【5人声劇】探偵事務所オーディナリー2


■キャラ

☆天馬(あま)さざめ:性別自由

探偵事務所オーディナリーの探偵助手

一癖も二癖もある探偵たちの管理と手助けを行ういたって普通の一般人

異能者だらけのオーディナリーで自分だけが能力を持たないことに引け目を感じている


1 グレア:男 ※可能なら性別自由

能力:発火(パイロキネシス)

超自然発火能力を有する異能者

火炎放射のように炎を出したり、爆発を起こすことも可能

荒々しく粗暴で、よく壊したものを弁償している


2 ジョー:男 ※可能なら性別自由

能力:接触感応(サイコメトリー)

触れた者から残留思念を読み取り、過去を見ることができる異能者

大勢の触れた物や残留思念の薄い者を追いすぎると脳が焼き切れる

イギリス紳士であり喧嘩を好まない優しい性格をしているが、身長が198㎝ある


A エミリー:女 

能力:複製(コピー)

無生物であればどんなものでも複製することができる異能者

例外として自分だけは複製することが可能

おっとりしており、常に眠そうにしている


B月鈴(ユーリン):女

能力:毒(ポイズン)

固体、液体、気体のいずれかの形で体液を毒物に変えることができる異能者

基本適当な性格であり負けず嫌い

夜鈴は双子の姉



△夜鈴(イーリン):女

能力:解毒(デトロキシフィケーション)

毒物を体内で解析し、無害な物質に変質させたり、体液から解毒薬を生成することができる異能者

ふわふわとした性格だが、しっかり者

月鈴は双子の妹


♠ 獅子ヶ谷(ししがや):男

能力:未来視(プロフェシー)

自分の視界にとらえたものの未来を視ることができる異能者

関西弁の気さくな性格

ややぶっきらぼうだが、情に厚い


〇冴島 弘(さえじま ひろむ):男(演者は女)

能力:貸借(レンディング)

生きている、もしくは死んで間もない異能者に触れることでその異能を使用することができるが、その代償を2週に一度払わなければならない異能を持つ

謎の女の姿をしている

その目的は不明


♡犯人:男

冴島の背後にいる謎の人物

10代後半の見た目をしている


所長:性別自由

能力:精神感応(テレパシー)

相手の脳に直接干渉し、認識を歪めることができる異能者

その姿は誰も知らず、詳細の一切は謎に包まれている


♢木島 大和(きじま やまと):男

能力:強靭(ストレングス)

中津公孝の異能であるストレングスを与えられ、強大な力と強固な肉体を持っている

もともとは普通の会社員だったが、異能を与えられた


1グレア 2ジョーは兼ね役


A エミリーB月鈴は兼ね役


♠獅子ヶ谷♡謎の男は兼ね役


△夜鈴◯冴島は兼ね役


☆天馬♢イアンは兼ね役

◾️前作はこちら
【5人声劇】探偵事務所オーディナリー

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(電話が鳴る)


冴島:はい…もしもし


犯人:やぁ、冴島…状況を伝えてくれるかな?


冴島:…あぁ、現場にいたのはグレア、獅子ヶ谷、王夜鈴(わんいーりん)、王月鈴(わんゆーりん)姉妹だ


犯人:状況は正しく伝えてほしいな…もう一人いたはずだよ


冴島:…なに?もう一人?…あぁ、あの異能も持たない探偵助手か?

数に入れる必要はないだろう…


犯人:僕の話を聞いてなかったのか?あの助手を見くびってはいけないと言っただろう?


冴島::あぁ、わかったよ…すまない、ちゃんと正しい情報を伝える

はぁ…あんたがそこまで言うとは驚きだな…今後は気を付けるとしよう


犯人:今後…?


冴島:…あぁ、今後だ…あの程度の爆弾でくたばってくれれば苦労はない

おそらく獅子ヶ谷に未来を視られた…爆発後の現場に奴らはいなかったんだ

逃げられたんだろう


犯人:なるほどね…何か弁明があるなら聞きたいな


冴島:あぁ、わかってる…認める、謝るよ

舐めていたんだ

複製(コピー)と接触感応(サイコメトリー)を奪うのは大したことじゃないと思っていたが…実際に奪えたのは複製(コピー)だけ

だから、あの場所におびき寄せて、爆弾で動きを封じて、一気に異能を奪うつもりだったが…お粗末だった

次はもうしくじらない…


犯人:…そうだね…期待を裏切らないでほしいものだよ


冴島:ところで…もうすぐ俺の貸借(レンディング)に利息が発生する…

また頼むよ…それじゃあな…


(電話が切れる)


犯人:調子のいい奴だなぁ…

探偵事務所オーディナリー…やはり潰れてもらうしかないかな

この世界のバランスのために…


―――――――――――――――――――――

天馬:(NA)

異能者…それは普通の人間では持ちえない才能を有した進化した人類

彼らが引き起こす超常犯罪を解決するために設立された探偵事務所オーディナリー

僕、天馬差ざめは異能者を集めた特殊な探偵事務所の唯一の普通の人間であり、事務所で働く探偵たちの助手を務めています


グレア:…おい、どけエミリー

床で寝るんじゃねえ、踏むぞ


エミリー:もう一人に運ばせるから少し待って…


エミリー(コピー):…んん…起きたらやるからちょっと待って


グレア:もう一人も寝てんだろうが!

どんどん道狭くしてどうすんだボケが!


天馬:まぁまぁグレアさん、僕がどかしますから

ほらエミリーさん、転がしますよ

よいしょっ


(天馬がエミリーをゴロゴロ転がしていく)


エミリー:うぉうぉうぉうぉうぉう


ジョー:うわっ!びっくりした何事ですか!?


獅子ヶ谷:ぐえっ…おい!おっさん!急に止まんなや!無駄にでかいねん!


月夜:…獅子ヶ谷がちっさいアル


獅子ヶ谷:おっしゃあぶっ飛ばしたる

覚悟しろや、アルアル中華娘


月夜:はん!お前が私に勝てるわけないネ!

すぐにおねんねさせてやるヨ!


夜鈴:はいはい、建物の外でやってくださいねぇ


天馬:いや、その前に止めてくださいよ

ほらほら、朝ごはんにしますから早く座ってください!


グレア:今日はなんだ?


天馬:今日は和食です

焼き鮭と卵焼きに漬物とお味噌汁

サラダは真ん中からお取りください


グレア:いいねぇ…やっぱりさざめの飯が一番だな


月夜:刑務所の飯は臭えって言うアル


夜鈴:ほんとに臭いんですか?


グレア:別に臭かねえよ

ただ、健康志向すぎて味が弱えんだ

食った気にならねえ

さざめケチャップ取ってくれ


天馬:はい、どうぞ


獅子ヶ谷:ケチャップ?んなもん何にかけんねん


グレア:あ?卵焼きもしゃけもサラダもかけるだろ


エミリー:うわぁ…真っ赤だねぇ


獅子ヶ谷:燃える男は料理まで真っ赤っちゅうこっちゃ…知らんけど

マヨネーズちょうだい


天馬:はい、獅子ヶ谷さん

さて、食べながらで構いませんから、事件について今わかっていることを整理しましょう


夜鈴:ではまずは…連続通り魔事件からですね

被害者は若い女性8人、全員が体のどこかに鋭利な刃物で切り傷をつけられていた事件でした


ジョー:その目的は、我々オーディナリーの面々を誘い出し、その異能を奪うことだった…

所長がくれた情報にあった、冴島弘の貸借(レンディング)の能力ですね


エミリー::私も読んだよ

触っただけで異能者の力を自分で使えるっていうとんでも能力だよね?


獅子ヶ谷:それだけやないで


エミリー::あれ?まだなんかあったっけ?


天馬:代償です

異能者が異能を使うことで必ず発生する代償…

異能を借りた瞬間からきっかり2週間後に、貸主が持つ異能の代償がより強化されて表れてしまう…

例えば、獅子ヶ谷さんの未来視(プロフェシー)は目に負担がかかる力…

2週間に一度、視力の低下や使用回数によっては失明の可能性があります


エミリー:それってかなり使い勝手が悪いよね?

私の能力も借りてるってことはコピーを一気に作った瞬間にかなりエネルギー持ってかれるだろうし…二週間に一回死んじゃうかも


グレア:あの廃墟にいた奴はコピーを使った瞬間に倒れた…

他の奴らは複製体を一体しか作れないという条件で貸し出したって言ってたし…冴島が能力を又貸しするときに、条件付けができるのかもな…


夜鈴:契約を破棄したものは、その場で代償が現れる…そんなルールなのかもしれませんね


天馬:…なんにせよ、通り魔事件を利用した異能強奪に失敗した冴島はオーディナリーの異能を奪うために、わざとあの廃墟につながる情報を与え、僕たちを誘い出した

あの爆弾で僕らを一網打尽にして、その隙に…って算段だったのではないかと


獅子ヶ谷:雑な作戦やな…バラバラに吹っ飛んでまったらどうするつもりやったんやろ


ジョー:私なら確実に死んでましたね

まぁでも、その辺も織り込み済みなのではないですか?

死ぬか死なないか…ぎりぎりの火薬量…

エミリーさんの複製(コピー)があればその辺の調整は実験し放題でしょうし


獅子ヶ谷:自分の複製体を爆弾で吹き飛ばす実験なんてぞっとするわ…


夜鈴:…でも、彼らはやっています

そこはエミリーの能力で作り出される複製体をあまり理解していないからかもしれません…


エミリー:……そうだね

コピーは最長でも24時間しか形を保っていられないし…仕方ないのかもよ


天馬:…犯罪者の考えることはきっと理解できませんよ

さて…異能を手入れる…それはいいとして、先ほども話に出た利息の問題を片付けなければなりません

そこは所長が予想を置いて行ってくれました


夜鈴:視界に入った相手に傷や病気を移すことができる異能…でしたっけ?


グレア:その話が本当ならマジでクソ能力だ…

どんな攻撃してもダメージにならないどころか、跳ね返って来たり、仲間にダメージを移されたりする可能性がある


天馬:その通りです…でも、そんな異能があるなら、どこかで噂くらい聞いたことがあってもよさそうなものですが…


月鈴:…んなの、決まってるアル

敵は表に出てくるような奴じゃなくて、裏の世界の住人…ってことヨ


獅子ヶ谷:目下の課題は、そのアホと冴島を捕まえて目的を突き止めることやな

まだバックから新キャラとか出てきたらたまらんで…


夜鈴:でも…どうやって犯人に近づいたものか…

廃墟にあった資料もほとんど役に立たない情報ばかり…私たちを襲った半グレのみなさんは消えてしまった…


グレア:気負わなくてもすぐに奴らから接触があるさ…

奴らは俺らの能力を狙ってんだ…必ずまた来る


天馬:そうですね…ではその瞬間まで、一時この事件の捜査は保留です

さて…では、今日の仕事の発表です


エミリー:え~ほかにも仕事あるのぉ?


天馬:もちろん、それだけ我々が期待されてるということです

あと、仕事のスケジュールは予定管理アプリと事務所のカレンダーと皆さんのデスクのメモ欄に書いてありますので、ぜひご確認を


エミリー:ごめんなさい


天馬:今回の事件は…建物の連続破壊事件になります


―――――――――――――――――――――


(ある一軒家のリビング…男と女が向かい合っている)


冴島:元気か?木島


木島:今日は誰だ…同じ顔の奴がしょっちゅう来るから混乱するんだよ


冴島:誰だっていいだろ…全員やることは同じでお前の世話だ

ところで、どうかな?その力


木島:最高だ…この力があればどんなことだってできそうだよ…


冴島:それはよかった、俺も嬉しいよ

そのまま好きに暴れるといい…そうすれば、一生遊んで暮らせるほどの金が手に入る


木島:金か…!はは…そんなもん…この力に比べりゃ紙屑だ…!!

今の俺にゃ大したかちもありゃあしない!


冴島:木島…それは貸し与えられたものだってこと、忘れるなよ

それから…もうすぐ利息が発生する

無理はするな


木島:わかってるさ…わくわくするねぇ…

次はどこをぶっ壊すか…はははは…はははははは!!


(少し間をあける)


冴島:(NA)

馬鹿の相手なんぞしてられねえな…だが、そろそろオーディナリーが出張る頃だろう

…“あいつ”が何を考えてるのかなんて知らないが…あの異能は俺のものだ…!


―――――――――――――――――――――


天馬:…ほんとに手分けしても良かったんでしょうか?


グレア:構わねえだろ

ウチの探偵事務にちょっと狙われた程度でやられちまう奴はいねえよ


天馬:そうですか…いえ、そうですよね


エミリー:うん、よっぽどのことが無いと負けないよ


天馬:はい…大丈夫です、皆さんの実力を疑うわけではありませんから

さて…ここが犯行現場ですある個々のオフィスビルが持っている駐車場なのですが…どう思いますか?


グレア:人間の力じゃねえことは確かだ…コンクリでできた駐車場が辺り一面

ぼっこぼこ

この壁の穴なんて…直径3mぐらいか…爆薬10キロ分くらいの威力だぜ

でも…焦げ目も火薬のにおいもない…

つまりこれは…ぶっ叩いてあけた穴ってことだ


エミリー:すごいねぇ…監視カメラとかに何か映ってなかったの?


天馬:何者かがすぐに壊してしまったんです

でも最後に映っているのは…この男です

写真を貰ってきました


エミリー:…日本人っぽいね

誰かわかる?


天馬:…これだけではなんとも

この会社の関係者じゃないか調べています


エミリー:う~ん…ねえ、ここの壁のくぼみさぁ

拳の形って感じじゃない?


グレア:…そうだな

これって、あのコートに付与されてた怪力の異能と同じじゃないか?


天馬:…あぁ、以前グレアさんが言っていた中津公孝の異能ですね…コードは確か…


―――――――――――――――――――――


獅子ヶ谷:強靭(ストレングス)…やろ?


夜鈴:…凄い力と傷つかない体

搦(から)め手無し、単純に強いタイプの異能ですね

そんなのが大暴れしたら…まぁこうなりますよねぇ


月夜:チーム分けよかったアルな

向こうはグレアのアホがいれば大丈夫だし、こっちは私がいれば無問題(モーマンタイ)ヨ!


獅子ヶ谷:せやなぁ…とはいえ、会社の駐車場なんて人の出入りめっちゃあるやろし…

おっさん、なんかわかる?


ジョー:見渡す限りの石ころですからね…正直わかりません

犯人の私物でも落ちていればいいのですが…


獅子ヶ谷:…なぁ、別の現場も駐車場やったんやろ?

どこやったっけ?


ジョー:ショッピングモール…パチンコ屋…それから…飲食店、オフィスビル…


月鈴:バラバラアルな


獅子ヶ谷:せやな、でも衝動的に見える犯罪の方が意外と行動原理がわかりやすいねん

夜鈴、他の現場の写真見せて


夜鈴:はい…どうぞ…


獅子ヶ谷:なぁ、おっさん…これ、なんか気づかんか?


ジョー:どれどれ…おや…これは、もしや


月鈴:何アルか?


夜鈴:何かわかったんですか?


ジョー:見てください…一見適当に破壊して回ったように見えるのですが…ほら、こことここ…それにここも


月鈴:わかんねぇアル


夜鈴:…同じメーカーの車ばかりが壊されている


月鈴:だよな!私もそう言おうと思ってたアルよ!


獅子ヶ谷:なるほどな…犯人の目的、ちょびっと想像ついてきたで…?


―――――――――――――――――――――


天馬:…獅子ヶ谷さんたちのおかげでだいぶ情報にあたりがつけられました

監視カメラに映った男の名前は木島 大和…都内の自動車メーカーに勤めています


夜鈴:じゃあ、あの車を破壊していたのは…


天馬:車の所有者に聞いたところ、全て木島の担当顧客だったことがわかりました

順当に行けば高い修理代の請求や、保険会社との案件につながります

つまりは…


ジョー:木島の成績になる…自作自演の詐欺行為ですか


エミリー:ひどいことするもんだねぇ…


天馬:あそこまでして、目的が自分の成績上げたいってのはびっくりですが…


グレア:強靭(ストレングス)のせいかもしれないな

あの異能を使った代償は一時的な全能感だ


月鈴:それ、何が悪いアルか?


グレア:問題行動を起こした時に止められねえのさ

…この力があればなんだってできる気がするって思ううちに、歯止めが効かなくなるんだろうよ

最初は小銭稼ぎくらいの気持ちだったのかもしれないが…いつのまにやら力に酔っちまったんじゃねえか?


獅子ヶ谷:お前と似とるな


グレア:うるせえ、燃やすぞ


夜鈴:グレアさんの能力は狂暴性の増長による自我の喪失です

強靭(ストレングス)は全能感ですから、善人であればいいことだってなんでもできると思えるはずですからグレアさんの方が代償として重いですよ


グレア:はっは~!それ見たことか!


獅子ヶ谷:物ぶっ壊してるんやから同じやろ


天馬:はいはい、喧嘩しない

問題はどうやって木島がこの強靭(ストレングス)を手にいれたかということです


ジョー:おそらくは…貸借(レンディング)によって与えられたものでしょう


夜鈴:となると、2週間に一度利息が発生する…利息は強烈な全能感…

この頻度でこれだけの被害を起こしているんです

グレアさんの言う通り、代償が無くても本人は力に酔っている可能性があります

なのに…利息で強烈な全能感など覚えた日には…


グレア:想像もしたくねえ…


天馬:最初の事件発生が12日前…近いうちに利息が発生する可能性があります

僕らで何としても止めましょう!


月鈴:どうやって止めるアル?


天馬:木島の顧客リストを手に入れています…このリストに記載されている人の車に張り付きます

…まだ被害にあっていないのはあと3人なんです


獅子ヶ谷:時間も無い、手分けしてさっさと情報集めようや


―――――――――――――――――――――


月夜:ここが外れアルか?

何でヨ?

まだ話も聞いてないアル


夜鈴:持ち主の車のメーカーが違ったの

代車か、買い替えたか…なんにせよ、あれを壊しても木島の元へは行かないでしょうね

壊し損でしかないもの


月夜:ほへ~なるほど

さすがお姉ちゃんアル


夜鈴:とはいえ、少し様子を見ましょう…他の皆さんから連絡が来たらすぐに行けるように準備しておいてね、月鈴



(少し間をあける)



天馬:お時間いただいてありがとうございました


(少し間をあける)


グレア:…こっちは外れだったな


天馬:そうですね…車はすでに手放していましたから、木島はここには来ない可能性が高いです

…まぁ、ただただ大暴れしたいだけっていう線も捨てきれませんが


グレア:その時は俺も大暴れして止めてやるよ


天馬:大惨事の未来しか見えないからやめてほしいです


グレア:はは…そうなるだろうな

俺も強靭(ストレングス)が相手となれば手加減できねえ

はぁ~また、ぶち込まれるかもしれねえなぁ…


天馬:ウチの最高戦力なんですから…しょっちゅう牢獄入ってるのは困りますよ


グレア:最高戦力…ねえ…


天馬:…何か?


グレア:多数に対する殲滅力とか破壊力みたいなところにフォーカスするならそうだろうよ

だが…仮にタイマンはったら、一番強いのはあいつだろ?

…認めたくないけどな



(少し間をあける)



獅子ヶ谷:…なんや、もう終わりなんか?案外大したことないなぁ…強靭(ストレングス)


木島:ぐっ…黙れ!!終わりなもんか!!

お前はただ逃げてるだけだろうが!!

うおらああああ!!


(木島が力任せに腕を振り回す)


獅子ヶ谷:よっ…ほいほい…っと…当たらへんなぁ

ただ力任せに腕振り回すだけじゃあ、一生俺にダメージ与えられへんで


木島:…ちくしょう…なんでだ!

俺は最強の力を手に入れたはずなんだ!!


獅子ヶ谷:最強ねぇ…エミリーなんか武器出せる?


エミリー:今はないなぁ…あ、銃があるよ?


獅子ヶ谷:…あんな奴に銃使ったら殺してまうな

しゃあない、素手でやるわ

ジョーのおっさんのこと頼むで


エミリー:任せて~しっかり守るから


ジョー:はい、しっかり守られます


獅子ヶ谷:ほな、来いや

逃げるだけやのうて、お望み通り痛い思いさせたる


木島:ぐっ…!?確かに俺の攻撃は当てられないのかもしれないけどな…てめえの攻撃だって効かねえんだよ!


獅子ヶ谷:せい!!


(パァン!と乾いた音が響く※手を叩くなどで音出して下さい)


木島:うぎゃあああああ!!いってええええ!!


エミリー:うへぇ~いったそう


ジョー:背中にパチンが痛いんですよねぇ…


獅子ヶ谷:お前の体は頑丈になっただけで痛覚が消えたわけやあらへん

皮膚をひっぱたけば痛いっちゅうこっちゃ

…それにな…未来は分岐すんねん


木島:あ?何の話だ…!


獅子ヶ谷:(NA)

未来はいかようにでも変容する

木島が放つパンチを避けるか、受けるか、さばくか…3つの対応次第で3つの未来に分岐していく

俺は未来視でいくつかの攻撃を行った後の未来を視ることで、数ある未来の中から一番“効果的”な攻撃を選ぶことができる


木島:うぎゃああああ!!く…くそ…!


エミリー:あぁなると、もうガウちゃんには勝てないね


ジョー:というか、1対1で獅子ヶ谷さんに勝てる人間なんてそうそういないですよ


木島:くそが…いてえけど…耐えられないほどじゃないんだ…


獅子ヶ谷:ほいっ


木島:がっ…!?


木島:(NA)

的確に俺の顎を…!?

だめだ…視界が歪む…!


獅子ヶ谷:所詮借り物の力…対して鍛えてない体がただ強靭になっただけや

顎を打てば脳は揺れる

良かったな?ここにおったのがグレアやなくて…

俺は優しいから、リハビリすればちゃんと動ける程度に壊したる


木島:ま…待て…!


冴島:そこまでにしてもらおう


獅子ヶ谷:おっと…!


ジョー:冴島…弘…!


冴島:…なんだ?俺の正体ばれてるのか

まぁ貸借(レンディング)についてはそっちの所長が知ってるだろうから当然か…また会ったな、オーディナリー


エミリー:君、こないだおじちゃんの背中切ったでしょ…許してないからね…!!


冴島:おぉ…怖い、怖い…

木島にはまだ利用価値がある…悪いがここでお前らに渡すわけにはいかないんだ…


獅子ヶ谷:逃げられると思ってんのか?

俺がいるんやお前らがこれから何するかなんて手に取るようにわかるで


冴島:視界に捉えた物の未来しか視ることができない…それがお前の弱点だ


獅子ヶ谷:あ?…だからこうしてお前を見とるやろ


冴島:いいや、視ていない

だからお前は負けるんだ


獅子ヶ谷:…しまった!複製体か!


冴島(コピー):ご名答だ


エミリー:ごめん…ガウちゃん


ジョー:す、すいません…


獅子ヶ谷:おっちゃんと女の子に銃突きつけるなんて褒められたことやないで?


冴島:褒められたくてこんなことするわけじゃないさ


獅子ヶ谷:…良い銃やな、なんやそれ


冴島(コピー):これはベレッタ…


獅子ヶ谷:まあいいわ、なんでも


冴島:興味が無いなら聞くな

なんなんだ貴様らは…調子が狂うな


獅子ヶ谷:狂ってるのは調子やのうて頭やろ

なぁ?エミリー


エミリー:私もそう思う


冴島:うるさい奴らだ…接触感応(サイコメトリーの)能力も貰った…

殺してやるぜ、馬鹿どもが


エミリー(コピー):馬鹿はあなた


冴島:…何!?

エミリー(コピー):えいっ!!


(エミリーが思い切り冴島を蹴り飛ばす)


冴島(コピー):ぐはっ…エミリーの複製体…!

いつ出したんだ…!?


エミリー:出してから来たんだよ

あなたと違って頭いいでしょ?


冴島:俺の複製体を…!!


ジョー:複製体を隠しておくのは獅子ヶ谷さんの入れ知恵ですけどね


エミリー:でも私の異能だから、私が偉いの!えっへん


ジョー:ふふ、そうですね、おかげで助かりました


獅子ヶ谷:エミリーは強い

本気で蹴っ飛ばされたんや…お前の複製体だって動けへんぞ


冴島:くそ…!おい木島!いい加減動けるだろう!


木島:…助けに来たんじゃねえのかよ…!

なんか使える異能はねえのか!!


冴島:あるさ…


獅子ヶ谷:させへん…!うぐっ!?


エミリー:ガウちゃん!


ジョー:獅子ヶ谷さん!大丈夫ですか!?


獅子ヶ谷:くそっ…こんな時に眼が…!

気を付けろあいつら消える気や!!


ジョー:…透明化か!!


冴島:便利な異能は代償が大きくて困るよなぁ獅子ヶ谷

次はその異能も俺が使ってやる…!


獅子ヶ谷:…異能なんざ使わんくてもわかるで

次会うた時が、お前の最後や


冴島:それは楽しみだ


エミリー:あ…消えた…


獅子ヶ谷:はぁ…目薬さすわ

俺も逃がしてしもうたなぁ…とりあえず、事務所で作戦会議しよか


ジョー:はい、肩かしますよ


獅子ヶ谷:おおきに


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天馬:本当に無事で何よりでした

しかし、木島を逃がしてしまいましたから…もうそう簡単には姿を現してくれないかもしれませんね


ジョー:しかし、はっきりしたこともあります

…木島大和の裏にはやはり、冴島が絡んでいた


月鈴:冴島の使える異能も絞れたネ!

強靭(ストレングス)複製(コピー)透過(インビジブル)変化(カムフラージュ)接触感応(サイコメトリー)の5つアル!


獅子ヶ谷:それはまだわからんで?

異能の手持ちカードが直接戦況に現れるタイプは何隠してるかわからん

まだ切り札を持ってるかもしれへん


夜鈴:ジョーさん、サイコメトリーで何かわかったことはありませんでしたか?

彼が接触感応(サイコメトリー)を手に入れたということは銃を突き付けられたときに彼に触れられたはず


ジョー:もちろんサイコメトリーで彼を見てみましたよ

見えたのは…普通の一軒家のリビングでしたね

目の間に木島がいましたから、恐らくは木島の家だと思います

そして…他に見えたのが…美術館ですね…


グレア:美術館だぁ?

冴島にそんな趣味があんのか?


月鈴:意外と頭よさそうな趣味してるアルな


天馬:…どこの美術館でしょうか?

都内ですと、公営のものから個人で運営しているものまで様々です…


ジョー:この美術館は行ったことがあります…

場所は…ここですね


天馬:ここの館長をしているのは…神田林政宗(かんだばやしまさむね)という実業家ですね


月鈴:神田林?聞いたことねえア…っ!?

(月鈴が唐突にフリーズする)


天馬:月鈴さん!?


月鈴:神田林…その名には聞き覚えがある


獅子ヶ谷:なんや!?月鈴が流暢にしゃべりだしたで!?


天馬:…所長ですか?

月鈴:あぁ、すぐにわかってくれて嬉しいよ

少し彼女の体を借りている


ジョー:そんなこともできるんですね…


月鈴:さて、神田林だが…昔壊滅させた組織にその名前の構成員いた名字だ

30年ほど前の話だ


獅子ヶ谷:世界的に異能者の存在が明るみになったのは35年前や

その5年後ってことは…異能倶楽部か!


月鈴:そう…異能者を集め、ただの人間よりも上位存在であることを主張した組織だった

隠れて生きてきた異能者が表社会で生きれるよう、独立国家を作り世界を支配しようとしたんだ


グレア:馬鹿げた話だ


月鈴:そんな馬鹿げた…はな…は…あ~…出ていくアル!!

なんかきもいヨ!!


天馬:あ、いいとこだったのに


月鈴:私じゃなくてもいいダロ!


グレア:もちろんそうだ…


天馬:うわっ!今度はグレアさんに…!


グレア:さて、話を戻そう

その組織にいた神田林は、組織の中でも異端でね

九朗 功太郎という青年と一緒に異能者と非異能者の平和な共存を願っていた…

とりわけ重視したのはそのバランス…


天馬:バランス?…んぐ!?


グレア:…っはぁ…頭の中でぐちゃぐちゃ言っててきもかったぜぇ…

お、次はさざめか?


夜鈴:バランスってどういうことですか?


天馬:パワーバランスのことを言っていた

世界の国々、そこに住まう人…差が生まれるからバランスが崩れる

そのバランスを一層崩しているのは異能者なのだと…

もしあの神田林が裏で糸を引いているのならば…少々面倒なことになるかもしれない


ジョー:なぜですか?


天馬:神田林は30年前の組織と警察の戦いによって…死んでいるんだ


―――――――――――――――――――――


木島:くそ…くそぉ!!

なんなんだあいつら!!俺の異能は…最強のはずなのに…!

なんで俺が逃げ帰らなきゃなんねえんだ!!


冴島:(NA)

これも強靭(ストレングス)の弱点…代償と言えるな

強大な肉体に、精神がついて来ていない…

その全能感を否定されたとき、あまりにも取り乱しすぎる


冴島:はぁ…木島、何のためにお前にその力を…


犯人:なぜその力を与えたのか何もわかっていないようだね


木島:っ!?誰だ!?


冴島:…お前、なんでここに


犯人:…僕の美術館だし、いてもおかしくないんじゃないかな?

そんなことよりも…どうして、彼がここまで暴れたのか…とっても興味があるなぁ

ね?冴島


冴島:…そ、それは


犯人:僕が君にお願いしたのは力を貸し与えるところまでだ

そこから先は放っておけって言ったはずだけど?


冴島:…そうだな…あぁそうだ、そう言ったよ


犯人:大した異能も持たない君でも、オーディナリーの異能を奪えれば…僕の異能まで奪えると思った?


木島:なんだ…何の話をしてんだ!?


犯人:初めまして、木島大和さん


木島:誰なんだてめえは!?


犯人:君にその力をあげてみることにした人だよ


木島:…なんだと?


犯人:もらったおもちゃではしゃくのはいいけど…はしゃぎすぎたね

君の情報はもう丸裸だ

君と戦ったあの探偵どもがここに来てしまと思うんだ…

その力を失いたくないなら…頑張って彼らを殺してみてくれないかな?


―――――――――――――――――――――


グレア:ここか?悪党どもの巣は…


月鈴:未来と希望の美術館…って書いてるアル


夜鈴:ここで間違いないですね


グレア:未来と希望ねぇ…犯罪者の分際で随分な美術館だな…準備はいいかエミリー?


(何かを食べているエミリー)


エミリー:ング…うん、いっぱい食べたし、いっぱい寝たからばっちりだよ


グレア:よし、何時だ?


月鈴:21時半…もう、客も従業員もいないアル

中にいるのは3人アルな

たぶん、木島と冴島と神田林ヨ


夜鈴:随分高級なサーモグラフィーですね


グレア:でけえ山だろ?警察に言ったら“快く”貸してくれたぜ


夜鈴:ふふ、警察の方には同情します…

さて、行きましょうか


月鈴:任せるヨロシ

鍵穴に毒液入れて~血小板の成分で固めて回せば…はい、開いたアル


グレア:おし、震えやがれボケ共め…!!


―――――――――――――――――――――


天馬:向こうのチームは潜入に成功したでしょうか


獅子ヶ谷:正面から堂々と入ることを潜入って言うなら成功したんとちゃうか?


天馬:はは、そうですね


ジョー:我々はちゃんと潜入です…

彼らの目的が何なのか…そして…利息の“逃がし先”を探しましょう


天馬:(NA)

貸借(レンディング)で発生した利息を、何者かが冴島から取り去っているとしたら、その逃がし先が存在する…

2週に一度死ぬような拷問を受ける誰かがいるはずだ…もし仮にその誰かがまだ生きているなら絶対助けなければならない

それに…彼らの情報を引き出すことができるかもしれない


天馬:行きましょう


―――――――――――――――――――――


グレア:…個人経営にしては広い美術館だな


月鈴:…鏡の迷宮だって!私あれ行きたいヨ!


夜鈴:遊びに来たわけじゃないの


グレア:いいや、遊びの時間みたいだぜ


木島:…おいおい…あの関西弁の野郎はいねえのか…!?

俺がぶっ殺してやる予定だったのによ!


グレア:へえ、あいつ獅子ヶ谷が嫌いだってよ…仲良くなれそうだぜ

だが今回は俺が相手だ…悪いな


木島:…いいさ…お前を殺して、次はあいつを殺してやる!!


グレア:…エミリー、りんりん姉妹、お前らは先に行って、冴島を探せ…


エミリー:わかった!


木島:おいおい、一人やるつもりか?

お前のことは聞いたぞ…狂炎のグレア


グレア:俺のこと知ってんのか?


木島:…炎を操る発火(パイロキネシス)の異能者

炎なんて俺に効くかよ

一方的にボコボコにして終わりだ…


グレア:…お前はもっと科学を勉強するべきだな


―――――――――――――――――――――


月鈴:…ここなら大丈夫アル

んじゃ…おらぁ!今すぐ出てこないと毒ガス撒くアルよ!!

姿見せるアル!!


(少し間をあける)


へぇ…だんまりアルか

なら、毒ガスぶっ放すだけヨ!!

はぁぁぁぁ…!!


冴島:ま、待て!


月鈴:あ、出た


冴島:とんでもない奴だな

俺をころそうってのか、王姉妹…!


エミリー:いいえ、あなたとやるのは私だよ


冴島:…お前が?俺に勝つつもりか?


エミリー:もう負けないからね

覚悟した方がいいと思うよ


冴島:面白い…獅子ヶ谷やグレアならいざ知らず…

お前如き、ぶち殺してやる!


―――――――――――――――――――――


ジョー:随分不気味ですね…


獅子ヶ谷:せやな…しかし、おっさんがおって助かったで

じゃなきゃ地下通路への隠し扉なんて見つけられへんかった


ジョー:こういう探し物は私の得意分野ですから


天馬:二人とも…止まってください…!


獅子ヶ谷:どないしたん?


天馬:見てください…!


獅子ヶ谷:こりゃあ…たまげたで…SF映画の怪物入れてるカプセルみたいなのがぎょうさんあんで…!?


ジョー:中に入っているのは人間…でしょうか?


天馬:の、ようですね…この顔どこかで…


獅子ヶ谷:半グレどもや…こないだの廃墟におった奴やで…

…こっちは…うおぁ!?


天馬:どうしたん…うぐっ…!?

なんだこの…肉の塊…!?


ジョー:ひ、人のようですね…!

ところどころに手や耳のようなパーツが見えます…彼が…利息の逃がし先なのかもしれません


天馬:ところどころに同じ顔があります…彼らは複製体なんでしょうか?


獅子ヶ谷:複製(コピー)を手に入れたのは割と最近や

それまでも利息は払ってたはず…それに関係あるんとちゃうか?


ジョー:…皆さん…私、ちょっと無理してみようと思います

何かあったらお願いしますね…!


天馬:ジョーさん…まさか


獅子ヶ谷:この部屋、片っ端から接触感応(サイコメトリー)で見るつもりか!?


ジョー:このどう見たって悪の組織の中枢みたいな部屋の解析をするには時間がかかるでしょう…死なない程度でやってみます…!


―――――――――――――――――――――

冴島:くそ…!!


エミリー:ほらほらこっちだよ


冴島:うらあ!!


エミリー:うあぁっ!?

(冴島に殴られ倒れる)


冴島:よしっ…ぐはぁ!?

(別のエミリーが冴島を殴り飛ばす)


エミリー:残念こっちぃ


エミリー:鏡の迷宮は楽しいね


エミリー:でも、この戦いは楽しくないかも


冴島:くそ…!?鏡に映った奴なのか複製体なのかが判別できない…!!

透明になっても、複製体を殴った瞬間に場所が割れる…!


エミリー:君は何もわかってないね…


冴島:何…!?


エミリー:複製(コピー)は完璧な私のコピーだよ

ただ一つ違うことは


エミリー(コピー):私たちは自分がコピーだと理解してるってこと


冴島:それが何だってんだ…!!


エミリー:私は、犯罪者とか世の中の平和とか正直どうでもいい

私は私の大事な人達と、その人達が大事にしているものを守りたい…

そのためなら、私は死ぬ覚悟くらいできてるんだよ


エミリー(コピー):なら私たちはいくらでもこの命をかけるよ

だって複製(コピー)だからね


冴島:…バカな、狂ってる

コピーが作るのは完全な複製体だ…だから複製体は自らの命が危険にさらされるような命令を聞かない…そもそも本体と同列の存在なのにへりくだることもない…

それが普通のはずだ…!!


―――――――――――――――――――――


(木島の体が燃えている)

木島:あぢ…あぢいいいい!!


グレア:ぎゃははははは!もがけもがけ!

あちいよなぁ…そうだよなぁ!!


木島:どうしてだ…!!

コンクリートの壁もぶち抜く耐久性があるはずなのに…!!


グレア:コンクリート?あんなもんたかだか1500℃もあれば溶けるだろうが

俺が何でもかんでも燃やして爆発させて吹き飛ばすだけの奴だとでも思ったのか?
あぁん!?

俺の炎…みさらせや!!


木島:青い…光…?なんだ…熱い…熱い…!!


グレア:アセチレンガスバーナーともなればよぉ…最大温度は3000℃

ニトログリセリン爆発なら4000℃…太陽となりゃあ表面だけで6000℃だ!!

頑丈な皮膚?強固な筋肉?関係ないね!!骨も残さねえぞ!


木島:ぐああああああああああ!!…冴島!冴島ぁ!!何をしてる!!

早くこっちを手伝えぇぇ!!


グレア:無駄さ…!

俺の炎だって瞬間的に高熱はつくれねえ…

雨や酸素濃度…いろんな要素に左右されるけどなぁ…


冴島:ごはぁっ!?

(冴島が吹き飛んでくる)


木島:冴島…!?


グレア:命を捨てる覚悟を持った何十、百もの特攻隊になんて…勝つ方法があるかよ

なぁ…間違いなく、あいつが最高戦力だぜ


木島:…くそ…俺が…こんな…やつ…に…

(木島が倒れる)


グレア:はっ、てめえなんかが勝てるかよ!

エミリー、そっちもやったみてえだな!


エミリー:…まあねぇ、お腹すいたぁ


エミリー:(NA)

通常の食事約5食分と20時間程度の連続睡眠を持って発動することができる私の物量攻撃…

約300人の私の分身を生み出す、必殺技だ


夜鈴:本当に出番はなかったですねぇ…


月鈴:さすがエミリーヨ!


(拍手の音が響く)


木島:なんだ…!?


犯人:素晴らしいね…オーディナリー

異能者として、能力の使い方が洗練されている…感服だよ


グレア:なんだぁ…てめえ…

そうか…てめえか?てめえが神田林って奴か!!


犯人:本当に素晴らしいと思うよ

いい実験になった…


グレア:何を…!?


冴島:政宗…何しに来やがった…


犯人:…ん~、尻拭いかな?


月鈴:おいてめえ!お前が黒幕アルか!


犯人:…黒幕?まぁ、そうか…黒幕か

うん、黒幕だと思うよ


月鈴:締まらねえ言い方アルな…!


犯人:彼らは僕の目的の達成のために協力してくれたんだ

まぁ…別の目的もあったみたいだけどね


グレア:てめえらの目的って…なんなんだ


犯人:…この世界はバランスが悪いと思わないかい?


夜鈴:バランス…


犯人:この世界の総人口は約80億人…異能者の数は表に出ていない者を考慮してもたった0.01%と言われている

それでも80万人はいるんだけどね…

だが、不思議なことに現在確認されコードが振り分けられた異能者のうち、85%は先進国に集中している

当然だ…戦車を一台買い、訓練し実戦投入するよりも、グレア君一人を手に入れた方がずっとコストパフォーマンスがいい

今や大国は軍備の拡張ではなく、異能者の獲得に国力を割いているんだ

…たった一人の人間が、経済、政治、戦争…国に関わる全てを変えてしまうことだってある

とても歪(いびつ)な世界だと僕は考えているんだ


グレア:それが何だってんだ…

世界が不平等なのは今に始まったことじゃねえ!

だから人間は法やルールを決めて、それを守って生きてんだろうが!


月鈴:ルール破ってる奴が言うと説得力が違うアル


グレア:うるせえ!


犯人:そうだね…今はそうだ

でも未来はどうかな…


エミリー:未来…?


犯人:異能者って奴は一体いつから存在しているのか…

世界中で語られる神話や、逸話の類…怪談や伝説…それらは全て異能者のしわざだったんじゃないかな

その強大な力を時に誇示し、時に隠し…異能者は世界とバランスをとってきた

でも、今や異能者の存在は世間に知られ、人間の上位存在になろうとしている

異能者の数はこれからも増える…そうすれば、異能を持たない者は蔑まれる時代が来てしまうだろう

僕はそんな未来を良しとしないんだよ…


天馬:だからこんなことをしたんですか


月鈴:助手!


グレア:さざめ!そっちはもう終わったのか?


天馬:…はい、もうあなたの正体もやろうとしていることもわかっていますよ

神田林政宗…いや、九朗 功太郎(くろう こうたろう)…!


夜鈴:九朗って…神田林と一緒にいたという…?


犯人:サイコメトリー…かな?

随分過去まで見たんだね


天馬:おかげでジョーさんがダウンしてます

あなたと神田林は、30年前一緒に世界の平和を願っていた

それは異能者と非異能との差を埋めることで実現すると信じていたんですよね

でも…神田林は警察との抗争に敗れ、命を落とした…あなたをかばって

この美術館は異能俱楽部本部の跡地だったんです


月鈴:おい、ちょっと待つアル…

あいつがその九朗だったとして…どう見ても10代後半…いっても20そこそこアル

30年前の抗争の生き残りだなんておかしいネ…!


天馬:…それは、彼の異能…貸借(レンディング)のせいです


冴島:なんだと…?

彼の異能…?違う!貸借(レンディング)は俺の異能だ!

生まれた時から持っているんだ!馬鹿なことを言うんじゃない!!


犯人:…すごいな、ここまでわかるんだ、接触感応(サイコメトリー)って


天馬:…ジョーさんは本当にすごいですが…あなたの異能に気づけたのは、地下室です

ここの地下室には、たくさんの複製体とその実験の残骸がありました…

冴島がエミリーさんに接触したのはごく最近

だというのに、実験は随分進んでるように見えました

あなたがもっと前から複製(コピー)を持っていたならば納得がいきます


冴島:…馬鹿な

だって…俺はこの力を生まれた時から…


犯人:違うよ冴島

僕はね…適当な子供にこの力を貸し与えていたんだ

これも実験だと思ってね


冴島:…はぁ?


犯人:貸借(レンディング)は誰かの異能を借りることができる

能力を使えば代償が発生し、2週間に一度利息としてさらに代償を支払う

だというのに、元本(がんぽん)である能力を超える力は使えない…使い勝手の悪い異能だった

でも、世界中に異能をばらまくのにこんなに優れた能力はない

僕と神田林さんは、世界中の人間を異能者だらけにすることにしたんだ

幸運なことに神田林さんは視界に映った人間のダメージを自由に入れ替える“犠牲者(ヴィクティム)”の異能者だったからね

僕らは色々な実験をしたよ…利息をかいくぐる方法や代償を効率的な抑え方…でも道半ば、警察の介入で僕らの研究は幕を閉じる

大きな怪我を負った僕を助けるために、神田林さんがその命を落としたからだ


グレア:てめえの怪我を自らに移したのか


犯人:その通り、その時に僕は犠牲者(ヴィクティム)を受け継いだ

その時に判明したんだけど、元の異能者が死ねば、この能力は永遠に自分のものになり、返すことができなくなる

そして、死ぬまで利息を払い続けるんだ

冴島はそのことを知らずに、僕から犠牲者(ヴィクティム)を奪おうと画策してたみたいだけどね

僕から異能を奪って殺すために、君たちの異能を奪おうと暴走した


冴島:…全部お見通しだったってことか


犯人:うん、まさに犠牲者(ヴィクティム)だろう?

それからさっきの僕の見た目の件に戻るけれど…犠牲者(ヴィクティム)の代償の話だ

犠牲者(ヴィクティム)は使えば使うほど、体が若返る

神田林さんは僕の傷を自分に移したのもそうだけど…大きな怪我を移したから最後には胎児になってしまったんだよ


冴島:…な、なんだと…!?


月鈴:ならお前もそうなるアルか…!


犯人:そうだね、今は通常の老いと利息が大体釣り合ってるから凄くゆっくり老けてるんだけど…能力を使えば使うだけ、僕は若返っていくことになるね


月島:そんなになってまで、何がしたいアル!!


犯人:だからバランスを取りたいんだって

僕の異能を使って、全ての人間に異能を付与したかったけど…正直それは諦めてるんだ


夜鈴:なぜですか…?


犯人:結局異能の謎は解明できていない

誰も彼も利息で苦しむことになるし…冴島や木島を見れば一目瞭然だ

過ぎた力は人間をおかしくする…

だから、方針を変えることにした


グレア:何をするつもりだ…てめえ!


犯人:世界中の異能者を全て殺す


月鈴:馬鹿げてるアル…!


犯人:そうだね…馬鹿げた目的だ

でも…そうでなくっちゃ世界は変わらない


天馬:九朗 功太郎…変わるべきは世界じゃないあなただ!


犯人:…天馬さざめ

どの国にも属さない探偵事務所オーディナリー唯一の非異能者…

素晴らしい…君は可能性に満ちている

次はゆっくり話したいな


天馬:あなたと話すことなんかない

次なんてあるもんか!!

ここであなたを止めます!


犯人:…随分嫌われたね

悪いけど…また会ってもらうことになると思うよ?バイバイ


天馬:あっ!!


グレア:消えた…!ありゃあ…透過(インビジブル)じゃないぞ…!


夜鈴:まさか…瞬間転移(テレポート)…!?


エミリー:逃げられちゃった…


グレア:はぁ…本格的にやばいやつが出てきたな…


天馬:それでも…戦いましょう…僕らはオーディナリーですから…!



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