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【エロゲ】さよならを教えて 〜comment te dire adieu〜【感想】

※この記事はネタバレを含みます※


●あらすじ


主人公は教育実習生としてとある女子校を訪れていた。ある日、彼は美しい天使が異形の怪物に蹂躙されるという奇妙な夢を見る。彼が校内の保健医にその夢の相談をしていた時、一人の少女が保健室を訪れる。主人公の見た彼女の容姿は夢の中の天使に酷似していた。主人公は教育実習生としてヒロイン達と親しくなりながら奇妙な夢の真相を探る。


さよならを教えて


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●『 さよならを教えて 〜comment te dire adieu〜 』の登場人物(※ネタバレ注意)


〇人見 広介(ひとみ ひろすけ)
本作の主人公。教育実習生だが、精神的に疲れている。校内保健医の大森となえに奇妙な夢の内容を相談する。
実は精神病を患っている通院中の患者。自身が教育実習生で、学校に通っていると思っている。

〇巣鴨 睦月(すがも むつき)
本作のヒロイン的存在。教室に佇む儚げな少女。主人公を引き付ける清純さと、彼を恐れさせる現実離れした聖性を併せ持つ。彼女の容姿は、主人公の見た夢の中の天使と酷似している。
ルート選択のあるヒロインの中で唯一実在している少女である。
鬱病で通院していたが、物語の終盤には退院できるほどに回復していた。

〇高田 望美(たかだ のぞみ)
屋上から下界を眺める少女。快活で人懐っこい印象。煙草を吸いに屋上へと出た際、主人公は彼女と出会った。
実は彼女は主人公の妄想の産物であり、本当の姿はカラスである。

〇田町 まひる(たまち まひる)
校庭に現れる少女。主人公の幼馴染で、彼を「おにーちゃん」と呼び慕う。外見も性格も子供っぽい。感情の起伏が激しく、無邪気で気紛れ。
実は彼女は主人公の妄想の産物であり、本当の姿はネコである。

〇目黒 御幸(めぐろ みゆき)
図書室で司書係を務める少女。人と接するのが苦手で、図書室で本を読み耽っている。物事を斜めに見る傾向がある。眼鏡をかけている。兄がいる。
実は彼女は主人公の妄想の産物であり、本当の姿は標本である。

〇上野 こより(うえの こより)
弓道場に現れる少女。小柄だが巨乳。常にぼんやりしていて、少々抜けた性格。しかし、大変な毒舌家で、その言動は主人公の心を深く傷付ける。
実は彼女は主人公の妄想の産物であり、本当の姿は人形である。

〇大森 となえ(おおもり となえ)
校内保健医。喫煙者。常に気だるい雰囲気を漂わせている。生徒からの人気は高く、主人公の相談相手にもなる。
主人公の担当医であり、主人公の精神病に対して真摯かつ前向きに対応する。

〇高島 瀬美奈(たかしま せみな)
主人公の教育実習を担当する教師。スポーツで引き締まった肉体を持つ美人。冷酷な印象を持つ、毅然とした女性。
実は彼女は主人公の姉であり、唯一の身内である。大森 となえとは仲が良く、彼女に弟の担当をするように懇願した。


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●『 さよならを教えて 〜comment te dire adieu〜 』の内容(※ネタバレ注意)



人見広介は教育実習生としてとある学校に赴任することになった。

彼が学校に赴く時間は何故かいつも夕暮れどきぐらい。

保険医である大森となえの元へ行き、他愛もない会話をしながら煙草を吸う。

その後は、教室にいる天使の少女、屋上にいる鳥のような少女、中庭にいる猫のような少女、図書室にいる死体のような少女、弓道場にいる人形のような少女に会いに行く。

そして帰る前に、職員室で高島瀬美奈に急かされながら日誌を書く。

これが彼の毎日のルーティンであった。

しかし、彼には、ある苦悩があった。それは、決まって悪夢を見ることであった。

その悪夢とは、怪物が天使を犯す夢。

怪物は自分によく似ており、天使は教室にいる少女である巣鴨睦月によく似ていた。

人見広介は様々な少女たちと交流を深めていくなかで、やがて学園の七不思議について知ることとなる。

悪夢の真相、七不思議の謎、天使のような少女の行く末・・・。

彼に待ち受けている真実とは、一体何なのだろうか。

人見広介は精神病者である。

自分が教育実習生であることも、学校に赴任していることも、様々な少女と出会っていることも、全て彼の妄想での出来事だ。

彼は患者であり、病院で過ごしており、院内ではカラス、ネコ、標本、人形と会話する不気味な患者という烙印を押されている。

人見広介は幼いころから、虫や小さい生き物を殺すことを嬉々として行っていた。まひるというネコを飼っており、そのネコに虐待をしていた。また、優秀な姉(高島瀬美奈)との比較や、姉への性的いじめなどに関して、家族から強い叱責を浴びることも多かった。

そんな中、巣鴨睦月という鬱病の少女に出会い、実際に存在する彼女をそのままの存在として認識するようになる。

人見広介の担当医である大森となえは、それが回復の兆しとなると考え、彼女との積極的な交流を図るが、巣鴨睦月の退院の期日が迫っているのも事実であった。

彼女が退院するまでの期間、人見広介は教育実習生としての日常を妄想することになる。

ついに巣鴨睦月が退院した。

人見広介は毎日のルーティンとして、大森となえの元を訪れる。

彼は、自身がいる場所が学校ではないことを理解していた。

そして、自分は教育実習生ではないことも理解していた。

彼が理解していることは、ここは病院であり、自分は病院のインターン生徒であることであった。


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●『 さよならを教えて 〜comment te dire adieu〜 』をプレイした感想(※ネタバレ注意)


本作は三大電波ゲーの一つとして名を連ねている。

公式でもやパッケージには、以下のような注意書きが書かれている。
『ご注意

● 現実と虚構の区別がつかない方
● 生きているのが辛い方
● 犯罪行為をする予定のある方
● 何かにすがりたい方
● 殺人癖のある方
※このソフトには精神的嫌悪感を与える内容が含まれています。
上記に該当する方はご遠慮くださるよう、あらかじめお願い申しあげます。』

2001年に作成されたゲームでありながら、その内容はかなり現代に近いものであると感じた。

当時は評価されておらずワゴンで売られていたが、現代になってプレミアが付くほどに高騰している現状が、特にそれを物語っていると思う。私がそのように感じた理由は、やはり主人公である人見広介の境遇と立場である。

幼いころから虫や小動物の虐待をしていたり、自身が優位な立場の人間だと思っていたり、異性に対して恐怖に似た感情を抱いていたり、異性に性的嫌がらせをしていたり、それらの事柄に関して身内から強く叱責を受けていたりと、精神病を患うまでの過程がどこか身近なものに思えてくる。現実で犯罪を犯すような人はこういう人なのではないかと感じてしまう。

また、本作のCGは女性を無理やり犯すか、女性が主人公を強く求めた故で行われていたりのどちらかが主であり、そこで主人公の承認欲求や破壊衝動といった感情が強く伺える。女性に虐げられた過去があるからこそ、本能的に優位に立ちたいという心情の現れが顕著なのだろうと考察できる。

そういった精神病者に対する解像度の高さが、プレイヤーに対する恐怖や精神的嫌悪感としてあらわれているのではないだろうか。

作中で大森となえが、生真面目な人ほどこのような精神病を患うことが多いと言っていたが、まさにその通りだと思う。

ギロチンで首を切られる痛みよりも、鋭利な針で目を貫く痛みの方が想像出来る分苦しく感じるのと同じようなもので、何か特別な事象が原因ではなく、生まれつき存在していた”精神的なしこり”が原因であったという身近な救えなさが、本作が鬱ゲーと呼ばれる所以であると私は感じた。

また主人公の境遇以外にも、徐々に精神が不安定になっていく表現技法が、輪をかけて恐怖や精神的嫌悪感を生んでいる。

夢野久作著のドグラ・マグラのように文章表現が支離滅裂だったり、会話が繰り返されたり、主人公が選択肢通りの行動をしなかったり、文字で表記される場所と実際の風景が異なっていたり、大森となえの発言が妄想での発言と現実での発言とで二重になったりする。どこが妄想で、どこが現実なのかわからなくなっていく不安定な感覚は、実際にプレイしてみないと感じることはできないだろう。

私は本作に関して初見プレイではなく、実は人見広介が精神病者で、物語が妄想の中の話であることを理解していた。にもかかわらず、恐怖を感じ、陰鬱な気分がしばらく抜けなかった。しかし、その本作の陰鬱な部分が自分の闇と相殺されたようにも思う。客観的に自分を見つめ直す機会にもなり得た。毒を以て毒を制すとはよくいったものである。

『さよならを教えて』をただの鬱エロゲ―としてとどめておくには非常に勿体ない。

これはある種の文学作品であり、ぜひとも多くの18歳以上の人に体感してほしい作品となっている。


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●今回レビューした映画の詳細


題名:さよならを教えて 〜comment te dire adieu〜

発売元:CRAFTWORK

発売日:2001年3月2日

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