見出し画像

(41) アメリカを駆け抜けた産後2週間、着地は1年ぶりの成田空港からの品川へ

産後10日、栄養バランスと心のバランスを崩しかけた新米母。幸いマトさんが買ってきたターキープレートに救われた。


お腹が満たされると、気持ちも穏やかになる


食べることがどういう事なのかなんて、それまで考えて来なかったかもしれない。多分、ごはん食べたくないなんて思ったのってこの時くらいだったかも。若い頃のダイエット、あの時は食べたくないんじゃなくて食べたいのを抑えてただけ。そういうのはお腹が空いてイライラしちゃって、やっぱり心が穏やかじゃなかったと思う。


人間ってお腹が満たされると、自然と心も満たされていく


だから食べることってやっぱり大事なんですよね。あの時の事を考えると、改めてそう思う、、、なんて言う理由を付けて、今では食べ過ぎているのも気が付いていたりする(汗)



でも食べる事だけでは解決されない事もある。
"赤ちゃんを守る母親の緊張感"っていうのは、これもう本能です。産後は色々な事に敏感で、この引っ越しの時期、私は常に緊張状態だった。そんな感じなもんだから、100%リラックスできる時間がなくて、その皺寄せはホルモンバランスに響くんです、きっと。私の場合、産後すぐに動きすぎっていうのもあって、引っ越し、長時間ドライブ、授乳など、今考えると何であんなに無茶な計画を立てたのかと思うけど、ミリタリーってそんなもん。子供が産まれたばかりでも、辞令が出たらそれに合わせて動くしかない。妊娠から出産までよりも"産後の肥立ち"について知ってたらあんなに無茶な事はしなかったかも。無理は禁物って言うのはこれから産む方へアドバイスになるかなと思うけど、多分私のような無茶苦茶な計画をする人はまずいないだろうと思う(笑)



ノースカロライナ州を出て、再びフロリダ方面へ向かいました。長時間ドライブは辛いけど、もうすぐ、もう少し頑張れば大好きな人に会えるから、座る角度をあっちに、こっちに変えながら(ジヌシ問題の為)、計2日にわたる9時間ドライブを経て、目的地はアラバマ州モービル空港。



私は小さなリサを連れて日本へ帰る予定です。残念ですが、マトさんは転勤先の職場への辞令が出ているので、一緒に来られません。産まれたばかりの赤ちゃん連れて、大きな荷物、ベビーカー&カーシートを持って、1人でペンサコーラから成田空港までの長旅、めちゃくちゃ不安です。そんな私の為に、助っ人に名乗り出てくれた人がいました。モービル空港にはその助っ人をお迎えに来ました。



フライトナンバーをチェックして、ゲートや手荷物受取の番号も見て、早く姿を見つけたくて、新品のコンバースを履いた足で、 背伸びしてはゲートの奥を覗いて待って、覗いては待って。空港に人を迎えに行く時って、ただでさえいつ待ち人が出てくるか凄く気持ちが高鳴る感じがするのに、この時は本当にドキドキした。だって初めて娘を披露するんです。その時を見逃さないように必死です。



ゲートから流れ出てくる大きなアメリカ人達の中に混ざってる、背丈や体型が私とそっくりなアジア人女性、発見!!!いたーーーっ!私が手をブンブン振るその先にいるのは、




かおちゃーーーーーーん!!!!!(涙)




そうです、このエッセイでかおちゃんと言えば駅前留学のかおちゃん事、私の姉です。旅好きのかおちゃん、私とリサの日本への道中、助っ人を買って出てくれたんです。やっぱり持つべきものはお姉ちゃんです。2人姉妹、かおちゃんはおっとり、ほんわかしてるタイプだったので、昔から"落ち着きのある"私の方が姉に見られがちでした。それでも、かおちゃんは私にとってはいつだって頼れるお姉ちゃんなんです。数ヶ月前にペンサコーラまで遊びに来てくれて、会ったばかりと言えばそうでもあるけれど、赤ちゃんを産んだ後、初めて会う家族の姿にどれだけほっとしたことか!


わざわざアラバマくんだりまで遥々妹と姪っ子を迎えに来てくれるそんな優しいかおちゃんですが、かおちゃんと一緒に空港に行くと、あの成田空港古舘伊知郎事件ペンサコーラ帰国日間違え事件など、いつも何か起こるけど、この時はただ感動の再会だけでちょっと拍子抜け。それでもかおちゃんの方は私の虎カラーヘアにおったまげたよう。エッセイを読んで、虎カラーヘアを思い出させてくれたのはなんてったってかおちゃんですから。相当な衝撃だったんだろうと思う(笑) でも誰かが笑ってくれたなら私の虎カラーヘアも無駄ではなかった、今はそう思えます。



当時会社員のかおちゃん、休みも長くは取れないし、何しろマトさんも新しい職場(船)へのチェックインの日にちが迫ってました。確か2、3泊だったと思う。せっかくのアメリカ旅行だけど、大して観光も出来なかった。私もこのときの記憶って、あんまりないんだけどせっかくだから美味しいBBQを食べに行こうってことで食べに行った記憶はあるけれど、どんな物を食べたかとか、味がどうだったかなんて覚えていない。めちゃくちゃくいしんぼうの私にしては珍しい事だけど、覚えているのはレストランの端っこで、人目につかないように授乳してた記憶が強い。


あっという間の滞在だったかおちゃんと私は日本へと旅立ちます。マトさんとはしばしお別れ。この時には疲れ果ててたから、なんか寂しい気持ちも少し麻痺していた気もする。この後マトさんは車をニューオリンズまで持っていってハワイに向けて送り出し、ミシシッピの新しい職場にチェックイン。しばらく住まいは狭い、狭い船の中のベッドです。


モービル空港からアトランタ空港まで1時間ちょっと。そしてアトランタから成田空港まで約16時間。リサがふにゃふにゃと少しグズリ始めると、ささっと毛布をかけて授乳して、グズったら授乳してを繰り返し、泣かないように、泣かせないように、それはそれは神経尖らせた旅だった。狭いトイレでのオムツ換え、成田空港でうまく入国出来なかったらどうしようとか余計な心配ずっとしてた。


乗り換えや入国審査の時間とか合わせて、多分モービル空港を出発してから20時間以上、丸一日。ようやく成田空港の到着して、無事に入国して、荷物も回収して税関抜けて、到着ゲートを出て無事に日本へ帰って来れた。かおちゃんとの涙の別れを古舘伊知郎に救われたあの日から約1年、日本には1人でなく2人で帰って来ました。


そして到着ゲートを出た瞬間、見えたんです、2人が。



お父さんとお母さんが笑顔で手を振っていました。



人生でほっとした瞬間なんて何度もあるけど、あの時のあの気持ち。今思い出しても涙が出ちゃうけど、お父さんとお母さんが2人並んで、私達に向かって手を振っていた。私の歩みはゆっくりだったけど、気持ち的には走って2人の元へ飛び込んでた。マトさんとはまた違う、私にとっての揺るぎない、100%安心できるかけがえのない場所へ戻って来た安心感。ほっとするってああいう事だと思う。




"おかえり、良く帰ってきたな"



お父さんが優しい声で私にそう言ってくれた。



"おかえり、良く頑張ったわね"



お母さんは私にそう言ってくれた。



うんうん、私ね、凄ーく頑張ったの。大変だったけど、一生懸命頑張ったよ。そう言いたかった。でも言葉にならないからとりあえず"うんうん"って頷いた。とにかく、リサを、孫を見せたかった。カーシートをそーっと覗き込む2人。


"あー、小さいねぇ。良く来たね。"


ってお母さんが言うと、その横から覗き込むお父さんも、


"本当だな、小さいなー"


って嬉しそうに笑ってる姿見たら、大変だったけど頑張って帰ってきて良かったと、心からそう思った。



"お腹空いてないか?"



お父さんはいつも私にそう聞いて心配してくれる。お腹が空いてるのか、空いてないのかよりも、とにかく品川に、実家に、家に帰りたい。ベッドで少し横になりたい、そう言いました。お父さんとお母さんは奮発して成田から品川までタクシーを手配してくれました。タクシーに乗って、お母さんの隣に座って、お父さんとかおちゃんと、そしてリサと5人。なんという安心感。ピーンと張った緊張の糸がぷっつり切れた感じ。この時の身体のボロボロ加減、半端なかった。



1年ぶりの実家です。品川の景色、実家の匂い、たった一年だけど、何もかもが懐かしくて、暮らしていた頃よりも愛おしく思えた。



"心配ないから、ゆっくり休みなさい"


出産から2週間、ついにゆっくりと身体と心を休める時間が取れました。お母さんがリサを見ていてくれます。それでも授乳の時間になればおっぱいが張って目が覚めちゃうけど、この時の数時間の眠りの質、最高だったと思う。



目が覚めて、リサの様子を見に行った頃、ピンポーンと玄関のベルが鳴った。うちの親戚は同じビルの階違いとか、同じ通りとかにみんな住んでいるので、きっと娘を連れて帰ってきた私の様子を誰かが見に来てくれたのかなって思ったら、案の定その通り。来てくれたのは私と同じ年の従姉妹"ハニー"だった。


ハニーは私と同じ年だけど、既に2人の子供のお母さん。なーんにも知らない私に比べたら、母親としては大先輩。下の子がリサより1歳年上で、もう使わなくなった哺乳瓶とか、粉ミルクを持って来てくれたんですよね。リサと私の事気にかけてくれてるんだなって思って、凄く嬉しかったし、何かあれば相談できる相手がいるという心強さも感じた。

でもせっかく持ってきて貰ったけど、私は完全母乳だから哺乳瓶や粉ミルクは使わないかもーっと思った。巷では"完全母乳理想論"みたいな情報が多かったので、完母以外はなんだかいけないような気がしていた。でも幸い、母乳はたっぷり出てたので量は困ってなかった。でもね、リサと私に会いに来てくれたハニーがサラッと言ったんですよね。



"母乳もいいけど、粉ミルクも使えると断然楽だよ"



2人の子供を持つ先輩母の一言、目から鱗。
えっ、そうなの?完全母乳じゃなくて混合?
楽だから、混合にしちゃっても良いもの?


でも言われてみればそうだよね、楽だよね、粉ミルク使えたらって、妙に納得。お母さんに預けても、粉ミルクで良ければ頼みやすいもんね。私って本当に子育ての心構えみたいな事が出来てなかったと思う。なので早速お母さんとハニーと私が見守るなか、粉ミルクをあげてみた。リサは意外と上手にごくごく飲んでいた。


自然分娩、栄養バランス、完全母乳、目指した事は結構脆く、ことごとく崩れた(笑)。気は強めですが、私の意志は弱めらしいことも出産を経て思い知った(笑)


かおちゃんがいてくれたお陰で心強かったフライト、両親の愛情に飛び込んだ成田空港、先輩母ハニーのアドバイスに支えられて、ここからしばらくは品川で、家族に囲まれた育児の始まりです。


やっぱり実家はサイコーだ、家族はサイコーだ、そう思った産後2週間目の日でした。


次回へ続く。



《今日のヒトサラ》

•ミシシッピのBBQレストラン


本当に何食べたか覚えてないので、ヒトサラに出すのもどうかと思ったけど、レストランはテレビで見たお店で、美味しそうだったから行って見たのは覚えてる。
掘っ立て小屋みたいな怪しいお店だったけど、その佇まいはなんだかカッコ良くて、まるで映画の中にセットのように絶妙だった。もう一度行ってみたいなーって思う。BBQと言えば我が家では"マトさんBBQ"が定番ですので、今日のヒトサラはBBQのお写真です。

Beef Brisket & Mashed Potatoes.











いいなと思ったら応援しよう!

EwaYuri(エバユリ)/ハワイ在住・料理家
エッセイに登場する”出演者”である家族に”出演料”として温泉旅行をプレゼントするのが目標です。イッテQ!の温泉同好会の様な宴会をすべく、各自芸を磨いて待機中との事ですので、サポートしていただければ幸いです。スキ、シェアだけでもすごくうれしいです。よろしくお願いしますm(‐‐)m