【活動報告書09】360度カメラによる注文住宅の企画・設計:窓からの風景をシミュレーション
注文住宅の企画・設計を依頼する建築主の要望は、多種多様です。
外観や生活動線、価格などにこだわる方など様々です。
最近は、窓からの風景を事前に確認したいという建築主も現れるようになりました。
そこで、360度カメラで撮影した静止画を背景にして窓からの風景を事前に確認できるか否かを検証することとなりました。
1.注文住宅依頼内容
建築主は、二世帯住宅を希望しています。
1-1.一部共有型二世帯住宅
玄関だけを共有し、LDKや寝室、水回りなどは別々に設ける「一部共有型二世帯住宅」というタイプです。
なお、二世帯住宅については下記の記事をご覧ください。
1-2.具体的な要望
家族は、建築主夫婦、建築主の両親、子供2人の計6人です。
家族間の希望を調整した結果、まとまった要望は下記のとおりです。
・LDK:2箇所
・玄関:1箇所:共同利用
・寝室:2部屋
・洋室:2部屋
・応接間:1部屋:来客多数
・浴室:2箇所
・洗面:2か所
・トイレ:2箇所
・駐車場:車2台
・駐輪場:バイク・自転車3台
1階は両親夫婦の居住スペース、2階は建築主夫婦と子供の居住スペースとしました。
2.現地調査
建築主から依頼のあった注文住宅の計画地は、南側道路に面した長方形の敷地です。
計画地中央に約1.2mの段差があります。
2-1.360度カメラ撮影
360度カメラを低部と高部に設置して、現況計画地を撮影しました。
なお、360度カメラによる撮影写真は、後ほどWHERENESSというアプリでまとめます。
2-1-1.計画地低部
2-1-2.計画地高部
2-2.計画地周辺状況
計画地周辺には住宅が建ち並びます。
写真4には、建物が写っていますが、現在は解体され更地です。
計画地の住所は、特定されないようにするため伏せます。
3.3DCG作成
計画地の現況を表現した3DCGを作成します。
その後、建築主と打合せにより調整した注文住宅の3DCGを作成します。
※3DCG作成ソフトとして、「3D ARCHI DESIGNER」(メガソフト製)を使用します。
3-1.計画地現況3DCG
計画地現況を3DCGで表現しますと、下図のとおりです。
3-2.注文住宅3DCG
建築主の要望を反映した注文住宅3DCGは下図のとおりです。
なお、注文住宅の詳しい内容については、下記の記事をご覧ください。
4.窓からの風景を表現
WHERENESSというアプリにより、
・360度カメラによる計画地での現況写真
・「3D ARCHI DESIGNER」によるパノラマ写真
をまとめました。
建築主からは、
「両親が1階LDKや1階の寝室の窓から見える風景を気にしている」
と、いわれました。
そこで、窓から見える風景をシミュレーションしました。
4-1.1階LDKの窓からの風景
1階LDKは建築主両親が利用する空間です。
窓から隣家の玄関ドアや窓と、どの程度鉢合わせになるのかの程度を知りたいとのことでした。
1階LDKの出窓からの風景は下図の通りです。
1階LDK掃き出し窓からの風景は下図の通りです。
建築主にこの図を見せたところ、全然問題ないとのことで安心をしていただきました。
4-2.1階寝室の窓からの風景
1階寝室は建築主両親が利用する空間です。
建築主にこの図を見せたところ、全然問題ないとのことで安心をしていただきました。
5.問題点
今回、360度カメラや「3D ARCHI DESIGNER」を利用して、問題点が発覚しました。
5-1.天空が直方体になる
建築3DCG作成ソフト「3D ARCHI DESIGNER」にて作成するパノラマ図は、室内での作成を想定しています。
野外でパノラマ図を作成しますと、部屋の中のように空が直方体になってしまいます。
5-2.室内パノラマ図と360度カメラ写真と比率が合わない
室内パノラマ図を基にして窓からの風景をシミュレーションする際、窓に360度カメラ撮影写真を貼る方法を取ります。
その際、正確に比率を合わせる設定はありません。
そこで、隣家の玄関や窓の位置を測定し、どのように見えるかを想定しながら、背景写真(360度カメラ撮影写真)の位置を決める必要があります。
誤差は約20cmほど見込まれます。
5-3.2階以上の窓からの風景
2階以上の窓からの風景をシミュレーションする際、360度カメラでの計画地現況写真撮影は、階数に応じた高さに設定する必要があります。
1階の窓であれば、現地で約2mの高さにカメラを設置する必要があります。
2階の窓であれば、現地で約5mの高さにカメラを設置する必要があります。
今回は、現地で2mの高さにカメラを設置して撮影しました。
6.まとめ
360度カメラで撮影した計画地現況写真を利用して、建築予定の注文住宅の窓から見える風景をシミュレーションしました。
建築3DCG作成ソフト「3D ARCHI DESIGNER」で作成するパノラマ図と360度カメラによる計画地現況写真とを完全に比率を合致させることができないことが判明しました。
しかし、隣家の目印となる玄関や窓、壁の位置などを測定することにより、窓からの風景を想定しながらのシミュレーションは可能です。
誤差は約20cm見込まれますが、窓から見える風景としては問題無いと思われます。
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8.筆者プロフィール
9.有限会社エクセイト研究所
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