駿の内臓をたべさせたい(君たちはどう生きるか ネタバレ有り考察①)
宮﨑駿監督最新作「君たちはどう生きるか」が公開され、早2ヶ月沢山の人達が観ただろう。
ジブリ=公開前に沢山宣伝を打ってお祭り騒ぎに盛り上げるという固定観念を打ち破り、一切宣伝ナシ・ポスターのみ公開という手法がある意味で話題を呼び、客入りはかなり良かったように思う。
ただ、観賞後の世間の反応は見事に賛否両論という感じで、自分もそれには納得している。
実際自分の一次元的な範囲での反応は「なんか難しかった」「ちょっと退屈だった」「何となく気持ち悪かった」というものが多かった。
だが、それで終わっている人が居るのは本当に勿体ない!という老婆心が公開終了が迫るにつれ沸き上がってきてしまった。
なのでこれからネタバレ大アリで、考察とも言えぬような脳内を渦巻く超個人的感想を吐き出していこうと思う。
これを読んで少しでもああそうか!や、それは違うのでは?と思ったらぜひとも劇場へ足を運んでほしい。
①つまらない、気持ち悪いは当たり前。だって心構えが違うもん
まず、この映画が「つまらない」という評価になってしまう原因の1つに「面白い」の方向性が過去のジブリ映画とは明確に違うという点が考えられる。
トトロや魔女の宅急便など、ジブリには可愛いキャラクターが出てきてドキドキするようなストーリーが展開される作品を求めている人が多く、実際そういう方向性を監督自身も目指していたと思う。
面白いの方向性で言うと、「fun」という感じ、例えるなら遊園地的な面白さと言ったところか。
ただ、この映画の面白さの本質はそこにない。監督自身が世間への媚びを捨て、やりたいことをやった先にある面白さ。方向性的には「interesting」つまりは美術館、博物館的な面白さがある作品になっている。
もっと直接的表現をすると、宮「崎」駿が今まで様々なことを考え、食らい、飲み込んで形成された内臓を宮「﨑」駿が綺麗にかっ裁いて見せてくれてるみたいな感じ。観る人がみればつまらないし、気持ち悪いが、それを興味深い、美しいと感じる人も居るのはそういう理由なのでは?と思っている。
ただ、美術館も自動音声や学芸員さんと回るとまた楽しみ方も変わるし、ホルモンだってプロがしっかり下処理してちゃんと焼くと美味い。
実際、この作品を予告で流してしまうと変な先入観が生まれてノイズになるし、作品の鮮度が急激に落ちていたなとも思った。
ポスター1枚は変化球ではなく、実はああするしかなかったのかもしれない。
なので、プロセスとしては初見で観る→考察を読む→もう一度観ると味が変わるという作品であることは間違いない。これが涌き出た老婆心の理由かな…。
話を戻すと、この作品は監督自身がこれまで生きてきて感じたことや実体験、今まで作ってきた自分の作品や、影響を受けた作品群をベースに、それを1本の映画として自由に具現化した作品であることは間違いないと思う。(実際鈴木敏夫プロデューサーも好き勝手やらせる的な発言を各所でしている)
逆に言えば、自由に作ったからこそそもそも深い意図なんて無く、こんな考察なんてやるだけムダで深読みする意味なんてないのかもしれない。
しかし、この作品は脚本すらも自由で、故に所々全くつながらなかったり不親切な部分が多くあり、そこを考察で自分で繋げたり補完したりしないと「なんかムズいわ」で終わってしまう。正に後述する「不安定な積み木」なのであろう。
終盤のシーンを見るとその部分は解像度が上がってくる。
大伯父様が眞人を後継者にしようとする場面で13個の穢れていない石を積んで世界を作るように頼む。宮崎駿監督作品は全部で13作品(ジブリでない時の作品や短編等含めると数が変わるので眉唾の可能性は高いが)で、実際にそれを眞人は自分の悪意を理由に触れられないと断り、生々しい傷痕を見せ、これと生きていくと語り現実へ戻る決意をする。
この作品のテーマとして「継承」があるのは明白であろう。(作品のテーマについてはまた後日語ろうか…)
大伯父を監督自身、13個の穢れていない石の積み木をジブリ作品だと仮定すると、一つ一つの石は丁寧に綺麗な形で切り出されているが、積み方はアンバランスで今にも崩れそうである。
これは、自分が作った作品一つ一つは穢れや悪意を排除した綺麗な見映えのものだが、その積み上げ方には疑問を感じている表現とも取れる。
先程若干匂わせたが、本作は宮﨑駿表記になっており、明確に自分の悪意と向き合い傷すらも見せ、穢れすらも含んだ作品であるということを、積み木に触らず前を向いて現実へ戻る決心をした眞人を通じて伝えたいのかな?とも思えた。
自問自答の先に生き方を見つけたのかなと。
そしてその悪意や穢れこそが、気持ち悪さに繋がるのではないだろうか。
これから更に眉唾ベットリで行くが、突然山へ飛来した魔力を持った石の塊は人間の創造性のメタファーで、それを見映えのいい塔で覆い、その中で本を読んで自分の好きな想像の世界に没入して消え、自分の世界を創造した大伯父こそ「スタジオジブリ」であり「宮崎駿」なのかなと個人的には思った。石の塔を作るときに崩れて何人も怪我人や死人が出たというのもまた生々しい…。
また、自分の人生を振り返っても物心ついた頃にはジブリを含めて既にアニメやエンタメの類いは与えられており、正に「宇宙から飛来したまやかし」という感じだった。実際、そのまやかしに沢山の創造性を与えられた。
脱線失礼。
本編の話へ戻すと、全てを受け入れて自分を見つめなおし、塔と共に崩れ去る大伯父を背に現実を生きる覚悟をした眞人こそが「宮﨑駿」なのかとも思った。
俺はこう生きた、君たちはどう生きるか?という問いにも感じる。(あと、この爺さん全然辞める気ねぇじゃん!とも感じる)
この生々しさと複雑さを持った作品を心構え無しに見たら、まぁつまらない、気持ち悪いは当たり前だろう。
個人的感想だが、まず概要としてこういう楽しみ方もアリかなという点を示したかった。
あれ、概要…①でこんなに文字数が…キャラクターも内容も全然触れてない!
②はまた次回!
次は作品の製作陣を見て特に異彩を放っていたなと感じた2人の異常者について語ります!(キャラクターは…?)