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国連への拠出金も税金から

WHOの拠出金の金額は何で決まるのですか?

WHO(世界保健機関)の加盟国が拠出する金額は、加盟国の経済規模や国民所得を基に計算される「割当分担率(assessed contributions)」によって決定されます。以下にその仕組みを説明します。

1. 割当分担率(Assessed Contributions)

  • 各国がWHOに支払う「定額拠出金」は、国連の割当分担率を基準に計算されます。

  • この割当分担率は、加盟国の経済規模(GDP)や国民所得水準人口などを基に決定されます。

  • また、国連全体の分担率に基づいているため、WHO以外の国連機関(UNICEFなど)でも同様の基準が用いられます。

2. 自主的拠出金(Voluntary Contributions)

  • 加えて、各国や非政府組織(NGO)、民間企業がWHOに提供する自主的拠出金もあります。

  • 自主的拠出金は、特定のプロジェクトやプログラム(例えば、ポリオ根絶や感染症対策)に対して提供される場合が多いです。

  • 自主的拠出金の額や目的は、各国や寄付者の意向に依存します。

3. 調整と交渉

  • 割当分担率は定期的に見直され、WHO加盟国間での交渉や調整を経て決定されます。

  • 一部の国は経済状況の悪化を理由に分担金の減額を求める場合があります。

4. 日本の例

  • 日本はGDPが大きいため、割当分担率も高く、WHOへの定額拠出金では上位の国となっています。ただし、近年は自主的拠出金を通じた影響力行使が他国と比較して控えめであるとの指摘もあります。

このように、WHOへの拠出金額は各国の経済的な負担能力と、各国がWHOを通じてどのような影響を及ぼしたいかという意図に基づいて決まっています。

日本は国連主義だから、大人しく文句も言わずに支払うのでしょうね。

確かに、日本はこれまでの外交姿勢において国連主義を重視し、国際機関への拠出金についても基本的に大きな異議を唱えることなく支払ってきました。その背景には以下のような要因があります。

1. 国際協調を重視する外交方針

  • 日本は第二次世界大戦後、平和国家として国際社会での信頼を築くことを最優先にしてきました。そのため、国連やその関連機関への参加や貢献を通じて、国際的な役割を果たす姿勢を維持しています。

  • 日本の外交方針は、アメリカや中国のように直接的な影響力を行使するのではなく、資金提供や技術協力を通じて「間接的な影響力」を高めるスタイルが主流です。

2. 「分担金上位国」としての立場維持

  • 日本は国連やWHOなどの主要機関において、上位の拠出国であることを誇りとしてきました。これは国際社会での一定の発言権を確保する意図もあります。

  • ただし、日本はその分担金の規模に比べて、国際機関での人材登用や発言力が必ずしも十分ではないという指摘もあります。

3. 批判を避ける文化

  • 日本は、国際社会で「紛争」や「対立」を避ける文化が外交にも反映されており、過剰な主張や反発を控える傾向があります。

  • 他国(例えばアメリカ)は分担金の引き下げや未払いを交渉カードとして使うことが多いですが、日本はそのような強硬な態度を取ることはほとんどありません。

4. 国内での議論の少なさ

  • 日本国内では、国連やWHOへの分担金についての議論はあまり活発ではありません。多くの国民は、これらの拠出がどのように使用され、どの程度の影響力を生んでいるかについて十分な情報を得ていないのが現状です。

5. 改善の余地

  • 一方で、日本は分担金を支払うだけでなく、より積極的に人材を国際機関に送り込み、政策決定に関与するなどの形で、拠出金に見合った影響力を高める努力が必要です。

  • 最近では、自主的拠出金を通じて特定の課題(例えば感染症対策やユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)に注力する動きも出てきていますが、他国と比べるとまだ控えめです。

結果として、「大人しく支払っている」と言われる側面があるのは否めません。ただ、日本がこれを単なる負担と見るのではなく、国際社会での影響力を効果的に行使するための投資として考えることが重要だとも言えます。そのためには、国民や政治家が拠出金の使い道や成果をより意識する必要があるかもしれませんね。

日本も腹を据えかねて、拠出金を停止した国連機関がありましたね。

おっしゃる通り、日本が国連機関への拠出金を停止した例も存在します。特に有名なのは、ユネスコ(UNESCO:国連教育科学文化機関)への拠出金停止です。この背景について少し詳しく説明します。

1. ユネスコへの拠出金停止の経緯

  • 2016年、日本政府はユネスコへの拠出金を停止しました。この決定は、ユネスコが中国からの申請を受けて、南京事件に関する文書を「世界の記憶(Memory of the World)」に登録したことに対する抗議でした。

  • 日本政府は、この登録プロセスが透明性に欠け、一方的であるとして強く反発しました。また、歴史問題をめぐる政治的な利用が問題視されたため、拠出金の支払いを一時停止する措置を取ったのです。

2. 背景にある日本の姿勢

  • ユネスコは教育や文化遺産の保護を目的とする機関ですが、南京事件や慰安婦問題などの歴史問題が国際的な場で扱われると、日本政府はこれを「偏向的」とみなすことがあります。

  • 日本は国連主義を基本とする一方で、歴史問題が絡む場合には対抗措置として拠出金を停止することで、一定のメッセージを送ることを選びました。

3. その後の対応

  • ユネスコへの拠出金停止は、一時的なものでした。その後、日本はユネスコに対して登録プロセスの見直しを求め、部分的に拠出金の支払いを再開しました。

  • また、日本政府は2018年にユネスコと協力し、「世界の記憶」制度の透明性向上に向けた改革を進めるよう働きかけました。

4. 他の事例

ユネスコ以外に、日本が特定の国連機関への拠出金を停止または削減した例は少なく、基本的には国際協調を重視する方針を保っています。ただし、拠出金を外交的なカードとして利用する動きが完全にないわけではありません。

5. 日本の選択肢と影響力行使

  • 日本が拠出金停止を行う場合、それが一時的であれ、国際的な場で一定の影響力を行使する手段となります。

  • ただし、停止が長期化すると、日本が「国際協調を放棄している」という批判を受けるリスクも伴うため、慎重なバランスが求められます。

日本は普段、国際機関での発言を控えめにする傾向がありますが、このような例は、日本が「大人しいだけではない」一面を見せた重要な事例と言えますね。

国連や国連機関が、中国寄りではないかと批判されている背景はなんでしょう?

国連やその関連機関が「中国寄り」であると批判される背景には、いくつかの要因があります。以下にその主な理由を挙げます。


1. 中国の経済力と拠出金の増加

  • 中国の経済成長に伴う影響力の拡大
    中国は現在、国連の「定額拠出金(assessed contributions)」の支払いで2番目の規模を占めています(日本を上回る水準)。また、自主的拠出金(voluntary contributions)を通じて特定のプロジェクトや目的に資金を提供することも増えています。

    • 経済力を背景に、国連内での発言力を強化しており、発展途上国へのインフラ投資や人道支援と連携した影響力の行使が目立っています。


2. 中国籍の職員の増加

  • 中国は国連やその関連機関における幹部職のポストを積極的に確保しています。

    • 例えば、**国際連合食糧農業機関(FAO)**の事務局長や、国際民間航空機関(ICAO)の幹部ポストなど、重要な機関で中国籍の職員がリーダーシップを取るケースが増えています。

    • 国連機関では幹部の出身国がその国の政策や意向を反映する場合があり、こうした幹部の存在が「中国寄り」との印象を強めています。


3. 「一帯一路」構想と発展途上国への影響

  • 中国の「一帯一路」構想は、発展途上国への多額のインフラ投資を特徴とします。この取り組みを通じて、アフリカ諸国やアジア諸国などの発展途上国との関係を強化しています。

    • これにより、多くの発展途上国が中国寄りの姿勢を示し、国連での投票行動や政策支持において中国に協力的な立場を取ることが多くなっています。


4. WHO(世界保健機関)をめぐる批判

  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック時の対応では、WHOが中国の情報に過度に依存し、中国寄りの姿勢を取ったと批判されました。

    • 例えば、初期対応での中国政府の情報公開や感染状況の透明性に関する問題が指摘されましたが、WHOはこれを強く批判せず、中国を擁護する発言が目立ちました。

    • このため、一部の国(特にアメリカ)はWHOを「中国寄り」と批判し、一時的に拠出金を停止する事態も起きました。


5. 中国の「ソフトパワー外交」の活用

  • 中国は国連や関連機関を、国家の外交戦略の一環として利用しています。

    • **国連平和維持活動(PKO)**への部隊派遣や、気候変動問題、感染症対策といった分野で積極的に関与し、「責任ある大国」としてのイメージを強化しています。

    • この活動が表面的には国際貢献と映る一方で、裏では中国の国益を重視した政策が影響していると批判されています。


6. 発展途上国への圧力や影響力

  • 中国は国連総会や関連機関での投票行動において、発展途上国に対して経済援助や貿易関係を利用して影響力を行使しているとされています。

    • 例えば、人権問題や台湾問題に関する議題で、発展途上国の多くが中国を支持する傾向があるのは、中国からの援助や投資の影響があるためと考えられています。


7. 中国批判を抑制するための戦略

  • 中国は国際機関を活用して、自国に対する批判を封じ込めようとする戦略を取っていると指摘されています。

    • 例えば、ウイグル問題や香港問題、人権侵害に関する議題で、中国寄りの発展途上国や友好国の票を集めて、批判をかわす動きが見られます。


結論

国連やその関連機関が「中国寄り」と見られる背景には、中国の経済力の拡大、国際機関への積極的な関与、発展途上国への影響力行使などが複雑に絡み合っています。一方で、アメリカや日本、ヨーロッパ諸国などがこの状況に警戒感を示し、中国の影響力を牽制する動きも見られます。

この問題は、単なる「中国寄り」というよりも、国連が各国の影響力争いの舞台になっていることを反映しているとも言えるでしょう。

中国はPKO活動に誰を送っているんですか?人民解放軍は国軍ではないですよね?

非常に鋭い視点ですね。中国の平和維持活動(PKO)派遣には確かに特殊な背景があります。以下に詳細を説明します。


1. PKO活動に派遣されるのは「人民解放軍」

  • 中国は国連平和維持活動(PKO)において**人民解放軍(PLA)**の部隊を派遣しています。

  • 人民解放軍は中国共産党の軍隊であり、国家の軍隊(国軍)ではないという独特な位置づけがあります。

    • 中国の憲法では、国防に責任を持つのは人民解放軍であると規定されていますが、その指揮権はあくまで中国共産党の中央軍事委員会にあります。

    • つまり、人民解放軍は「党の軍隊」であり、一般的な国軍(国家の軍隊)とは異なります。


2. PKOへの参加と派遣部隊の内容

中国はここ数年、国連のPKO活動において積極的な役割を果たしています。派遣されるのは以下のような部隊や人員です:

  • 工兵部隊(インフラ建設や施設修復を担当)

  • 医療部隊(現地での医療支援を提供)

  • 警備部隊(施設警備や安全確保を担当)

  • 軍事観察官(非戦闘地域での状況監視)

  • 民事要員(文民警察や選挙支援要員など)

これらの派遣部隊には、直接的な戦闘任務は与えられていませんが、武装警備や紛争後のインフラ復興、住民支援などが主な任務となっています。


3. PKO参加の背景

  • 中国がPKOに積極的に参加する理由には、以下のような要素が挙げられます:

    1. 「責任ある大国」としてのイメージ向上
      中国は国際社会での責任あるリーダーとしての立場を強調し、発展途上国との関係強化を図っています。

    2. 軍隊の国際経験の向上
      PKO派遣を通じて、人民解放軍の部隊に国際的な実践経験を積ませる狙いがあります。

    3. 国際的な軍事プレゼンスの強化
      PKOを通じて、中国が世界各地でプレゼンスを示し、影響力を拡大する戦略の一環です。


4. 人民解放軍のPKO派遣に対する懸念

  • 「党の軍隊」派遣の問題
    国際社会からは、「国連PKO活動における軍隊派遣が、中国共産党の政治的利益を反映しているのではないか」という懸念が示されています。

  • プロパガンダの利用
    PKO活動での貢献が、国内外での中国共産党の正当性や統治の正統性を強調するために利用されることもあります。

  • PKOを通じた軍事訓練
    一部の専門家は、PKO活動が人民解放軍の国際任務遂行能力を高める軍事訓練として機能している可能性を指摘しています。


5. PKO活動の規模と成果

  • 中国は、現在、世界で最も多くの兵士をPKO活動に派遣している国の1つです。

  • 特にアフリカにおいて、中国の派遣部隊は道路建設や病院設置などインフラ整備を行い、現地で一定の評価を得ています。

  • ただし、これが純粋な人道的支援というよりも、「一帯一路」構想や資源外交の一環として行われているという批判もあります。


6. 中国国内での位置づけ

  • 人民解放軍のPKO参加は、中国国内でも「国際的な責任を果たす姿勢」として肯定的に報じられます。

  • 一方で、中国国民が「人民解放軍が本来、党の軍隊であり、国際任務よりも国内任務を優先すべきだ」と考えるケースもあります。


まとめ

人民解放軍は「国軍ではなく党の軍隊」という特殊な性格を持ちながら、PKO活動を通じて中国の国際的な影響力を高める重要な役割を担っています。しかし、その背景には、中国共産党の政治的意図や戦略的目的が強く影響しており、これが「純粋な平和貢献」と言い切れない要因となっています。この点が、国際社会の一部から懸念や批判を受ける主な理由と言えるでしょう。

国連事務総長以外の国連機関トップも、先進国以外から選出されるのでしょうか?

おっしゃる通り、近年では国連事務総長を含め、多くの国連機関のトップが先進国以外(特に発展途上国や新興国)から選出されるケースが増えています。これにはいくつかの背景や理由があります。


1. 歴史的経緯:先進国以外への配慮

  • 国連やその関連機関の設立当初、先進国が主要なポストを占めていました。しかし、植民地時代の歴史や発展途上国への配慮を理由に、国際社会全体でバランスを取る動きが進みました。

  • 現在では、「先進国だけが国際機関を牛耳るべきではない」という考え方が広がり、途上国からもリーダーを選ぶ慣例が強まっています。


2. 最近の選出例

いくつかの主要な国連機関のトップは、新興国や発展途上国から選出されています:

国連事務総長

  • 国連事務総長はこれまで先進国から選ばれたことがなく、地域バランスが非常に重視されます。

    • 例えば、現在のアントニオ・グテーレス氏はポルトガル(南ヨーロッパ)出身です。

    • 過去にはアフリカ(ガーナ出身のコフィ・アナン氏)、アジア(韓国出身の潘基文氏)からも選ばれています。

国際連合食糧農業機関(FAO)

  • 現在の事務局長は**屈冬玉(Qu Dongyu)**氏で、中国出身です。

世界貿易機関(WTO)

  • 現在の事務局長はンゴジ・オコンジョ=イウェアラ氏で、ナイジェリア出身です。

国際民間航空機関(ICAO)

  • トップは中国や他の新興国から選ばれることが多く、近年では中国籍のリーダーが存在しました。

世界保健機関(WHO)

  • 現在の事務局長であるテドロス・アダノム・ゲブレイェスス氏は、エチオピア出身です。


3. 発展途上国や新興国が選ばれる背景

(1) 地域バランスの重視

  • 国際機関は加盟国の信頼を得る必要があるため、特定の地域や国に偏らないよう、リーダー選出において地域バランスを意識しています。

  • 発展途上国から選出されることで、多くの加盟国(特に途上国)からの支持を得やすくなります。

(2) 先進国間の競争回避

  • 先進国がリーダー職を争う場合、対立が激化することがあり、その調整役として発展途上国からの候補が妥協案として選ばれることがあります。

(3) 発展途上国の国際的影響力の拡大

  • 経済成長を背景に、新興国や途上国が国際社会での影響力を拡大しています。これにより、国際機関のトップポジションに新興国からの候補が押される傾向が強まっています。

(4) 発展途上国の声を反映させる動き

  • 特に国連機関は、**持続可能な開発目標(SDGs)**などで発展途上国支援を重視しており、これを反映させるために途上国のリーダーが選ばれることがあります。


4. 先進国の影響力は完全に失われたのか?

  • ただし、先進国の影響力が完全に排除されたわけではありません。以下のような形で依然として重要な役割を果たしています:

    • 資金面での支配
      先進国は依然として国連機関への主要な拠出国です(例:アメリカ、日本、ドイツ)。

    • 技術や専門知識の提供
      多くの国際機関で、先進国出身の技術者や専門家が重要な役割を担っています。

    • 裏での交渉力
      リーダーが途上国から選ばれても、政策や意思決定の背後に先進国の意向が強く反映される場合があります。


5. 批判と課題

  • バランスの取り方への批判
    途上国出身のトップが選ばれることは平等性を高める一方で、特定の国(特に中国など)が強い影響力を行使していると批判されることがあります。

  • 能力や中立性への疑問
    地域バランスや政治的理由で選ばれる場合、リーダーの能力や中立性に疑問が生じることがあります。


結論

国連やその関連機関では、先進国以外(特に発展途上国や新興国)からトップが選出される傾向が強まっています。これは、国際社会全体の声を反映する努力や地域バランスを取るためですが、同時に中国のような新興国がリーダーシップを通じて影響力を行使する場にもなっています。この傾向が続く中、先進国も新興国と連携しつつ、自国の影響力をどう確保していくかが重要な課題となっています。

中国から支援を受けている途上国から、選出されたリーダーは、中国に忖度するでしょう。

確かに、中国から支援を受けている発展途上国から選出されたリーダーが中国の影響を受ける可能性は否定できません。これは国際機関における「影響力外交」の一環であり、中国が発展途上国への支援を通じて、自身に有利な意思決定や国際的な支持を確保しようとしていると見る向きもあります。以下にその背景とメカニズムを整理します。


1. 発展途上国への中国の影響力拡大

(1) 一帯一路(Belt and Road Initiative)の影響

  • 中国の「一帯一路」構想を通じて、多くの発展途上国が大規模なインフラプロジェクトを中国資金に依存しています。

  • この経済的な依存関係により、発展途上国の政府は国際舞台で中国寄りの政策や意見を示す傾向があります。

(2) 国際機関での票集め

  • 中国は国連総会や国連機関の選挙で、多くの発展途上国からの支持を得ています。これにより、国連機関のトップ選出や重要な議題の採択に影響を与えることが可能です。

  • 例えば、アフリカ諸国や南アジアの国々が、中国寄りの票を投じるケースがしばしば見られます。

(3) 経済援助と外交のバーター

  • 中国は、発展途上国に対して無償援助や低利融資を提供し、それを外交的支持と交換する形で影響力を拡大しています。

    • 例:台湾の国際的な孤立を助長するため、中国は援助を利用して台湾との国交を断絶させるよう発展途上国を説得してきました。


2. 国際機関トップの「忖度」の可能性

(1) 中国寄りの政策推進

  • 国際機関のトップに選出されたリーダーが、自国の経済や政治基盤が中国に大きく依存している場合、中国の意向を無視しにくくなる可能性があります。

  • 例えば:

    • WHOのテドロス事務局長は、エチオピア出身で、中国がエチオピアに多額の投資をしている背景から、「中国寄り」との批判を受けました。

    • 新型コロナウイルスの初期対応において、中国への批判が控えめであったことがその一例です。

(2) 中立性の損失

  • 国際機関トップが、特定の国(中国など)の利益を優先することで、中立性が損なわれるという懸念があります。これは、国際社会全体の信頼を損なうリスクを伴います。

(3) 発展途上国全体への影響

  • 国際機関トップが中国寄りの姿勢を取ることで、他の発展途上国が「中国に寄り添えば恩恵を受けられる」と考え、中国の影響力がさらに強化される循環が生じる可能性があります。


3. 忖度を助長する要因

(1) 国際機関の財政構造

  • 国際機関は多くの場合、資金不足に悩まされており、自主的拠出金が大きな割合を占めます。中国はこれを活用して、自国の影響を拡大しています。

    • 例えば、特定のプロジェクトや分野に対して中国が資金を集中させ、その見返りとして自国に有利な政策を求めることがあります。

(2) 発展途上国リーダーの立場の弱さ

  • 発展途上国出身のリーダーは、自国の開発支援を継続的に得るため、特定の国(特に中国)への配慮を示す場合があります。

(3) 中国の積極的なロビー活動

  • 中国は国際機関内での人材配置やロビー活動を強化しており、これが政策形成やトップ選出に影響を与えています。


4. 忖度に対する批判と対抗策

(1) 批判の増加

  • 近年、多くの国(特にアメリカや欧州諸国)は、中国が国際機関を利用して自国の利益を追求しているとして、批判を強めています。

    • 例:アメリカはWHOに対し、「中国寄りの対応」に抗議して一時的に拠出金を停止しました。

(2) 対抗策としての透明性強化

  • 一部の国や国際機関では、意思決定プロセスの透明性を高め、中国を含む特定の国による影響を抑制しようとする動きがあります。

(3) 他国の影響力行使

  • 日本や欧州諸国なども、中国の影響力に対抗するため、自主的拠出金を増額するなどして国際機関での影響力を強化しようとしています。


結論

中国の影響力が拡大する中で、発展途上国出身のリーダーがその影響を受け、「忖度」する可能性があるのは現実的な懸念です。しかし、このような状況が続くと、国際機関の中立性や信頼性が損なわれるリスクがあります。そのため、透明性の確保や多国間協調の仕組み強化が求められています。

日本や他の先進国も、中国に依存しない形で発展途上国と連携し、国際社会の信頼を取り戻すための取り組みが必要と言えるでしょう。

ロシアは拠出金は少なそうですね。

おっしゃる通り、ロシアの国連への拠出金は比較的少ないです。他の主要国(アメリカ、日本、中国、ドイツなど)と比べると、ロシアの拠出金額は低い水準にあります。以下にその背景と詳細を説明します。


1. 国連拠出金の仕組み

  • 国連の「定額拠出金(Assessed Contributions)」は、各国の経済規模や国民所得(GDP)、人口、支払い能力などを基に算出されます。

  • ロシアは経済規模が縮小していることや、国民所得が他の主要国よりも低いことから、分担率が低めに設定されています。


2. ロシアの分担率と拠出金額

  • 国連分担率(2023年-2025年期間)では、ロシアの分担率は約**2.44%**です。

    • これに対し、主要国の分担率は以下の通り:

      • アメリカ:約22%

      • 中国:約15.2%

      • 日本:約8%

      • ドイツ:約6%

  • 実際の金額で見ると、ロシアの年間拠出金は約6,000万ドル前後と見積もられています。これは、アメリカや中国、日本の拠出金と比較して非常に小さい額です。


3. ロシアの経済規模と影響

  • ロシアの経済は、近年の制裁やエネルギー依存による構造的な問題、そしてウクライナ侵攻以降の経済的孤立によって、他の主要国と比べて規模が小さいです。

    • 例えば、ロシアのGDPは日本の半分以下、中国やアメリカと比べるとさらに大きな差があります。

  • そのため、国連の分担率も低く設定されており、拠出金額にも反映されています。


4. 国際機関での影響力確保

  • ロシアは、国連やその関連機関への拠出金を通じて影響力を行使するというよりも、**常任理事国としての「拒否権」**を活用することで存在感を示しています。

    • 国連安全保障理事会での「拒否権」を頻繁に行使し、特にウクライナ問題やシリア内戦などに関する決議を阻止してきました。

  • また、拠出金の少なさにもかかわらず、ロシアは核兵器保有国であることエネルギー資源の輸出国であることを武器に、国際政治での影響力を維持しています。


5. ロシアの自主的拠出金はさらに少ない

  • 国連機関への自主的拠出金(Voluntary Contributions)は、特定のプロジェクトや活動を支援するために支払われますが、ロシアはこれに積極的ではありません。

    • 一方で、中国や日本、欧州諸国はこの自主的拠出金を通じて、国際機関内での影響力を高めています。


6. ロシアへの批判と孤立

  • 特にウクライナ侵攻以降、ロシアは国連をはじめとする国際機関での孤立が進んでいます。

    • ロシアの行動を非難する決議案が採択される際、ロシアを支持する国は一部の限られた発展途上国のみで、支持を広げるための資金力も限られています。

  • 拠出金が少ないため、国際社会における責任を十分果たしていないと批判されることもあります。


結論

ロシアの国連への拠出金は、経済規模や支払い能力の制約から少なく、また、自主的拠出金にも消極的です。その結果、経済力や資金提供を通じて影響力を行使するよりも、常任理事国としての拒否権や軍事力を背景にした地政学的な存在感を利用する戦略を取っています。

しかし、これがウクライナ侵攻などを通じた国際的な孤立を加速させ、国連や国際機関内での発言力低下にもつながっています。

米国、中国以外、拠出金が少ないのに常任理事国として大きな権限を有してますね。 もう、戦勝国クラブはやめて、国際貢献を評価すればいいのに。

おっしゃる通り、**国連の常任理事国(P5:米国、英国、フランス、ロシア、中国)**が持つ特権的な地位、特に「拒否権」は、現在の国際情勢にそぐわないとの批判が増えています。これらの国々の特権は、第二次世界大戦後の「戦勝国クラブ」としての性格を色濃く残しており、時代遅れだとの指摘がしばしばなされます。以下に、その背景と国際社会での議論を整理しつつ、現状の問題点と改革の可能性について述べます。


1. 常任理事国の特権と問題点

(1) 拒否権の不平等性

  • 常任理事国は、国連安全保障理事会において**拒否権(veto)**を持ち、いかなる決議も1国の反対で否決される仕組みになっています。

  • 特に、ロシアや中国が拒否権を濫用して自国に不利な決議を阻止していることが問題視されています。例:

    • ロシア:ウクライナ侵攻に関する非難決議。

    • 中国:ウイグル問題や台湾問題に関連する決議。

(2) 貢献と権限の不釣り合い

  • 常任理事国のうち、アメリカや中国は多額の国連拠出金や国際活動で一定の責任を果たしている一方で、ロシアやフランス、イギリスは経済規模や国際貢献の面で劣るとの批判があります。

  • 例えば、日本やドイツは世界有数の拠出国でありながら、常任理事国ではありません。

(3) 戦後体制の固定化

  • 現在の常任理事国制度は、1945年の第二次世界大戦終結時の「戦勝国」を基に決定されており、現代の国際秩序や国際社会の多極化を反映していません。


2. 国際貢献に基づく新しい評価軸の必要性

(1) 現在の国際貢献上位国

  • 国連の運営や平和維持活動(PKO)、人道支援において多大な貢献をしている国は、アメリカ、日本、ドイツ、中国などであり、これらの国々がより大きな役割を果たすべきという意見があります。

  • 日本は、国連の定額拠出金で世界3位(2023年-2025年期間)を占めるだけでなく、PKO活動や災害支援でも重要な役割を担っています。

(2) 評価基準の変更案

  • 国際貢献度を評価基準とする案として、以下のような要素が考えられます:

    • 国連拠出金の割合。

    • PKOや人道支援での貢献度。

    • 環境問題や国際保健問題への取り組み。

    • 国際法の遵守や人権問題への対応。

(3) 新興国や地域のバランスの考慮

  • 常任理事国は、アフリカや南米、中東を含む地域からの代表が欠如しています。これらの地域からの代表を増やすことも、多極的な国際社会の反映につながります。


3. 国連改革の議論

(1) G4諸国(日本、ドイツ、インド、ブラジル)の動き

  • 日本やドイツ、インド、ブラジルは、常任理事国入りを目指して協力しています(G4諸国)。

  • これらの国々は、経済力や地域的影響力、国際貢献の点で常任理事国としての資格を持つと主張しています。

(2) 拒否権の制限案

  • 拒否権を完全になくすことは難しいものの、以下のような制限案が議論されています:

    • 人道的危機や大量虐殺に関する決議では拒否権を行使できない。

    • 拒否権行使には追加的な条件を課す(例:国連総会の承認)。

(3) 地域代表制の導入

  • アフリカ、中南米、中東などの代表国を増やすことで、国際社会全体をより公平に反映させるという提案もあります。


4. 国連改革の難しさ

(1) 常任理事国の抵抗

  • 常任理事国が自らの特権を手放す可能性は極めて低いです。特に、ロシアや中国は現状維持を支持しています。

  • 常任理事国の地位を変えるには、国連憲章の改正が必要であり、これにはすべての常任理事国の同意が必要です。

(2) 新たな対立構造の懸念

  • 新しい常任理事国を追加することで、既存の常任理事国との間に新たな対立構造が生まれる可能性があります。


5. 結論

国連の常任理事国制度は、「戦勝国クラブ」としての性格を維持しており、現代の国際社会に対応していないとの批判が高まっています。国際貢献度や地域バランスを基にした新しい評価基準を導入するべきという意見はもっともですが、改革には常任理事国自身の合意が必要であり、その実現には大きなハードルがあります。

日本のような貢献度の高い国が、国際社会での発言力を高めるためには、国連内外での多国間協力や影響力拡大を継続的に進めることが重要となるでしょう。そして、国際社会全体が「公平性と貢献」を重視する方向に進むことを期待したいところです。

疑念を持つ国々は1回脱退して、新しい枠組みの組織を作ればいいのでは?

確かに、現在の国連体制に疑念を抱く国々が一旦脱退し、新しい枠組みの国際組織を作るという考え方は理論的には可能です。しかし、現実的には多くの課題やリスクが伴います。以下に、この提案の利点と課題を整理しつつ、現実的な可能性について検討します。


1. 新しい枠組みを作るメリット

(1) 戦後の「戦勝国クラブ」からの脱却

  • 現在の国連は、第二次世界大戦後の戦勝国(特に常任理事国)の権限が強調されています。この枠組みを拒否することで、公平性と平等性を重視した新しい国際組織を設立できます。

(2) 国際貢献度を重視した枠組み

  • 国際貢献(資金拠出、平和維持活動、人道支援)を基準にリーダーシップを分配する新しい制度を構築できる可能性があります。

    • 例:日本やドイツ、インドなどが主導的な役割を果たす。

(3) 地域バランスの考慮

  • アフリカ、中南米、中東といった現在の国連で軽視されがちな地域にも公平な発言権を与えることができます。

(4) 拒否権の廃止

  • 常任理事国の「拒否権」をなくし、より民主的で柔軟な意思決定が可能になるかもしれません。


2. 新しい枠組みを作る際の課題

(1) 国際的な分裂のリスク

  • 国連は現在、193か国が加盟するほぼ唯一の全地球規模の国際協調機構です。この枠組みから離脱することは、国際社会の分裂を招く可能性があります。

    • 例えば、新しい組織に参加しない国々(アメリカ、中国、ロシアなど)が別のブロックを形成する可能性があり、冷戦構造のような新たな対立を生むリスクがあります。

(2) 国連の資産と機能の継承問題

  • 現在の国連は、膨大な資産と機能を持っています(例:世界保健機関、ユニセフ、UNHCRなど)。新しい枠組みを作る場合、それらの資産や機能をどのように引き継ぐかが課題です。

(3) 資金と運営の課題

  • 新しい枠組みを作る場合、莫大な初期投資が必要です。また、既存の国連に拠出していた資金を新組織に振り分ける場合でも、運営がスムーズにいくとは限りません。

(4) 新組織への参加国の確保

  • 新しい組織に参加する国々がどれだけ集まるかが鍵です。特に経済的な影響力を持つ国々(アメリカやEU諸国、中国など)が参加しなければ、実質的な影響力を持たない可能性があります。

(5) 国際法や外交ルールの混乱

  • 現在の国際法や国際協定は国連の枠組みを基にしているため、新しい組織が設立された場合、それらのルールがどのように適用されるのかが曖昧になります。


3. 過去の事例:国際連盟と国際連合

  • **国際連盟(League of Nations)**は、第一次世界大戦後に設立されましたが、主要国(アメリカなど)が加盟せず、また第二次世界大戦を防げなかったために機能不全に陥りました。

  • その後、国際連合(United Nations)が新たに設立され、より多くの国々が参加し、現在に至ります。

  • この歴史は、単純に新しい組織を作るだけでは機能しない可能性を示しています。


4. 現実的な選択肢:国連の改革

完全に新しい枠組みを作るのではなく、国連を改革することが現実的であると考えられます。

(1) 拒否権の制限

  • 拒否権の使用条件を厳しくする(例:人道的危機に関する決議には拒否権を行使できない)。

(2) 常任理事国の追加

  • 日本、ドイツ、インド、ブラジル、アフリカ連合(AU)代表などを新たな常任理事国として追加し、地域バランスを強化。

(3) 資金拠出や貢献度に基づく発言権の見直し

  • 資金や平和維持活動への貢献度に基づき、発言力や議決権を調整。


5. 結論

「新しい枠組みの組織を作る」というアイデアは理論的には魅力的ですが、現実的には国際社会の分裂や混乱を招くリスクが非常に高いです。そのため、現在の国連の枠組みを徐々に改革していく方向がより現実的かつ持続可能と言えるでしょう。

ただし、国連の改革が困難である以上、経済的・外交的影響力を持つ国々(日本、ドイツなど)が多国間協力を通じて影響力を拡大し、国際社会の方向性を変える努力が必要です。新しい組織を模索する議論が高まること自体が、国連の改革圧力となる可能性もありますね。

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