寓話で思考訓練。
書店散策が趣味の僕にとって、やたらと目に飛び込んでくる本というのは気になるものです。
でも、あまり推しが強いと逆に出版社には騙されないぞ!という天邪鬼な気持ちになって、むしろ遠ざけてもしまいます。
本というのはどんどん淘汰されていくので、一期一会で熟成された?本に出会った時の方が尊い気持ちになり、在庫一冊しかない本に何かとんでもない化石を掘り起こしたような探険家気取りになってしまう僕です。
こちらの本もタイトルは面白いなと思いましたが、素通りを決め込んだものでした。
では、なぜ買ったのかと言えば、
電車に乗る時にすれ違った若い女性がカバーもつけずに手に持っていたのが目に入ったからです。
そもそも人が読んでいる本が気になるのは以前にも書いた通り。
そのくせ自分は、書店で会計を並んでいる時も極力タイトルが見えないようにしてしまう性分で、電車の中でカバーをかけずに読むのは最新刊の漫画くらいです。
という訳で、スケベ根性で(?)買ってみたこちらの本ですが、
まず大体1ページか見開き2ページで寓話がまとめられていて、
例えば、有名な北風と太陽や、全く知らない話を作者がうまくアレンジした話の紹介があり、その後で作者なりの見解や関連する読書ガイドが続きます。
どれも5分もあれば読めるような手軽さ。
それにしても、戸田智弘さんの読書量や多様な視座は為になります。
あと、77の話を紹介するには、当然地道に収集し、それに対していろんな考察を行なったという事になりますから、全313ページ以上の労力を考えるとなかなかスゴイです。
きっと第二弾も出る事でしょう。
本の中で気になった引用話としては、
大きなオフィスビルのオーナーへのクレームとして、エレベーターの待ち時間が長すぎるというものがあり、その解決策としてエレベーターを増やすとコストがかかるので、エレベーターの前に大きな鏡を置いたところ、
待っているほとんどの人達が鏡を覗き込み、身だしなみをチェックするようになり、待ち時間を気にしなくなったという話。
この話で思い出したのは、自動改札が発明された頃、切符の情報を読み取るのに時間がかかり、人が改札を抜ける時間に間に合わなかったという問題を従来の改札機より長くする事で解決したというアイデアです。
人は進行方向に通過しているので、ちょっとくらいの長さは気にならないわけですね。
さらに斎藤一人さんの話にも、人件費がないと嘆く飲食店の工夫として、給水機に「こちらの水は体にたいへん良い水です。何杯でもご自由にお召し上がりください」と書いては?というのがあって、なるほどまさにバイキングの発想だなと感じました。
人は何かをさせられていると感じると苦痛に思うものですが、何でも好きな食べ物が取り放題と思うと歩かさせられている事や運んでくるスタッフがいない事に不満を持たない逆転の発想です。
こんな風に紹介されている寓話や著者の見解から、自分なりに考えるタネ本にもなる素敵な本だと思います。願わくば、はずスラの記事からみなさんがネタを探すようになって頂ければ幸いです。