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月や星、雨と輝く、「ブルージーに生きろ」

  2022年リリース『Inner Ocean』の「太陽が昇るまで」を聴いた当時、いつもとは違う特別な感情にさせられたのを今でも覚えている。"ただの物質である私"と"生きた感情を持つ私"が混ざり合うような。自然と共に輝く、繊細で神秘的なさらさの音楽。そして、私にとって月の存在とも言えるさらさの2枚目のアルバム『Golden Child』が今月リリースされ、私は東名阪ツアーに足を運んだ。

さらさ Golden Child Tour 2024

  今回、1番このライブで感じたのはさらさにしかできない演出だったということ。会場BGMが"Golden"縛りであったこと、ステージ背景がキラキラした黄金の生地で装飾されていたこと。『Golden Child』にかける彼女の思いが空間全体で表現されていた。彼女の魅力は、彼女を構成しているシンガー、美術作家、アパレルバイヤー、フォトグラファーなどの様々な一面が分散することなく、”さらさ”という1人の人間となって表現されていることだと思う。それは今までのジャケット写真を見ても、今回のツアーグッズを見ても分かることで、彼女自身が被写体となったり、Zineをグッズとして販売したり、シンガーとしての枠を超えた彼女の音楽活動はファンたちをさらに魅了する。

梅田Shangri-Laでの様子

  『Golden Child』は、さらさにとってシンガー人生第2章の幕開けに値するもののようで、MCではシンガーとしての彼女を苦しませた2023年の存在やインターンでお世話になったと言う株式会社yutori.での2年間についてを話していた。彼女の中でも大切な曲だというyutori.の上場記念で作られた「船」という楽曲は、社歌にもなっているようで、私はこのライブの中で1番の衝撃を受けた。ステージで魂込めて歌っているさらさの姿は、月のように輝いていて、むしろ辛い時期だった2023年が『Golden Child』をより良い作品にさせたのだと感じた。そして、この「船」は、お世話になったyutori. と共にこれから成長していくという、前向きで彼女自身を励ますような曲だった。

  このツアーでは、名古屋ではBONNIE PINKのHeaven's Kitchen、大阪ではYEN TOWN BANDのSwallowtail Butterfly~あいのうた~-Remastered 2015、東京ではUAのミルクティーのカバーが披露されたようだ。niewmediaでは、下記のようなインタビュー記事が公開されていた。さらには、SNSでさらさをエゴサしているとこのツアーが始まる以前からファンの間ではこの3人の要素をさらさは持っていると囁かれており、彼女にとって大きな影響源なのだと確信した。

─今回挑戦してみたかったのは、どういう部分だったんですか?
さらさ:いいポップスを作りたいってことです。結局今までに近いテイストの曲も多くなったんですけど、そこが大きな違いでしたね。
─そう思ったのはどうしてでしょう?
さらさ:UAさんとかCHARAさんとかBONNIE PINKさんとか、1990年代後半のR&Bの要素がある日本のポップシーンがめちゃくちゃ好きで。楽曲のクリエイティブがすごく光っていたと思うんです。時代が持っていた特別な勢いやパワーなのかもしれないですけど、その感じを令和に再現できないかなと、今年の初めぐらいから強く思っていました。

https://niewmedia.com/specials/salasa/

  ライブを見ていると、消えてしまいそうな儚さの中に自分を持つ芯の強さが見え、ますます彼女に釘付けだった。肉眼で見るからこそ感じることのできる彼女のパワーだ。まさにあんな大人になりたいと思わせてくれるかっこいい女性だった。
  アンコールでは、客が歌ってほしい曲名を叫んで1番大きく聞こえた曲を披露するのが恒例だそうで・・・大阪では、「太陽が昇るまで」がアンコールで歌われた。彼女と出会ったと言っても過言ではない楽曲だったので幸せなご縁だとしみじみと感じ、私は満たされた気持ちのまま帰路についた。

「ブルージーに生きろ」

悲しみや落ち込みから生まれた音楽のジャンル“ブルース”に影響を受け自身で創り上げたというこの言葉は、ネガティブな感情や事象をクリエイティブへと転換し肯定するという意味合いを持つ。

https://block.fm/news/salasa_interview

地球上にあるものは全部陰と陽、ネガティブな部分とポジティブな部分の両方があって成り立っていて、それが「生きる」ということなんだなと思っていて。ネガティブな出来事や感情に対して、つい「ここから抜け出さなきゃ」って良くないもののように感じてしまうんですけど、逆にネガティブなものを強く感じる人はそれだけ色々なことを繊細に感じられたり、人の気持ちを理解できたり、すごく魅力的な部分だと思うんです。
そのときは辛くてそう思えないかもしれないけど、「ネガティブなことが起こったときこそチャンスなのかも」と少しでも思ってもらえるような曲を作りたいし、そういった面も含めて肯定できる存在でありたいと思っています。

https://block.fm/news/salasa_interview

  「ブルージーに生きろ」をテーマにして活動しているというさらさ。ネガティブなことに直面しても、それすらも自分のものにしてやるんだと考えて生きてきた私と重なるところがあった。太陽や月、雲、他には悲しみや苦しさといった感情も然り、そこにあるだけのものをそのまま受け入れて、それを自分でどのように解釈するかが人生だという私の概念。『Golden Child』に収録されている「祝福」という楽曲では次のような歌詞が登場する。

星 踊るしかないから
傷ついたこと受け入れる
手を伸ばしてみたことは
間違いではないでしょう

  この部分だけでさらさというシンガーの核となるものが分かる。この曲に限らず、悲しみや痛みはただそこにあるだけのものとして認めようとする感覚を多く歌っている。彼女の作る音楽に自ずと惹かれたのも自然に対する解釈が同じだったからなのかもしれない。
  そして、9月13日のX。

  辛い時にこそ聴いて欲しいというさらさの現在リリースされている音楽の数々。今後リリースされる音楽では、今までとは一味違った新しいさらさに出会えそうだ。音楽を通して知るさらさの生き方。「ブルージーに生きろ」

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