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六角レンチとグローブ大活躍日記

1月6日(月)
去年末から機を伺っていたベッドフレームの解体にようやく着手した。

「枠が緩んできたらこれで締め直してください」と、組み立ててくれた業者のお兄さんに渡された六角レンチを捨てずに残していたのは我ながらファインプレーだった。
とりあえず外せそうなネジを無計画に廻し、それでも思った以上に簡単にベッドは無事4つの木枠になってくれた。
マットレスを支えていたスノコは、ひとまず次のベッドを買うまで残すことにした。

少しだけ家具の配置も変えてみたら、まるで引っ越ししたての頃のように部屋が広く見える。
ベッドフレーム+20センチのマットレスが無くなったのだから物寂しく見えるのも当然だ。
マットレスと一緒にソファーも回収してもらう予定なので、もしかしたら上半期はベッドとカーテンしか無いような暮らしをすることになるかもしれない。


実家に住んでいた頃、私の部屋は畳の上にカーペットが敷かれていた。
オシャレとは形容しがたいピンク色で、おまけに母親が実家から持ってきた大きなタンスまで置いてあった。
敷布団を広げたら、それだけで床が見えなくなってしまうような狭い自室で、私は「一人暮らしをしたら絶対にフローリングの部屋にしよう」と心に決めていた。

ベッドも、ソファーも、エアコンもテレビも。
夜中に起きてコーヒーを飲むのも、好きな時間に入るお風呂も。
名前を書かずに食べ物を入れられる冷蔵庫も。
あの頃の欲しかった物は全部手にしたのに、私の心は未だにあの場所に囚われているような気がしている。

いつだったか、実家に暮らしている夢をよく見ていた時期がある。
夢の中の私は一人暮らしをしていて家賃も払っているのに、何故か実家に寝泊まりしている。時々、あまりにも夢がリアルで目が覚めた後も自分がどこに住んでいるのか分からないこともあった。


去年も実家には帰らなかった。
たぶん今年も、来年も帰らないだろう。
引っ越ししたての頃のような部屋の片隅で膝を抱えて、この文章を打っている。

あの時の自分が描いていた「夢の部屋」を形作っていた家具を手放して、ここから更に10年、20年生きていくための「理想の部屋」を、今の私は描いていけるだろうか。

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