運動と脳機能の研究~大学院生奮闘記 博士課程編⑦~
博士課程に進学
色々と希望に満ち溢れた博士課程進学となった。18、19歳のころには何の目標もなく生きる意味を失っていたところから、初めて挑戦したいことに出会い、大学の最高学位の取得に挑戦できる立場まで来ることができた。よく博士課程に進学すると就職とか不利になるからやめた方がいいと言われる。もともとやりたいことがなくこの世から消えてしまいたいと思ってた自分にはそんな言葉は通用しなかった。安定した地位とかそんなものはいらない。どうせ生きているなら興味あることを全力で行うまでだ。そんな不器用精神でここまで生きてきた。
研究計画を練るので手いっぱい
博士に進学したからと言ってすぐに実験できるわけではない。自分の場合はそうだった。研究で個人的にかなり大切だと考えることは、方法論が正しいこと、新規性があることである。おそらくこの二つの要素がどちらか一つでも欠ければ、論文を投稿してもリジェクトという結果が待っている。
博士課程に進学してから脳波を扱うことになった。脳活動と聞くとMRI(Magnetic Resonance Imaging)とかfMRI(functional magnetic resonance imaging)とか聞いたことがあるかもしれない。よくテレビとか病院とかで脳の画像としてみる装置だ。これらは、脳形態や脳のどの部位が活動しているかを把握する手段として使われる。一方、脳波はMRIやfMRIでは観測できない、細かな時間での脳の処理過程を把握する手段として使用される。脳に情報が入るとミリ秒単位で活動の変化がおこる。この細かな時間で脳活動の変化を捉えられるのが脳波だ。
研究をするには研究計画を作成しなければならない。研究計画が完成すれば、次に研究機関が設立している倫理委員会というものに、研究計画を土台にした書類を提出しなければならない。研究は倫理的な側面を逸脱することなく行われなければならない。それを監査するのが倫理委員会だ。倫理委員会の承認を得てない研究は学会発表や論文投稿はできない。
研究するためには、まず研究計画書を書き、指導教官の先生に承認を得なければならない。そもそも脳波を用いた実験は初めてなので、どんな実験手順で行っていいか分からなかった。そこで、研究室で行われている脳波実験の補助をしたりして、脳波取得の技術を得た。そのような補助をしながら、研究計画を書いた。研究計画には、過去の研究ではどこまで明らかになっていて、どのような仮説がたつのか、この研究の新規性はどこにあるのか。仮説に対してどのような実験を行うのか。実験の手順などをできる限り詳細に記載する必要がある。
所属していた研究室では、週に1回の研究室ミーティングがあった。そこでは、一週間の進捗状況を発表しなければならない。そこで、考えた研究計画書をもとにどんな研究を行おうとしているか発表していた。K先生や指導教官の先生の反応は、、、これじゃ研究できるレベルじゃない。。。自分の研究を始めるためには、まだ駆け上がらなければならない階段が無限に続いているようだった。