待つ人になって2年経った

ヒートテックの上に長袖のTシャツを1枚と裏ボアのパーカーを羽織る。3月あたまにこんな薄着でも過ごせているのが不思議でならないのだけれど、そのことが、まだらな曇空の延々と続く冬は訪れない土地に住んでいることを実感させる。

今の街に越して来て、2年になった。生まれてこのかた親元を離れたことがない、マンションの更新料も知らない筋金入りの箱入り女が、海のある街から山のある街へ箱を移動したのは、結婚相手がこの街に住んでいるからだ。

新潟から関東に出てきて虫に驚いたり腹を開いたりと暮らし方が大転換したなかでも、実家にいた頃は「いってきます」と「ただいま」だったのが、「いってらっしゃい」と「おかえり」になったことが一番面白いなぁと思っている。
「今日は忙しかったろうか」「寒いからあったまるご飯を用意したら良いだろうか」「弁当に桜でんぶでハート作ったイタズラについては言及があるだろうか」などを考えながら晩御飯の支度をしていると「ただいまー」と帰ってくるので「おかえりなさいごはんまだです」と応じる。遊ぶ約束をしての待ち合わせで人を待つのとは違う、昨日の続きで人を待つというのが、嬉しいのだなあと思う。

もしかしたらそのうち、それどころではなくなるかもしれないし、帰って来なきゃ良いのにと思う日も来るかもしれないのだけれど、そんなことより今日の晩御飯考えなくてはならないのだ。