「ノクチルちゃん」と仕事をする【ネタバレ有】
みなさんこんにちは。アイドルマスターシャイニーカラーズ、遊んでいらっしゃるでしょうか。今回はノクチルの話をします。特に先日追加されたシナリオ『さざなみはいつも凡庸な音がする』のことを中心に書いていこうと思います。『天塵』、『海に出るつもりじゃなかったし』についても少し触れます。ネタバレを多分に含むのでお気を付けください。
私が今回のシナリオで特に印象的に感じた部分は「ノクチルを取り巻く周囲の評価の変化」です。
過去のシナリオ『天塵』と『海に出るつもりじゃなかったし』ではノクチルはある種「業界の闇」的な暗めでシビアな部分に巻き込まれています。
『天塵』では、練習を重ね気合を入れて臨んだ初仕事の音楽番組にて新人だからとぞんざいな扱いを受け、口パクでのパフォーマンスを強いられました。
『海に出るつもりじゃなかったし』でも新春アイドルバラエティの数合わせとしての急なオファー。さらにはオンエアでは4人の姿は映らないという始末。あんまりだよ。
まあノクチルの4人が上記のような出来事から大きなダメージを受けているかと言えばそうでもなさそうなのですが…。とにかく、ノクチルはこれまで真に「ノクチル」として見られる機会がなかったように思えます。
こんなことがあったので今回の冠番組『ノクチル成長中!(仮)』に対しても少々の不安がありました。またアイドル業界のゴタゴタに巻き込まれてしまうのではないか、と。
結論を言うとこの不安は半分当たっていて半分は外れていました。
まず、番組ディレクターがノクチルを起用したきっかけは『天塵』でのあの音楽番組でした。生放送の歌唱披露で童謡を歌い、コーナーを荒らしたとも言えるあのシーンです。ネットや業界内でも批判の声が上がっているシーンがありましたね。
しかし捨てる神あれば拾う神ありとでも言いましょうか、彼はそんなノクチルを見て可能性を感じたようです。無茶苦茶やってくれる破天荒なヤツらが現れた、と期待を寄せこの番組を企画しました。
1日目の撮影終了後、思っていたような画が撮れていないことについてプロデューサーと話します。彼が考えていたノクチルの良さは「破天荒さ」や「何かやってくれそうな感じ」だったのですが、ノクチルは粛々と修行をこなし割と真面目な姿でカメラに映ります。結果として、彼が期待していたバラエティ的な面白さには欠けていました。
ただ、この後の撮影でも特段大きな変化はありませんでした。この会話を聞いてしまっていたノクチルの4人も特に立ち回りを変えることはしませんでしたし、番組側もトラブルを起こしたり試練的なものを与えたりといったような大きな仕掛けを用意することはせず、粛々と撮影を進めました。
私はここが特に大きなポイントであると思っています。
このディレクターは自身が感じていたノクチルの魅力と実際の彼女たちのギャップに気づき、彼女たちの魅力について真摯に理解しようとし始めました。シャニマスをプレイしているときの私たちみたいですね。このあたりで私は彼を信用に足る人物と認識しました。
バラエティ的な面白さが少なくても編集でカバーする、と言ってしまうと聞こえは悪いかもしれませんが、少なくとも彼女たちの良さが間違ったふうに誤解されることのないような番組作りをしてくれたのだろうと思っています。
視聴率の週間結果24位という数字はそれの現れでしょうね。可もなく不可もなく。どちらかと言えば可に寄っているでしょうか。言ってしまえば「普通」な彼女たちを映したものなので妥当な結果でしょう。番組自体も失敗ではないもののレギュラー化できるほどのヒットでもありませんでした。
しかしあのディレクターはもう一度ノクチルと番組を作りたいと打診します。「駆け出し新人アイドル」でもなければ、「他の出演者の引き立て役」でもなく、「破天荒な色物アイドルユニット」でもない、本当の意味での「ノクチル」と仕事をしようとしているのです。
ノクチルに初めて(というと語弊がある気もしますが)正当に評価をしてくれる人物が現れたんだなと、感慨深い気持ちになりました。このディレクターが1人目となって、真に「ノクチルちゃんのいいとこ」を存分に発揮できるような環境が出来ていくと嬉しいな、と思います。
ではそもそも「ノクチルの魅力」とは一体何なんだ、という点ですがこれについてはまだ想像でしか語れないのではないかと思います。もちろん我々がいる現実世界の視点から見れば多種多様な答えがあることと思いますが、シャニマス世界の中でノクチルがアイドルとしてどんな魅力があるか、という点について言語化することは難しそうです。というより、言語化すること自体野暮なことかもしれません。
シャニPも『天塵』での花火大会のステージを見た時や『海に出るつもりじゃなかったし』で善村記者との会話などでノクチルの言いようのない魅力について触れています。今回のシナリオでもジュースを奢る際に「もっとみんなをわかりたいって気持ちの表れ」と発言していますし、ノクチルの魅力というのは中々言葉にできないところにあるのでしょう。この点は今後のノクチルのストーリーの中でカギになってくるポイントなのではないかと思っています。…もしかしたら全然カギじゃないかもしれませんが。
おわりに
さて、今回の『さざなみはいつも凡庸な音がする』ですが、過去の2つのシナリオと比べると読んだ時のインパクト自体は薄かったように感じます。大きな山場があったかと言われるとそうでもないし、作中の時間の動きもほぼ2日間とかなりゆっくりめでした。今までのようなドラマチックさには欠けていたかもしれませんが、一方でそのこと自体に意味があったような気もします。ノクチルは『いつも何かしでかすアイドル』ではないんだぞと、作中のディレクターと同様、私たちにも気づかせてくれるシナリオだったのかもしれません。
それにしてもシャニマスは同じような問題提起をしつつもユニットやアイドルごとでアンサーが異なってくるのが面白いですね。
「番組を面白くするためにどう立ち回るか」というのはアンティーカの『ストーリー・ストーリー』でも触れられていましたし、「ただ、立って笑っているだけでいい」というのもイルミネーションスターズのファン感謝祭編で似たようなことが語られていました。
ノクチルはまた違った姿勢でこういった問題に向き合っているように感じます。ノクチルだけではなく、今後も283プロのアイドルたちから目が離せません。アイドルマスターシャイニーカラーズさん、これからもよろしくお願い致します。