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【6人声劇】マジシャンズカラー

タイトル:マジシャンズカラー


黒魔女さん:エナ・ノワール・カロシーニ

活発で元気な性格と見た目のせいで幼くみられることを気にする、魔女界のぼっち

白魔女をライバル視している


白魔女さん:ミリア・ブロン・オモルフォス

穏やかで優しく、美人で優秀ぱっと見完璧人間の宮廷公認魔術師

黒魔女が大好きだが、何故か避けられており溝はなかなか埋まらない


緑魔法使い:デルトラ・ヴェルト・ソフォス

自分が興味のあることにしか熱意を持てない根暗な内弁慶だが、定期的に凄まじい功績をあげる凄腕

黒魔女と素材屋にはまあまあ心を開いている

青魔法使いとも良好な関係

※性別変更可


赤魔女:イベルタ・ルージュ・エクリクス

はきはきとした力強く快活な女性であるが、かなりの乙女で見た目に寄らず最年少

少女漫画のような恋に憧れ、白魔女とよくコイバナをする仲

素材屋が好き

赤魔法の使い手だが、魔道具いじりが専門


青魔法使い:ハンス・ブル・イリミス

ハンサムでクール…かのように見えるが少し抜けた発言をする不思議な青年

緑魔法使いが好きでよく無理やり連れだしている

※性別変更可


素材屋:オーバン・カルテリア

魔術省が贔屓にしている素材屋の職員

癖の強い魔女たちしかいない配達区域、通称“S級ダンジョン”の担当

ときたま心が死ぬ


NA:誰がやっても大丈夫

◾️関連作品
・魔法使いが生まれたとき

・黒の祭壇

――――――――――――――――――――――――――


NA:魔法、それは魔力を有する選ばれた人間たちが長い研究によって培ってきた英知の結晶

歴史の中で人と魔法使いたちは手を取り合って協力してきた

広く共有された魔法技術によって、人々の生活大きく向上

いつしか魔法使いは、身近な存在ながらも、尊敬と感謝の対象として、人々認知されて…


黒魔女:はぁ~!!モテない!!


素材屋:…素材納品しましたんで内容確認してほしいんすけど、え~っと…黒ヤギの…


黒魔女:おい無視すんなよ

可愛い魔女さんがこんなにでっかい声出してんだぞ


素材屋:…どうしたんですか、そんなに大きい声を出して


黒魔女:これだよ!先週の新聞、読んだ?

ついにミリアが宮廷公認魔導士に認定だって!


素材屋:知ってますよ~僕ら素材屋界隈でも今後の白魔法使いの増加を見越して仕入れを増やそうという話が出てます


黒魔女:それに比べて…私ら黒魔法使いはどうだ!!

宮廷公認どころか人気が無さすぎるんだよ!


NA:魔力を持つ人間が生まれる確率は100人に1人程度

本人の適正などはあれど、基本的には何の魔法を修めるかは本人が決めること

つまり、人気があるかどうかは自らが修める魔法が存続するか否かに直結するのでした


素材屋:まあ確かに人気ないですよねぇ…なんででしょ?


黒魔女:私が思うに、原因は素材だ


素材屋:素材ですか?


黒魔女:そうだよ!白魔法の連中はやれセージだミントだローズマリーだのをい~い匂いさせながら焚いてんのに対して、こっちはカエル…クモ…ヘビ…


素材屋:ウサギの心臓ここ置いといていいですか?


黒魔女:ほらそういうの!!ほんっとモてる要素が一個もない!


素材屋:いっそ白魔法に寄せて名前変えますか?白って200色あるらしいですよ


黒魔女:なんの解決にもなってないだろ!

はあ…効果ならどの魔法にだって負けない自信あるのになぁ


素材屋:属性魔法はどれも効果が大きく違うじゃないですか

どれが上とか下とかじゃないですよ

それに、俺は好きですよ、黒魔法


黒魔女:ほんと!?じゃあ私の弟子になって、一緒に黒魔法の良さを広めよう!


素材屋:服に臭いつくから嫌です


黒魔女:てめえなぁ!

はぁ…まったくもったいないよね、あんたは

“魔力持ち”のくせに、どうして素材屋してるのさ

いや別に素材屋をバカにするつもりは無いよ、私たち魔法使いはあんたらがいないと仕事にならないし…でも、魔力持ちにしかできないことが魔法なのにさ?


素材屋:俺はこっちの方が性に合ってます

ところで…何してたんですか?…えげつない煮込みを作ってるようですが


黒魔女:ん?あぁ…頼み事されたから、薬を作ってたんだよ


素材屋:それはわかってるんですけど、なぜ麻痺薬なんてものを作ってるのかと聞いてます


黒魔女:さすがはオーバン!これだけで内容がわかるなんてすごいね!

いやぁ、ジリアナがさ、ほらあの、青魔女の

占いで恋人が遠くへ行くって出ちゃったから何とかしたいらしくて


素材屋:気でも狂ったんですか!?

物理的に遠くへ行けなくしたって意味ないですよ!


黒魔女:え?でも望まず離れ離れになるくらいなら…ねぇ?


素材屋:ねぇ…じゃないですよ!だからモテないんだろ!


黒魔女:うるさいな!


素材屋:はぁ…エナさん

日々瘦せたいと言ってますけど、見た目そのままで体重だけ減る魔法薬ってどう思います?


黒魔女:いらないよ~見た目変わらないなら意味ないじゃん


素材屋:でも数字が増え続けるよりマシでは?


黒魔女:見た目変わらないんだから本質的に意味ないよ


素材屋:その麻痺薬も同じことですよ


黒魔女:あ~……え?どゆこと?


素材屋:わかんないんかい

はぁ…わかる人を頼ったらどうです?

それこそミリアさんなんて適任では?


黒魔女:えぇ…あいつ頼るのかぁ…仕方ないなぁ…

惚れ薬作るなら、ミリアが詳しいだろうしね


素材屋:は?


黒魔女:おもいッきり惚れさせて二度と離れたくないと思わせればいいってことだ!


素材屋:あ~違う違う!…もうミリアさんに馬鹿な事言ってるって思われますよ…


――――――――――――――――――――――――――


黒魔女:…ってわけなんだけどさ、どう?


白魔女:惚れ薬ですか!作ります!

エナさんのためなら喜んで作らせていただきます!


素材屋:あぁ…この人エナさんに対しては正常な判断できないんだった…


黒魔女:そうかそうか!私も手伝うからさ、効き目ばっちしなの作ろう!


白魔女:薬ができたあかつきには…その、頭撫でてもいいですか…?


黒魔女:頭?なんか知らないけど好きにすれば?


白魔女:やった!気合い入れますね!


黒魔女:じゃあ私素材とって来るね~


(部屋を出ていくエナ)


白魔女:…オーバンさん、グッジョブです


素材屋:はぁ、エナさんのお話し聞いてました?

一緒に惚れ薬作ろうだなんて、正気の沙汰とは思えません


白魔女:何を言うんですか!エナさんが正しいと言うならすべて正しく、エナさんが黒と言えば、白も黒になるんです!大好きなエナさんがしたいことなら全力で手助けしてあげるべき…それが私の答え!あぁ…私は今この瞬間のために生きてきたんです…!


素材屋:多分違いますよ?

白魔女:…素材屋さん、3日前の新聞見ましたか?


素材屋:藪から棒ですね

みましたよ、デルトラさんが緑魔法の新しい術式開発に成功したって奴ですよね

称賛の嵐だって


白魔女:緑魔法の評価がうなぎ登りじゃないですか!それなのに…

私を含め、白魔法使いは肩身が狭すぎます!!


素材屋:なんかさっきやったなこのくだり…ミリアさんの宮廷公認魔導士選出を快く思ってない連中も多いですからね

他の魔法使いからの嫉妬も凄いし、魔法省の周りじゃ連日ファンとアンチが言い争ってますし


白魔女:普通にしんどいんですぅ…私が少しくらいエナさんを甘やかしてかわいがることで精神回復してもいいじゃないですか!

普段軽めに避けられてますし…


素材屋:それでいいならいいですけど…


白魔女:はぁ…白魔法は病気や怪我の治癒にとどまらず、解呪やアンデッドの浄化なんかも行うなくてはならない魔法なんですけどねぇ


赤魔女:アンデッドなんて燃やしちまえばいいじゃねえか


白魔女:うわっびっくりした!


素材屋:イベルタさんじゃないですか


赤魔女:よ、よう、素材屋


黒魔女:そこで会ったからさ

惚れ薬作るって言ったら興味あるって言ってくれて


素材屋:へえ、ちょっと意外かもです


赤魔女:まあ、ちょっとな?そんなことよりなんで素材屋もいるんだ?

…まさか!お前にも誰か惚れさせたい奴がいるのか!?


素材屋:いないですよそんなの…ただ巻き込まれてるだけです


イベルタ:なんだ…そ、そうか…


黒魔女:よしっ!それじゃあ作業と行こうか!黒魔法的なアプローチができる私!魔道具のプロフェッショナルイベルタ!


イベルタ:おう!


黒魔女:まあ…一応頼りにしてるミリア


白魔女:死力を尽くして頑張ります!!!!


素材屋:一人だけ勢いが違うんだよなぁ

…俺、配達残ってますから、行きますね


黒魔女:分かった~!成果を自慢するから絶対戻って来いよ~!


素材屋:…はい


――――――――――――――――――――――――――


緑魔:…てわけで、ここの構築がうまくいったわけ、わかった?


青魔:あぁ、よくわかった…おかげで俺の応用術式もうまくいきそうだ


素材屋:失礼しま~す…ってあれ、デルトラさんも一緒だったんですか?

珍しいですね、自分の部屋から出てるの


緑魔:人を引きこもりみたいに…


素材屋:事実そうでしょ?

ハンスさん、こんにちは、素材のお届けです


青魔:ありがとう、とてもいいタイミングで来たね


素材屋:いいタイミングですか?


青魔:あぁ、デルトラが見つけた新たな術式…青魔法への応用も可能そうだったから少し実験してたんだ

しかし、壁にぶつかってしまってね…デルトラの知恵を借りてたんだよ


素材屋:へえ、めんどくさがりのデルトラさんがそこまで…


緑魔:別に助けようと思ったわけじゃない…全く連絡つかなくなったからさすがに心配で様子を見に来ただけだし…実際は元気だった…床に倒れたけど


青魔:研究に熱中しすぎて床で寝ていたようでね


素材屋:それは気絶と言うんです

もしかして、3日前の発表からぶっ通しですか?

さすがに死にますから、しっかり休んでください


青魔:心配してくれるのかい?ありがとう


素材屋:いえ、配達完了のサインもらえなくなるので


青魔:ドライだね、しかし、それが君の魅力でもある


素材屋:はいはい、それで結局研究はうまくいったんですか?


緑魔:僕が直接かかわってるからね…当然の結果…


青魔:あぁ、おかげで得るものがあったよ


素材屋:ほんとですか?そんなぶっ通しで仕事して正常な判断ができるとは思えないですけど


青魔:本当だよ、俺はデルトラの理論を再構築して、攻撃魔法の高出力化に成功した

いい機会だし…今ここで…見せてあげよう!!!


素材屋:やっぱり正常な判断できてない!

デルトラさん止めてください!


緑魔:やめな、ハンス…ほこりが舞う


青魔:…む、そうか?


素材屋:ほこりが舞うでは済まないだろ…!

はぁ…ただでさえ面倒ごと抱えてるのに、命の危機まで抱えられないですよ


青魔:めんどうごと?面白そうだね、興味があるな


素材屋:え


緑魔:あ~あ…言わなきゃよかったのに…


青魔:何があったんだい?ぜひ教えてくれないか


素材屋:いや別に大したことないですよ、ほんと


青魔:なら尚更教えてくれてもいいじゃないか、ね?


素材屋:はぁ…エナさんとミリアさんとイベルタさんが惚れ薬作ってんですよ


青魔:それはとっても面白そうじゃないか、ぜひ見に行こう


素材屋:えぇ…これ以上事態を悪化させたくないんですけど


緑魔:諦めなよ…オーバン…もう、こうなったら誰も止めれやしない…のさ


青魔:じゃあすぐ出発しようか、デルトラ!


緑魔:ほら、この通り…

――――――――――――――――――――――――――


黒魔女:あぁ、それでそんな愉快なパーティーで戻ってきたわけね


素材屋:まぁ…はい…


白魔女:あぁ、もうハンスさん…体ボロボロじゃないですか

何したらこんなことになるんです?


青魔:少し研究に没頭しただけだよ

ミリアの白魔法があればだいたい何とかなるから大丈夫だ


白魔女:何とかなるレベルのうちに来てくれれば何とかなりますけど、何とかならないことだってありますよ~


赤魔女:よぉ!デルトラぁ!相変わらずほそっちい体してんなぁ!


緑魔:それ…セクハラ…


赤魔女:あぁ?俺のどこがセクハラだって言うんだよ!


緑魔:現代(いま)はめんどくさい世の中なんだよ…ちょっと…離れてくれるかな…


赤魔女:そんなことよりさ、お前の新術式見たぜ!すげえな!

あの技術を応用すれば、出力爆上がりの魔道具が作れるってもんだ!


青魔:それなら僕の研究成果がある

デルトラのおかげで、出力アップの構築術式を他色魔法に応用できることは実証済みだ


赤魔女:マジかよ!さっすがハンス!話が早くて助かるぜ!!


黒魔女:はいはいはいはい!

あんたら!当初の目的忘れてんじゃないの!

惚れ薬作るんでしょ!惚れ薬!素材持ってきたから、各自確認!!


※ごちゃっと喋る

白魔女:は~い!

赤魔女:へ~い

青魔:わかった

緑魔:…なんで僕まで


緑魔:はぁ…でも素材って…ヘビだねこれ


赤魔女:こりゃあ…何の内臓だ…


青魔法:こっちはネズミだね


白魔女:うぎゃあ!!カエル!?カエルです!?


黒魔女:なんだよお前ら!私の用意した素材に文句あるのか!!


緑魔:黒魔法は魔法の中でも異端だ…構築式も使用素材も僕らのとはかけ離れてる

僕らの魔法への応用は難しいんだよ…


黒魔女:ぐぬぬ…まぁ確かに、そのせいで黒魔法使いは少ないわけだし…

黒魔法覚えると黒魔法使いにしかなれない場合が多いし…


白魔女:うちの素材もいくつか使いましょうか

白魔法も魔法形態が結構特殊なので、皆さんと共有できるものが多くはありませんが


赤魔女:オーバン、俺が頼んでた分の素材もあるだろ

今持ってるか?


素材屋:持ってますよ?後回しにしようと思ってたので


赤魔女:ならそれも使おうぜ

赤、青、緑は術式も似てるからな!流用できるものも多いはずだ


素材屋:イベルタさんがそれでいいなら僕は納品するだけですが…


赤魔女:いいんだよ!そっちの方が面白そうじゃねえか!


素材屋:ふふ、そうですね、イベルタさんらしくて素敵ですよ


赤魔女:す、すす!素敵ってお前!!


素材屋:え~と、じゃあこの辺置いときますね

それじゃあ、僕はこれで


白魔女:え、帰ってしまうんですか?


青魔:そうだよ、オーバン

魔法研究の最高峰たる魔法省5色の魔法使いが一堂に会して、魔法薬作るなんて

魔法使いたちが大金はたいてでも見学したがるような一大イベントだよ?


赤魔女:そ、そうだぜ!俺たちがどれだけ凄いか見てってくれよ!


黒魔女:そうだそうだ!見てけ~


緑魔:頼む…オーバン…こんな魔境に僕を一人にしないでくれ…!


素材屋:…はぁ、わかりましたよ、上司には僕から話しておきます


黒魔女:よし!オーバンも素材も確保したし、イベルタの作業部屋に移動だ!!


白魔女/赤魔女/青魔:おー!


――――――――――――――――――――――――――


赤魔女:…とは言ったが、全然片付けてなかった…すまねえなぁ…散らかっててよぉ…


白魔女:いえいえ!仕事人って感じの素敵な部屋です!


赤魔女:ありがとよ、まあ楽にしてくれ


素材屋:ところでどうしてイベルタさんの作業部屋に?


黒魔女:いやぁマジのガチで薬作り出したら、それなりの魔道具無いといいものできないよなぁってなったんだよ


青魔:せっかくこのメンバーが揃ってるんだし、その方がきっといい


黒魔女:でしょ~?

緑魔:とりあえず…作るのは惚れ薬だろ…?

ミリアの薬をベースにして、そこに僕らのエッセンスを足す…感じ…かな?


黒魔女:あってるあってる

じゃあ、ミリア頼んだよ


白魔女:はい!実は以前作成した魔法薬のベースがありましたので、こちらを惚れ薬に調整していくのが良いかと!


赤魔女:お前ら、鍋に火つけるぞ~燃えないように気をつけろよ~


黒魔女:さて、惚れるってのは一種の気の迷いだと思うんだよ


青魔:と言うと?


黒魔女:普段は何ともない奴が急にかっこよく見える、何かのきっかけで胸がときめく…

つまりは正常な判断ができてない状態ってわけだ


緑魔:うわぁ…卑屈…だから…モテない…


黒魔女:お前にだけは言われたくない!

というわけでまずは幻惑作用


赤魔女:おいおい!大丈夫なのか!?そんな物騒な作用で!


素材屋:大丈夫なわけないです!何考えてんですか!


白魔女:いいえ!エナさんはいつも正しいです!

どんどん幻惑しましょう!


黒魔女:ほら!専門家もそう言ってるじゃないか!


青魔:待て待て、ただ幻惑したって好きにはならないだろう?

それじゃあただの混乱薬だ


赤魔女:そうだそうだ!惚れるってのはそういうのじゃないだろ!


黒魔女:むぅ~じゃあ何だってんだよ!イベルタ!


赤魔女:そ、それは…そのぉ…あれだよ…

知らぬ間にそいつのことを考えてたり…目で追ったり…

自分が自分を抑えられなくなるというか…


青魔:なるほど、興味深い意見だ…では感情の抑制を緩慢(かんまん)にする作用を盛り込もう


素材屋:それ解釈合ってますか!?


青魔:え?違うかな


白魔女:自分を抑えられなくなる…言い得て妙ですね…!

愛する人を前にすれば…自分を偽ることすら難しいものです…!

……なのでそういう作用も入れましょうっ


素材屋:そんな軽い気持ちでっ…!…なんか色やばくないですか…!!


緑魔:まずい…多色の作用がぶつかり合って魔法が鍋からあふれそうだ…!


素材屋:それ溢れたらどうなるんですか!?


緑魔:魔力暴走…最悪このあたり吹き飛ぶ


素材屋:やばいじゃないですか!!


黒魔女:大丈夫だよ~その程度で魔法使いは死なないし


素材屋:僕は死ぬんですよ!


白魔女:エナさんは私が守りますね!!


素材屋:いやその人全然余裕だったでしょうが!


赤魔女:素材屋は俺が守るからこっちに来い!さあ!


素材屋:まずは鍋をなんとかしろ!!


緑魔:落ち着けオーバン…僕の魔法で全体の成分を安定させる…!

エンデルフィアの葉っぱを一枚貸してくれるか


素材屋:わかりました!さすがデルトラさん!いざという時には頼りになる!


緑魔:荒々しくたゆたう葉に巡りし、生命(いのち)のしらべ

美しき旋律となり、水面を鎮(しず)めよ


青魔:俺も手伝おう…荒波よ、水面(みなも)にたゆたう葉がごとく、流麗なる姿を我に見せよ


白魔女:二色の二重詠唱ですね…無駄のない美しい構築式です


素材屋:鍋が落ち着いてく…さすがは魔法省のトップエリート…

薬は…綺麗な紫色になりましたね


黒魔女:落ち着いてるうちに、しっかりと魔法瓶に詰めてっと…

私たちの入れた効果が綺麗に混ざり合った魔法薬かぁ…こりゃあ値がつけられないような代物になっちゃったな


素材屋:確かに…僕が見てもわかるくらいすごい魔力が綺麗に圧縮されてますね…

幻惑作用、感情抑制、そして強力な虚言阻害…あれ?これって惚れ薬というか…


青魔:うん、凄まじい効果を持った自白剤だね


素材屋:駄目じゃねえか!!


緑魔:…この薬を摂取すれば…相手を前にしたときに言ってはいけないような本音も…

暴言も何もかも…言わずにはいられなくなる…だろうな

感情抑制の効果もついてるから…怒りや憎しみ、悲しみなんかも止められなくなる…


赤魔女:な…なんて恐ろしい薬なんだ…!!


素材屋:とんでもない価値のある薬だってことは認めますけど危険すぎますね…

もったいないけど捨てた方が安全だと思います


白魔女:そ、そうですね…何でもかんでも相手にさらけ出してしまうのはさすがに危険すぎますね…!


黒魔女:仕方ないか、じゃあ捨てちゃうよ!よっと!


赤魔女:…ん?おい黒魔女…それ、何に入れた…?


黒魔女:へ?ゴミ箱


赤魔女:それ…ゴミ箱じゃねえよ…!!


素材屋:え…何に入れたんですか…!?うおっ!?


青魔:箱から、魔力波が空に向かって撃ち出されたね…

…イベルタ、もしかしてこれって


赤魔女:魔法効果を雨に乗せる魔道具…だな…


白魔女:あぁ…雲がすごい色になっていきます…

魔法効果を乗せるということは…もしやこの後雨が降ったりしたら…


赤魔女:雨があたった奴全員に薬の効果が出ちまう…!!


素材屋:予想される効果範囲は…!?


赤魔女:たぶん…街全体…かな?


黒魔女:…もしかして私…やっちゃった…?


緑魔女:作戦…会議…開始…はぁ…それで、申し開き…?


黒魔女:…いいえ


素材屋:…どうして確認もせずに…しかもあんな魔法薬、普通のごみ箱に入れるだけでいいわけないでしょう…?


黒魔女:はい、おっしゃる通りで…


白魔女:まぁまぁ、エナさんも反省していますし…

まだすぐに雨が降ると決まったわけでもないですから…

その間に解決策を考えましょう


青魔:よし、わかったよ


赤魔女:お、ちょうどハンスの占いが終わったみたいだな

ハンスの天気予報なら的中率100%だ


青魔:あと3時間だね


赤魔女:…あ?


青魔:雨が降るまであと3時間だ


赤魔女:…マジ?


緑魔:あと3時間で薬の解析完璧に終わらせて解毒剤の作成…?詰んでる…


素材屋:そんなに難しいんですか…?


緑魔:…解毒剤作成の基礎は“反作用”だ…

幻惑効果の反作用は?感情抑制は…精神攻撃耐性かな…強力な虚言阻害への反作用はなんだ…噓を言わせるのか…?

この魔法薬はみんなの魔法のエッセンスを混ぜ合わせて一つの魔法薬に昇華させている

紐を絡ませるのは簡単でも、ほどくのが難しいのと同じで、かなり複雑に絡み合った構築式を解きほぐすのはかなり骨が折れるだろう


黒魔女:…あの…一つよろしいでしょうか…


素材屋:どうしました?


黒魔女:黒魔法の得意分野は効果減衰や弱体化…状態異常…いわゆるデバフだ

黒魔法の効果をみんなの魔法で超強化すれば、魔法薬効果を減衰させて結果的に解毒剤になるものが作れるかも


青魔:なるほど…理論上は作成が可能そうだね

でも実際にそんなことできるのかい?


黒魔女:私は、数少ない最上級称号持ちの黒魔法使いだよ

デルトラが見つけた新術式を流用できれば黒魔法の効果出力だってあげられるはずだ!

街に与える影響を限りなく0にすることはできるはずだよ!


赤魔女:言いたいことはわかるけどよ…


青魔:…そうだな、まぁ、言い分の理解はできる


緑魔:はぁ…いいよ


黒魔女:デルトラ…!


緑魔:…僕はエナの能力を知ってる

二人で協力すれば…新術式の黒魔法への流用もたぶんできる…

僕は可能性の高いほうに賭ける


青魔:デルトラがそう言うなら、僕も異論はない


赤魔女:…しょうがねえな腹ぁくくるか!


白魔女:私は最初からエナさんの味方です!!


黒魔女:みんな…ありがとう!

…よし、そうと決まれば!レシピ作りだ!!


赤魔女:俺は魔道具の調整に回らせてもらうぜ

さっきの射出で中の回路がいかれちまった…未完成品だったからな…

超特急でもう一発撃てるようにしてやる


素材屋:エナさん、素材は足りるんですか?


黒魔女:うげ、もしかしたら足りないかも


素材屋:わかりました、うちのツテをフルに活用して素材の手配を進めます

何が必要か随時この魔法紙(まほうし)に書き出してください

緊急用の発注用紙になるので、急ぎで本社から送られてくるはずです


黒魔女:オーバン…!!ありがとう!


素材屋:イベルタさん、魔道具の調整は僕の方でもサポートに入るので指示をもらってもいいですか?


赤魔女:お、おう!あんがとよ!


素材屋:じゃあ、僕らはこっちで作業します

皆さんよろしくお願いしますね…ほんとに


黒魔女:任せておいてよ!

私らも始めよう!まずは私とデルトラで新構築術式の流用可能かの実験だ

…ミリア


白魔女:はい!


黒魔女:これ、私の魔法薬に関する資料と…ここに魔法薬のベース剤があるから

これをもとにして、ハンスと仮レシピの作成してもらってもいいかな?


白魔女:わかりました!


青魔:わかった


黒魔女:じゃあデルトラ、始めようか


緑魔:あぁ…ハンスが倒れながら他属性への流用事例を作ってくれて助かった

黒魔法への流用は難しいだろうけど…僕なら…いや君と一緒ならできる…はずだ


黒魔女:黒魔法ははるか昔に“呪い”として栄えた闇の魔術だ

他の魔法が混ざってこれないのも無理ない嫌われ者の陰キャぼっちの魔法だ…それなのに無理言ってほんと申し訳ないよ


緑魔:昔と今は違う…エナの魔法は現代で世の中に役立ってる…

今回はエナのミスだけど…作ったのは僕らだ…必ず挽回しよう…


黒魔女:…ありがと


緑魔:僕の作った新術式のかなめは簡略化だ


黒魔女:簡略化?高密度化じゃないの?出力アップだろ?


緑魔:それが盲点だ…術式を簡略化して隙間を作れば、もう一つ術式をねじ込める


黒魔女:マジ?そんなの術式の接続がうまくいかなくて、二つの魔法が同時に発動するか、悪けりゃ暴発するだけじゃないの?


緑魔:それを可能にするのが、僕の考案した接続術式…

既存術式の簡易構築を実施できるプロセスと…接続術式がその資料に載ってる…

ハンスとの研究データをもとに、黒魔法での術式を組み上げる


黒魔女:確かにこれすごいな…もしかして昔仕事がだるすぎて作った簡略化術式が役に立つかも…!


緑魔:エナのぐうたらが役に立つとはね…


黒魔女:ぐうたら言うな!




青魔:…向こうはいい雰囲気だね

こっちも負けてられないな


白魔女:…


青魔:…ミリアさん?


白魔女:…あぁすいません、ちょっと集中してて


青魔:いや邪魔してすまない…

魔法薬は白と黒が本業だ…あくまで僕はサポートに回らせてもらうよ


白魔女:ありがとうございます…せっかくエナさんが私たちに託してくれた仕事です…なんとしても成功させます


青魔:ほんとうに大好きなんだね、エナのこと


白魔女:はい…エナさんはそんなに私が好きじゃないと思いますけど…

だけど私は努力家でちょっぴり抜けてて、すっごくかわいいエナさんが…とても大好きなんです

だから私…少しでもエナさんの役に立ちたいんです…!!


青魔:…どうしてそう思うの?


白魔女:…へ?


青魔:どうしてエナが君を好きじゃないって思う?


白魔女:だって…エナさんが私を好きそうに見えますか?


青魔:…エナは君のことをよくライバルだって言ってるよ

まぁ勝手にそう言ってるだけらしいけど


白魔女:…ライバルですか?…私が?


青魔:黒魔法はもともと闇の魔術と呼ばれて怖がられていた

今もその名残は少しあるだろうし、使い手も少ない…

そんな黒魔法使いは年々増加傾向だ

彼女がこの数年の間で打ち立てた功績の賜物だろう

魔法使いで彼女の名を知らない人間なんて誰もいない


白魔女:…そうですね、私なんかと違ってエナさんは本当にすごいんです…!


青魔:そんな彼女がライバルと呼ぶほどの逸材に後ろ向きな感情をいだくのかな?

僕は、少なくともミリアさんの実力はエナに認められてるとは思うけど?


白魔女:ハンスさん…!ありがとうございます…!


青魔:気楽にいこう

君の実力はエナが知ってる、だから君に託したんだ

彼女をびっくりさせてやろう


白魔女:…はい!




素材屋:…レシピも術式も何とかなりそうみたいですね…

イベルタさん…そっちはどうですか?


赤魔女:だ~めだぁ…中の魔導回路は再構築できそうなんだが…

機械部分がいかれてやがる…くそっ…!パッキンに手が届かないな…


素材屋:僕がやります、どこですか?

隣失礼しますね


赤魔女:お、おう、ここだ…深くて届かなくて…


素材屋:ここですね…よっ…


赤魔女:パッキンを締めて…その隣のボルト締めれるか?

素材屋:いけます、レンチもらえますか?

赤魔女:おう


素材屋:ありがとうございます


赤魔女:意外と手際がいいんだな


素材屋:…イベルタさんは昔から憧れでしたから


赤魔女:…え?


素材屋:15歳で魔導鉄道駆動(まどうてつどうくどう)エンジンの設計図のひな型を書き出した稀代の天才

男として、イベルタさんの作る魔道具にはいつもワクワクさせられたもんですから

その影響で機械いじりは趣味程度でやってたんです


赤魔女:そうだったのか…なんか嬉しいな


素材屋:いつも色々問題起こされてますけど…本当にみなさんこの国の宝ですよ


赤魔女:俺も…みんなだってオーバンに感謝してるよ

いろんな素材屋と提携したけど、みんなすぐにやめてっちまうから…

長期の担当がつかなくてさ、みんな素材が欲しいときに来なかったり、正しい加工がされてなかったり…現場とのすり合わせがうまくできなくて…

でも、オーバンのおかげでみんな仕事がしやすくなったんだぜ


素材屋:そう思ってもらえるなら嬉しいですね…イベルタさん、射出機構見てくれませんか


赤魔女:うえっ!ノズルが溶けちまってる…このままじゃ長距離射出が難しいぞ…

空に近いところまでこれを持っていかなきゃ効果が薄まっちまう…


素材屋:空に持っていくったって…こんな重い機械どうやって…


青魔:オーバン、俺がいれば大丈夫だ


素材屋:ハンスさん…!本当ですか?


青魔:ちょうどよく雨が降りそうだからね…俺の土俵だ


素材屋:…わかりました、ハンスさんがそう言うなら信じます


青魔:任せてくれ

それと、レシピの仮組は完成した

後はエナに調整してもらって、調合開始になる


素材屋:早いですね!


青魔:ミリアさんが頑張ってくれたからね

さすがは宮廷公認魔導士


素材屋:よく言いますよ…この中ならハンスさんが一番やばいの知ってるんですからね?


青魔:昔の話だよ

さぁ、あとは彼女らだけだ



黒魔女:…やばいな…時間は!?


緑魔:薬を作る時間を考えると、あと1時間…だな…


黒魔女:くそっ!時間が足りない…!

あと少しなのに…

何かが…何がダメなんだ…理論上はできるはずなのに!


緑魔:落ち着け…焦ってもいいことはない…

こういう時こそ頭を柔らかく…柔らかく…?


黒魔女:どうしたの?


緑魔:接続術式の粗(あら)を見つけた…ここの場所だ…


黒魔女:ここって…基礎術式の応用だろ?


緑魔:まさに頭を柔らかくだ…!基礎だからそのまま公式を使用していたが…実際は別の省略術式での代入が可能だ!

術式の隙間があけば、エナの言う何かが追加できるはずだ…!!


黒魔女:でも何かがわかってない…!


緑魔:ハンスのデータに答えがあったよ…!あいつ…ここまで気づいていたんだ…

僕の接続術式の邪魔をしない、魔法効果増大術式の素案…さすがだな…!


黒魔女:確かに…これなら…黒魔法への完全流用が可能だ…!!

いける!いけるよ!

ミリアたちに作ってもらった仮レシピ…魔法薬の効果を減少させる魔法薬

そこに私の黒魔法もりもりで、効果をアホほど上昇させる!


緑魔:ならさっそく…調合といこうか…!


――――――――――――――――――――――――――



白魔女:湿った風が吹いてきましたね…


青魔:雨が降るまでは後5分ってところかな

イベルタ、準備は?


赤魔女:オーバンのおかげで完璧だ

でも、やっぱり射出機構だけはどうしても直せなかった

空の近くまで行って、魔法薬を発射するしかない


青魔:それに関しては問題ないよ

覚悟は決めてもらったからね


黒魔女:…もともとは私が撒いた種だ!私が責任を取る!


白魔女:私もお供します!危険な役回りをエナさんだけにはさせられません!


黒魔女:ミリア…ほんとにいいんだよ?

たぶんマジのマジで危ないから…


白魔女:いいえ、私もう決めましたから

それに、この機械はふたりじゃなきゃきっと支えられません


黒魔女:それはそうかもだけど…


青魔:さあさあ、二人とももう時間がない

腹を括ってもらうよ

今から俺が巨大な水柱を作って君らを空に押し上げる


緑魔:この薬は強力すぎて、街中の魔法薬の効果を0にしかねない

そうすれば病院の治療薬なんかの効果もなくなる…

自白効果のある雨に的を絞るためにあそこの紫が一番濃い雲から雨が降り出してから機械を起動だ…いいな?


黒魔女:…わかった


白魔女:…はい!


赤魔女:しかし…本当にそんなことできるのか?ハンスがすごい魔法使いってのは知ってるけどさ…

二人と機械を安定して打ち上げるほどの魔法なんて、魔力量も膨大になるしコントロールも激ムズだぜ


素材屋:イベルタさんはご存知じゃないんですね


赤魔女:…何をだ?


黒魔女:イベルタは若いもんね

ハンスは昔、トリプルカラーって呼ばれてた3属性魔法使いだったんだ

私なんかより頭何個も突き出てるマジもんの凄腕だよ

今は青魔法専門だけどね


赤魔女:マジかよ!3属性の習得なんて絵空事みたいな話だと思ってたぜ


白魔女:学生時代はその魔法技術で暴れてらっしゃったってもっぱらの噂ですよね


青魔:昔の若気の至りだよ

よし、魔力量もコントロールも問題ない

術式詠唱は地面に描いたから省略…構築式も完璧…さあ…行くよ…!


黒魔女:よしっ!

白魔女:はい!


青魔:3…2…1…行け!


黒魔女:うおおおおおあああああ!!

白魔女:わああああああああああ!!


素材屋:…頼みましたよ



白魔女:…あ…!?きた!来ました!雨です!


黒魔女:よし!機械を起動だ!

一緒にバーをさげるぞ!

ぐぬっ…!!くそ!!硬いな!!

水に浮いてるから踏ん張りがきかない…!!


白魔女:エナさん!!私エナさんのこと大好きです…!!


黒魔女:はぁ!?こんな時に何言って…もしかして自白剤の効果か…!!


白魔女:白魔法も黒魔法も地味な魔法って思われてます…!

でも…白魔法は人を癒す魔法だって!私は自分の魔法に誇りを持ってたんです!

だからこそ…人を“呪う”黒魔法が…大嫌いでした!!


黒魔女:あぁ…知ってる…知ってるよ!

昔あんたが黒魔法は好きじゃなかったことくらい…!!

だから私は…!…私…は何を言ってんだ…!?




素材屋:魔法薬発射されないですよ…!!何があったんだ…!!


青魔:空に近いぶん、地上の人たちより早く薬の効果が出たのかもね…まずいな

幻惑と感情の爆発でまともじゃなくなってる可能性があるかも…

魔力の膜があればある程度防げると思ったんだが…五色の魔法薬がそこまで強力とは…!


緑魔:まずいな…ハンスの魔法だって長く持つわけじゃないぞ…


赤魔女:頑張れ!エナ!ミリア!

大好きだぞ!素材屋!


素材屋:え?あ、ありがとうございます…?




黒魔女:私は悔しかった!だから…だから必死で頑張ったんだ!

勝手にあんたをライバルにして!黒魔法だって人を救える魔法だって…!


白魔女:私…黒魔法のこと何もわかってなくて…!

エナさんは頑張り屋で、負けず嫌いで、凄い実績を何個も打ち立てて…それで初めて気づいたんです!

黒と白に良いも悪いも無いんだって…!

尊敬してます!私はもう黒魔法を嫌ってなんかない…!それだけは…それだけは知ってほしくて…!


黒魔女:わかってるよそんなこと!私が出した功績は…あんたに…ミリアに黒魔法を認めさせたかったからだ!

あんたのこと…!白魔法使いで、大人っぽくて、モテてて…私と正反対なあんたを!

私は誰よりも見てきたんだ!!

なんでだよ…!ミリアに負けたくなくて…頑張ってきたのに…ずっと競い合っていたかったのに…!

どうしてあんたは勝手に私の下に行こうとするんだ!!


白魔女:エナさん…


黒魔女:あんたが宮廷公認魔導士になって嬉しかった…!

またあんたの背中を追えるって…ライバルって呼べるって…!!

そのでかい胸張れよ!ほんとに白魔法に誇りがあるなら、私に好かれるなんてしょぼいこと目標にすんな!自分を卑下して、私を上にしようとすんな!!

あんたは私のでかい目標なんだ!それが私の好きなミリア・ブロン・オモルフォスなんだよ!

だから…だから…だから、スイッチだ…!!レバーを引け!!ミリア!!

魔力を使って薬剤効果から精神を守れ!


白魔女:へ?…はっ!しまった…すいません!!

…もう、大丈夫です!レバー…引きます!!

せーのっ!!


黒魔女:おりゃああああ!!!


――――――――――――――――――――――――――

(エナとミリアは地上に戻って来る)


緑魔:ふぅ…どうなることかと思ったけど一件落着か…


青魔:そうだね…まあ、影響範囲は確認するべきだろう

表向きは…そうだな、薬剤研究の際の事故ってことで丸く収めようか


黒魔女:そうしてくれるとありがたいよ

ハンスが前に出てくれれば、たぶんお偉方もそんなにうるさくはしてこないだろうし


白魔女:そうですね…ところで、イベルタさんはどうしたんですか?


赤魔女:…もう無理…ほんと無理…


緑魔:魔法防御で薬剤効果を防ぎきれなくてな…素材屋に告って後悔してる…


白魔女:あらぁ…お気の毒に…


黒魔女:みんな気づいてたけどな


赤魔女:うるさいな!…えっ気づいてたの!?


素材屋:イ、イベルタさん…?


赤魔女:はいっ!?


素材屋:あの…ぼ、僕で良ければ、こんどの休日一緒にお出かけでも…どうです?


赤魔女:…マジ?


素材屋:…はい


赤魔女:……うぁ


青魔:あ、倒れた


緑魔:処理しきれなかったな…


黒魔女:何はともあれハッピーなエンドじゃんか


素材屋:それはどうでしょう


黒魔女:ほぇ?


素材屋:解毒剤作成のために急遽発注した素材ですが…特急料金も合わせまして…

見積がこんな感じです


黒魔女:ひょっ…!?


青魔:あ、倒れた


緑魔:あぁ…考えたくもないな…さて、僕は戻る

外に出すぎてクラクラして来た


青魔:僕も戻ろう

いいデータが取れたし楽しかったよ


緑魔:ハンスのおかげで僕の研究がまた進みそうだよ


赤魔女:素材屋…いや、えっとお、おーばんさん…あ…後で…連絡しまひゅ

素材屋:僕も落ち着いたら連絡しますね

さて…戻ったら報告書まとめないとなぁ…


黒魔女:はぁ…研究予算削らなきゃ…


白魔女:エナさん


黒魔女:…なんだよミリア


白魔女:私、頑張りますね

エナさんが好きなミリアでいられるように


黒魔女:…うっさい

次宮廷公認魔導士になるのは私だ…


白魔女:はい


黒魔女:…ほら


白魔女:何ですか?


黒魔女:約束だったろ…頭…撫でるの…


白魔女:いいんですか!?ついでにぎゅーもさせてください!


黒魔女:いやだよ!おい!近いな!!はなれろぉぉ!



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