Golden Age Project(GAP)のオプトコンプ・COMP-2Aのレビュー。
こんにちは。イーヴィルな斉藤(@evilsaitoh)です。
私はオプトコンプ(光学式コンプ)がとても好きです。
特にUADのLA-2の「バターをパンに塗るときのような表面を雑に均す感じ」が気に入っています。よく見るとガタガタだけどきれいな線がついて滑らか…みたいな。
そういえば、前に紹介したSoftubeの「Summit Audio - TLA-100」もオプトコンプでしたね。
さて、今回はそんなオプトコンプマニアの私が実機のGolden Age Project(GAP)のオプトコンプ・COMP-2Aをレビューします。
私の持ってる機材としては珍しく、現行品なのでまだ購入できます。
1 Golden Age Project(GAP)のCOMP-2Aとは
せっかくなので、少しウンチクを語らせてください。
Golden Age Projectは、そのまま「黄金時代プロジェクト」という意味で、「黄金時代の名機を手の届く価格で提供する」をモットーにしたそうです。
Neve1073プリアンプを安く、小さく作ったPRE-73シリーズは有名ですね。
さて、その中でCOMP-2Aは、型式からわかるようにTeletronix(現在はUniversal Audio)のLA-2Aを元に作られています。
元々LA-2Aはコンプレッサーではなく、「Teletronixが出したLeveling-amplifierの2番目」でLA-2(A)という名前です。
つまりレベリングアンプ、音量を揃えるアンプとして開発されました。
現代ではコンプの名機として知られていますが、冷静に考えるとメインのノブが2つしかないのは異様ですよね。
1960年頃、ラジオ放送では様々な番組・音楽などが流される中で、音量差があると聞き苦しい。
そんな中で「自然に、簡単に、長期的な音量差を抑える機器」として生まれました。
そんな『黄金時代』を築き上げたLA-2Aですが、現行品は約50万円ほどします。
それをお手軽価格にしたのがCOMP-2Aです。
2 設定方法
オプトコンプは概ね以下のような使い方をします。
もちろんこれから外れてもOKです。音楽は自由なので。
まずマイクプリから出た素の音量と同じ音量になるようにGAINを回す
自分が欲しいコンプ感を得るまでPEAK REDUCTIONを回す
小さくなった分の音量をGAINで設定し直して終わり
重要なのは「GAINはREDUCTIONが通った後の音量」、つまりインプットではなく、アウトプット・ゲインです。
(現代の機器は左がインプット、右がアウトプットなので勘違いしますね)
「最後にGAINを上げたらリダクション量変わるんじゃね?」と思いがちですが、アウトプットなのでコンプレッション量は変わりません。
3 レビュー
①音に関すること(単品で思うこと)
ピークリダクションは、-10dBだろうが1176のようにギュッと潰れることはありません。
潰れるというよりさらっと整えられる感じ。
もちろんアタック以外は小さくなるので、そういう意味ではボーカルで実用に耐えるのは-5dBあたりまで(?)かもしれません。ただ、そういう議論すら馬鹿らしくなるくらいに「適量」がある感じですね。
メーターを見る必要がないくらいに、掛けすぎると均しすぎ、少ないと自然すぎてわからない…が耳でわかる機材です。
(個人的には、「掛けたことがわからないコンプレッション」なんて意味がないと思っています。掛けた本人ですらわからないコンプレッションを、誰に聴かせるのでしょうか?)一方で、その「適量」は決してシビアではなく、そして設定しやすい方です。ノブが2つしかありませんからね。
以前ご紹介したTDR Kotelnikovと割と似ています。
ただ、COMP-2Aの方が温かみ(太さ)が強いですね。
これは「真空管特有の温かみが~」みたいな話ではなく、構造として「音が細くなったらその分音量を戻して密度を高く保ってくれる」となっているからだと思います。
(というか、私は真空管をローファイに思っていない節があります。Tube-Techとか使ったことある方ならあのプリップリな質感をわかってくれるはず)今までの印象では「オプトコンプはアタックもリリースも遅いから声に最適だね!」と言われてもまぁそういうもんか、と流していましたが、今は「いやLA-2A系列がおかしいだけやろ」と思っています。アタックをしっかり出した後にスッと抑えてくれてジェントルにレベルを揃えてくれています。
逆に、不自然さを出すには乳幼児に適当にいじらせるしかないんじゃないだろうか。
HF(低域にコンプをかけない)ノブもありますが、これは声ならフラット~9時の設定くらいしか使いません。これ以上にするとコンプがあまりかからないし低域がボコボコします。
私はフラットで使っています。
②音に関する比較
LA-2Aの実機と比べることができるわけがないので、UADのプラグインと比べてみます。
また、UADのプラグインには、LA-2、LA-2A銀、LA-2Aグレーがありますが、挙動が近いLA-2Aグレーと比べます。
(LA-2は全体的に遅く、銀はCOMP-2Aに比べるとリリースが速いですね)
UADのLA-2Aもかなり良いコンプではありますが、根本が違うんだなぁ、と思い知らされました。
「音は録りの段階で9割決まる」とはよく言われていますが、その通りですね。
LA-2Aは「細い録り音に太さを付ける」、COMP-2Aは「元から太い音で録れている」という違いがあって、やはり録りの段階で太くないと後から付け足すのは難しいと感じます。
(UADのLA-2Aは比較すると細いですね)マイクプリもSSLのそれなりのものを使っていて、1176コピーのコンプも挟んでいますが、割とこれが最終回答だったのでは…?と思っています。
録り音の細さ問題は解決しますね。一方で、前にズドンと出てくるタイプではありません。
以前の記事で海外のプロデューサーが「コンプのリリースでどれだけ前に出すかを決める」と語っていましたが、まさにリリースが遅いだけにガッツのある前方定位をする方ではありません。
(音量を上げればもちろん前には出てきますが)音圧がすごく上がる!みたいなタイプではないのは確かです。そういうのなら1176とかAPIの領分ですね。
音量というか密度を保ってくれているようなタイプ。
実機でGrace Design m102というオプトコンプも所有したことがありますが、正直「これならデジタルコンプと変わらないなぁ」と思って売ったことがあります。
すごく透明なコンプではありましたが、今はそういうのDAWでできるので…。また、FMR RNC1773(E)というVCAコンプも所有していましたが、こちらはコンプ感は(ややこしい操作と引き換えに)そこそこコントロールできましたが、ローエンド・ハイエンドがごっそり失われるので売ったことがあります。
そういう意味では、COMP-2Aは信号がただ通って、それが太くなる、そして音量が揃う…という理想のものです。
というか、KLARK TEKNIKにせよWARM AUDIOにせよLA-2A系のオプトコンプはそうなんでしょうね。
本家のLA-2Aもきっとすごいのでしょうね。価格も。
②機器に関すること
さて、前章までは良いことを書きましたが、ここからは愚痴タイムです。
電源を入れる度にVUメーターの位置がまちまちです。
これは前に記事を書いたKLARK TEKNIK 76-KTにもあったので、アナログ機器特有のものなのでしょう。
幸い、メーターのキャリブレーションはラック前面で直せます。コンプ感は安定しません。
というか、安定するまで火を入れておくのが正解なんだと思いますが、常に点けておくには真空管の劣化が気になります(数千時間使えるにせよ、真空管交換のためにラックから出すのかったるい)。
また、点灯後1時間くらいはメーターが0.5dBくらいうろうろします。声も温かみが付きますが、物理的にも暖かいです。
俺は火属性なので手を置いても耐えられますが、人によってはアッチッチでしょう。このエッチッチめ!
あまり上に物を置きたくない温度です。どうでもいいんですが、マイクプリもコンプもオーディオIFも熱くなるタイプを使っているので冬なのに汗だくです。夏どうしようね。
ハーフラックとはいえ2Uはやはりデカいです。図書館にあるちゃんとした辞典くらいあります。
あと中途半端にデカいせいでラックに入れるのに工夫が必要です。まぁ真空管入ってるから仕方ないけど!
4 〆の言葉
できるだけひいき目なしに書いたんですが、音は文句の付けようがありません。
いや、ロックには必要ないとかの「使い道がない」ということはあるでしょうが、ほとんどの分野で活躍できるでしょう。
個人的にはマイクプリ>COMP-2A>KT-76くらいの優先度と感じます。
(その前にゲインステージングとかマイキングとかの知識がある方が有効活用出来るよ!)
久々のヒット。何もいうことないですね。