【レビュー】AMATERAS8097コンデンサーマイクってぶっちゃけどうなの?←試してみた
「メーカーから金でももらってんのか?」ってくらいカルト的な人気がある音楽製品ってありますよね。
遠い昔にAMATERASさんちのトランスについて記事を書きましたが、今回はAMATERAS 8097(S)というコンデンサーマイクはどうなのか、という話をしていきます。
8097(S)もレビューが少なく、レビューがあっても「初めてこの価格帯のマイクを買った」という初心者層が多くてあまり他のマイクと比較がされていなかったので、レビューを書く気になりました。
ちなみに、ステマできるほど私のレビューは読まれていないので自費で素直に書いています。
案件お待ちしてなす🍆
1 AMATERAS 8097(S)のいきなりレビュー
超低域が少ない! …だから歌いやすい!?
かなり元気な音でエッジが立つ!
ちょっと残念なのは筐体!
① 超低域が少ない
瞬間瞬間で全然違う波形になるのでこれは参考程度に見て欲しいんですが、50Hz以下がスッキリしています。聴感上でも割とわかる感じ。
(もちろんローカットは使っていません)
いやまぁ、「いつも脳死で80Hz以下はローカットしてるよ!」という人もいるでしょうが、それはボーカルの超低域がオケとぶつかって邪魔だから先人が「カットしなされ」と遺しているからです。
モニターする上で心地よさを求めるとローカットが一番てっとり早いこともしばしば。
と、ここまで書くと「ローが少ないってこと?」と思われるかもしれませんが、低域(80Hz~)はまるで問題なく聞こえます。というか、低域は結構出る方です。
周波数バランスは低・中・高の全帯域でそれぞれ目立つ帯域がちょこちょこあるので、フラットともまた違うというか。全体的に見れば高域に向かってゆるやかに尻上がりで、1kHz、3kHzあたりは少し強調があるように聞こえます。
また、このマイクは「倍音のコントロールがしやすい」と公式HPで言われていますが、それも余計なローが出てない→歌手が2次、3次倍音でキーを合わせやすい→倍音コントロールがしやすい、ってな感じかと思っています。
(いや、メーカーの方から「適当こいているな」と思われるのかもしれないので踏み込んだことを書くのは憚られるのですが)
まぁ「じゃあ普通のマイクを50Hz以下をローカットすればいいの?」って話になるんですが、EQないしフィルタでローカットすると逆にローカットした周辺が目立つ現象があったりして…。
「ローカットした音」と「最初から超低域が少ない」ってのはまた別物だったりします。似たもんだと思うならローカットでもOKです。音楽は自由なので!
② かなり元気な音でエッジが立つ
エッジは立つ方で、「カッ」とかの音がちょっと大きめに出る印象があります。
一方で、サ行が刺さるかというと全然問題ありませんね。アナライザー上ではそれなりの量出ているように見えますが、「サシスセソ」が目立つ感じはありません。むしろ、それより下の「カキクケコ」の3kHzあたりのアタックが少し目立つ感じがあります。
AMATERASではオプトコンプもラインナップされていたと思いますが、まさにオプトコンプで抑えてあげれば「カキクケコ」も均されてちょうどいい音になりますね。
そのまま使っても変ではありませんし、後からDAWでコンプを掛けてもいいと思います。
今回の比較対象であるEarthworks ETHOSは真逆の柔らかい音。ETHOSはSM7Bみたいな「決してサ行が刺さらない」という良い点もあるのですが、若干音が眠たいところはあります。高域を上げれば眠たさが消えるので、おそらく低域~中低域あたりに眠たさの理由がある気がしています。
コンプ等を通さずに使うなら8097(S)の方がどんな歌にでも使える感じですが、ETHOSは近接効果の少なさや柔らかい音質でエッジが立たないので何を求めるかによりますね。長く話をするブロードキャストには耳に優しいETHOSがハマるパターンが多いんじゃないかな。
(余談ですがETHOSはEQがすごく素直に効いてくれるので素の音で満足できてなくても修正が楽ですね)
また、私の持っている範囲だと8097(S)に似ている音だな、と思ったのはNeumann TLM103です。
TLM103は超低域も出ていますが、「高域が徐々に尻上がりになりつつもちょうど耳に痛い帯域は避けている」感じが似ていると思います。どちらも明るいし。
また、TLM103は結構部屋鳴りにセンシティブで吸音材で対策しないと独特の響きが残りますが、8097(S)は良くも悪くも部屋鳴りの影響を受けにくいと思います。
U87との比較は…残念ながらレンタルしかしたことないのでできません。すません。
③ ちょっと残念なのは筐体!
このマイクはsE ElectronicsのX1 Sというマイクを改造した品ですが、正直なところ、あまり優れた筐体ではありません。
マイクの中がスカスカで、近くにあるキーボードの打鍵音とかを拾って「イイン…」と共鳴します。
また机にマイクを取り付けると机に肘をついた際などに「バーオウッ」とガバキックかよという潰れた低音が入ります。
私はEnhanced Audio M600でマイクをホールドしていますが、あまり効果はありません。
(M600はマイクをガッチリホールドして音像をシャープにするマイクホルダーです)
逆に揺れをなるべくマイクに伝えないRycote InVision USMとか使った方がいいのかもしれません。でもM600が好きなの。愛おしいの!(昼ドラ)
2 最後に
買ってもいいマイクだと思いました。
価格も現時点で52,100円(税込)とのことなので、同じ価格帯ではパッとしないマイクしかないので「ちょうど手元に5万円あるけど良いマイクない?」って聞かれたら一回家に持ち帰って風呂で熟考した後に薦めるかもしれません。
あ、でもNeumann TLM103よりは扱いやすいってのもあってそれくらいのクラスのノイマン買うならオススメかもしれません。
あと、EQしなくても最初からEQしたかのような音で、前にも出てくるので「音のこと何もわからんけど金だけはある」というならU87を買え8097(S)を考慮してもいいかもしれません。
が、大きな弱点にも触れておかなければなりません。
それは「メーカーがどこを改造したか」を明言してないこと。
私は改造前のこのマイクの音を知らないので、「元々良い音のマイクにちょっとだけランクが上のWIMA抵抗を付け替えました」程度の改造なのかもしれません。だとしたらSEの改造前のマイクを買った方が良いわけです。
例えば「中にマイクトランスを仕込んでいるよ」というのであればこの価格にも納得できますが、それだったらそう明言しているはず。飽くまでどんな改造を行ったのかはわかりません。
(カプセルも改造前・後で変わらず赤い縁取りが見えるのでカプセルの換装とかもしていないはず)
そのため、ある種「AMATERASというブランドをどこまで信じるか」というお布施的なサムシングになっているのがもったいないところではあります。
その他特段書いていませんでしたが、ノイズも少ないですし、吹かれも並、SPLも特段低いと思わなかった(-20dBまでパッドスイッチあるので足りなくなることはないでしょう)し、音量も特段取りにくいわけではなくまぁ普通でした。
解像度も中域が特に高く、問題ありません。
すげぇ、3,300字も書いちゃった。レビューと真空管機材は熱が入りますね(チヨノオー格言)。