【海上牧雲記】南枯月漓は諦めない
今日の海上牧雲記は、好きか嫌いかでいうと嫌いなんだけど、目が離せないやつの話です。南枯月漓。ただの悪役令嬢かと思ったら、2段階変身を残していたやばいやつ。
「おきさき様になりたい」
子どもの頃、「お妃様になりたい」と思った人間、少なくないと思う。現代に生きていると、条件が合わないのでご活躍をお祈り申し上げられ、自分のように運送屋の事務員になったりする。
でも、南枯月漓は、「お妃様になりたい」と思ったら「なれる」女の子だった。
月漓ちゃん、負けん気は強いが顔はいい。父親は貴族として要職にあって、叔母にあたる人は皇帝の正室。宮中の官女に仕官すれば、家柄ヨシ、器量ヨシ、作法ヨシでお手付きヨシ! になるはずだった。
そこに同僚として現れたのが「この娘は皇帝の妻になるだろう」という予言を授かった少女だ。早くも「未来の皇后」として皇子たちによる争奪戦が始まりそうな気配に、月漓ちゃんは怒る。そんな運命なんてイカサマだ。自分は間違っていない。
夢を叶えるため、できることを全部やる
南枯月漓は激怒した。必ずあの小娘をのぞかねばならぬと決心した。運命だかなんだか知らんが皇后になるのは自分だ。
そこで、月漓ちゃんが何をしたか。キツいいじめと2件の殺人教唆だ。言ってしまえば、少コミとか別フレで見たようなエグみの強い当て馬女がよくやるアレだ。
なので、月漓もそのうち因果応報があっておしまいかな……と思っていた。ところが、まだ続きがある。
月漓ちゃんが女の子をいびり抜いている間、皇帝が要介護5の寝たきり状態になった。しかも、誰を太子にするか決めないまま。前に紹介した陸殿下を始め、様々な思惑で太子の椅子に座ろうとする皇帝の息子たち。
その中に、南枯月漓の従兄弟である牧雲合戈もいる。合戈は南枯月漓ちゃんに惚れている。このチャンス逃したら、この玉の輿は二度と来ないかもしれない。そこで南枯月漓が何をしたか。
イカサマである。
それもイカサマ中のイカサマ、勅書の偽造だ。それが上手くいっちゃって、あとは事務手続きだけ、ってとこまでこぎ着けちゃった。
もうすっかりムードが出来上がった月漓ちゃん、皇后の盛装で合戈と睦まじく「陛下」「皇后」などと呼び合うなどしているが、裏で皇帝が元気になって怒り心頭なの把握しているこっちは、もう見ていられないのである。
「あー……あーほら陛下来ちゃったよ……あーあーもうだめだ……」
勅書偽造に皇帝絞殺未遂、合わせ技で謀反一本です。
南枯一族、男はことごとく斬首、女は風呂屋に格下げ。あわれ南枯月漓、皇后の盛装したまま妓楼に売っぱらわれ物笑いの種である。ちなみに月漓ちゃんの叔母(皇后)も南枯の女ですが、元気になった陛下から人違いされているので無事。合戈くんは幽閉。
これが凡百の悪役当て馬女であれば、ここで退場して視聴者もなんとなく溜飲を下げておしまいだが、はた迷惑なことに、まだ続きがある。
スモークオンザ妓楼
妓楼で物笑いの種として服役している月漓ちゃん、少女の頃、いじめの果てに金で雇った男に崖から突き落とさせた「あの」予言の女の子が実は生きてて、新たに冊立された太子へ嫁ぐと聞きつける。
再び怒りに火がついた月漓ちゃん、その知らせを持ってきた客を刺し殺して妓楼に火をつけて逃げる。妓楼炎上、多分半~全焼している。ここにきて追い重罪である。ところが、叔母さんの旦那さんの兄の息子(皇帝の兄の息子)、徳くんの気まぐれで、月漓ちゃんは捕り方の手を逃れ、徳くんの経営する宿に匿われた。
さらに、徳くんとその父が皇帝を排し自分らに都合のいい太子を立てようと、現在幽閉中の合戈を返り咲かせる計画で動いていると分かる。
辛抱強く妓楼で耐えていた甲斐があった。まだ皇后ワンチャンある。そうと分かったら徳とかいうボンボンを掌で転がして、早いとこ戦線に復帰しなくては!
というのが、昨日付の月漓ちゃんです。
私は間違っていない
これまで、南枯月漓の視点でだけ書いてきたけど、「やられた側」から見たら、たまったもんじゃない。2度も殺されかかる女の子、置き土産に火をつけられた妓楼、息子が重犯罪者かくまっちゃった皇帝の兄。どの被害者も、本人と接触できず泣き寝入りだ。
でも、月漓ちゃん、悪いと思っていないんだよなあ……。
女の子いびってた時も、妓楼にブチ込まれても、匿われている宿屋でも、ずっと「自分は間違っていない」という主張を続けている。
こいつ……南枯月漓はいくつも法に触れることをやってきたが、「悪い」と認識するセリフが一切ない。
だって、間違っていないんだもん。
「自分は努力家だし、頭がいいし、美人だけど、みんなが私を嫌う。手を伸ばせば届くものを欲しがって何が悪い」と酒を飲んでうそぶくぐらいだ。
この南枯月漓は皇后になるのよ
南枯月漓は、あの、一瞬でも皇后と呼ばれた夜に戻ろうとしているんだと視聴者は知る。少女の頃の夢を叶えるため、あと何人の命を振るい落としていくんだろう。ここまでくると天晴れな執着だ。
わたしは月漓のこと、好きか嫌いかで言ったらめっちゃ嫌いなんですよ。いつも最短で、誰の迷惑も顧みずに行く先々に厄災ばらまいて自分だけ生き残る。そして開き直りとも思えることをしれっと言ってのける。こういう人、インターネッツで結構出会っており……
今匿われてるところでも、もう三悶着ぐらい起こしているので、そろそろまた炎上するんじゃねえかな。今度はどのぐらい燃えるんだろうな。
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