【エッセイ】存在しない金髪ツインテとチャンネル登録者
ローレンツ力(りょく)、という物理用語を見かける度にロシア娘・ローレンツカという想像しない金髪ツインテキャラを想像する。
たぶん日本人とのハーフで、まんがタイムきららに出てくる。田辺ローレンツカ、みたいな地味な名字と合わせたい(全国の田辺さんに謝れ)。
さて、今回は創作と切っても切れないらしい承認欲求の話。
私はゲーム実況者だが、「チャンネル登録よろしくね」といった類の呼びかけをしたことがない。そのテンプレートをいじって「面白いなと思ったら下にあるチャンネル登録ボタンを見てみてください!(見るだけかよ)」くらいのことを言ったことはある(冷静に書き出すと面白くないな)。
なぜそういう呼びかけをしないのかと言えば、「かっこ悪く感じるから」だ。私の動画は趣味で作られていて、チャンネル登録がイコール収入に繋がるわけではない。だから別にチャンネル登録されなくても痛くないのだ――とかっこよく言っているが私のチャンネル登録者数は66人だ。言論に説得力がないことこの上ない。
「チャンネル登録者が欲しくないなら投稿しなくてもいいじゃん(いいじゃん)」と思われるかもしれないが、私の中では矛盾していない。私はチャンネル登録者を欲しがっていない代わりに、「おもしろいな」と思ってくれる人を望んでいる。渇望している。
お願いしてまでチャンネル登録者が欲しいわけではなく、自然と「おもしろいな」と思った人が自発的に登録してくれることを望んでいる。
一方で、これは愚策である。理想主義のコンコンチキである。HIKAKIN TVやすしらーめんといった雲上人ならぬ雲上チャンネルでさえ、登録を促す画面をつけているのだから、郷に入っては郷に従うべきである。「チャンネル登録お願いします」の「お願い」はそこまで本気のものではないのだから、大人しく頼めばいいのだ。ほら、どうした早く言ってしまえ(aiko - カブトムシ)
そうは言い条、「うちは創業からこのスタイルでやってるから」と思っている。黒Tで腕を組んでいる。タオルを頭に巻いている。いやまぁ、大した期間投稿してないですけどね。
自分を曲げられないのはかわいそうだ。川瀬(かわせ)さんに似た動物、それはカワウソ(川獺)だ。
私の信条を曲げないで大衆に迎合するにはどうしたものかな、と思っていたが、私の好きな実況者に牛沢さんという方がいる。その方はエンドカードにI hope you enjoy(楽しんでくれることを望む)と書いている。チャンネル登録を促すわけではなく、動画を楽しんでくれ、というスタイルだ。これはなかなかいい解決方法に見える。いやそんなムリしてエンドカード作る必要があるかどうかはともかく。
念のため重ねて言うが、「俺は再生数なんて気にしないぜ!」という無頼派ではなく、再生数は欲しいといえば欲しい。面白いことを言ったときに「どうよ、今の!?」と気になることがあるし、投稿している以上反応があると嬉しい。マズローだって承認欲求はデカい欲求やでと認めている。そもそも反応が欲しくないとか「非現実の王国で」かよ(作者が一生公開しなかった長編小説)。
そう考えると、私にとってゲーム実況は「かっこ悪いことはしたくない」、つまり「かっこいい自分でありたい」という自己実現なのがよくわかる。顔面をアプリで加工しまくってウマ娘の3Dモデルよりおかしくしている女子たちも、いわゆる「顔面が強者でいたい」という思いの自己実現なのだ。だから私のこだわりは自撮り女子と地続きのものだ。
おやおや、「一緒にするな」という声が聞こえてくるようだが。
【後記】
ちなみに、私自身が視聴者になる際には「動画投稿者が頭下げてらぁ」と思ったことはないので気にすることはないのだ。
そうなんだけど、素のままの自分を好きになってほしい気もするじゃない。するじゃないの、あーた。あこれ俺が結婚できない理由がわかった気がする。そのままの自分が受け入れられることなんてないんだよ、と俺が納得できる絶対者から言ってほしい。高次元存在の者とか神とかから。でもどうせ治んねーだろうな。寝るわ。