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DaiGo失言事件:インフルエンサーが直面する罠
どうも、魔都から来た悪い猫です。
普段はナンパと人間心理について浮わついたことを書いています。
「ホームレスと生活保護に税金を払っていない、その人たちよりも猫の方が価値がある。」などの旨を失言して、やたら、世間を騒がせているDaiGo氏のホームレスと生活保護叩きの問題でですが、今回はこの件について書いていきます。
まだまだ、炎上が冷める予感はしませんが、僕は基本的に「発言はダメだけど」「DaiGoの人間性はまだ悪くない」方と思っております。結論から言うと、この人は「素で悪い人」ではなくて「天狗になった人」です。素で人格に問題があるインフルエンサーなんてもっとゴロゴロいます。
別に、このノートはDaiGo氏の擁護のノートではなく、SNSインフルエンサーが陥る罠について話していきたいと思います。
まず、以下の動画をご覧ください。
SNS インフルエンサーは信者ビジネス
なんだか炎上したら、今までの人間心理観察の動画がすべてブーメランになっているような気もしますが、まあ、一旦、落ち着いてください。
「アンチに謝るな」というのはインフルエンサーやる側としては基本的に言っていることは正しいんですよ。
我々、普通の人間が社会活動をするとしたら多くて数十人のチームで共同作業して、少しの反対意見や批判にも真摯に耳を傾けないといけないわけです。しかし、政治家とか経営者というのは何千人何万人の人間に対して人望がある振る舞いをしなければいけない、SNS インフルエンサーもそういう規模の影響力集客が基本的なのですよね。
そして、その中で立ち回っていると、必ず
1:狂信的な信者からの愛のエール
2:不倶戴天のアンチからの敵意
に晒されます。
雑に考えてフォロワー5000人いて正規分布で100人狂信者、100人アンチだとしましょう。褒めるも貶すもこの人たちが、一番、口うるさい人たちです。
学校のクラスで10人に嫌われたら切腹モノですが、SNSで100人に嫌われようと、5000人のフォロワーがいたら勝ちです。政治の選挙でも同じ仕組みですよね。だから政治家は面の皮が厚い。むしろ、嫌われれば嫌われるほど、ルサンチマンの注目も浴びているシグナルが発信できて炎上商法で有名になります。
これは、社会生活でせいぜい何十人のチームで、お互いに中庸な意見を言い合いながら反省しながら仕事を進める人間関係と比べると「非日常」そのものです。よく聞く意見が「絶対あなたは正しい」と「絶対にあなたは間違っている」の二極化するわけです。適切に情報を捌かないと狂って暴走します。
危険な発言でも信者が擁護して慢心?
これは、本当によく発生することなんですよね。人間は自分が正しいかどうかを周りの反応を見ながら判断するわけなんですよね。
以前、人間モニタリングで石原さとみを彼女と入れ替えて「催眠をかけました」と言って信じるかの企画があったときは、すべての被験者が周りの仕掛け人の反応で、本当に催眠がかかったと思い込みました。石原さとみ本人が仕掛け人で横にいるとは思いませんでした。
SNSで際どい発言があった時も、叩かれそうになるんですよ。そこで、自己防衛のエゴが働いて自己慢心が起きるなら、まだしも、信者が勝手に最善の相で解釈して承認してしまうんです。
こちらの動画をご覧ください。
DaiGoが教養人ぶりながら「資本主義でお金を持っている人はエライ」「違法にならなければ何をしても自由」という超拝金主義を、社会通念と勘違いしました。
しかし、金と道徳は儒教やキリストの時代以前から人間社会がずっと議論してきたテーマで終わりのないテーマです。最近ではサンデルの本がありますね。
ここで誰かが制止したり、疑問を投げかければいいですが、そんな中庸な層はそもそも動画にコメントを残さないです。
僅かなアンチと狂信者しかコメントを盛り上げないのですね。本人もそうなるように極論を言い切るわけです。
なんでも叩くアンチはブロックすればいいですが、なんでも褒める信者はいつも目にするので、こっちの方が世界認識の常識となり、同時にバランス感覚の脅威にもなります。
だって、何を言ってもイエスマンが完全に意図を汲み取って承認してしまいますから。どんな極論を言っても正しいと暴走しはじめます。不可逆にやらかすまで「そろそろ発言がヤバいです。」という危険信号を界隈の外から取得する手段もないんですよ。
インフルエンサーはふんぞり返るのが仕事?
他人に影響力を与える権威性というのは、自分が正しいと思い込む信念の演出で生まれます。理屈よりも信念の演出というの話しは、ロジハラ問題で紹介しました。
「どれも正しいかもしれない」は、たとえ事実だとしても、そこにはリーダーシップのかけらもない。極論を言い切ったヤツが影響力を手に入れるわけです。
なぜ専門家より素人の言うことを信じてしまうのか pic.twitter.com/ybzR0LOwYK
— スルメ・デ・ラ・ロチャ (@surumelock) August 10, 2020
そんな立ち回りで重要なのが「アンチに謝らない」ことです。「誰が何を言おうと俺が正しい。謝ると逆に俺を信じる人間たちに失礼だ。」と、このスタンスで影響力を拡大してファンを増やすわけです。
ネットに極論が蔓延る現象については以下が分析をしています。
中庸な意見の持ち主が書き込みを行ったとしても、それに対して過激な意見や中傷が返ってくることは珍しくない。そうなると、その人は幻滅し委縮して、やがてネット上での発信に消極的になってしまう。実際、ネットでは政治やジェンダーの話題を避けているという人も、読者の中にいるだろう。
一方で、極端な意見の持ち主は、めったなことでは委縮しない。なぜならば、彼らは自己の正しさを強く確信しており、何度でも発信するし、何を言われてもくじけないからである。このようなメカニズムで、ネット上では極端な意見が過剰に出回り、偏った言論空間が形成されていると考えられる。
(引用:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58264?page=3)
インフルエンサーがインフルエンサーたる所以、これは「批判されたら謝る」という通常の社会性と真逆の感性で生きるナルシズムとなります。
ある程度、自分も間違いを犯す普通の人間だと、日々、自分にいい聞かせないと狂ってしまいます。しかも、増え続ける信者はますます「あなたがスゴイ」と言うわけです。
君主と貞観
かつて中国には李世民という名君がいて、魏徴という超毒舌批判家を自分の脇において、自分を批判させたという話があります「すべての権力は腐敗する」という人間の弱さへの自覚があるから行えることですね。
では、小さな宗教国家を作り出してしまうSNSインフルエンサーはどうでしょうか?ワザワザ耳に痛い情報を仕入れるでしょうか?
健常な例を上げるならば、社会の歯車としてサラリーマンをやりながらインフルエンサーを兼業する人たちは、実社会で「自分も所詮小物だな、だが、別に問題ない。」という感覚を回復できます。
しかし、複雑な技能構造や人間関係を持つ職につかず、ひどい場合は学業さえ放棄する情報インフルエンサーが、信者のチヤホヤだけでのし上がる新メディアの承認欲求構造に潰されたりはしないでしょうか?
果たして、ネット資本主義の栄光に晒された凡人がどのように虚栄心に消費されるのか、改めて考え直す時も近いかもしれません。エゴは凡人の最大の敵ですから。
極論を言えば(←!)インフルエンサーを潰したければアンチ情報を発信する必要もないのかもしれません。どんどんチヤホヤすればいずれは死ぬんではないかと感じているこの頃です。