【Redefine / Nebula 全曲解説】02. Redefine
高校を卒業後、地元のソフトウェア会社に就職し、しばらくして市内にある大手電機メーカーの工場の電算部門に出向になった。
そこでは主に工場の生産計画や保守部品管理のシステムを担当していた。
開発言語はCOBOLで「汎用機」とか「メインフレーム」と呼ばれたような大規模なコンピュータルームを構えた場所での作業だった。
このCOBOLという言語には「REDEFINES」という命令(句、宣言とも)がある。ある一定の範囲にあるデータの区切りかたを再定義して、同じデータを異なる意味に解釈できるようにするためのものだ。
実際の例とは言えないが、考え方としては以下のような役割をするものだ。
「ここではきものをぬいでください」
この一文を「ここで」で区切るか「ここでは」で区切るかによってその意味はまったく異なるものになる。
プログラムの中で「ここではきものをぬいでください」という元データを「履物を脱ぐ」という意味で使いたいときもあれば「着物を脱ぐ」という意味で使いたい場合もあるときに「REDEFINES」を使ってデータ(の区切り方)を再定義すれば、このようなニーズに上手く対応できるというわけだ。
だが「REDEFINES」の本当にすごいところは(と私は思うのだが)「ここではきものをぬいでください」という元データには何ら変更をせずとも再定義できるというところだ。
データの区切り方を変えるだけで違った意味をもたらす……なかなか哲学的な奴ではないか。
2020年という年は今後の世界史に残るようなたいへんな年だった。しばらくは(あるいはこれからずっと?)いろいろと気を遣わなければならない時期が続くだろう。この現実を変えることはできない。しかしそんな自分を取り巻く環境や、自分自身でさえも、思考を「REDEFINES」すればまったく違った可能性、ものの見方ができるのではないだろうか?しかも元の自分を変える必要は無いのだ。変えるのは解釈の仕方だけでいいのだから。
この曲は大きく前半部と後半部にわかれている。後半部のヴォコーダーは KORG の microKORG だ(microKORG のヴォコーダーはファーストシングルの「What You’ve Done To Me」のサビでも使った)。
「サビ」と呼べるような部分が特に無いという変わった構成の曲だが、強いて言えばこのヴォコーダー部分が「サビ」と言えるかも知れない。
イントロやアウトロのちょっと滑稽なシンセサイザーのリフは自分のアタマの「区切り」を切り替える(またはブチ壊す?)ための電子信号のようなものだと思ってもらえれば。アタマを「REDEFINES」している音というか。
Spotify: Redefine
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