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【2人声劇】正義と変身

■タイトル:正義と変身


■キャラ

芳賀根 結城:(はがね ゆうき):性別自由※台本上は男

26歳

警察組織に属する対怪人特別捜査班、通称特捜に所属している

昴の兄(姐)であり、結城の作ったト「リアライジングドライバー」で変身する

クールな性格から、リアリスティックな考えを持っている

※刑事Aを兼ね役



芳賀根 昴(はがね すばる):性別自由台本上は男

25歳

対怪人武器製造を行う研究機関に勤める若き天才

デジタルリアリゼーションアーマーをファンデルワールス力で固定する技術を発見

怪人を倒すための強力な変身アイテムの開発に成功する

とても強い正義感を持っており、時に暴走してしまう

※キャスターBが兼ね役

――――――――――――――――――――――――――


昴:(NA)

怪人…人の持つ強い負の感情が肉体を変異させることで生まれた異形の化け物

人を超える力を振るい、世の平穏を狂わせるもの…

対抗する力が必要だ…そう、世界を守るヒーローが


結城:(NA)

10年前、突如存在が確認された怪人の登場を皮切りに、怪人被害は年々増加していた

強い力が求められていた…そう、悪を倒し正義を執行する…そんな力が…


――――――――――――――――――――――――――


(現代より15年前)


昴:ほら兄ちゃん!かっこいいよ!


結城:うん!やっぱりヒーローに必要なのは…


昴:うん…ベルトだよな!

結城:え…マントでしょ?


昴:ベルトだよ!マントなんてひらひらして邪魔だって!

敵にこうやって掴まれたらどうすんだよ!


結城:ベルトだって重たいじゃん!相手はすっごい素早いかもしれないよ!


昴:なら大きくなったら、昴はベルトを着けて戦うよ!

そしたら兄ちゃんが間違ってるってことがわかるしさ!


結城:じゃあ僕はマントをつけて戦う!

マントの方がかっこいいって昴もわかるさ!


昴:僕らはいつも喧嘩しながら、思い描いたヒーローになると誓った

その…はずだった


――――――――――――――――――――――――――


(夜、パトカーのサイレンが鳴り響く街

あるビルの屋上で、昴と結城が向かい合う)


昴:やぁ、遅かったじゃないか…ヒーロー


結城:出たか…対怪人特捜班は俺と行動

ほか隊員は状況を見つつ援護に回れ

俺は、ベルトを使う


(結城の腰にはメカニカルなベルトが巻かれている)


昴:はは、やっぱり似合ってるじゃないか…そのベルト


結城:お前は似合ってねえな…そのマント


昴:つければ存外気にいるものだよ

それに、戦うためには欠かせない


結城:大人しく投降しろ

今ならまだ刑もそこまで重くならないだろ


結城:なぜ?罪に問われる謂(いわ)れはないよ

僕こそが正義だ


結城:バカの戯言は聞きたくねえ

追いかけっこももう飽きた

ここで決着をつけるぞ…怪人42号


昴:名前で呼べよ、兄弟だろ?


結城:…俺に兄弟はいねえ!…変身!!


昴:変…身…


結城:(NA)

一体、いつからこうなってしまったのだろうか…なぜこんなことになったのだろう

いや、わかっている

…これは、兄として不甲斐なかった…俺の責任だ


――――――――――――――――――――――――――


結城:81…82…83…


昴:やぁ、兄さん…懸垂するにしては非現実的な数が聞こえるんだけど?


結城:これくらい大したことない…

ふぅ…お前もどうだ

最近トレーニングしてないから、随分なまってるんじゃないか?


昴:兄さんと同じくくりで考えれば誰でもなまってるだろうさ

そんなことより、対怪人特捜班に入れたって?おめでとう


結城:あぁ、ありがとう…これで直接怪人たちと戦える…


昴:そうだね…父さんと母さんを殺した怪人1号は必ず僕らが倒してやる


結城:…あぁ…そうだな

でも、特捜班の武器でも怪人相手となれば足止めが限度だ…

本当の意味で怪人を止めるならもっと強くならなきゃいけない…なぁ、昴

お前が研究してる、あの新技術が武装に応用できるかもって話はどこまで進んだんだ?


昴:あぁ…最近発表したリアライズシステムのこと?


結城:そうだ

資料によれば、デジタルで出力したアーマーに実体を持たせて外装としてまとうことで警察の防護服なんかとは比べ物にならない防御力が手に入ると聞いたぞ


昴:資料見なくても聞けば教えるのに

僕が考えたシステムなんだから

…認識としては大体あってるよ

ただ、障害も結構ある


結城:なんだ?


昴:変身に必要な外部ユニットを装着することで、外装の下に着るアンダースーツをまとうことができる

アンダースーツは装着者と肉体レベルで結びつくから、人によっては強い拒絶反応が出たりするんだ

筋肉や神経伝達機能を向上させ、人ならざる力を引きだすことが可能なのに…場合によっては体組織が破壊されかねないんだよ


結城:誰でも簡単に使えるようなもんじゃないってことか…

だが…それが実用化されれば俺たちは大きく近づくことができる…

子供の頃目指した…ヒーローに…


昴:あぁ…兄さんが使えば、誰よりも凄いヒーローになる

きっと僕らが目指した理想よりずっと凄いヒーローにさ…羨ましいな…僕も一緒に戦いたかった


結城:俺もだよ…


昴:でも、しょうがない、片方難聴じゃあ、受験資格すらないんだから

だから僕は、研究所でみんなを助ける装備を作るよ

システムもすぐに完璧なものにしてみせるさ、ヒーロー


結城:あぁ、楽しみにしてるよ、ヒーロー


――――――――――――――――――――――――


昴:(NA)

都立研究開発法人科学研究所…

表向きは国内の機械産業の研究を行うために設立された研究所だが、実際は怪人対策のための兵器製造を行う研究機関である

所員である僕は怪人の根絶を目指し、武器の開発をしていた…だが


結城:怪人どもめ!どうやって研究所の場所を割り出したんだ…!

班長!!応答願います!…ダメだ、研究所内に特殊な電磁パルスが発生している…!


昴:怪人37号の力だ…くそぉ…僕らの研究成果が…!


結城:今は研究成果よりも命が優先だ!!早く逃げるぞ!!


昴:待ってくれ…これを…


結城:これは…ベルト…?


昴:リアライズシステムの応用で作ったんだ

デジタルリアリゼーションアーマーをファンデルワールス力で安定させることで…!」


(台詞を遮るように)


結城:よくわかんねぇが…

これがあれば、あいつらに勝てるのか…!


昴:…勝てる!


結城:…信じるぜ


昴:頼んだよ…さぁ、変身して…!


結城:あぁ…任せとけ…変身!!


――――――――――――――――――――――――――


結城:(NA)

昴が作り上げたリアライジングシステム…

そのテクノロジーは研究所の破壊と共に失われた…このベルト一つを除いて


昴:このベルト…リアライジングドライバーが現存する全ての対怪人兵器の中で最も効率的に怪人の駆逐が可能であることは先の研究所襲撃事件の際に証明されました

今こそ後手に回り続けた怪人対策において先手を取るときなのです…!


結城:(NA)

だが、強力な力にはそれを扱う責任が伴う…

いかに正義のためであろうとも…力はあくまでも力でしかないのだから…


昴:特捜はどうしてあんなお粗末な対応をしたんだ…!

たかだか30号ごときに、兄さんがこんな怪我は負うことなんてなかったはずだろ!


結城:俺はこないだの一件で自宅待機だった…それなのに現場に行った俺の落ち度だよ


昴:違う…落ち度は僕のドライバーを使わなかったことだ!

なぜ使わなかったんだ…解決までの時間も被害者も少なくすんだろ!


結城:…あのベルトは強力だ…だからこそ上層部はその安全性に懐疑的なんだよ


昴:僕のベルトが危険だっていうのか!!


結城:そんなことは言ってない…!!

だが…俺がベルトを使いこなせず暴走したのも事実だ…


昴:…最終調整もしていない試作機でいきなり実戦だったんだ!

当たり前の結果だろ!むしろ37号、38号、39号の襲撃を一人の犠牲者も出さずに乗り切ったのは僕のドライバーと兄さんのおかげだ!

ちゃんと調整すれば同じ問題は二度と起こらない!

今も怪人は増え続けてる…見てくれ兄さん…怪人40号、41号が立て続けに出現した…被害者だって出てるんだ…

僕のリアライジングドライバーを使えば救えるんだよ!!


結城:上の決定だ…俺にはどうしようも…


昴:いいか兄さん!あのベルトは誰にでも使えるものじゃない!

適合実験を150人に実施して成功事例はたったの一件だけなんだ!


結城:何が言いたい…


昴:あんたにしか救えないんだよ!


結城:(NA)

昴はリアライジングシステムに自らの肉体情報を実験として使用していたため、兄弟である俺が使うことができた

他人…ましてや複数の人間が使うとなると、ベルトの調整には途方もない時間がかかってしまう


昴:(NA)

怪人たちは強い

現代の銃火器じゃあまともな外傷すら与えられないし、爆撃や砲撃は街中に現れる怪人への対抗手段として非現実的なのは明らか…怪人どもを倒すには僕のベルトが必要なんだ


結城:(NA)

あのベルトで…兄弟の力で戦いたい…

なのにどうして俺はこんなにも弱いんだ…


昴:(NA)

リアライズシステムは完成したんだ…

ベルトを使わせないというのならば、新たな装備を作るしかない…!


結城:暴走はベルトのせいなんかじゃない

力を使いこなせなかった、俺の責任だ

強い肉体と心を作る必要がある


昴:僕がやるしかないんだ

結城:俺がやるしかないんだ


――――――――――――――――――――――――


(深夜…街中で昴が男を殴っている)


昴:キミ、保護観察中だっていうのに…ずいぶんと元気じゃないか?

おっと、駄目だ…許しは乞うなよ?

君は悪だ…罪を犯し、大した裁きも受けてないくせに、再び罪を犯そうとした…

この程度の痛みを与えただけじゃ足りない…だろ?


結城:…おい!動くな!!…そこで何をしている!


昴:はは…遅かったね?


結城:お前…!?ずいぶん物騒な夜遊びじゃねえか

そいつは?…酒飲みの喧嘩には見えないが?


昴:…僕なりの正義執行だよ

こいつは5人も手をかけた筋金入りの性犯罪者だ

今だって懲りずに女性を襲おうとした


結城:言い分はわかった…

だが、これは警察の仕事だ…他のやつが来る前に早く行け


昴:まるで僕を逃したいみたいだね


結城:厳重注意だ…これ以上は…見逃せない


昴:僕は捕まらない、正義はこの手にある


結城:馬鹿言うな…その男を半殺しにすることが正義か!


昴:あぁそうだよ…まだ分からない部分が多いけれど、強い悪意が人間を怪人に変えることはわかってる

芽は早く摘んだ方が世のためだと思うだろ?


結城:そいつが怪人になるかどうかなんてわからない!

お前が暴力を振るっていい理由にはならないだろ!


昴:甘いよ…正義を実現するには力が必要だ

こんな風にね!


結城:それは…マントか?なんでそんなものを…!?


昴:兄さんが言ったんじゃないか…ヒーローには必要なんだろ?


結城:まさか…!?


昴:止めてみなよ、ヒーロー…変身


――――――――――――――――――――――――


結城:…報告いたします

被疑者は芳賀根 昴、25歳

都立研究開発法人科学研究所の元所員で、リアライジングシステムの開発者でもあります


昴:…リアライジングシステムは現状僕にしか再現できない

システムに関わる資料は研究所の襲撃で失われてしまった…

だが、今はむしろ好都合だ…警察組織では僕を押さえることはできない


結城:…そう、現存する街中で使用可能な銃火器では芳賀根 昴のリアライジングアーマーにダメージを与えることはできません

…ただ一つ、警察で管理しているリアライジングドライバーを除けば


昴:リアライジングドライバーはいわば試験機だ…

新たに僕が開発した、リアライジングクロークはドライバーのスペックを大きく凌駕することができる


結城:現状、我々が所有するリアライジングドライバーは、装着者に強力な鎧と高い運動能力を与えはするものの、戦闘方法は徒手空拳(としゅくうけん)のみ

銃火器よりも殴ったほうが強く、ナイフや剣のような武器は強化された腕力には耐えられない…アーマーを長時間使用すれば、上がりすぎた運動能力の処理に脳が追い付かずオーバーヒートする可能性もある

だが…芳賀根 昴は違います


昴:リアライジングシステムの真骨頂はデジタルモデルの実体化だ

外装の延長とすれば武器の生成も可能…

エネルギー消費は激しいが、飛び道具だって作り出せる


結城:長い間特捜を悩ませていた、飛行能力を有する怪人11号、水中での活動を得意とする23号、高速移動能力を有する31号を単独で撃破しています

恐れながら…芳賀根 昴は我々と志を同じくする同士です

この度のご判断…再考いただければと存じます


昴:次の標的は28号か…それとも33号か…

怪人対策よりも…警察の方が不安だが…仕方がない

邪魔するならば…もろとも消すのみだ…


結城:…確かに公務執行妨害なのかもしれない…しかし、この状況で…ベルトの使用許可も下りない状況で!

我々特捜に何ができるのですか…?

世論だって新たなヒーローを崇めてる!


昴:民衆の声が大きくなるのは得策じゃない…

野次馬が集まればその分守るものが増えてしまう…

やはり障壁の展開で敵を閉じ込める機能を増やすか…こんな時、兄さんなら…


結城:…馬鹿な、昴を…弟を…怪人認定すると言うのですか…!?


昴:フハハハハハ!そこまでやるか!

馬鹿馬鹿しい…いいだろう僕の戦う相手が増えるだけだ…!


――――――――――――――――――――――――


昴:やぁ、遅かったじゃないか…ヒーロー


結城:出たか…対怪人特捜班は俺と行動

ほか隊員は状況を見つつ援護に回れ

俺は、ベルトを使う


(結城の腰にはメカニカルなベルトが巻かれている)


昴:はは、やっぱり似合ってるじゃないか…そのベルト


結城:お前は似合ってねえな…そのマント


昴:つければ存外気にいるものだよ

それに、戦うためには欠かせない


結城:大人しく投降しろ

今ならまだ刑もそこまで重くならないだろ


結城:なぜ?罪に問われる謂(いわ)れはないよ

僕こそが正義だ


結城:バカの戯言は聞きたくねえ

追いかけっこももう飽きた

ここで決着をつけるぞ…怪人42号


昴:名前で呼べよ、兄弟だろ?


結城:…俺に兄弟はいねえ!…変身!!


昴:変…身…


結城:お前をここで止める!


昴:…使用許可が下りたようで何よりだけど、そのベルトで何ができるんだい?

調整も不十分な試作機だよ?


結城:かもな…おい42号、ちゃんとトレーニングはしているか?


昴:あんたと同じくくりで考えればできていないかもね

だが関係ない…肉体のスペックは、科学のスペックで上回る


結城:それは楽しみだ…!


昴:(NA)

…理解ができなかった

あのドライバーのスペックは自分が一番理解している

自分のデジタルリアリゼーションアーマーが劣っているところなどあるはずがない…

だというのに…


昴:う、動きが見えない…!?


結城:どりゃああ!!


(結城が昴を殴り飛ばす)


昴:ぐぁあっ!?


(無理な動きの反動が結城の体に現れる)

結城:うぐ…ぐぬ…どう…だ…!


昴:反動がもう来ている…?脳の限界ギリギリのラインまで一気に運動能力を向上させたのか…!?

それ程の出力だとしても…僕が動きを読めないわけが…!?

まさか…!?


結城:限界なんてとっくに超えてんだ…!

俺もこのベルトもな…!!


昴:オーバーヒートの状態を気合で耐えてるのか…!?

馬鹿な…!何をしてるやめろ!!

脳も体も障害が出かねないぞ!


結城:なんだよ…心配か?

照れるね…でもな…お前を止めんなら、これくらいの覚悟見せるのは当たり前だろ…!


昴:…馬鹿め

止められるもんなら止めてみろ!

僕は僕の正義を曲げることはできない…!!

あんたが勝手につぶれる前に、僕があんたをつぶしてやる!

来い…結城!


結城:行くぞ…!昴ぅぅう!!


(少し長めに間を取る)

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刑事A:では被害報告をさせていただきます

怪人42号…芳賀根 昴との交戦中、突如怪人1号が出現

特捜に所属の芳賀根 結城警部補と42号が共闘しますが、二人とも怪人1号によって倒されています


(実際に戦っている場面の回想)

昴:あれが…あれが…怪人1号!!…やっと会えたな、両親の仇(かたき)だ…!

僕が殺してやる…!!


刑事A:結城警部補、42号は一時共闘する形で怪人1号と戦闘を開始…

今まで謎に包まれていた、1号の能力ですが…強化された身体能力による肉体を用いた攻撃を行うことが判明しました


(実際に戦っている場面の回想)

昴:ば、馬鹿な…特殊な能力なんて何もない…ただ…ただ純粋に強い…ってことなのか…!?


刑事:つまりただその拳や足で殴る蹴るを行うだけ…ただそれだけで…

ビル3棟が半壊、死傷者384名の被害が出ており…結城警部補と42号は戦闘不能状態の怪我を負っています

1号はその後、再び姿を消したのち…東京タワーに出現

タワー頂上付近の鉄骨に立ったまま活動を停止しています


――――――――――――――――――――――――――


昴:…ざまあない


結城:何がだ…


昴:…僕のリアライジングシステムがあれば怪人に負けるなんて有り得ないと思ってた

でも…圧倒的な力の前には僕は無力だった…何も…!できなかった…


結城:泣き言か?42号さんよ


昴:やめてくれ…もう僕は戦えない…


結城:情けねえな…怖くなったか


昴:あぁ…そうだよ

僕はあいつと戦うのが怖い…

僕の全ての攻撃が通じなかった…結局僕は覚悟の足りない臆病者だ…


結城:……


昴:…死ぬかと思った

初めて…本当に死ぬかと思ったんだ…

何もわかってなかった…ごめん…ごめんなさい…!


結城:…お前はお前のできることをやれ

俺は俺のできることをする…


昴:…無茶だ…兄さん…!

殺される…!


結城:…俺は死なない


昴:何を根拠に!


結城:根拠なんていらないよ…それが俺の役目だから


――――――――――――――――――――――――――


キャスターB:本日未明、東京タワーで活動を停止している怪人1号に対して、警察と自衛隊の合同部隊による一斉攻撃が行われました

実際の映像です

自衛隊のヘリ、装甲車、戦車が出動し、対怪人特別捜査班と共に攻撃を行いましたが、活動を再開した1号によって合同部隊は約5分ほどで全滅したとのことです

怪人1号はいまだ東京タワーにとどまったまま動かず。緊迫した状況が続いています


結城:(NA)

最初に存在が確認されたのは10年前

そいつは俺らの前に現れた

自我があるのかないのか…何が目的なのか…何もわからない

わからぬままにただひたすらに5万人を殺し、姿を消した… 


昴:(NA)

怪人を人間に戻す方法は現状無い

彼らを隔離するための檻だって存在しない

だから殺す…社会を害する悪を駆逐する…それがヒーローだと…

僕はそう思っていた…


結城:よう、怪人1号…待ったかい


昴:(NA)

兄さんはいつも怪人を殺すのではなく止めたがっていた

相手を倒す力ではなく、攻撃を受けきる術(すべ)を求めていた

常に誰かを守ろうとしてた…それがたとえ、怪人だったとしても

でも…今回は違う…


結城:…なあ…あんたも元は人間だったんだろ?

大事な人とか、家族とかそういうのがいたんじゃねえのか?

何万人も殺して…あんたの心は痛まなかったのか…?


昴:(NA)

兄さんはヒーローであることなどもう捨てようとしている

ただ、警察としての職務を果たそうとしている…そのために信念も誇りも…命も捨てるつもりなんだ


結城:はは…やっぱりお前は怪人じゃないな

もうただの…怪物だ

おまえにとっちゃ、知ったことじゃないだろうけどな…

もう10年だ…いい加減終わらせようぜ…

変…身…!


昴:(NA)

1人じゃ勝てない…兄さん

僕は…今度こそ、今度こそなるんだ…

あの日二人で目指したヒーローに…!


――――――――――――――――――――――――――


結城:(NA)

怪人は人が変化した者…

大抵の場合は本人の様相を残すし、日本の警察機構の操作能力を持ってすれば誰が変化したのかわかるものだ…だが…


結城:がはっ…!?くそ…強すぎる…

情報も何もないし…弱点も何もわからねえ…!


結城:(NA)

ただ速い、ただ硬い、ただ強い…純粋なまでの暴力

ただ振るった腕が大砲となり、ただ突き出した手のひらが盾となる

覚悟を決めろ…ここで死ぬつもりで来たんだろう…


結城:この命をかけててめえを…!

出力を100…いや150%まで上げる!それでも無理なら…俺が壊れるまで出力を上げ続けてやらぁ!!


昴:兄さん!!


結城:…昴!?


昴:そんな情けないこと言うなよ!

ヒーローだろ!


結城:…うるせえよ…俺だってかっこよく戦いたいさ…

憧れたヒーローみたいによ…でも駄目だ…ヒーローしてちゃあ勝てねえ

命を奪おうってんだ…俺の命くらい賭けなきゃ他の誰かの夢が夢のままになっちまう…!

昴:…兄さん、ヒーローに必要なものってなんだ?


結城:…あぁ?こんな時に何を…


昴:なんだって聞いてんだ!


結城:…何って…はっ…そうか

…でもできるのか…そんなことが!?


昴:できる!兄さん…僕らで作ったヒーローだろ

もう一度信じてくれ…!


結城:…信じるさ…ヒーローに必要なもんはやっぱり…マントだよな!


昴:デュアルリアライジングシステム…起動!

クロークとドライバーの力を…一つに!


結城:…見せてやる、俺たち兄弟の力!


昴:いけ…兄さん…変身だ!


結城:あぁ…行くぜ…昴…!変身!


――――――――――――――――――――――――――


結城:…なぁ昴


昴:なんだよ…兄さん


結城:…俺は、ヒーローだったか?


昴:あぁ…ヒーローだった


結城:…馬鹿言うなよ

東京タワーの高さが3分の1になっちまった…


昴:なら最初から聞くなよ…でも…それでも…ヒーローだったさ


結城:…そうか…時計持ってる?


昴:あぁ、はい


結城:6月10日 午後22時2⑦分…

怪人1号…そして、怪人42号撃破


昴:…え、俺も?


結城:あん?まだ怪人するつもりなのか?


昴:それは…しないけど


結城:なら怪人は終わり…一緒に世界を救おうぜ…ヒーロー

俺にはお前が必要なんだ…


昴;…うん、わかったよ

しょうがないな…ヒーロー

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