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【海上牧雲記】45話かけて味わいが深まる中間管理職武人、虞心忌

ここまでやってると一話ごとの感想にしたほうがよさそうだけど、毎日どえらい密度の一時間ドラマ見せられるので、見終わってから実況でない文章に起こそうとするとパワーがないんだ。

今日も海上牧雲記の推しの話です。

あと2クールぐらいで終わるっていう45話で、やっと虞心忌というおっさんが燻された良い色つやを輝かせるようになった。昨日の46話でもとても良かった。叱られる犬みたいな顔してて良かった。

まず虞心忌、名前が凄い。虞が名字で心忌が名前。心を忌むとは。

どういう立場の人かっていうと、建国以来300年、軍事関係を一手にあずかる穆如家から現皇帝のお抱え便利屋に異動した武官です。皇帝家(牧雲家)と穆如家、そもそも前王朝から玉座を簒奪した以来のお付き合いなので、こういう身内人事がまかり通っているのではという勘繰りもある。

もちろん虞心忌は皇帝直属になるぐらいの実力がある。皇帝からも信頼されており、息子の警護だの首都防衛の前線に書類を届けるだのの大事な任に着いたりしています。

その、面倒見てる皇帝の息子(皇子ですね)が出生に曰くのある扱いにくいやつでアレコレ手を焼いてたり、前線に書類を届けたらスネた牧雲家の坊ちゃんからパワハラを受けたり、まあ大変。

虞心忌が輝きだしたのが、そのパワハラ現場での話。激戦を突破し一騎打ちを挑みにくる蛮族に、武人としての礼を欠いた牧雲家の坊ちゃんを叱りつけ、「門を開けろ(俺に一騎打ちを任せてくれ)」と迫る。坊ちゃんは「お前は俺に意見していい立場じゃなかろう」と激怒するも、たかだか手負いの蛮族に怯えて遠矢で射殺しようとした坊ちゃんの態度と、軍人の誇りを説く虞心忌の態度、どっちがより現場の兵士に届いたか。

虞心忌ですね。

10-0で虞心忌。

そして瀕死の蛮族と同じく防具を全て外し、敬意と作法に則り相手の蛮族を葬ってやった。蛮族の男は、「気骨のある男だ」と虞心忌を讃え、彼にだけ自分の名を明かし、死ぬ。

その後とんぼ返りした虞心忌は、扱いにくい皇子に母との思い出を語って「せめてまともに飯を食え」だの、不器用な保護者としての顔を見せる。仮にも太子に冊立された相手に、ちょっと崩した座り方で「お勉強もいいけど」と諭す、顔に小さな刀傷のある男ですよ。おいしい。モグモグ食べちゃう。

この人はフィジカルもメンタルも強く、面倒見ている皇子が襲われた時には一人で十数人相手に大立ち回り、少なくない傷を負いつつ全員切り伏せるし、その皇子が別件でお母さん譲りの人外パワーを使った時には「暴走したら私を刺しなさい」と言われて、暴走するので、刺す。バレたら死罪では……? でも、やるのだ。刺したところで人外パワーで剣溶けちゃったしノーカンですよノーカン。

ここだけ見てると武人としてのプライド、不器用な父性もあり、優等生じゃん! ってなるけど、この虞心忌、それだけではなかった。

皇帝から密命を受けて、上記の皇子が酒の席で酔って狼藉を働いたのが、酒に一服盛られたせいと調べ上げる、そのくだり。温度のない目つきで皇宮の官吏を取調室で拷問にかけたり、窓のない牢獄に収監された参考人と笑いながら(目は笑ってない)話したあと、「明かりを奪うように」と部下に指示してスタスタ歩いて行く。

ハードボイルドへの舵の取り方が急! そういうの弱いのでもっと見せてほしい! もう虞や虞や汝を如何せんですよ。どうにもできんわ……好き……

冷徹な組織人に見えて、情があって、武人のプライドを重んじる。でも身分が低いせいで色んな人から軽んじられ、忠節がより上位の人間によって曲げられ続けている。そういう虞心忌が不意に見せる強い意志、良いですね。母を亡くしてからは孤児だったらしいというのも属性に噛み合って火力が高まります。焼かれる。

陸殿下の時には恐る恐る書いてたんですけど、だんだん遠慮がなくなってきたので好きにやりました。海上牧雲記から飛んできた人々にはなんとなく申し訳ない気持ちがあるのですが、この調子で推しとかの話続けていきたいですね!

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