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人生で一番びっくりした、まさかの35。


2024年3月31日、朝のこと。
キッチンで料理をしていた時、電話がリンリンと鳴った。
電話を鳴らしたのは娘(19歳)。彼の家と自宅を行ったり来たりの生活をしてた。たいてい休日の電話は”ママ何してるの?”っていう連絡が多かった。お互いに何も予定のない日は娘とランチデートに出かけることも多かったので、この日もそういうお誘いだと思って電話に出た。ただ、私はラジオの収録のお約束をしていたので、この日は残念ながらデートいけないなって思って電話に出た。

私 『おはよー。どうしたー?』

で、いつもこの後娘が”今日は何してるの?”っていう流れ。
だがしかし、この日は娘の様子がおかしかった。

娘 『ママ・・・。』

って言ったまま泣いている。
しかもなんか声がおかしい。

私『どうしたの?』

シクシク泣いている。

娘『I'm sorry, I'm sorry….』

母の勘、女の勘、ピンと来た。

私『You got pregnant ?(妊娠した?)』

まさか!違う、違う!そういう答えが返ってくるのを待っていたんだけど、

娘『Yes. Sorry Momma, I'm so sorry. 』

電話の向こうの娘はそう言って何度も何度もごめんを繰り返す。
私もマト(夫)も、娘の事を信じてるから、娘の決めたこと、道には反対せずに来た。だけど1つだけ、たった1つだけは言い聞かせてきた。

”子供は自分の力で暮らせるようになってからにしなさい”
=妊娠だけはしないように気をつけろ

という事は、口酸っぱくいってきたつもり。
この一年前、娘が初めて彼氏を連れてきた。
それまでだって多分ボーイフレンドは何人かいたんだろうけど、なかなか家に連れてこなかったし、家族に紹介しなかったのに、彼氏を連れてきた。
私はこれもずっと言ってきたことだけど、

”ママとパパに紹介したくない人はやめた方がいい”

これはちょっとしたアドバイスだから、別にルールではないけど、
やっぱり家族に胸張って紹介できないようじゃおススメできないぞと、それは母なりのリクエスト。だけど、彼氏を連れてきて、私たちに会わせたかったという事は、娘の中ではそういう存在なのだろうと、私の中で理解したつもり。高校の同級生だった彼、2人ともEwa Beach出身。家も近いので、娘と彼は私たち家族と食卓を囲むようになり、それが結構すんなり馴染んだ感じだった。彼、とても好青年で、お母さまも優しくて素敵な方。向こうのお母さんも、私たち夫婦も、娘が彼の家に泊まるのを公認していたので、まぁ起こるべくして起こった出来事と言えばそうなる。でも、もうしてしまった妊娠。私は深呼吸をしてこう言った。

私『もう謝らなくていいから。あなたお母さんになるんでしょう?泣いてたら赤ちゃんに良くないから、泣かないの。』

もう一度深呼吸してから聞いてみた。

私『それで、今何週目なの?』

娘『35weeks』

私『35?35⁉・・・・・』

世界の中心で叫んだ。

さ、さ、さっ、35週!?


あれ?っていうか、正期産って何週だっけ?
ちょ、ちょ、ちょ、ちょっとあーた、Let me 考えさせて。
赤ちゃんは妊娠何週目で産まれますか?誰かTell meプリーズ。
おったまげてる時間も、しっくり返っている時間もねぇ。
とりあえず、娘に色々聞きたいところであったが、頭が追い付かん。
でも私、娘と毎日会ってたけど、妊娠してた?
しかも35週も?気が付かないなんてありえへん。
電話はつながったまま、そして無言のまま頭の中でぐるぐる考える。
そんな混乱の中、娘が口を開いた。

娘『パパがきっと怒るから、どう言えばいいか・・・』

娘はパパの怒りを心配していた。
そうだよ、そう。うちのややこしいマト(夫)の怒り狂う姿、
娘も私も想像していた。

『WTF!!!!!!! WTF!!!!! WTFFFFFFFFFFFF!!!』


頭の中ですでに怒り狂っているぜ。やべぇな、こりゃ。
手が付けられん、すでに。なので娘に言った。

私『パパにはママからまず言うから、ちょっと待ってなさい』

そう言って一度電話を切った。
娘はその時病院にいた。なんとインフルエンザにかかり、ERに駆け込んだらしい。とりあえず、キッチンを後にして、旦那がいる2階に向かった。
足取り、めちゃ重いぜ。どう切り出そう?寝起きのあの人に、

”娘、妊娠したって!”

とか、笑顔で行ってみようか?いやいやいやいや、そりゃいかん。
きっと怒る前に血圧急上昇でしっくり返っちゃうよね。
意を決して寝室のドアを開けたところ、旦那はバスルーム使用中だった。
とりあえず、ベッドに腰かけて、旦那が出てくるのを待った。
誰かと電話してるっぽい声がした。
ドアが開き、出てきた旦那、娘と話してた。
なんだか用事があって電話したらしいけど、娘が泣いてたから、取り込み中かと思い、とりあえずまた後でかけ直すと言って切ったところだった。

夫『ムスメ ナイテタゼ』

私『なんで泣いてたと思う?』

夫『・・・・マサカ・・・』

私『そのマサカです』

夫『ヤッパリ!!!!』

何か、半狂乱みたいなの想像してたけど、そこまでの狂乱はなく。この数日前に病院の産婦人科から娘あてに電話があったんだけど、夫の扶養家族だから、連絡先が夫の番号になってたらしい。
娘さんいますか?って言われたけど、内容は聞いてなくて、娘の番号を教えたという事で。私もそれは聞いていた。アメリカでは結構定期的に婦人科検診とかいくから、そういう感じのことだろうと思ったというか、そう言い聞かせた部分はあった。だって、あんなに妊娠だけは気をつけろっていってきたから。でも、うっすら頭にはよぎっていただけに、ヤッパリだったらしい。

夫『デ、イマ ナンシュウ ナンダ?』

私『35週だって』

サ、サ、サッ 35!?


夫も世界の中心で叫んだ。

こっからは私たちも大混乱で、なんでそうなったかは覚えてないけど、夫の助言で約束していたラジオの収録は申し訳ないけどキャンセルさせていただいた。行っても料理の話をできる状況じゃないよって、夫に言われて我に返った。そうだよね、きっと話せない。なので、申し訳ないけどドタキャンさせていただいた。そのうえで、

夫『トリアエズ ドッカデ ランチ シヨウ』

全然意味わからないけど、多分空腹では頭が回らないって事だと思う。
何が食べたいかわからないから、とりあえず行きつけのイタリアン、パールリッジの”Bravo”に行った。美味しいはずのパスタの味が全然しない、そんなランチだった。2人で”なんて日だ!”みたいなことを話しながら食べてたら、夫がこう言った。

夫『I think we should go to the hospital and give her hugs. I know see needs it』
(とりあえず、ムスメに会いに行って、ハグしてあげよう)

結婚生活色々あって、ややこしくてもうお手上げな事も多々あるし、多分これからもたくさんそんな時期はやってくるんだけど、この言葉を聞いた時は、まぁこの人で間違っていなかったかなと、そう思った。怒り狂う姿を想像してたから、ホッとしたのも大きかった。

その後すぐ病院に行った。娘はERではなく、産婦人科病棟に入院いしていた。点滴を受けて横になっている娘を見たら、彼女がインフルエンザだということなどどうでもよくて、思いっきり抱きしめたよ、母は。なのに、横でこんな時に限ってなぜか冷静な旦那は言ったのよ、私に。

夫『インフルエンザ ウツルカラ ハグ ハ ヤメテオク』

おぉぉぉいっ!おめぇさんだぜ、ハグしに行こうって言ったのは。
あの”この人で間違ってなかった”とか思った瞬間返してほしかった。
まぁ、いいや。もうそんなことはどうでもいい。
娘をよく見たら、点滴どころか、お腹にいろいろ巻いたり張り付けたりして、なんと陣痛をモニターするあれがつけられてた。
ボーイフレンド君と娘の説明では、ERに入った時にはすでに子宮口が開き始めていたらしい。インフルエンザから脱水症状になって、なんか陣痛が進んでしまったという事らしいと。

えっ?子宮口が開いてる? はっ?どういう事?

また頭が混乱。もう全然追い付かない、考えも何も。
そんな混乱の中、ドクターがやってきて説明してくれた。

娘の話も加えて説明すると以下の通り。

  • 生理不順のため、妊娠に気づいたのはかなり遅かった。最初は太っただけだと思ってたらしい。

  • 2人ともまさかと思ってたので、現実を受け入れるのに時間がかかってしまった。結果、病院に行くのがなかり遅れた。

  • どちらの家族にも言い出せず、特にマト(夫)がキレる姿を想像したら、言うのが怖かった(by娘)←コレ、めっちゃ気持ちわかるけど(笑)

で、そんな状況のなか、この前の月には産婦人科に行ったらしい。でも受けてくるべき健診とかを全然受けてこなかったわけで、赤ちゃんの状況とかもわからないから、明日詳しく検査をしましょうというドクターの説明。そして、成育状況などからいうと”35週くらい”という予想だという事だった。ただ、赤ちゃんがだいぶ小さいので、なるべく母体にとどめておくことが賢明だというので、しばらく入院することになった。

彼の家に寝泊まりしてたけど、彼のお母さんも娘の妊娠に気が付かなかったという。なにせ細身の体にダボダボの服を着てたもんだから、わかりにくい。実の母だって気が付かないんだから、無理はない。

だけど、妊娠に気が付いても母親に言い出せなかった娘の気持ちを考えると、いたたたまれないというか、苦しかっただろうなって思って。きっと不安だったよね。でも、一方でこれから命を育てるわけだから、やっぱりもう少し責任感を持たないといけないよね。自分が不安とか怖いから言い出せないんじゃなくて、これからはその命守るのは娘と彼だから。しっかりしないとねって。娘の横にピタリと寄り添っているボーイフレンド君に娘を託し、その日は病院を後にした。

夫と私は

『私たち、もうすぐおじいちゃんとおばあちゃんだ』

そんな話をしながら、まだ夢の中のような、なんかふわふわした気持ちでとりあえず家に戻った。

帰る頃には時計は12時を過ぎ、4月1日になっていた。

あ、エイプリルフールだ。

(続く)















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