欧州:デジタルサービス法 (8月25日〜)
以下の文章は、個人的な試訳です!
I.「デジタルサービス法」とは
デジタルサービス法(DSA)は、消費者と商品、サービス、コンテンツをつなぐ仲介者としての役割を果たすデジタルサービスの義務を規制するもの。
これには、オンラインマーケットプレイスなどが含まれる。
この法律は、オンライン上のユーザーと基本的権利の保護を強化し、オンライン・プラットフォームに対する強力な透明性と説明責任の枠組みを確立、欧州全域で単一かつ統一的な枠組みを提供するもの。
欧州議会と理事会は、2022年4月23日に新ルールに関する政治合意に達し、DSAは、2022年10月27日にEU官報に掲載後、2022年11月16日に発効した。
デジタルサービス法は、欧州全域に直接適用される規則。
仲介業者に対する義務↓
1)違法な商品やサービスを含むオンライン上の違法コンテンツへの対策
DSAは、ユーザーがオンラインで違法コンテンツにフラグを立てることを可能にする新たな仕組みと、プラットフォームが違法コンテンツを特定・削除する為に専門の「信頼できるフラグ作成者」と協力することを義務付けている。
2)オンライン・マーケット・プレイスにおける販売者を追跡するための新たな規則により、信頼を構築し、詐欺師をより簡単に追跡できるようにする。
オンライン・マーケット・プレイスによる、サイト上の商品やサービスが法令に準拠しているかどうかを既存データベースと照合し、無差別にチェックする新たな義務
3)コンテンツが削除されたり制限されたりした場合に、プラットフォームがコンテンツの修正決定に異議を申し立てることができるようにする。
4)オンライン プラットフォームに対する広範な透明性対策
利用規約に関するより良い情報、コンテンツや商品をユーザーに推奨する際に使用されるアルゴリズムに関する透明性など。
5)欧州内の凡ゆるプラットフォームにおける未成年者保護の為の新たな義務
6)超大規模オンライン・プラットフォームおよび検索エンジンに対し、リスク管理措置の独立監査による監視を含む、リスクに応じた措置を講じる。
これにより、システムの悪用を防止する義務を課す。
プラットフォームは、偽情報や選挙操作、女性に対するサイバー暴力、オンライン上の未成年者への危害などのリスクを軽減しなければならない。
これらの対策は、表現の自由の制限とのバランスを慎重に考慮しなければならず、独立機関による監査の対象となる。
7)パンデミックや戦争など、公衆衛生や安全保障上の重大な脅威が発生した場合の新たな危機対応メカニズム。
8)オンラインプラットフォーム上で、子供のプロファイリングや、民族、政治的見解、性的指向などの特別な個人データに基づくターゲット広告の禁止。オンライン プラットフォーム上の全広告及びインフルエンサーの商業コミュニケーションの透明性の強化。
9)オンライン プラットフォームのインターフェイス上で、いわゆる「ダークパターン」を使用することを禁止。
10)プラットフォームがどのように機能し、オンライン リスクがどのように進化していくかを精査する為、主要プラットフォームの研究者にデータへのアクセスを認める新たな規定。
11)ユーザーは、プラットフォームに苦情を申し立てる権利、裁判外の和解を求める権利、自国の言語で自国の当局に苦情を申し立てる権利、規則違反に対する補償を求める権利など、新たな権利を持つことになる。
また、大規模な法律違反に対しては、代表組織がユーザーの権利を擁護することが出来るようになる。
12)独自の監督機構。
欧州委員会は、超大規模なオンライン プラットフォームと超大規模なオンライン検索エンジン(4,500万人に達するユーザー)に対する主要な規制当局であり、その他プラットフォームと検索エンジンは、それらが設立された加盟国の監督下に置かれる。
欧州委員会は、独占禁止法に基づく手続きに準じた執行権限を有する。
各国規制当局と欧州委員会の間には、EU全体の協力体制が構築される。
13)仲介業者の責任に関する規則が共同立法者によって再確認され、更新された。
これには、一般化された監視義務の欧州全体での禁止が含まれる。
デジタルサービス法では、オンライン上で何が違法かを定義しているのか?
いいえ。
新規則は、違法コンテンツの検出、フラグ立て、削除をカバーするEU全体の規則と、違法コンテンツがそのサービス上でどのように拡散するかに関する、超大規模オンラインプラットフォームや検索エンジンのための新リスク評価の枠組みを定めています。
何が違法コンテンツにあたるかは、欧州レベルまたは各国レベルの他の法律で定義されている。
例えば、テロコンテンツや児童性的虐待の素材、違法なヘイトスピーチは欧州レベルで定義されている。
あるコンテンツがある加盟国においてのみ違法である場合、原則として、違法である領域においてのみ削除されるべきである。
デジタルサービス法は、分野別の法律に取って代わるのか?
いいえ。
デジタルサービス法は、商品やサービスを含む全サービスとあらゆる種類の違法コンテンツを対象とする水平的な規則を定めている。
AVMSD(視聴覚メディアサービス指令)、デジタル単一市場における著作権指令、消費者保護法、オンライン上のテロ・コンテンツ拡散防止に関する規則案などの分野別法規に取って代わるものでも、改正するものでもないが、補完するものである。
デジタルサービス法の前にはどのような規則があり、なぜ更新する必要があったのか?
2000年に採択されたeコマース指令は、欧州におけるデジタルサービス提供の主要な法的枠組みとなっている。
これは、欧州単一市場におけるデジタルサービスを規制する礎となってきた水平的な法的枠組み。
20年以上の間に多くの変化があり、ルールのアップグレードが必要となった。
オンライン プラットフォームは、消費者と技術革新に大きな利益をもたらし、欧州域内外の国境を越えた取引を促進、欧州のさまざまな企業や取引業者に新たな機会をもたらした。
その一方で、違法なコンテンツの流布、違法な商品やサービスのオンライン販売に悪用されることもある。
情報共有やオンライン取引の為の準公共スペースとして、非常に大きなプレーヤーも出現している。
これらは、利用者の権利、情報の流れ、市民参加にとって、特別なリスクをもたらす。
更に、電子商取引指令は、当局間の協力メカニズムを規定していない。
「原産国」原則は、監督を設立国に委ねることを意味していた。
デジタルサービス法は、eコマース指令の規則を基礎とし、オンライン仲介業者に関する特有の問題に対処するものである。
加盟各国は、これらのサービスをそれぞれ異なる形で規制してきた為、欧州全域での事業拡大や規模拡大を目指す中小企業にとっては障壁となり、欧州市民にとっては保護レベルが異なる結果となった。
デジタルサービス法では、異なる法律による不必要な法的負担が解消され、イノベーション、成長、競争力のためのより良い環境が育成され、小規模なプラットフォーム、中小企業、新興企業の事業拡大が促進される。
同時に、違法商品、コンテンツ、サービスからの安全性と基本的権利の両面において、欧州の全ユーザーを平等に保護する。
仲介業者規制のグローバルレベルでの関連性
新規則は、オンライン空間における欧州の価値を守るための重要な一歩です。国際的な人権規範を尊重し、民主主義、平等、法の支配をよりよく守ることに役立つ。
DSAは、効果的な介入、適正手続き、オンラインにおける基本的権利の保護の為の高い基準を設定、仲介者の責任に対するバランスの取れたアプローチを維持、違法コンテンツやオンライン上の社会的リスクに対処するための効果的な手段を確立している。
そうすることで、DSAは世界レベルでもオンライン仲介者に対する規制アプローチのベンチマークを設定することを目指している。
この規則はEU域外の企業にも適用されるかどうか?
欧州域外に設立され、欧州単一市場でサービスを提供するオンライン仲介業者を含め、欧州単一市場において差別なく適用される。
欧州域外に設立されたオンライン仲介業者は、欧州域内に設立されていない場合、他の法的文書における義務の一環として多企業が既に行っているように、法定代理人を任命しなければならなくなる。
同時に、オンライン仲介業者は、欧州域内でサービスを提供する際に、免責事項の法的明確化と単一規則の恩恵を受けることになる。
デジタルサービス法には、デジタル課税に関する規定が含まれているか?
いいえ。
欧州委員会が提案している、デジタル活動からの収益に対する暫定的なデジタル課税は、デジタルサービス法とは別の構想である。
デジタルサービス法には、課税に関する規定はない。
II. 利用者への影響
新ルールによって市民はどのような恩恵を受けるのか?
オンライン プラットフォームは、欧州市民の日常生活においてますます重要な役割を果たしている。
このルールは、市民が違法行為や危険な物品にさらされる機会を減らし、基本的権利の保護を確保することで、市民が自由にアイデアを表現し、オンラインでコミュニケーションし、買い物をするための、より安全なオンライン体験を創出する。
メリット↓
1)消費者へのサービス向上
オンライン マーケットプレイスは、ビジネス・ユーザーを特定、誰が製品を販売しているのか、またはサービスを提供しているのかを明確にする必要がある。
これは、不正業者を追跡するのに役立ち、偽造品や危険な製品などの違法製品からオンラインショッピング利用者を保護することになる。
オンライン マーケットプレイスは、製品やサービスの違法性を認識した場合、製品やサービスを購入した消費者に対し、a) 違法性、b) 業者の身元、c) 関連する救済手段を通知することが義務付けられる。
取引業者は、自社プラットフォームで販売される製品の文書を無作為にチェック、より多くの非準拠製品が欧州の消費者に届くよう、より強化されたトレーサビリティー・ソリューションにますます依存するようになるはずである。
2)ユーザーの新たな権利、同時に市民は遭遇した製品を含む違法コンテンツを通知、コンテンツが削除された際にオンライン プラットフォームが下した決定に異議を申し立てることができるようになる。
プラットフォームは、下された決定、その決定を下した理由、決定に異議を申し立てるメカニズムを提供することを通知する義務がある。
3)広告の透明性が高まる。
例えば、ある広告が特定ユーザーをターゲットにしている場合、またその理由など。
プラットフォームは、未成年者をターゲットにした行動ターゲティング広告を表示しなくなり、また、民族、政治的見解、性的指向など、特別なカテゴリの個人データに基づくプロファイリングに基づく広告をユーザーに表示しなくなる。
4)超大規模プラットフォームに対する責任の強化 4,500万人以上のユーザーにリーチする超大手オンライン プラットフォームと超大手オンライン検索エンジンは、公開討論、経済取引、情報、意見、アイデアの普及を促進するというシステム的な影響力を持つことから、特定のルールが導入される。
このようなプラットフォームがコンテンツを推奨する場合、ユーザーは使用する基準を変更したり、個人向けの推奨を受けないことを選択したりできるようになる。
市民は、こうした企業の言葉を鵜呑みにする必要はなく、独立監査人や吟味された研究者の報告書を通じて、その行動を精査することができるようになる。
5)より明確な結果。
利用者は、仲介サービスのプロバイダーがDSAを侵害した為に被った損害や損失について、プロバイダーに補償を求めることができるようになる。
違法コンテンツに対抗する為に、この法律はどのような措置をとるのか?
デジタルサービス法は、違法コンテンツだけでなく、違法な商品やサービスにも対抗する為、オンライン・エコシステム内の全てのアクターに対する効果的な手段を定める。
ユーザーは、簡単かつ効果的な方法で違法コンテンツを報告できるようになる。
信頼できるフラッガー(特別な専門知識と能力を証明した団体)が違法コンテンツを通報する為の優先チャンネルが設けられ、プラットフォームは優先的に対応しなければならなくなる。
国内法によって可能になった場合、加盟国当局は、設立地に関係なく、欧州域内で活動するあらゆるプラットフォームに対し、違法コンテンツの削除を命じることができるようになる。
非常に大規模なオンライン プラットフォームは、違法なコンテンツ、商品、サービスからユーザーを保護する為に、サービスの全体的な組織レベルで緩和措置を講じる必要がある。
DSAは、安全でない商品や偽造品から人々をどのように保護するのか?
デジタルサービス法は、オンライン・エコシステムの全関係者が違法商品に対抗するための効果的な手段を定める。
1) プラットフォームは、違法な商品を撤去する為の手続きを義務付けられる。
2) また、オンラインマーケットプレイスは、その取引業者を追跡するよう要請される(「know your business customer」)。
これにより、消費者にとって安全で透明性のある信頼できる環境が確保され、プラットフォームを悪用する業者が安全でない商品や偽造品を販売することを阻止することができる。
3) オンライン・プラットフォームは更に、取引業者が消費者に対する情報提供義務を遵守できるような方法でオンライン・インターフェースを組織するよう要請される。
4) 例えば、偽造品と闘うブランド所有者の為に、信頼できる旗振り人の新しいシステムも利用できるようになり、偽造品の旗振りや撤去がより迅速かつ容易になる。
5) 公的機関は、安全でない商品の撤去を直接命令できる新たな手段を持つことになる。
6) マーケットプレイスは、商品やサービスが公式データベースで違法と認定されていないかどうかを無作為にチェック、適切な措置を講じるための合理的な努力を実施することが求められる。
7) 非常に大規模なオンライン・プラットフォームは、そのプラットフォーム上の違法商品に対する脆弱性の分析を含む監査付きリスク評価の対象となり、この組織レベルでの緩和策も毎年監査の対象となる。
DSAは未成年者をどのように保護するのか?
新規則では、未成年者がアクセス可能なオンライン・プラットフォームのプロバイダーは、そのサービスにおいて未成年者のプライバシー、安全、セキュリティを高いレベルで確保する為の適切な措置を講じることが義務付けられる。
更に、新ルールでは、サービスの受け手が未成年者であることを合理的に立証できる場合、サービスの利用者の個人データを利用したプロファイリングに基づく未成年者へのターゲット広告が禁止される。
違法ではないが有害なコンテンツに効果的に対処するには?
違法でない限り、有害なコンテンツを違法コンテンツと同様に扱うべきではない。
新規則は、表現の自由を完全に尊重した上で、違法コンテンツの削除または削除を促す措置のみを課す。
同時に、DSAは、偽情報、デマ、パンデミック時の操作、社会的弱者への危害、その他の新たな社会的危害のような体系的な問題に関し、非常に大規模なオンライン プラットフォームや非常に大規模なオンライン検索エンジンの責任を規制する。
欧州委員会が、4,500万人の利用者を有する超大規模オンライン プラットフォーム及び超大規模オンライン検索エンジンに指定したことを受け、これらの企業は、毎年リスク評価を行い、サービスの設計および利用に起因する対応するリスク軽減措置を講じる必要がある。
そのような措置は、表現の自由の制限と慎重にバランスをとる必要がある。また、独立した監査を受ける必要もある。
更に、本提案では、サービスプロバイダーが行動規範下で違法コンテンツの拡散や、子供や未成年者といったサービスの弱者にとって特に有害な操作的・虐待的行為に関する悪影響に対処する為の共同規制の枠組みを定めている。
DSAは、偽情報に関する行動規範の改訂や危機管理プロトコルなど、オンライン上の危害に関する共同規制の枠組みを育成する。
表現の自由のような基本的権利との公正なバランスをどのように保つのですか?
DSAは表現の自由の保護をその根幹に置いている。
これには、人々の表現や情報の自由に対する政府の干渉からの保護も含まれます。
違法コンテンツに対する水平ルールは慎重に調整され、表現の自由の為の強固なセーフガードと効果的な救済権を伴っている。
DSAは、オンライン プラットフォームによるコンテンツ削除の決定がプラットフォームの利用規約に基づく場合も含め、利用者に異議を申し立てる可能性を与える。
ユーザーは、プラットフォームに直接苦情を申し立てることも、裁判外の紛争解決機関を選択することも、裁判所に救済を求めることもできる。
デジタルサービス法では、コンテンツのモデレーションに関する決定の透明性に関する規則を提案している。
非常に大規模なプラットフォームについては、ユーザーと消費者は、これらのプラットフォームが私たちの社会にどのような影響を与えるかをよりよく理解することができるようになり、表現の自由を含め、それらのリスクを軽減する義務が生じる。
独立した監査報告書や、専門的かつ公的な監視を通じて、説明責任を果たすことになる。
危機対応メカニズムを含むDSAのすべての義務は、表現の自由などの基本的権利の尊重を促進する為に慎重に調整されている。
デジタルサービス法はどのように偽情報に取り組むのか?
DSAは、プラットフォームがコンテンツを規制する方法、広告、アルゴリズムプロセス、リスク軽減に関する規則案を通じ、プラットフォーム、特に超大手プラットフォームが、より説明責任を果たし、偽情報や選挙プロセスの操作など、プラットフォームが取る行動やシステム上のリスクに対して責任を負うようにすることを目指す。
デジタルサービス法は、欧州民主化行動計画で発表されたように、偽情報に関する行動規範の更新や欧州委員会の新しいガイダンスとともに、共同規制の枠組みを促進する。
デジタルサービス法はオンライン広告をどのように規制するのか?
デジタル・サービス法は、デジタル・マーケティングから問題提起型広告、政治広告に至るまで、あらゆる種類の広告を対象としており、一般データ保護規則(General Data Protection Regulation)のような既存の規則を補完するものである。
DSAは、オンライン プラットフォーム上のターゲット広告に関し、新たに2つの制限を導入する。
1)プロファイリングに基づく未成年者のターゲット広告を禁止。
2)性的指向や宗教的信条など、特別なカテゴリの個人データを用いたプロファイリングに基づくターゲティング広告の禁止。
新ルールは、ユーザーが自分たちが目にする広告について理解し、十分な情報を得た上で判断できるようにするもの。
ユーザーは、各広告が自分たちをターゲットにしているのかどうか、なぜターゲットにしているのか、誰が広告費を支払ったのかを明確に知らされなければならない。
また、コンテンツがスポンサーによるものか、プラットフォーム上に有機的に投稿されたものかを明確に知ることができ、インフルエンサーが商業的メッセージを宣伝している場合も知ることができる。
通知と措置の義務は、他のタイプのコンテンツと同様に、潜在的に違法な広告にも適用される。
非常に大規模なオンライン プラットフォームについては、社会的な利害がより大きくなる為、規則にはリスクを軽減、監視を可能にするための追加措置が盛り込まれている。
研究者、市民社会、当局が、広告がどのように表示され、どのようにターゲティングされたかを検査できるように、広告リポジトリを維持し、アクセスを提供する必要がある。
また、広告システムが不正に操作されていないか、あるいは社会的リスクの一因となっていないかを評価、そのリスクを軽減するための措置を講じる必要もある。
この規則は、ゲートキーパーの広告モデルに対する経済的懸念に取り組むデジタル市場法の措置によって補完される。
デジタルサービス法はどのように個人データを保護するのか?
DSAは、一般データ保護規則(GDPR)やeプライバシー指令など、データ保護に関する既存の規則を完全に遵守して設計されており、これらの法律に定められた規則や保護措置を修正するものではない。
デジタルサービス法はダークパターンにどのように対処するのか?
新規則では、ダークパターンは禁止されている。
オンライン プラットフォームのプロバイダーは、そのサービスの利用者が自由で十分な情報に基づいた意思決定を行う能力を、欺いたり、操作したり、あるいは著しく歪めたり、損なったりするような方法でオンライン インターフェースを設計、編成、運営しないことが義務付けられる。
この禁止措置は、消費者保護やデータ保護規則の下ですでに確立されている禁止事項を補完するものであり、上書きするものではない。
III. 企業への影響
デジタルサービス法の対象となるデジタルサービスとは?
デジタルサービス法は、インターネット サービス プロバイダ、クラウドサービス、メッセージング、マーケットプレイス、ソーシャルネットワークなどのサービスを含む、幅広いオンライン仲介業者に適用される。
特定のデューデリジェンス(適正評価)義務は、ホスティングサービス、特にソーシャルネットワーク、コンテンツ共有プラットフォーム、アプリ ストア、オンライン マーケットプレイス、オンライン旅行・宿泊プラットフォームなどのオンライン プラットフォームに適用される。
デジタルサービス法における最も広範な規則は、社会的・経済的に大きな影響力を持つ超大型オンラインプラットフォームに焦点を当てたもので、欧州内の少なくとも4,500万人(人口の10%に相当)のユーザーに達している。
同様に、欧州の消費者4億5,000万人のうち10%以上を占める超大手オンライン検索エンジンは、オンライン上の違法コンテンツの抑制においてより大きな責任を負うことになる。
最初の超大規模オンライン プラットフォームと超大規模オンライン検索エンジンは、2023年4月25日に指定された。
デジタルサービス法は企業にどのような影響を与えるのか?
DSAは、2000年にさかのぼる規則を近代化し、明確化するもの。
これにより、オンラインビジネスは、権利の尊重と義務の履行を保証する、現代的で明確かつ透明性の高い枠組みから恩恵を受けることになる。
更に、オンライン仲介業者、特にホスティング・サービスやオンライン・プラットフォームにとって、新規則は、単一市場における27の異なる規制に準拠するコストを削減する。
これは、革新的な中小企業、新興企業、スケールアップ企業にとって特に重要である。また、欧州委員会は、新規則が中小企業に及ぼす影響を注意深く監視する。
欧州委員会は、新規則が中小企業に及ぼす影響を注意深く監視。
中小企業は、自社の取引に損害を与える違法行為にフラグを立てるためのシンプルで効果的なツールや、社内外の救済制度を利用できるようになり、誤削除に対する保護が強化される為、合法的な企業や起業家の損失を抑えることができる。
また、違法コンテンツの拡散をさらに抑制するための措置を自発的に講じるプロバイダーは、法的責任から保護されないという悪い結果を招かないことが保証される。
デジタルサービス法は、新興企業やイノベーション全般にどのような影響を与えるのでしょうか?
欧州に単一の枠組みを導入することで、DSAは単一市場を利用しやすくし、コンプライアンス・コストを下げ、公平な競争条件を確立する。
単一市場の断片化は、十分な規模の国内市場がないことや、多くの異なる法規制に準拠するコストが関わることから、成長を望む中小企業や新興企業に不釣り合いな不利益をもたらす。
断片化のコストは、すでに大規模な企業にとってははるかに負担しやすい。
デジタル単一市場全体に適用される共通の、水平的で調和されたルールブックは、中小企業、小規模なプラットフォーム、新興企業に、重要な成長段階における国境を越えた顧客へのアクセスを提供する。
この規則には、中小企業による円滑な実施を支援する標準化措置と行動規範が付随している。
デジタルサービス法では、小規模プレイヤーと大規模プレイヤーをどのように区別しているのか?
DSAは、そのサービスが違法行為に悪用されず、プロバイダーが責任を持って運営されることを保証する為、その規模や影響力だけでなく、サービスの性質に応じて、様々なタイプの仲介者に対して非対称なデューデリジェンス義務を定めている。
特定の実質的義務は、公共の議論や経済取引を促進する上で中心的な役割を持つ、非常に大規模なオンライン プラットフォームにのみ限定。
非常に小規模なプラットフォームは、大部分の義務を免除されている。
オンライン・エコシステムにおける責任をプレーヤーの規模に応じて再配分することで、この提案は、これらの新規則の規制コストが比例することを保証する。
提案されているデジタルサービス法は、プラットフォームおよび超大規模プラットフォームにどのような影響を与えますか?
最小規模(従業員数が50人未満で、年間売上高および/または年間貸借対照表合計が1,000万ユーロを超えない)を除く、全プラットフォームは、苦情および救済メカニズムおよび裁判外の紛争解決メカニズムの設置、信頼できる旗振り業者との協力、悪用通知に対する措置、苦情の処理、第三者サプライヤーの資格証明書の審査、オンライン広告のユーザー向け透明性の提供が求められる。
また、少なくとも4,500万人以上のユーザー(すなわち、欧州人口の10%に相当)にリーチする超大規模オンライン プラットフォームと超大規模オンライン検索エンジンは、違法コンテンツや社会的危害の拡散において特別なリスクをもたらすため、特別な規則の対象となる。
非常に大規模なオンライン・プラットフォームは、リスク管理義務、外部リスク監査、公的説明責任を果たし、レコメンダー・システムや情報へのアクセスに関するユーザーの選択の透明性を提供し、当局や研究者とデータを共有しなければならない。
新ルールに従わなかった場合、企業はどのような罰則を受けるのか?
国と欧州レベルの協力で構成される新しい施行メカニズムが、オンライン仲介業者がどのように新しい要件にシステムを適合させるかを監督。
各加盟国は、デジタルサービス・コーディネーターを任命する必要がある。
この独立機関は、加盟国に設立された仲介サービスの監督、および/または専門分野別当局との調整に責任を負う。その為に、罰金を含む罰則を課す。
各加盟国は、規則が定める要件に沿って国内法に罰則を明確に規定し、違反の性質と重大性に見合ったものであり、かつコンプライアンスを確保するために説得力のあるものとする。
超大手のオンライン プラットフォームや超大手のオンライン検索エンジンの場合、欧州委員会は直接的な監督と執行権限を有し、最も深刻な場合には、サービス提供者の全世界の売上高の6%を上限とする制裁金を科すことができる。
デジタルサービス調整官と欧州委員会は、非常に深刻な損害に対処するために必要な場合、即時の措置を要求する権限を持つ。
重要な義務の遵守を拒否し、それによって人々の生命と安全を危険にさらす不正なプラットフォームに対しては、全関係者を巻き込んだ上で、最後の手段として裁判所にサービスの一時停止を求めることが可能になる。
VI. 加盟国への影響
加盟国間の法律の溝はどのように埋められるのか?
ここ数年の経験と試みは、特に非常に大規模なオンライン・プラットフォームが関与している場合、オンライン上の違法コンテンツの拡散に関連する問題を抑制するための個々の国の行動は、目の前の課題に効果的に対処、オンライン上の危害から全ヨーロッパ人を保護するには不十分であることを示している。
更に、各国の行動が協調していない為、小規模なオンライン ビジネスや新興企業は、様々な法律を遵守する為に多大なコンプライアンス・コストに直面することになる。
更新され調和された規則は、個人と企業を問わず、全欧州人をよりよく保護し、力を与えるだろう。
デジタルサービス法は、欧州全体に1つのルールを提供するもの。
欧州の全市民が同じ権利を持ち、共通の執行システムによって同じように保護され、オンライン プラットフォームに関するルールは欧州全体で同じになる。
つまり、違法コンテンツを通知する為の標準化された手続き、単一市場全体における苦情および救済メカニズムへの同じアクセス、コンテンツモデレーションや広告システムの同じ透明性基準、そして非常に大規模なオンラインプラットフォームに関する同じ監督されたリスク軽減戦略を意味する。
同時に、規制として、デジタルサービス法は直接適用され、同じ目的に沿った重複する国内法に取って代わる。
また、DSAは完全なハーモナイゼーション(調和)手段である為、欧州加盟国は国内法で規制を超えることはできない。
どの機関がルールを監督し、誰がそれを選定するのか?
規則の監督は、欧州委員会(主に欧州域内で4,500万人以上のユーザーを持つプラットフォームや検索エンジンを担当)と加盟国が分担する。
欧州委員会は、現行の独占禁止法の下で与えられているのと同様の監督権限を有し、これには調査権限、全世界の売上高の最大6%の制裁金を科す権限が含まれる。
加盟国は、2024年2月17日までに自国内に設立されたサービスが新規則を遵守しているかを監督するための管轄当局(デジタル サービス調整官と呼ばれる)を指定、提案されているデジタルサービス法の欧州協力メカニズムに参加することが求められる。
デジタルサービス・コーディネーターは独立した機関であり、公平かつ透明性をもって業務を遂行することが強く求められる。
各加盟国内の新しいデジタルサービス コーディネーターは、一貫性とデジタル コンピテンス(能力・適正)を確保する重要な規制拠点となる。
デジタルサービス コーディネーターは、欧州デジタルサービス委員会(European Board for Digital Services)と呼ばれる独立した諮問グループ内で協力、分析、報告書、勧告を支援するとともに、デジタルサービス コーディネーターによる共同調査という新たな手段を調整する。
プラットフォームの監督における欧州委員会の役割は何か?
自国の領土内に設立された仲介サービスのプロバイダーに対するデジタルサービス法の施行は、主として各国の管轄当局、特にデジタルサービス調整官の任務である。
しかし、非常に大規模なオンライン プラットフォームやオンライン検索エンジンの監督に関し、これらのプロバイダーにのみ適用されるDSAに基づく特定の義務を監督・執行する唯一の権限を有するのは欧州委員会となる。
さらに、欧州委員会は、模オンライン プラットフォーム及び超大規模オンライン検索エンジンに関するその他のシステム上の問題についても、監督および執行の責任を負う。
DSAの下での監督・執行の枠組みにおいて重要な役割を果たすのは、独立したデジタルサービス コーディネーターをメンバーとする理事会である。
欧州委員会は、新たな監督・執行権限に関連する費用をどのように調達するのか?
DSAの効果的な遵守を確保する為には、欧州委員会が、人員、専門知識、資金面において、同規則に基づく業務の遂行に必要な資源を自由に使えるようにすることが重要。
この為、欧州委員会は、2023年末を初回として、プロバイダーに対して監督手数料を徴収する。
年間徴収される監督手数料の総額は、欧州委員会が本規則に基づく監督業務を遂行するために発生する費用の総額の内、事前に合理的に見積もられた額に基づいて設定。
超大規模オンライン プラットフォームおよび検索エンジンのプロバイダーに課される年間監督手数料は、域内の受信者数に反映されるサービスの規模に比例すべきである。
この為、個々の年間監督手数料は、指定されたサービスまたは役務の提供者の経済能力を考慮する為、超大規模オンライン プラットフォーム及び超大規模オンライン検索エンジンの各提供者について、全体の上限(全世界の年間純利益の0.05%に設定)を超えてはならない。
監督手数料の適用に関する手続きと詳細な方法を定めた詳細規則は、2023年3月2日に欧州委員会により採択され、欧州議会と理事会に送付され、3ヶ月間の精査を受けた後、公表・発効される。
DSAはいつから適用されますか?
規則の適用は2段階で開始される。
DSAは、発効から15カ月後の2024年2月17日から欧州全域に直接適用される。
それまでに加盟国は、小規模なプラットフォームに関する新規則と、超大規模なオンライン プラットフォームおよび超大規模なオンライン検索エンジンに関する非システム的問題に関する規則を施行する権限を国内当局に与える必要がある。
システム義務に関して欧州委員会が直接監督する超大手のオンライン
プラットフォームと超大手のオンライン検索エンジンについては、新規則の発効が早まる。
まず第一に、零細、及び小規模のものを除く全オンライン プラットフォームは、2023年2月17日までに、月間アクティブユーザー数に関する情報を公表を義務づけ。
欧州委員会は、これらのオンライン プラットフォームが4,500万人のユーザー数を達成し、超大型オンライン プラットフォームまたは超大型オンライン検索エンジンに指定されるべきかどうかを評価する責任を負う。
欧州委員会から指定されると、超大規模プラットフォームおよび超大規模オンライン検索エンジンのプロバイダーは、DSAに基づく最初のリスク評価を実施し、欧州委員会に提供することを含め、DSAを遵守するために4ヶ月の猶予を与えられる。
V. 欧州アルゴリズム透明性センター
欧州委員会は、最大手のオンライン仲介業者を監督する為に、どのような技術的専門知識を持っているのか?
交渉終了後、欧州委員会は、特にデータ サイエンスとアルゴリズムの分野における人員と専門知識を増やす努力を含め、DSAの下で非常に大規模なオンライン プラットフォームと検索エンジンの監督責任を担う準備を進めてきた。
欧州委員会の監督的役割は、欧州委員会の共同研究センター(JRC)内に設置された欧州アルゴリズム透明性センターによって強化される。
同センターは、DSAの下で規定されている超大規模オンライン プラットフォーム及び検索エンジンに対するシステム上の義務について、欧州委員会が独占的に監督・執行する役割に、技術的専門知識、科学的研究、先見性を提供する。また、システミックリスクの特定と測定にも取り組む。
欧州アルゴリズム透明性センターの役割とは?
当センターは、安全で予測可能かつ信頼できるオンライン環境を確保するというDSAの目的に関連し、アルゴリズム・システムの分野において、技術、倫理、経済、法律、環境などの視点を統合する為に、様々な分野の専門知識を活用した社内技術支援を提供します。
同センターは、アルゴリズムの透明性に焦点を当てた研究を一元化、デジタルサービスの提供をサポートするアルゴリズムによる意思決定が透明で説明可能であり、超大手オンライン プラットフォームや検索エンジンのリスク管理義務に沿ったものであることを保証する。
欧州アルゴリズム透明性センターはいつ運営されるのか?
貿易緊急委員会(ECAT)は、2023年4月に正式に発足。
大半のスタッフは、スペインのセビリアにある共同研究センターの拠点に配置、イタリアのイスプラ、ベルギーのブリュッセルにあるJRCの同僚とも緊密に連携する。