ソラナちゃんのいちにち-9
「ちょっと、あんな隠し玉あるなんてきいてないわ! 」
「いや、隠し玉でもなんでもないわ。あれは、私の技よ」
「そういう問題ではな!」
「はーい。二人ともそこまで」
イーサとソラナの間に入って仲裁するオズモ
「お姉さま!でも、イーサが」
「いい、あなたは勝ったのよ。まず、そのことを喜ばないなんて、私達に失礼じゃないかしら?」
「私達の負けが意味の無いものになってしまうわ」
たしなめる様に、オズモが言う。
「はい、お姉さま」
しゅんと、さっきまでの勢いはどこえやら。
反省の色を強くしたソラナ
「それと、試合を終えたらやることがあるんじゃないかしら」
「やること?」
「そう。試合は、ひとりじゃできないわ」
「だから、終えたら挨拶でしょ?」
「!」
「イーサ、Junoさん、お姉さま」
「良い試合を有難うございました!」
「こちらこそ。楽しい戦いだったわ」
「Junoも満足でしょ?」
「ああ、戦闘以外でここまで体を動かしたのは久しぶりだ」
「イーサとの攻防、とてもよかった」
「イーサ、今度、私の訓練に付き合ってくれないか?」
「もちろん!いいですよ!」
練習の申し入れをするJunoに快諾するイーサ
「それと、そらな」
「はい!」
「よく戦った。オズモのレールガンを壊したのはなかなか豪快だったぞ」
笑いながら、ソラナの頭を撫でるJuno
「あ、ありがとうございます」
頬を赤らめ、目を伏せ照れるソラナ
「さーてさてさて。勝敗はついたといいますか」
「ならば、賞品の受け渡しタイムといきますか」
「ポルカドット!」
「おいおい、まだ呼び捨てなのかよ」
「まぁ、いいけどさぁ」
「ソラナちゃんとイーサさんには、こちらをプレゼントだ」
「アス太、よろしく!」
「はいはーい!」
アス太は、ソラナとイーサにNFTチケットを渡す。
そこには、ペアと書かれた海洋温泉のチケットがあった。
「これって!」
「副賞だよ」
「メインは、ほら、ソラナちゃんとオズモさんで交わした約束があるじゃないか」
「使っちゃいなよ」
「ポルカドット」
「ん?あぁ、いいってことよ」
「どうせ必要になるもんだろ。だったら、あらかじめ用意しておく。その方が盛り上がるからな」
「それに、俺もすごく楽しませてもらった」
「ありがとう!」
そういって、ソラナはポルカドットに抱き着いた。
「!!!!」
「えっ!?すごく嬉しいときはこうやって全身で感情を表現するのがコスモスの習慣とお聞きしたのですが、何を驚いているのですか?」
不思議そうに首をかしげるソラナ
「それ、誰に聞いたの?」
「エブモスだけど。オズモお姉さま」
「あーーー」
「それは、そうね。あの子ならそういうわね」
「とりあえず、そのフリーズしているポルカくんから離れてあげたら?」
「表情がすごいことになっているわよ」
「で、でかいメロンが2つ。弾力がすごい」
「いい香り」
「太陽の香り」
「ポル兄ぃパイセン、いつまでトンでいるんですか」
「まったく」
そういうと、アス太は、謎の袋をだらしない表情をしたポルカドットの顔の前まで持っていき開封する。
「ぐぁーーーーーー!くっさ!!!!」
イーサが作成しているリソース袋だった。
相変わらず臭いがきついらしく、主原料の一部にブロックタイムの粉末を加える様になってから更に臭くなったらしい。
もっとも、リソース回復の即効性や効能は飛躍的に向上したらしいが、弊害が大きかったようだ。
嗅がなければ、無い弊害だが。
その臭気を活かし、こうやって気付け薬として使われることもあったりする。
「ちょっと!待ちたまえ、アス太くん。俺が感じた太陽の様な香りのメロンを返したまえ」
「そんなものは幻想ですよ。パイセン」
「ならば、ソラナちゃん。カムバーック」
「ほう、まだまだ元気なようだなポルカドット」
「なら、貴様には、特訓に付き合ってもらおうか」
「先ほどのイーサの技を見て閃いたんだ。お前には相手をしてもらおうか」
「Junoさん、それは勘弁してもらえますかね」
「お前に拒否権があるとでも?」
「それに、私の尻を撮影した撮影料を払ってもらうとしようか」
「その体で!」
そういって、ポルカドットは、Junoに引きずられて、プールへと連行された。
「いってらっしゃい。二人とも」
にこやかに笑って送り出すオズモ
「Junoさんと二人きりは嬉しいけど、これは、いやだー!」
「ふっ、恥ずかしがらずともいい。存分に技を叩き込んでくれる」
そういって、二人はゲートへと消えていった。
「さーて、終わったわね」
「まだですわ!お姉さま」
「ん?ソラナちゃん」
オズモにチケットを差し出すソラナ
「わたくしと、行って頂けませんか?」
「ええ、いいわよ」
「私からも、要求させてもらえるわ。オズモさん」
「イーサさん?」
「ソラナ、いいでしょ?」
「もちろんよ」
「Junoさんと私、オズモさんとソラナでいきましょう」
そういって、イーサはチケットを渡した。
「また、Junoさんと試合がしたいわ」
「もっと、知りたいな」
「ふふふ、みんないい子ね」
そういって、二人を抱き寄せるオズモ
「うーん、両手に華ね」
「とても、いいわ」
試合は、大盛況のうちに終わった。
いつの間にか、プール周りには観客たちが沢山いて、彼女達の活躍を見守っていたのだった。
「さぁさぁ!限定品だからね。さっきの試合のNFT、今買わなきゃもうないんだからね」
ペンギンの様なパーカーを着たアス太が観客たちに商品を売りさばいていた。
「アス太くん、あなた」
「あぁ!いいところに、イーサさん。こっちこっち」
「えっ、ちょっとまって!」
「はい!皆さん注目!今回、大活躍したオフェンスのイーサさんだよ!」
「商品を購入してくれた人には、今なら、握手とサインつけちゃう!」
なに!それは本当か!?
ぜひ!
そうじゃなくても、このソラナちゃんがドアップで映ったものが拙者、欲しいでござる!
観客たちは思い思いのことを言って、アス太から商品を購入している。
イーサも巻き込まれる形で対応する羽目になった。
「ふぅ!さばききった」
「イーサさん、ありがとう!おかげでお客様は大満足だよ!」
「これで第二弾もいけそうだよ」
「アス太くん、お金に困っているの?」
「えっ、違うよ。これは僕の趣味兼、実益かな」
「みんなが喜んでくれるものを提供するって楽しいじゃないか」
「それに儲けたお金で楽しいことをしたらもっと楽しいんだ」
「だから、やっているんだよ」
「そうか」
「じゃあ、私も、アス太くんの楽しみに協力出来た感じなのかな」
「あぁ、もちろん!イーサさんがいたおかげで盛り上がったよ」
ばっちり!と合図して、お礼をいうアス太
「っと、イーサさん、これ、忘れているよ」
そういって、イーサにお金を手渡した。
「でも、これ、アス太くんの収益じゃ」
「これは、イーサさんの分だよ。僕だけじゃこれだけの売上にならなかったしさ」
「だから、正当な分け前だよ」
「それで、みんなで楽しんだらいいさ」
「ほら、試合の後は、ゆっくりカフェかレストランにでもいってさ」
「うん。ありがとう!アス太くん」
「どういたしまして。こちらこそ、ありがとう」
「そうだ。これも記念に渡しておくね」
そういって、アス太は数枚の媒体を渡した。
「イーサさん達の活躍が入った映像。後でみんなで見て盛り上がってね」
そういって、アス太は、会場を後にしたのだった。
残されたイーサも、ソラナ達が待つ外へと向かった。
「イーサ、遅いですわ」
「どうせ、アス太くんに捕まって手伝っていたのでしょう?」
「ごめん。ソラナ」
「いいですわよ」
「わたくしは、わたくしで。お姉さまとゆっくり話す時間が持てたのですから」
「そういえば、オズモさんは?」
「お姉さまなら、一足先に帰りましたわ」
「なんでも、シークレットにお祝いの品を作りたいんですって」
「そういうところは、保護者気質といいますか」
「でも、流石、お姉さまですわ」
「わたくし達もそろそろ、帰りましょう」
「そうね」
「そうだ、これ、アス太くんからもらったんだ」
「せっかくだから、一緒に何か食べて帰りません?」
「いいわね。いきましょう」
「場所は、わたくしに任せてもらえないかしら、いい場所を知っていますの」
「じゃあ、そこにしよっ!」
「ソラナ、任せたわ」
「任されましたわ」