クレメンタインを打ち上げ、月の地形を明らかに タイタンⅡ 23G
アメリカ初期のロケットは、全て大陸間弾道ミサイルの転用であることはすでに述べている通りです。冷戦が終結してから、核軍縮への動きが強まり、アメリカでも保管してあった大陸間弾道ミサイルの多くは、人工衛星打ち上げ用ロケットへと変貌を遂げていきました。前回紹介した「タイタンⅡミサイル・ロケット」も人工衛星や宇宙船を打ち上げるロケットへと改造されていきました。今日紹介するのは、タイタンⅡ 23Gです。
<基本データ>
・打ち上げ国:アメリカ
・初打ち上げ:1988年
・最終打ち上げ:2003年
・全長:32m
<歴史・構造・ミッション>
タイタン23Gロケットは、アメリカ航空宇宙局(NASA)、アメリカ空軍、アメリカ海洋大気庁(NOAA)の人工衛星を打ち上げました。
ところで、NOAAはどんな組織かご存知ですか。
NOAAは「海のNASA」とも呼ばれています。アメリカの商務省の一部で、気象情報の提供や海洋調査を行う機関です。1970年に設立されました。自然災害からアメリカ人の生命と財産を守ることが目的で、天然資源を保護し、それらを有効活用することを目指しています。現在も気象や環境分野では国際的なリーダーシップを握ってます。ちなみに、NOAAはアメリカにある複数の局が統合されて作られました。
・沿岸測地測量局(1807年)
・気象庁(1870年) → アメリカ海洋大気庁 NOAA 1970年
・商業漁業局(1871年)
・環境科学業務局(1965年)
これらのうち、アメリカで最も古い機関だった沿岸測地測量局を設立したのは、なんと
アメリカ第3代大統領 トマス・ジェファーソン なのです。
ジェファーソンは、「アメリカ独立宣言」を起草!!!!
そう考えると、NOAAはアメリカ創成期から受け継がれてきた非常に由緒ある科学機関であることがわかります。
<ミッション>
このロケットが打ち上げた最も有名な探査機に「クレメンタイン」があります。
クレメンタインは、月を探査し、現代に通じる研究成果を残した惑星探査機です。
しかしながら、元々はアメリカ国防総省が計画・製作を行った探査機であることはあまり知られていません(多分・・・)。冷戦時代、戦略防衛構想(SDI)がアメリカで構想されました。別名を「スターウォーズ計画」!!!とも言われます。
その一環で、ミサイルを宇宙から探知するための実験計画がなされていました。ですが、冷戦が集結し、その必要性がなくなったのでアメリカは20年ぶりに月へ探査機を飛ばしたのです。
クレメンタインは2ヶ月かけて月を調査し、全体図をとることに成功しました。約5万枚の写真を合成し、4つのパートに分け、月の地形図を作ったのです。
(↑ 月の北極)
(↑ 月の南極)
そして、クレメンタイン最大の成果は、月の南極にあるクレーターに氷のようなものを発見したことにあります。この氷は、クレーターの太陽が差し込まない部分にあると考えられています。仮に、月でこのような発見が正式に認められれば、月面移住の際の酸素やロケットでの酸化剤の利用ができそうです。
(最近ロケットの写真が少ないですが、ご容赦ください!!)
<参考資料>
日本大百科全書(ニッポニカ)NOAA
<写真>
NASA WIKIPEDIA