小学校受験をしてない底辺が小学校受験をする塾で2年バイトした話①
「よし、じゃあ今日は面接練習からしようか」
「いやだ!!!やりたくない!!!」
「なんでやりたくないの?」
「いや!いや!!いや!!!」
「こういうのが嫌なの?」
…………….
また、何もやらないのかと子供の前でため息をついた。
1,優秀な子とそうではない子
まあ恐らくはパパっと読みたい人たちが多いのではないかと思うので、まずは何をもって優秀なのか、その素質はあるのか等を素人目線から話そう。
優秀な子とは、「大人の言うことを黙って聞いて実行できる子」だ。
やはり嫌々取り組む態度する子や、本人の頑張り以上に勉強をやらせて1日のポテンシャルに差が生まれてしまう子は優秀ではない。
そもそもだ。お受験する子の7割ぐらいは自分が受験生であることを自覚していない(体感)。
残りの3割は受験生であることを自覚をして日々の勉強に取り組めている。(勿論自覚できたとしても受かるかどうかは別であるが…)
自分が受験生であることを自覚している子は大人の言うことをとてもすんなり聞いてそれを実行する。なぜなら受からなければ親がどういう気持ちになるかわかるからだ。また、自分がどのような道を歩むかをぼんやりと親から洗脳されている。大体兄や姉の影響を受けて、自分も同じようになりたいと思ってくれる。
自覚していない子はなぜ自分が勉強をしているかわからない。
目的がわからないのに、なぜ目の前のことをやらなくてはならないのか。退屈で、怒られて、またやらされる。
外でボール遊びしているほうが楽しいのに、それをさせてもらえない理由がわからない。こればっかしは、もう脳の作りや4,5年間で積み重ねた家庭環境によってしまうので、いかに勉強することが「普通のこと」なのかを刷り込む必要があるのだが、それはまた別の話だ。
勿論これは自論であり、経験から基づく話だ。「優秀な子」は人によって様々だし自分の家の子が一番優秀と思ってしまう親がいてもなんら不思議なことではないことは重々承知している…
2, 早生まれと遅生まれ
これは切っても切り離せない問題だろう。
早生まれとは、「1月1日〜4月1日に生まれた子」で、遅生まれはその期間以外で生まれた子のことを言うのだとか。これは塾講師目線やはり大きく違いが出ていると感じることが本当に多かった。
例えば、4月9日生まれのAくん、9月27日生まれのBくん、2月16日生まれのCくんがいたとしよう。
この子たちに模試を受けさせると「Aくん→Bくん→Cくん」の順番で良い成績がつく事が多いのだ。
4月9日に6歳になった子と、9月27日に6歳になった子では、6歳の段階で勝負する時間が圧倒的に違うのがわかると思う。ましてや2月16日なんて、受験日ではまだ5歳だ。
これらの理由から、本来勝負になる訳がないのが一般的な考え方だ。それだけ生まれた月というのは、受験で勝てるかどうかが決まる大きなファクターというのが、世のお父さんお母さんに理解して貰えたら嬉しい他ない。
勿論、今まで言った事で諦めるのはまだ早いと思う。適性を見て、周りのレベルを確認し、しっかり自分の子供の発達具合と相談をした上で受験させるかは決めていいと思う。
..…が、諦めない親御さんもいるもので。どう考えても適性がないし、受験勉強ができる性格じゃないのに、無理やり勉強をやらせる親はいるのだ。
そして、受験1ヶ月前になってようやく焦り出す。
「ウチの子はもっとできるんです!!」
「周りのレベルが低いからウチの子も低くなるんです!!!」
「もっとできる子と組ませて、ウチの子ができるようにさせてください!!!!」
こーーーーーんな現実も見れていないクレームが山ほど入ってくるのだ。
勿論、それらはほぼ全て早生まれ、もしくは秋以降のに生まれた子の親御さんから出てきた言葉だ。毎回社員の方と、「現実見てほしいね」と話すぐらい聞き飽きた文句なのだ。
教育系で働く親御さんは計算をして子供を作っているのはほぼ間違いないのだろう。4,5月生まれの子は明らかに教育系で働いている親御さんが多い。てか殆どそうだった。教育系で働いていて、4月2日〜5月末までに生まれた子が明らかに優秀である確率が高い事がわかっていて、自分の子も確率が高くなるように計算して種を仕込んでいるに違いない。
小学校受験とは、産む前から勝負は始まっているのかもしれない。
3, ケース1「理由が話せない男の子と家庭環境」
これから話すケースは、実際にあった事を少し変更を加えたものということをご了承願います。
そして長いです。エピソードトークなので興味ある人だけ読んでいただければ幸いです。
トモキくん(仮称)は、受験をする1年前から通い始めた。最初はもちろん勉強もせず、先生の言う事を全く聞けない子だった。3時間ずっと殴る蹴るをするような子だった。
先生たちは久しぶりに手を焼く子が来たと噂し、逆に1年後が楽しみとまで言うぐらい活発な男の子だ。
入塾から半年、他の有名塾に何個も通い出した。経験を多く積み、プリントや絵画、集団にも慣れていった。この時は2時間以上集中力が持たず、工作をしたり絵本を読み聞かせたり等してなんとか気を紛らわせていた。
丁度その頃、僕はトモキくんを良く見るようになった。男の先生が珍しかったのか、とても良く懐き話を聞き素直、だが集中力に難がある子だった。それでも「あの小学校に行きたいから頑張るんだ」と自ら言い、先生の言うことに対してひたむきに頑張ってきた。
その子は話の記憶と図形が苦手だった。話の記憶は聞いている途中で飽きてしまったり、お喋りをしてしまったりと、ジッと動かず黙ることが出来なかった。
図形は四方図や、反対の図を想像するのが苦手で、かなりの時間をかけて克服していった。
しかし、受験1ヶ月前に事件が起きた。
癇癪を起こし、暴れ出す。先生の話や両親の話まで聞かず、自分が本能的にやりたいと思ったことしかできなくなった。いつもは出来ていた事が全てできなくなっていたのだ。
授業後、原因を探るためお父さんに詳しく話を聞いた。
通っていた別の塾で、子供同士のトラブルがあった「らしい」。
らしい?らしいってどういう事なのか更に深堀すると、お父さんは原因を把握していなかったのだ。
何故か塾側もトラブルになったのか、そしてトモキくんの両親もそれが分からなかったのだ。
僕は頭を抱えた。
明らかに異常だった。先週まではかなり順調だったのに、人が変わってしまったようになった。僕や周りの先生は精神病まで疑った。
そして3日後、集団模試の日がやってきた。
今日はすんなり入ってくれるだろうかと思い、待ちわびていると、お母さんの金切り声がビルに響いた。
「トモキ!!!もうすぐ時間だから早くして!!」
僕はそんなお母さんの声がしてビックリした。そんな大声を出して子供を叱責するお母さんのイメージがなかったからだ。
こりゃ…ダメかな…
そんな悪い予感と共にお母さんが顔を出した。
「トモキ!!挨拶しなさい!!」
「やだーー!」
模試開始まで後5分と迫る中で、そんな問答を何度も繰り返し、こちらも手が出せずやきもきしていると、遂にお母さんの糸が切れた。
「お願いだからぁ〜!トモキもう時間無いって言ってる〜!」
涙を浮かべ、声を震わせながら息子に懇願し始めたのだ。
トモキくんはそんなお母さんの声も届かず、ずっとお母さんにしがみつき、離れようとしない。
近くに僕がいることを示すため話しかけ、楽しい事しようよと言うが、全く聞かない。
本当に離れなくなり、テコでも動かなくなったので無理やりお母さんから引き剥がし、重い体を抱いて集団模試を受けさせた。
後日、いつもの3時間の授業を終えお父さんに聞いてみた。
「ココ最近、トモキくんの心の状態が悪化していますが、病院等は行かれましたか?」
「いえ、行かせてません。こういう風になって妻とも話しましたが、やはり病院に連れていった方が宜しいのでしょうか..…」
驚いた。家庭内でもそんな話が出ていようとは。だが、僕としては信じられない言葉がお父さんから出てきた。
「妻が頭が良いので、子供に期待しちゃっているんです。僕は妻がやろうと言ったので良い経験になるかなと思い賛同したのですが、ここまで来るとさすがに…」
この父親、母親がいない所で母親を悪役にしたのだ。
あまりにも無責任な発言に僕は卒倒しそうだったが、家庭内に口を出す訳にはいかないのでグッと堪えた。
その事を、長く務めている社員の方に話をした。
「もう向いてないことをそろそろ理解して欲しいですよね」
「そうよね…多分あのご家庭、受験やってる場合じゃないくらい酷いわよ」
「え、どんなです?」
「おやつに髪の毛が5,6本入ってたり、落としたものを平気で拾って食べたり…最近は妹に手を出したってことも聞きましたわ」
「受験する家庭環境に見えませんね」
「そう、しかもお母さんの身だしなみも有り得なくて…髪はボサボサで昨日と同じ服着てたんですよ。それを見て私怒っちゃったアハハ」
と、とんでもねぇことになってやがる。こんな塾通わせてるぐらいなら家政婦を雇えばいいのに…
「あ、まだあるわよ。この前、マサルくんが絵本を選んでいる時に、トモキくんがボールを投げてマサルくんに当てちゃったの。かなりの強さで。」
「マジすか」
「それをね、トモキくんのお母さんに話したら『ええ、ホントですか。トモキ何があったんだろう』って言ったのよ!信じられなくって。普通はお母さんもマサルくんに謝るのが普通でしょう。あの家庭ちょっと非常識が過ぎるわよね」
さすがに絶句した。開いた口が塞がらないとはこの事。そんな調子で有名小学校を受けていくなんて到底考えられない。
僕はため息をついた。
そして、塾に通う最終日。2日後は試験本番だというのにいつも通り癇癪を起こし、人の話を聞かずに授業が終わった。
僕はお母さんに今日のフィードバックをし、本番までに調整するところのピックアップと生活方法のアドバイスをした。
「何かご質問ありますか?」
「そうですね…あっ、トモキの相談では無いのですが」
「はい?なんでしょうか」
「妹はこの女子小学校が似合うと思うんですが、どうでしょうか!?」
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