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スピーカーの逆起電力「バックEMF」ってどう扱うの?

雑誌でスピーカー関連の記事にスピーカーの逆起電力、バックEMFについて書かれているものがあります。
イメージとしては、磁石とコイルで出来た機能部品、モーターをイメジして、通電すると回転するが、通電をやめてもモーターが発電して電圧が端子に発生する。
そのとおりですね。スピーカーも通電すると機械的な運動をして、通電を止めてもコイル位置が戻る(減衰振動しながら)ので、確かに起電力はあるのでしょう。
深く考えずに、等価回路として

等価回路1

とした場合、パワーアンプの信号源の周波数に対して、(電圧も少々関係)負荷となるスピーカーのインピーダンスZがあって、信号源の電力を消費する形ですね。
信号源から電流iが流れたとしましょう。ここで、謎の逆起電力なるものが顔を出してきます。

等価回路2

このスピーカーに潜んでいた逆起電力というものもパワーアンプの信号源の周波数と電圧によって変わるという感じで閉じられるたりしていますが、だいたい、低音の共振点付近でインピーダンスが上昇する現象話から登場するのではないでしょうか。
「アンプが急に信号を止めても、スピーカーコーンは慣性で動き続けるため、コイルに誘導電圧が発生します。ただし、ダンピングファクターが高いアンプでは、この逆起電力は素早く吸収され、影響は小さくなります。」的な締めで。
しかし、この部分だけを見てしまうと、スピーカーのジェネレータが大きく悪影響を及ぼす心配する人が出てくるでしょう。

等価回路3

スピーカーの最低共振周波数付近のインピーダンス上昇する主な理由から、逆起電力の影響へシフトしてしまうと、色々と誤解や混乱が生じることがありそうです。

少し理屈をこねこね。
なぜ共振周波数でインピーダンスが上昇するのか?
1.スピーカーの等価回路
スピーカーを電気的にモデル化すると
 直流抵抗(Re):ボイスコイルの抵抗成分(通常数Ω)
 インダクタンス(Le):ボイスコイルの誘導成分(高周波で影響)
 共振回路(メカニカル+電気的な影響)
これらはLC共振回路のように働きます。
2.共振周波数で逆起電力発生
最低共振周波数 (Fs)ではスピーカーのコーンなどの振動系が最も効率的に振動してエネルギーを蓄えます。振動が続くとボイスコイルが磁場中を動いて自己誘導による逆起電力が増大します。
この逆起電力が、外部からの駆動電圧と逆向きの電圧を生じさせるため、実効的な電流が減少し、インピーダンスが上昇
つまり、
スピーカーが発電機のように振る舞い、外部からの駆動信号と打ち消し合うためにインピーダンスが上がるという説明ですね。
(まさに逆起電力が関与している証拠という感じ)
ここへアンプへの影響から、ダンピングファクタによって云々。
特にスピーカーの共振周波数付近で強まる「自己共振」特性により共振点では駆動信号と打ち消し合う発電機のように振る舞う逆起電力がインピーダンス上昇の主な要因というかんじですね。

実際はスピーカーに供給されたエネルギーの大半は熱や音響エネルギーとして消費され、逆起電力の影響は相対的に小さいです。
スピーカーに供給された電力は主に以下のように消費されます。

音響エネルギー(音として放射)
 一般的なダイナミックスピーカーの効率は、良くても 5〜10% 程度
熱損失(ボイスコイルの抵抗による発熱)
 ボイスコイルで入力された電流によって生じるジュール熱
 これが入力エネルギーの多くを占める。
メカニカルダンピング(振動系の損失)
 スピーカーのダンパーやサスペンションの摩擦、空気抵抗り熱となる。

実際の影響として、逆起電力は確かに発生しますが、スピーカーの入力電力に対して比率はそれほど大きくなく、通常の動作ではエネルギーの大部分は音、熱、機械的損失として消費されます。

ということで長くなりましたが、逆起電力の扱いについて、実際には「逆起電力」と表現されるものは、スピーカーの等価回路に置き換えた場合に見える仮想的なものであり、実際の物理現象としてはインダクタンスや共振による電流と電圧の位相ずれとして現れます。
・逆起電力とインダクタンスの位相関係
スピーカーのボイスコイルは基本的にインダクタンス(Le)を持つため、高周波成分では電流の位相が遅れ(リアクタンスが増加)、低周波の共振点では、運動エネルギーの蓄積~放出で電流と電圧の位相が変化するします。逆起電力(バックEMF)という言葉は、スピーカーが運動エネルギーを電気エネルギーに変換することで発生する「見かけ上の電圧」を指すのですが、実際には入力から見ると「スピーカーのインピーダンス変化として現れる」だけので、電気的には 「電流と電圧の位相ずれ」 として理解するのがより正確とおもいます。
スピーカーの動作を等価回路として見ると、「逆起電力が発生している」ように見えることになりますが、実際に起こっていることは、コイルがインダクタとして動作し、運動エネルギーの影響で電圧と電流の位相がずれているということです。
ボイスコイルが動いている → 発電機のように電圧が生じる(バックEMF)
これが外部の駆動電圧と打ち消し合う → インピーダンスが変化。
磁場中をボイスコイルが動くことで誘導起電力(ファラデーの法則)により電圧が発生しますが、その効果は「インダクタのように振る舞う」結果となり、電流と電圧の位相ずれとして現れるるので、 逆起電力は「スピーカーの等価回路」で説明するための概念であり、実際には「電流と電圧の位相ずれ」によるものという理解です。
スピーカーの最低共振周波数ではLC共振回路のように動作して、共振点を中心に電圧と電流の位相が急激に変化し、共振点より下では電流が電圧より進み、上では電圧が電流より進みます。入力から見ると「スピーカーのインピーダンスが変化している」ように見えるわけです。
結論ついうにはあれですが、
逆起電力というのは、スピーカーの等価回路として説明するときに現れる概念であり、実際には「電圧と電流の位相ずれ」として表れるもので、スピーカーの共振点付近でインピーダンスが上昇するのは、この位相ずれによる影響の結果と考えるのが正しいとおもいます。


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