見出し画像

【中国ドラマ】おすすめ中国時代劇・2024年10月

Twitter(今はXと呼ばれているそうですね)に画像で貼ったネタの増補版になります。

中国の時代劇に興味はあるけど、配信サイトだと眉目秀麗な男女が見つめあうカバーが多かったり、眉目秀麗な長髪の男性が並んで立っていたりで「どれが……どれ?!」状態になったり、見てみたいけどカバーやあらすじだけじゃイマイチ分からん問題があります。

わたしも詳しくないけど家族の影響で中国の映像作品が好きで、だいたい毎日の夕ご飯には録画しているドラマを消化していて、配信サイトにある作品も色々見て、そして挫折したものは挫折しています。恋愛重点のもの、ウェブトゥーンの映像化っぽいファンタジー作品で若手俳優さんたちの麗しさを見せたいぜ、というものは自分にあまりフィットしなくて途中で目移りしてしまう。

そういう人間が、同じ趣向の方向けだとこの辺がいいのでは……? という中国時代劇をちょっと頑張って紹介をしたい。そういう記事です。なお、紹介したドラマの話数が軒並み多いのは、中国時代劇の仕様ということでお納めください。最近は短いドラマも増えているのですが、だいたい40話を越えるものがスタンダードです。

成化十四年~都に咲く秘密~

  • 全48話

  • Amazon Prime Video/hulu/U-Nextで配信

  • 舞台になる時代・場所:明代の北京が中心

  • ジャンル:ミステリ・バディもの・歴史

  • 特に良いところ:ごはんが美味しそう

食通で知恵者の下っ端文官である唐泛とう・はんと、料理上手な錦衣衛の男、隋州ずい・しゅうがタッグを組んで事件を解決していくバディもの。正反対の二人がだんだんバディになるのは時代関係なくおいしいやつ。バディの周りにいる人たちも魅力的で楽しい。異国人の凛とした女性と従者のでっかいお兄ちゃんとか、記憶力が抜群の女の子とか。
当時の歴史的な背景を汲んだキャラクターや、万貴妃など歴史上の人物、実在の人物をモデルにした登場人物もいるため、日本の痛快娯楽時代劇ぐらいのリアリティラインで楽しめると思います。作中の小道具はちょっと外連味が強いので、「三匹が斬る」ぐらいの感覚で見てほしいです。
ジャッキー・チェンがプロデュースしているので、アクションの完成度はとても高いです。隋州のパルクールが格好良かった。
原作がボーイズラブ小説なのを様々なフィルターをかけドラマにしたっぽいので、主人公が異性と恋愛をせず、随唐コンビの絡みにフォーカスを当てすぎない、という、エンタメ重点時代劇になっています。わたしは政治ができてちょっと情に脆い有能宦官の汪植くんが好きです。

長安二十四時

  • 全48話

  • U-Nextで配信

  • 舞台になる時代・場所:唐代、存在しない元号の長安

  • ジャンル:サスペンス・アクション・群像劇

  • 特に良いところ:ぜんぶ

予告動画は上澄みだけだなあ……とションボリした気持ちになるのですが、個人的にここ何年か見てきた中ではマスターピースみたいな作品。
時代劇で「24 -TWENTY FOUR-」やるぞ、っていう小説のドラマ化。上元節(中国の祭日)の24時間を48話に分割したサスペンスになります。張小敬ちょう・しょうけいという死刑囚が赦免と引き換えにテロリストをとらえるべく長安を駆け回り、張小敬の雇い主は政治の側からテロの阻止に奔走する……という流れ。長安という町そのものが主人公なんだろうなっていう作りこみの中、タフガイ張小敬やその雇い主たちは、長安を守れるのか?
刻一刻と変化する情勢でハラハラする展開、群像劇としてのデキの良さ、役者もセットも衣装もライティングもロケーションもなにもかもが好み。特に、「この場所ならこういう人がいて、こういう服で、こういう建物」というスタッフたちの偏執的な作りこみがたまらなかった。全体的にどこか冷たいまなざしがあるのもよいです。
ドラマの主人公は張小敬なのですが、本当の主人公は長安という都市そのものなので、都市の姿を追っていくと自然と群像劇になるんだな、という納得があります。
最初から最後まで重厚でシリアスな調子が続くので、骨太なドラマがお好きな方はぜひ。

参考記事(前に書いたネタバレなしの感想)

有翡-Legend of Love-

  • 全51話/初回のみYouTubeで配信中

  • U-Nextで配信

  • 舞台になる時代・場所:南北朝

  • ジャンル:武侠・活劇・成長譚・ロマンス

  • 特に良いところ:女性主人公が少年漫画の主人公をしている

雰囲気としてはだいぶライトなので、ガンガン系でやってる漫画が特撮ドラマになった、ぐらいのつもりで見ていると楽しいです。
邦訳されたサブタイトルで恋愛ものの皮をかぶった武侠ドラマ。原語の英題は「Legend of Fei」で、Feiというのは主人公周翡しゅうひの「翡」を中国語読みしたもの(この手の邦訳のことを個人的にサブタイトル残念賞と呼んでいる)。
江湖(翻訳しにくい概念なんだけど渡世人の世界や武術家界隈とかをあらわす言葉)で名をはせた門派の一人娘である周翡が、故郷を飛び出して江湖の恩讐を知り、悪を挫き、ひとりの侠客として立身していく物語。
ワイヤーアクション、めちゃくちゃな強さと倫理観のババア、格が高いラスボス、変な歯車ギミックなど、武侠っぽいものが揃っているけど、ストーリーやキャラクターの扱いは現代的な手つきで、古さと新しさのバランス感覚が好き。
嬉しかったのが、周翡に恋人ができても好きにかまけて大事なことを放り出したりしないところ。惚れた腫れたであらゆるものが台無しになる世界じゃなくて、個人的にストレスなく見られてよかったです。

絶代双驕 〜マーベラス・ツインズ〜

  • 全44話

  • NETFLIXで配信

  • 舞台になる時代・場所:明代のどこか(明言されていないが恐らく明代)

  • ジャンル:武侠・冒険・青春もの・相愛相殺

  • 特にいいところ:登場人物のキャラが濃すぎる

剛腕ハッピーエンド酒飲み作家の古龍が書いたエンタメ武侠小説の、何度目かのドラマ化。有翡が女の子主人公で、こっちが男の子主人公です。
生き別れた双子が互いを仇と教え込まれて正反対の環境でスクスク育って、双子であることも仇であることも知らないまま出会い、仲良くなっちゃった! どうなっちゃうの! というのがおおまかなあらすじ。
正反対なダブル主人公、自信家の悪ガキ小魚児しょうぎょじと、純粋で善良な王子様花無缺か・むけつのかみ合わないやり取り、それぞれのやべー保護者たち、江湖のやべーやつら、などなど、キャラクターの強さでドラマを面白くしていくのが古龍先生の良さ。そこを最大限活かしつつ、キャラに合わせて画面も派手に過剰に盛りました、というセットや舞台装置。目に楽しく面白いのが一番だよね、という監督のポリシーを感じます。
なにより、悪い大人が私欲のために他人の人生をもてあそぶ世界で、義侠心と優しさを持った少年たちが痛快なカウンターパンチを決めるぜ、という物語は爽快。時代考証的な引っ掛かりは流せるところは流せるようになるし、ツッコミながら見るぐらいでちょうどいい楽しさだと思います。

参考記事(ストーリー序盤と主人公たちの詳細に言及しているもの)

紳士探偵L 魔都・上海の事件録

  • 全24話

  • Amazon Prime Video/hulu/FODで配信

  • 時代:中華民国期の上海

  • ジャンル:探偵もの

  • 特にいいところ:美術と衣装が最高・短くて見やすい

1930年代の上海、と書いただけで「やったーーーー!!!!」って思う人もいると思います。わたしがそうです。
上海租界時代が舞台で、フランス租界警察の新人警官小曼シャオマンちゃんが、性格に難ありの名探偵、羅非ルオフェイとバディになって8つの事件を解決する、3話ごと、全24話のオムニバス形式ドラマです。
最初にお伝えしなくてはいけないのは、最終回がちょっと2期に色気出しすぎた展開で、おうちの人と笑い転げてしまった(予想外の出来事が起こるとまず笑うタイプ)ぐらいの「その引き?!」という話であること。賛否あり、わたしは否寄りだったけどそれを越えて全体的に面白かった。
羅非を演じた俳優さんのお芝居は白眉だし、小曼と羅非に検視官のお兄ちゃんも交えて三人のチームができてからは台詞のやりとりが気持ちいい。ミステリではなく探偵ものなので、視聴者側があれこれ想像をめぐらすより、探偵の捜査や謎解きに至る過程を小曼と一緒に体験するように見ていました。
なにより、西洋文化と大陸文化が混在していて、瀟洒なスーツと流行最先端の旗袍を着た男女が闊歩し、西洋風のアパートメントが立ち並ぶロケーションが、お好きな人にはたまらないです。衣装が多彩なのもよくて、小曼のパンツルックがめっちゃかわいい。
当時の上海は情勢が複雑で、その辺もドラマに組み込まれていました(小曼の所属がフランス警察であることからも察せられる)。
華やかな表通りの影は濃く、混沌とした都市、入り組んだ利害関係、あふれ出す薄暗い欲望の中だからこそ探偵という真実を求める職業が必要なのだ、というロマンを味わうドラマです。

おわりに

ドラマにおいて恋愛は別にいいな……っていう人間が、なるべく初めての人が楽しく見られるスタンダード武侠からエンタメ時代劇、骨太サスペンス、近代まで手を広げてご案内しました。

なにかのきっかけになったら幸いだし、ほかの人が考える中国時代劇スターターパックも気になるので、そういうのも読みたいです。

いろいろある中で作品を届けようと頑張っている人たちがいて、面白いなあと言っていられることって得難いものだと思うので、今後も色んな作品が見られたらいいなあと思っています。

あと、最初にちょっと言っていたカバー画像の傾向としては、男女が見つめあってるやつは恋愛もの、髪の長い若い男性二人が並んでいるやつはBL原作のブロマンス、主人公単独だと主人公の一代記や無双もの、人が沢山のやつは歴史群像劇かファンタジー時代劇、というのがわたしの主観による雑な分類です。もし色々見てみたいな、と思ったら参考にしてください。