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【日記】「Pellicule」で見ないふりをしていた劣等感を暴いていく

春になったので、そういえばSpotifyにアルバム配信されているかなあと検索したら、なぜか今年の一月に曲の配信があった。動揺してしまってそれが昔の作品だったことが吹っ飛んでしまった。

なんで? きみ、もう音源の中にしかいなくなってしまっただろう。慌てて調べてたら、よく分からんリリース情報まとめサイトで、お前まだ生きてることになってたぞ。

今日は不可思議/Wonderboyの「Pellicule」を久しぶりに聞いた話。

不可思議/Wonderboy 「Pellicule」

ジャンル、ポエトリーラップっていうのか……? 詩を朗読します。トラックはシンプルなピアノと打ち込みのドラムだけで、そこに自然体のお兄ちゃんの声が乗っかる。曲は久しぶりに会った友人と「俺」が酒を飲みながら話すスタイルで進んでくんだけど、精神のコンディションが良い人はとにかく聞いてくれ。わたしは聞くと胃のあたりが重たくなる。

明るいか暗いかで言ったら暗いし、内容によっては各々にとっての「当時」を思い出して精神が穴だらけになるんだけど、「俺」の語りはずっと優しさでできている。

あの、白木屋のコピペあるでしょう。白木屋で、フリーターの「お前」と大卒して就職した「俺」が飲むやつ。すごく乱暴に説明すると、あの白木屋コピペの、すごい優しい版が「Pellicule」です。あのコピペは会社員になった「俺」が食えない中年のバイトになった「お前」を憐れむけど、Pelliculeの「俺」は「お前」と一緒に子供時代の思い出とか、ありもしない未来のことで笑い合ってくれる。それは「Pellicule」の「俺」も食えないし冴えないし、何者にもなれなかったからだ。

で、当時の自分が白木屋コピペの「お前」だったから、「Pellicule」を聞いた時も、まんまと「お前」になってしまった。

この曲に殴られた当時の話をする。何年か前に浪人して入った大学を中退して親が借りてくれた学資ローンが全額ドブ、その後就職先は一月もたず退職、そのあとはフリーター。当時は貯蓄なし、周りは就職、結婚、お子さんが生まれたりしている。どこ踏み間違えた?

「ちゃんとできなかった」っていう自分への落胆とか……ちゃんとしている人たちへの劣等感とかがあったし、具体性のない「なにか」に自分(を取り巻く状況)にどうにかしてほしい。そういう救い、ないし破壊を待っていたし、いつか「ちゃんとできた」っていう気持ちになりたかった。そういうところを思い出してしまった。薄布に包んで見えないようにしていたんだけどなあ。

不可思議/Wonderboyの語りはその辺を「俺もそうだよ」と言ってくれたから、つらいんだけどその隣にいてくれる感じはすごい救われた。救われたんだよなあ……

ちゃんとしたかった、っていう感情はずっと引きずってて、今もこの位の時期にニョキニョキと育つのを伐採して燃やしては暮らしている。

それで、伐採して燃やす用のBGMに不可思議くんの曲を聴こうと思ってたんだけど、spotifyにはPellicule単品だけでアルバムがなかったんだよ。

これ曲単体だけで聞くと当時に戻ってしまうんでアルバム通しで聞いて救われたい。Pellicule収録されている「ラブリー・ラビリンス」とても良いアルバムなのでAmazonとかAppleMusicしてください。不可思議/Wonderboyの1st アルバムかつ遺作です。

最後に

動画をいくつか紹介しておしまいにします。

銀河鉄道の夜が凄く良く、鉄道作業員の「僕」と僕を待つ「私」の手紙のやりとりが優しい調子で語られるのでちょっと長いけど聞いてほしいです。


このライブのやつもすごい良いので聞いてほしい。谷川俊太郎の詩をビートに乗せて歌っていくやつ。前説替わりの「ポエトリーリーディングは鳴りやまない」は、「ロックンロールは鳴りやまないっ!」のピアノのリフを使っています。


あとこれは本人の曲じゃないんだけれど、神門のアンサー。不可思議/Wonderboyの歌詞からの引用が白眉で聞くといつもグッと来てしまう。

以上です。ご清聴ありがとうございました。