【日記】こども水滸伝を見終わった
こども水滸伝で、はじめてちゃんと水滸伝の概略に触れた。
こども水滸伝とは「中国古典名作選」というドラマの水滸伝パートを、わたしが勝手にそのように呼んでいるやつです。ちょっと前にもnoteで触った、子役が中国の色々な名作を超高速でやるやつ。この水滸伝は、魯智深、林冲、宋江の三人に絞って話を進める感じでした。
それまで、水滸伝のといえば秋梨惟喬の燕青かFGOの燕青しか知らなかったし、なんとなくハードボイルドっぽいのかな……緑林の英雄みたいな気性は荒いが筋は通すぜみたいな、気持ちの良い困った男たちの話なのかな……っていうイメージがあって、子役のお芝居もすごいけど愛らしく楽しみにしていたんだ。
それが……なんというか……だいぶ思っていたのと違って……シオシオになってしまった。困った男たちの話ではあったよ。でも、なんつうか……
宋江。お前の話だ。そこに座ってくれ。死んだ林冲と何成に叩頭してから話を聞いてくれ。
全国から集まった在野の不良の集まりだったら公務員というだけで一定のリスペクトが集まるのは分かるんだ。はずみで愛人を刺してしまった程度の男だけど、その動機が動機だったからみんなから慕われるのもまあ分かる……わかるよ……
でも宋江、あまりに小役人なんだよ……。無頼漢の集まりだった梁山泊の連中をちゃんと統率できていた感じがなく、朝廷に戻りたいようという詩を詠んでみたり、林冲に復讐されそうだった高俅(史実バリアがあるので無敵とはいえ)をこっそり逃がしたり、実家にいる親父の顔が見たいようと駄々をこねたり、「俺の忠義は朝廷に尽くすということ」っていうスタンスがブレない。ブレないのはいいけど、お前そこは梁山泊だぞ……?
替天道動の天は天子の天ではなかったはずなのに、聚議庁が忠義堂になり、階級付けがなされ、結局、ひとりの小役人によって小役人の世界に収斂していくもの悲しさったらない。嫁も殺され無実の罪で酷い目にあったのに、敵討ちも許されず死んでいった林冲があんまりにも可哀そうだ。
終盤墓参りするシーンがあるんだけど、ずいぶん豪華だな……戦死した仲間かな……と思ったら、親父の墓で親父に詫び入れており……お前……お前親孝行で何人義兄弟死なせたと思ってるんだ……?
宋江を演じた子役くんの「何もしてないのに林冲が壊れた」みたいな表情や、より長いものに巻かれるシーンの表情がすごい。小役人。上手い。上手いだけに「何が忠義堂だばかもの」という気持ちになる。
超高速水滸伝だったのですが、本編がくどいぐらいに「良い子の諸君! 時の公権力には従って、一時の男気で反乱とか企てちゃだめだぞ!」っていう方向だったので、たぶんこのドラマは、この宋江が主人公で良かったんだと思いました。宋江が好きかどうかだと、そこに座って死んだ義兄弟に叩頭してこいとしか言えない。
このドラマだと、魯智深は困った男だけど気のいいやつで、わたしは好きだなあ……。李逵まで行くとアイエエ鉄牛……ってなってしまう。怖い。あと林冲が不憫で好きです。
子ども水滸伝はスタッフロールでNGが流れるのだけど、自刃した何成を石の卓に横たえる時、持ち上げきれなくて何成の頭を軽くゴツンさせちゃう魯智深くんがめっちゃ可愛かったです。