まり、現在ではインドネシアの国民の大多数がイスラム教徒です。しかし、バリ島は主にヒンドゥー教を信仰する人々が多く、これはバリ島の人々がイスラム教の拡大の際に島に移住してきた結果、ヒンドゥー教の信仰が強く残ったためです。

バリ島のヒンドゥー教文化は、インドネシアの他の地域とは異なる独自の宗教儀式や祭り、建築、芸術形式を生み出しました。したがって、バリ島の文化にはイスラム教の影響がほとんど見られず、むしろヒンドゥー教とそれに伴うインドの影響が色濃く反映されています。

これはバリ島がインドネシアの他の地域とは異なる文化的アイデンティティを持つ要因の一つであり、観光地としての独自性を形成する重要な要素でもあります。

ガムランを構成する楽器は何でしょうか?

ガムランを構成する楽器は多様で、それぞれの役割や音色によってアンサンブル全体の響きを作り出します。以下はガムランに一般的に含まれる主要な楽器の例です:

  1. メタロフォン(Metallophones):

    • サロン(Saron): 鉄や青銅製のバーを並べた楽器で、バチで打って音を出します。ガムランの基本的なメロディーを担当します。

    • ガンバン(Gambang): 木製のバーを並べた木琴のような楽器で、複雑な旋律やオクターブを演奏します。

  2. ゴング(Gongs):

    • ゴング・アグン(Gong Ageng): 大型のゴングで、アンサンブルのリズムの区切りを作る重要な役割を果たします。

    • ケンコン(Kenong): 小型のゴングで、サロンのメロディーを補完し、リズムの強調を行います。

    • ケンプル(Kempul): 中型の吊りゴングで、メロディの中で特定のポイントを強調する役割を持ちます。

  3. ジェンダー(Gender):

    • 鍵盤のような形をしたメタロフォンで、複雑で装飾的な旋律を演奏します。一般的に両手で2本のバチを使って演奏します。

  4. ボナン(Bonang):

    • 一連の小型のゴングが横並びに配置された楽器で、主旋律を装飾したり、即興的なパターンを演奏します。

  5. ケチャピ(Kecapi):

    • 弦楽器の一種で、しばしばインドネシアの伝統的な楽器の中で用いられます。ガムランにはあまり一般的ではありませんが、一部のアンサンブルで用いられることがあります。

  6. ケンダン(Kendang):

    • 両端を叩くタイプのドラムで、リズムをリードする役割があります。ガムランのアンサンブルの中では非常に重要なリズムセクションを担当します。

  7. スリン(Suling):

    • 竹製の縦笛で、メロディーの一部や装飾的な音を提供します。

  8. レバブ(Rebab):

    • 二弦の擦弦楽器で、アンサンブルの中で旋律的なリードを担当することがあります。

これらの楽器が組み合わさり、複雑で豊かな音の層を作り出します。ガムランのアンサンブルは、楽器の組み合わせや配置によって地域やスタイルごとに異なる響きを持っています。

結構多いですね?

はい、ガムランを構成する楽器は非常に多く、多様です。ガムランは単なる楽器の集まりではなく、それぞれの楽器が独自の役割を持ち、全体として一つの調和した音楽を生み出します。楽器の数が多いだけでなく、それぞれが異なる音色やリズムを提供するため、ガムラン音楽は非常に複雑で奥深いものとなっています。

その多様性が、ガムランの音楽に独特の深みと美しさを与えており、インドネシアの文化の中で非常に重要な存在となっています。また、ガムランは儀式や祭り、伝統舞踊の伴奏など、様々な場面で使われるため、それぞれの場面に応じて楽器の組み合わせや演奏スタイルも変化します。

このように多くの楽器が組み合わさることで、ガムランは単一の楽器では決して得られない豊かな音楽体験を提供しているのです。

近年、作曲された楽曲もあるのでしょうか?

はい、近年でもガムランのために作曲された新しい楽曲が存在します。伝統的なスタイルを維持しつつも、現代的な要素や異なる音楽ジャンルとの融合を取り入れた作品が増えています。

近年のガムラン音楽の発展:

  1. 現代作曲家による新作: ガムラン音楽の伝統的な形式を尊重しつつ、現代の作曲家たちは新しい音楽作品を生み出しています。これには、伝統的なガムラン楽器を使用した新しい楽曲の作曲や、ガムランを西洋のオーケストラと組み合わせるような試みも含まれます。

  2. ガムランと他の音楽ジャンルの融合: ガムランはジャズ、クラシック、ロック、エレクトロニカなど、さまざまな音楽ジャンルと融合する試みがなされています。これにより、伝統的なガムランの音色が新しい文脈で再解釈され、現代的なアレンジが施された楽曲が生まれています。

  3. 国際的な作曲活動: インドネシア国内だけでなく、世界中の音楽家や作曲家がガムランの音楽に魅了され、独自の作品を作り続けています。特に、欧米の作曲家たちはガムランの音響美やリズム構造に影響を受けて、新しい音楽の創造に取り組んでいます。

  4. 教育機関での創作活動: インドネシア国内外の音楽教育機関でガムランを学ぶ学生たちも、伝統的な曲の学習だけでなく、自分たちで新しい楽曲を作ることに挑戦しています。これにより、ガムラン音楽は次世代へと継承されると同時に、進化し続けています。

ガムラン音楽はその伝統を守りながらも、新しい試みや創造力を取り入れることで、現代の音楽シーンにおいても生き生きとした存在感を保っています。

公的な演奏グループはありますか?

はい、インドネシアをはじめ、世界各地に公的なガムラン演奏グループが存在します。これらのグループは、伝統文化の保存と普及を目的とした活動を行っており、国や地方自治体、教育機関などから支援を受けていることが多いです。

代表的な公的ガムラン演奏グループ:

  1. インドネシア国内のガムランオーケストラ:

    • インドネシア国内には、政府や地方自治体が支援するガムランオーケストラが多数存在します。これらのオーケストラは、地域の文化イベントや公式行事で演奏を行うほか、観光客向けのパフォーマンスも行っています。

    • 例えば、ジャカルタの「インドネシア国立ガムランアンサンブル」などは、国を代表する公的なガムラングループの一つです。

  2. 教育機関のガムラングループ:

    • インドネシア国内の大学や文化研究機関には、ガムランを研究し、演奏するための公的なグループが存在します。これらのグループは、学生や研究者が中心となって活動しており、ガムラン音楽の伝承と発展に貢献しています。

    • たとえば、「インドネシア芸術大学」(ISI)は、ガムラン音楽の教育と演奏を行う重要な拠点です。

  3. 海外のガムラングループ:

    • インドネシア以外の国でも、ガムランに関心を持つ音楽家や文化愛好者が集まる公的なガムラングループがあります。これらのグループは、地元の文化施設や大学からの支援を受け、定期的なコンサートやワークショップを開催しています。

    • 例えば、アメリカの「スミソニアン・インスティチュート」や「ヨーロッパ各地の大学」などでは、ガムランを専門とするアンサンブルが活動しています。

活動内容:

  • これらの公的ガムラングループは、伝統的なレパートリーの演奏だけでなく、新しい作曲作品の発表、ワークショップや教育プログラムの開催など、幅広い活動を行っています。また、国際的な交流プロジェクトの一環として、他国の音楽家とのコラボレーションやフェスティバルでの公演も行っています。

このように、公的なガムラン演奏グループは、伝統文化の保護と普及、そして国際的な文化交流の架け橋として、重要な役割を果たしています。

ケチャックと一緒に演奏されることもあるのでしょうか?

はい、ガムラン音楽はケチャックと一緒に演奏されることもありますが、伝統的にはケチャック(Kecak)はガムランとは異なる形式のパフォーマンスで、ガムランの楽器は通常使われません。

ケチャックについて: ケチャックはバリ島の伝統的なダンスパフォーマンスで、「モンキーダンス」とも呼ばれます。このパフォーマンスは、数十人から百人以上の男性が円を作り、「チャッ、チャッ、チャッ」という独特のリズムを声で奏でる形で行われます。ケチャックの主なテーマは『ラーマーヤナ』の物語で、ダンスと共にストーリーが進行します。

ガムランとケチャックの関係:

  • 伝統的な違い: ケチャックはその声によるリズムとコーラスが特徴であり、ガムランの楽器が使われないのが通常の形式です。ケチャックは声だけでリズムとハーモニーを作り出し、その独特の音楽性が特徴です。

  • 現代の融合: しかし、現代の公演ではガムラン音楽とケチャックを組み合わせたパフォーマンスが行われることがあります。これにより、視覚的・聴覚的な体験がより豊かになります。ガムランの演奏がケチャックの開始前や間奏に挿入されることもあり、観客に対してバリの伝統文化をより包括的に紹介する形態が取られることがあります。

  • 観光地での公演: バリ島の観光地で行われるパフォーマンスでは、ケチャックにガムラン音楽が追加されることがあり、特に観光客向けのショーでは、よりダイナミックで華やかな演出を目指してこのような融合が行われています。

このように、伝統を尊重しながらも現代的な演出を加えた形で、ケチャックとガムランの融合が見られることもありますが、もともとは別々の伝統であることを理解することが重要です。

ケチャックも、古い伝統的な文化でしょうか?

ケチャック(Kecak)はバリ島の伝統文化の一部として知られていますが、その起源は比較的新しいものです。厳密には、ケチャックは古代からの伝統的な文化というよりも、20世紀に形成されたパフォーマンスです。

ケチャックの起源と歴史:

  • ルーツ: ケチャックはバリ島の古代の儀式である「サンヒャン(Sanghyang)」に由来しています。サンヒャンは、霊的な力を持つとされる女性がトランス状態に入る儀式で、集団の男性が「チャッ、チャッ、チャッ」と声を発してリズムを作り出し、その中で行われるものでした。しかし、この儀式自体はケチャックの直接的なパフォーマンスとは異なります。

  • 20世紀の創作: 現在の形のケチャックは1930年代に、ドイツ人アーティストでありバリ島に住んでいたウォルター・シュピース(Walter Spies)と、バリのアーティストたちによって考案されました。シュピースはサンヒャンのリズムと『ラーマーヤナ』の物語を融合させ、新しい形のパフォーマンスとしてケチャックを創作しました。これにより、ケチャックは観光客向けのパフォーマンスとして人気を博し、バリ文化の象徴的な要素の一つとなりました。

  • 観光と文化のシンボル: ケチャックはその後、バリ島を訪れる観光客のためのパフォーマンスとして広く普及し、現在ではバリ文化を代表するショーとして定着しています。ケチャックは、視覚的にも聴覚的にも非常にインパクトがあり、観客を魅了する要素が多いため、バリ島の文化遺産の一部と見なされるようになりました。

まとめ: ケチャックは、バリの古代儀式に根ざした要素を持ちながらも、実際には20世紀に創作された比較的新しい文化的パフォーマンスです。現在では、バリ島の伝統的な文化の一部として広く認識されていますが、歴史的には伝統的な形式というよりも、観光産業の発展と共に形成された現代的な創作物といえます。

なるほど、近代の創作パフォーマンスなんですね。

そうです。ケチャックは、バリ島の伝統的な要素をベースにしつつも、20世紀に創作された近代的なパフォーマンスです。その背景には、観光産業の発展や西洋人アーティストとの交流があり、バリ島の文化を新しい形で表現し、世界に紹介するための工夫がなされています。

このように、ケチャックはバリ島の文化を体験できる一方で、厳密には「伝統的」とは言い難い部分も持ち合わせています。それでも、今日ではバリ文化の象徴的な存在となっており、多くの人々に愛され続けています。

現代においても、このような新しい創作パフォーマンスが文化遺産として定着していく例は少なくありません。ケチャックはその一例として、伝統と現代が交差する中で新しい価値を生み出した成功例と言えるでしょう。

まあ、ヨサコイ踊りも近年の創作ですしね。

そうですね、ヨサコイ踊りも近年に創作されたもので、1950年代に高知市で始まりました。もともとは伝統的な祭りや踊りに現代的な要素を加えたもので、エネルギッシュで自由なスタイルが特徴です。ヨサコイもまた、伝統と現代が融合し、新たな文化として定着していった例と言えます。ケチャックと同様に、地域の文化を発展させつつ、多くの人々に楽しまれる新しい形式のパフォーマンスが生まれたのは興味深いですね。

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