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(43) パイセンの目が光る町で子育て出来たら良いな。

マトさんにトツギーノした1年前まで、産まれてからずっと暮らして来た品川。あの頃はまだ"娘"として暮らしていたから気が付かなかったけど、母親になり娘を持つ立場で見渡せば、この北品川には人生のパイセン方の"目"があちこちで光っていた。まぁ、良くも悪くも。。と言う感じだろうな(笑)


子供の頃も、青春時代もそうだった。彼氏や彼女なんて連れてこようものならすぐに噂になっちゃう、みんなそういう感じだったはず。だから、大して真剣じゃない関係で、普通の友達でも下手に地元へ連れて行こうものなら、どっかで誰かがみてて、あっちこち経由で家族の耳に届く(笑) そして私がここで子育てをしていくのならば、その日々もきっと娘を暖かく、そして厳しく見守ってくれる目があるんだろうなって、何となくそう思った。私も、そのうちパイセン側に回って、若者を厳しめに見守って行くのかなって。

そんな日々が続いたらいいんだけど、私はマトさんのいる場所に帰らなくちゃなりません。家を出てたった1年だったけど、品川の実家はこの時点で既に私の家ではなく、あくまでも"実家"。お父さん、お母さん、かおちゃんが暮らす家。私の家ではなくて"心の洗濯に帰る場所"みたいになっていた。


うちのお父さんは朝一番、仏壇と神棚の水を替えてお参りをする。毎日家族安全や健康とかを祈ってくれていると思うんだけど、きっと私がマトさんと結婚してからは、毎日マトさんの健康や無事も追加してくれている。そして孫が産まれたから祈る案件がまた1つ増えた。孫だからきっと他にも増して念入りかもしれない。こうして家族が増えると案件が1つ増え、あの頃に比べると、現在ではかおちゃんも結婚したので了ちゃんという義理の息子が増えて、私も2人目が産まれて、かおちゃんにも息子が産まれて、"家族が増えた=毎朝の祈りの案件が増えた"ので、お参りの時間もちょっと長くなる。神様、仏様、ご先祖さまもご苦労様です、と春美さんと娘はいつもそう思って見ている。ちなみに、お父さんのこだわりは


"冷たい飲み物には氷が欠かせない"



春夏秋冬、四季は関係なく、神棚にも仏壇にも"セブンイレブン"で買うちょっと良い氷を入れてキンキンに冷えた水をお供えする。冬場になるとたまに、


"寒いんだから、温かいお茶のが喜ばれるわよね、きっと"


春美さんが小さな声でポロッとコメントするのもセットメニュー。でもきっと自分が良いと思うものをお供えして、それから色々祈ったり報告したりお願いしたりするのは、お父さんなりのお・も・て・な・しなのだと思う。



先日久しぶりに実家に電話をした時の事、お父さんがこう言いました。



"いやー、参っちゃうんだよ。最近お母さんが白雪姫でさー"



えーっと....。どこからツッコんだらいいのやら(笑)
"もしもし? お父さん? 元気? "の直後のこの発言。
辰雄(お父さん)ギャグには結構慣れてるはずの私なんだけど、この発言の真意が読めん。私が数秒考えてる間に、お父さんは私の答えを待ってるんだろうって感じで無言。電話だったから顔見えないけど、お父さんの"ニヤリ"とした表情が目に浮かんだ。


お母さんが白雪姫。


70代半ばの白雪姫。


どう捻っても答えが出ない。悔しいな。


"えーっと、お母さんが白雪姫のその心が読めません"


と言って降参した私。すると"待ってました!"と言わんばかりにすかさずお父さんがこう言いました。


"口づけしないと起きないんだよなー"



....アホか!

悩んで損したけど、なんかちょっと上手いこと言ってるような、なんかちょっと想像してはいけないような(笑) 娘相手に一体何を言っちゃってるんでしょうか? でも座布団1枚くらいあげても良いかもとも思ったけど。



お父さん、してやったりな感じで嬉しそうに笑いを堪えてそう説明してくれた。その答えはむしろ分からなくて良かったのかもしれない、娘はそう思った。そして後ろで春美さんがやや大きな声で、


"そんな風に起こされた事なんて1度もないわよっ!"



って、電話越しのハワイの娘まで届けとばかりにやや大声でツッコミなのか否定なのか? でも安心してください春美さん、私その辺はちゃんと分かってるから(笑)
ってか、眠れる森の美女でも良かったはずだけど敢えて白雪姫。どっちにしてもこのギャグに付いていくのはなかなか高度な技術が必要だ。っていうか、この類のギャグはいつのタイミングで考えてるんだろうか。コロナ禍で行くとこないから、私との電話の時の為にこのギャグを準備してくれてたのかな、だから開口一番で忘れないうちに言ったんだな。



こんな愉快で優しい両親と、めちゃくちゃ気の合うかおちゃんと、姉妹のように育ったいとこ達、その子供達、ご近所のパイセン方に見守られてずっと子育て出来たらいいけれど、2ヶ月を過ぎた頃には"マトさんの元へ帰る"んです。でも帰るって言っても家がないんですけどね。いつになったら家が決まるのかも全くわからない。ミリタリーはだいたい3年起きに引っ越しが多いんですけど、3年起きにしばしホテル住まいです。子供が小さいうちは良いけどある程度大きくなると、小さな部屋に家族全員で何日もいると結構大変です。


ペンサコーラを後にして、品川に来て約2ヶ月。ベビーカーに乗せてお散歩も出来るくらいまで娘もだいぶ赤ちゃんらしくなってきた。春美さんはやっぱり子育てしてきたし、親戚の子供達も赤ちゃんの時から預かってたし、赤ちゃんの扱いには慣れています。ところがうちのお父さん、子供2人いるのに、全く赤ちゃんの扱いに慣れていなかった。オムツ替えもミルクをあげるのも、全くの未経験。昭和の男なんてそういう物だったのかも知れないけど、赤ちゃんの抱き方のギコチナサが半端ない(笑) それでも初孫が家にいるから、嬉しそうにいつも娘に話かけていた。


ある日の午前中、娘の機嫌の良いタイミングを狙って、お父さんが1人でお散歩に連れていくという大冒険をしたことがあった。赤ちゃんに泣かれちゃうともうどうにもならなくなって、いつも春美さんに丸投げだったお父さん。1人で行ってみるなんて、ある意味あれと同じ扱いです。




"はじめてのおつかい"




例のあのテーマソングが頭の中で流れる。
そんなに遠くに行くつもりじゃなくて、家の近所ぐるっと位の予定。初めてだから、それくらいでちょうど良い。きっと20、30分くらいの事だろうけど、赤ちゃんとずっと一緒に過ごして自分の時間がほぼない私にとってはそれだけでも本当にありがたい自分時間だった。


念のためタオルやらなんやらをベビーカーのかごに入れて、ベビーカーの扱い方もざっと説明。リサはご機嫌ニコニコだし、お父さんも"大丈夫だよ!"って言うので、階段下まで一緒に行って、ベビーカーのベルト締めるとこくらいまでは私がやって、お父さんはゆっくりベビーカーを押して出掛けて行った。


"ベビーカーで孫と散歩"



は、お父さんの念願みたいな事でもあったと思う。
お父さんが嬉しそうにリサに話しかけながら歩いてる後ろ姿を見て、こっちが嬉しくなった。まだ何もわからないリサに向かって一体何を言いながら歩いて行ったのかは聞こえなかったけど、多分"良いお天気だね"とかそんな事だろうと思う。


ほっこりした気持ちのまま、私は実家に戻って自分時間。。。でも今のうちに洗濯しちゃおうってな感じだった。そしたらね、聞こえたんですよ。



"赤ちゃんが大きな声で泣いている"



あ、この泣き声は間違いなくうちの娘です。
しかもスッゴい泣いてる。
ってことは、、、きっとお父さん困ってるなー。
泣いてる赤ちゃんあやせるかなーとか思ってたら、
家の横の路地を泣き声が通過していく感じ。
あのほっこりした後ろ姿を見送って物の5分くらい。
お父さんとリサは2人揃って汗だくで帰って来ました(笑)



"参ったよ、泣いちゃったよ"



そう言って、リサを抱いて帰宅。
リサは泣きすぎて汗だく、お父さんは焦って汗だく。
私と別れてすぐにリサはグズグズ言い出したようで、すぐ泣き出したそうで。そこで焦って抱っこしたけど泣き止まないし、更に焦ってそのまま帰って来たそう。


念願の孫との散歩/はじめてのおつかい
5分で終了、チーン(-_-);



帰って来て私の声聞いたからなのか、リサはピタっと泣き止む(笑) ちなみにこれ8月の出来事。ただでさえ暑くて汗かくのに、孫に泣かれて更にどうしたものかと冷や汗までかいちゃったよね。とりあえず氷を入れてキンキンに冷えたお茶飲んでほっとした様子。


その日の夕方、当時1階でお店をやっていた私の叔母さんが私に教えてくれた。



"たっちゃん(お父さん)、すごい緊張してリサを抱っこして、ベビーカーも押さなくちゃいけないし、凄く大変そうだったわよ(笑)"


っていう目撃談を教えてくれた。


何をしてもどこかで誰かにだいたい目撃されているのが北品川の良いところだから(笑)



すぐ家の横なんだし、泣いてもそのまま泣かせてベビーカー押して帰ってくればいいのに、本当に泣かれるとどうにもならないらしい。


そんな楽しい日々だけど、私はやっぱりマトさんと私とリサ、そして愛犬Daveと暮らせる家に戻りたい、そう思ってました。たった1年で人生ってこんなにも変わる物なんだなーって。こんなに大好きな地元、こんなに愛して止まない家族を離れても、私の帰りたい場所は



"あの全裸クセスゴパンタロン男"



なんだよね(笑)
早くマトさんとリサを再会させたいっていうのもあったかな。無我夢中で到着した成田空港で両親の元へ飛び込んでから2ヶ月、今度はハワイでマトさんのもとへと飛び込みます。次回、いよいよハワイに戻ります。





《今日のヒトサラ》

•モチコチキン
(↑クリックでレシピ見られます)

ハワイに帰ったらプレートランチ食べるのが楽しみだった。
マカロニサラダとごはんと、大抵はカロリー高めの揚げ物や肉だけど、旨いんだなーこれが(笑)
モチコチキンプレートとかは、ハワイでも人気だと思う。
ふんわり衣のお店が多いけど、私は断然カリカリ派!











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EwaYuri(エバユリ)/ハワイ在住・料理家
エッセイに登場する”出演者”である家族に”出演料”として温泉旅行をプレゼントするのが目標です。イッテQ!の温泉同好会の様な宴会をすべく、各自芸を磨いて待機中との事ですので、サポートしていただければ幸いです。スキ、シェアだけでもすごくうれしいです。よろしくお願いしますm(‐‐)m